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17.デジャブ

「……」


「……」


「……おい、なんか話せよ」


「あん? 何でてめぇとと話をしなきゃいけねえんだよ。黙って座ってろ」


 ……こいつ、殴っても良いよな? 絶対に殴っても良いよな! お前が兵士で囲ませて呼ぶから来てやったのに。こっちは早くメルルたちの様子を見に行きたいというのに!


「もう、団長ったら。そんな子供みたいな事を言わないで下さいよ。それにお久しぶりです、ヘル様。何度か顔を合わせているのは覚えておりますか?」


「ああ。もちろんです。お久しぶりです、セシルさん」


 デイガスに我慢の限界がきた俺は殴ってやろうかと思ったが、間に副官のセシルさんが入ってくれたので何とか耐える。でも、やっぱり1発ぐらい殴っても構わないよな?


 セシルさんが飲み物を用意してくれている間、1人でそんな事を考えていると


「……お前が師団長を抜けた後」


「ん?」


「新しく第12師団長にレオナが後を継いだ」


「……知っているよ」


 各師団長は特殊な師団である第3師団を除いて、後を継いだ時には国民に紹介される。俺も王都であいつが任命されたのを見た。


 レオナ。俺が第12師団長だった時の副官だった女性だ。確か俺より1つ年上だったか。


 俺も覚えていないが、まだ師団長になる前に助けた事があるらしく、俺が師団長になってから同じ師団へと入ってきたんだったな。それで俺が止めるまでの1年間で、師団の中で2番目の強さを持つほどになっていたんだ。


「あいつはまだお前を恨んでるぜ。今は第1師団長が第3師団長と共にお前の居場所を隠しているからバレてねえが、見つかったら……殺しに来るぞ?」


 俺はデイガスの言葉に頷く。盲信的に俺の事を信じていたレオナだ。別れる時もいくら話をしても聞いてくれないから、無理矢理気を失わさせてそのまま去るしか出来なかったし。


 あいつの事だから、裏切られたと思って俺の事を恨んでいてもおかしくない。


「まあ、俺の場所がバレてないなら大丈夫だろう。直ぐにここも去るし」


「ふん、死ねば良いのに」


「お前が死ね」


 俺とデイガスが睨み合って、セシルさんが間に入って止めようとしているところに、ペコペコと頭を下げて入って来る男。確かガイルだったか。


「失礼します、団長」


「あん? 何の用だ、ガイル」


「えっと、今この街に現れたモンスターたちの死骸を街の外へと運び出しました。それから街の被害を確認したところ、住民たちの中に死者は70名近く、未だに見つかっていない方もいます。兵士はその倍近くの死者が出ました。負傷者もかなりいます」


「仕方ねぇ。伯爵と相談して第5師団に来てもらえ。あの強欲ババアの言い値で良いとも伝えろ。その代わり、早く来て早く治せともな」


「わかりました」


 それだけ言うとガイルさんとやらは部屋を出て行ってしまった。第5師団か。師団の中でも回復系に特化した師団で、当然戦闘も出来る異質とも言える師団だ。


 そのトップの第5師団長は、自分の気分で言った値段でしか仕事を請け負わない。完全に払えない金額は言ってこないのだが、腕が無くなるほどの怪我で100テラだったり、逆にかすり傷程度で10万テラだったりと。その逆も当然あるのだが、師団長の気分次第で変わるのだ。


 しかし、どの様な値段を提示されたとしても、皆が皆受けたく思う程の実力を持っている。そんな集団がいる第5都市は医療都市とも呼ばれていたりする。


「それでお前はどうするんだよ? このまま出て行くのか?」


「ああ。知り合いに挨拶をしたら直ぐに街を出て行く。あの野郎も探したいしな」


「ふん。なら、さっさと出て行け。これ以上お前の顔を見ていると、お前を殺したくなる」


「言われなくても出て行くさ」


 全くこいつは。そろそろ殴っても良いよな。本当にぶっ飛ばしても構わないはずだ。俺はデイガスを睨みながら部屋を出る。


「申し訳ございません。団長があんな事ばかり言って」


「別に構わない。それよりも頼みたい事がある」


 ◇◇◇


「師匠!!」


「無事だったか、メルル。メルシアさんもご無事で」


「はい。グスタフさんが助けて下さいましたから。ただ……」


「おう、無事だったか、タスク!」


「……お、おう、グスタフも無事? だった様だな」


 街にいた人々が避難している大きな屋敷にやって来て、メルルたちを探していると、向こうが俺を見つけてくれた。


 メルルとメルシアさんは汚れてはいるが、どこにも大きな怪我はなく無事そうだ。ただ、その後ろにいたグスタフさんがボロボロだった。その後ろにいるグスタフのチームのみんなもボロボロだが、誰1人欠ける事なくみんないる。


「へへっ、メルシアさんたちを守ろうとして頑張りすぎたぜ」


「私たちのところにはバッタのようなモンスターが現れて、飛び跳ねを繰り返すものですから、こちらの攻撃は当たらずに、踏み荒らした建物の破片が飛んで来たりと、かなり危なかったんです。でも……」


「そこにお母様と私たちを助けるためにグスタフさんが来てくれたんです!」


 目をキラキラとさせて話してくれるメルル。そうか。グスタフが頑張ってくれたんだな。


「俺なんか全然だ。第9師団が来なかったら死んでたかもしれねえしな」


「そんな事ありません。グスタフさんのおかげで私たちは助かりました。ありがとうございます!」


「ありがとうございます!」


 メルシアさんとメルルに続いて礼を言われたグスタフさんは顔を赤くさせて照れる。だけど、そこに


「グスタフさん!」


「私達を助けて下さって」


「ありがとうございますっ!」


 と、昼間に出会った3人がグスタフへと抱きついて来た。しかも、治療中だったのか3人ともかなりの薄着……ほぼ下着の格好でグスタフに抱きつく。


 グスタフは「えっ、ちょっ……」と慌ててはいるが、しっかりと鼻の下を伸ばしている。あ〜、左側が冷える。物凄く冷える。


 左側を見ると微笑んではいるが物凄い冷気を出しているメルシアさん。俺の裾を掴んで震えるメルル。なんかデジャブ。


 ……こいつは放っておこう。それよりも


「メルル、少し話があるけど良いか?」


「ひゃっ、ひゃい!」


 ……娘びびらせ過ぎですよ、メルシアさん。

メルリア→レオナに変更しました。

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