訓練
訓練用の体操服に着替えて、僕たちは指示されたグラウンドへと足を運んだ。グラウンドと言う位だし、大した広さではないと思っていたが、訓練というだけあってやはり尋常でない広さだ。多分小さな町一つ分はあるのではないだろうか。
「よし、集まったな生徒諸君ー」
そう言って現れたのは、髪を結い上げた担任女史と、見知らぬ優しそうな顔をした男性である。
「あの…先生、その隣の方どちら様ですか?」
「えっ?知らないの?レオくん」
リリーが驚いた顔で聞いてきた。
「逆に聞くがお前こいつが誰か知ってんのか?」
「知ってるも何も、この国で一番の軍医のシーザー.ドレイクじゃない!逆に知らない方が驚きだよ。」
「今ご紹介に預かったように、軍医をやってるドレイクです。今回の軍事演習での保健医かつスカーレット先生の助手として出席させて貰います。どうぞよろしく!」
なるほど、有名人なのか。ニュースなんて滅多に見ないから全然知らなかっt…
「あの、ドレイク先生。今何と?」
「?これからもよろしくねーってことなんだけど…」
「その前です。その、軍事演習をする、と仰いませんでしたか?」
「そんなにかしこまらなくていいよ。うん、確かに軍事演習と言ったけど、それが何か?」
幾らなんでも早すぎだろ。せめて順序みたいなものはないのか?
「この学園の方針でね。即戦力となりうる人材は早々に育てておくのが伝統みたいになってるんだ。」
捨てちまえそんな伝統。
「今から行う軍事演習はずばり戦闘訓練だ。今まで貴様らが培ってきた知識とか諸々全部ぶつけてこい。」
あれ…スカーレット先生キャラ変わってないか?
「スカーレット君は眼鏡とるとちょっと攻撃的になるんだよねー、昔っから。ちなみに僕、こう見えてこの学園ではスカーレット君のパートナーだったんだよ。」
「無駄口叩くな優男。とにかく、ささっと始めるぞ。」
そう言うと女史は手を地面につけ、詠唱を始めた。
「あ、もう一つ追加情報。スカーレット君は教師やる前は軍隊の隊長やっててね。使う魔道と掛けてこう呼ばれてたんだ。[大地の乙女戦姫]ってね。」
突如、僕らの立っていた地面が揺らいだ。
すると瞬く間に周りの地面がせり上がっていき、周囲には四角柱の建物が乱立していった。
これより貴様らには私たち二人と鬼ごっこをしてもらう。ただの鬼ごっこではない。おに側は逃げる方を拘束するまでを捕まえる、とする。逃げる側は迎撃、逃走、何をしてくれても構わない。制限時間は30分だ。無論、鬼は我々が担当する。」
随分と雑な説明だな。
「捕まったやつは制限時間まで腕立て、腹筋、スクワットを延々やってもらう。では、五分後にスタートだ。」
かくして戦闘訓練(?)が始まったわけだが、このときはまだ、僕たちはこの訓練がいかに過酷か分かっていなかったーーー