俺の名前は増田断
「行ってきまーす。」
平凡な日常。いつも通りな毎日。
特に面白くもない、いたって普通な人生。
そんな人生を送る俺は増田 断という。
いつも退屈に過ごしてる俺だが、今日は少しだけ楽しみな事があった。
家には誰もいないが、行ってきますと言って俺は家を出る。
愛用してるサビだらけの自転車に乗ってDVDショップへと向かう。
今は10月。暑くもなく、寒くもない心地がいい気温に満足するでもなくただただ自転車をこぐ。
周りには田んぼしかない、田舎くさい一本道を俺はチャリでスイスイ進んでいく。
しばらくしてDVDショップにつくとすぐに俺は目的の場所に向かう。
今回はDVDのレンタルではなく、ゲームを買いに来たのだ。
予約券を渡してスムーズにゲームソフトを購入した俺は、少し疲労の残る足に鞭打って自転車をこぐ。
田舎なので、DVDショップに行くだけでも自転車で片道1時間はかかる。
正直これを往復するのはしんどいのだが、新作のゲームソフトを買ったのだから、1秒でも早く家に帰りたかった。
しばらくペダルをこぎ続け、家に帰った頃には足がパンパンだったが、期待のゲームソフトに胸を躍らせている俺には気にならない。
むしろ、心地のいい疲労感と言っていいだろう。
家の階段を駆け上がり、一つの部屋にたどり着く。
俺の部屋。
そこには1000を超えるゲームソフトがいたるところに散らばっており、足の踏み場がないほどである。
俺は僅かに見える床だけを正確に踏み抜き、部屋の奥にあるベッドへとたどり着く。
そして新しく買ったソフトを本体に入れ起動し、VRゴーグルをかぶる。
余談であるが、部屋に落ちているゲームソフトは既に全て全クリしており、それは俺の中で過去の物と成り果てている。
俺は一度プレイしたゲームの内容を絶対に忘れない。
膨大なゲーム知識を有し、数々のオンラインゲームでランキング上位を走る俺は一部の人からこう呼ばれている。
『ゲームマスター・ダン』と。
「うん、史上最高の神ゲーと噂の今作のゲーム、俺の暇つぶし程度にはなってくれるよな。」
さて、ゲーム始めようか。
と、考えた俺の頭に突如として激しい頭痛が襲いかかる。
「いぎぃっっあっ!!!」
頭が焼けるような熱さ。
脳を混ぜられるような不快感。
そして全身に雷のようなものが走ったと感じた瞬間、俺は意識をうしなった。
ベッドに倒れた断の部屋には、買ってきたばかりの『作ろう最強ダンジョンマスター』のソフトがなぜか消えていた。