『何卒!何卒ォ!』
父親は主人公が嫌っているだけで悪い人では無いです。
仕事の事もあって親父の方が強いですが、ボケたり強いツッコミをわざと食らったりしている野郎二人の不器用なコミュニケーションの取り方です。
「ただいーーーー」
適当な食材を両手に抱え買って帰ると金と銀のが玄関先で土下座をしている幻覚を見た。
思わずドアを閉め、眉間を揉む。
最近、疲れるような事はしてないのに幻覚を見るとか潜在的にそんな願望があったのだろうか?
それとも誰か見せているのだろうか。
玄関前に立ち尽くす訳にもいかない。
幻覚がまた見えたらスルーして部屋に戻ろう。
「「お願いですから、この家に住まわせて下さい!!」」
残念ながら幻覚ではなく現実の模様。ガチの土下座とか悪巫山戯以外だと初めてみたぞ。
えー・・・どうすんのこれ。
「ブッフwwwwww」
「指差して草生やしてんじゃねーよ、お前の足の芝刈っるぞオラ」
「やめて!」
土下座を見て唖然としている俺を見て盛大に笑っているクソ親父は寝てる間にビニテを脛に貼るとして。
さて・・・
「取り敢えず頭を上げてくれ土下座のままとか気まずくて話し辛い」
「住まわせてくれるまで上げないです!」「ぇ」
「えー・・・」
銀色の方から断固とした意思で拒否される。
気まずいけどこのまま話・・・すかぁ・・・
「どうしてそんなに頭を下げてまで此処に住もうとする。自分で言うのもアレだが、かなり無愛想に対応したし、態度もそんな良くしなかったから印象は良く無いはずだろ?」
「でも、ご飯をくれたので良い人です」
「たまたま昼時でたまたま腹が減ったからな」
たまたまだたまたま。
しかも、飯あげただけでいい人って・・・
「でも、そこでご飯を分けてくれる理由にはならないです。私達を無視してご飯を一人で食べる事も出来たはずです」
「いや、まあ・・・出来たかと言われると出来たと思うが・・・」
それで美味しいご飯を食べれるかと言われると・・・見知らぬ他人の不幸とか出汁の出切った昆布のようなもんだし。
「それに、私たちを見ても怖がったり、奇異の目で見たりしなかったからそれがとても安心できたのです」
「むしろその、『なんだこの程度か』みたいな目を明かしてやりたいのです!」
目を明かす?・・・鼻を明かすかな?
「何卒!何卒ォ!」
「頭を擦り付けながら叫ぶな。どんな奇行だ」
何卒とかどんなキャラだ。
うっわー・・・目先の面倒をスルーしたいけど、これ放置してたら一日中此処でこのままやってそうな雰囲気なんだよな。
・・・
「取り敢えず気が変わる変わらないとかは兎も角、あと二日は親父が居るらしいから。そういう言葉は明後日まで取っておけよ。な?」
「嫌です!」
「いや、嫌って・・・何がそんなに此処に執着させてんだよ。確かに住んでもいいとは言ったが、野郎一人暮らしの面白味のない家だぞ?」
「この家だから住みたいのではないのです。貴方の家だから住みたいのです」
地面に頭を擦り付けていた金色の方が顔を上げて真っ直ぐ目を向けてくる。
「一応この家親父のだからな?いや、言いたい事は解るが尚更訳がわからん。会って数時間、本性もわからん男の家に住みたがる?」
「勘です!」
「勘か―・・・」
ここにきて勘と言い切られるとは。正直馬鹿にされている、もしくは人を疑う事が出来ないのか。
だが、馬鹿にしてる様子はなく、その目は何やら確信に似た何かを持ったまっすぐな目をしている。
また一つため息が出る。
「まあ、別に親父が居なくなっても出て行けとか言うつもりはなかったしな。前言撤回しない限りはうちにいればいい」
もともと追い出す気は無かったとはいえ、何やらいささか面倒なモノを抱え込んだような気がしなくはない。
ただ、二人嬉しそうにしている狐耳供を見ているとまあ、いいやなんて気がしてくる。
これから賑やかになりそうだ。
「あ、玄関で土下座してたなってなんでだ?」
「他言無用なのです」
「インパクトで押し切る作戦なのです」
「・・・取り敢えずクソ親父は米抜きな」
「マジでごめんなさい」
取り敢えずの話はおしまい。
次辺りから設定の説明とか消費を交えつつのお話が始まります。
遅筆ですがまったりとお楽しみください。




