狐の話「「あの人は凄い変態だ!」」
閑話を挟むには早い気がしたけど二人の話をしたかった
「ねえ、あの人間どう思う?」
人間が買い物に出かけた隙を見て姉妹での作戦会議。
私は黄金に聞いた。
里に居た時も、研究所に居た時もずっと一緒だった私の妹。
小金は私よりも頭がいいから、私が直感ではわからなかった事が何かわかるかもしれない。
「厳しい優しくて人だとは思うけど・・・」
「けど?」
「正直わかんない。言葉に裏を感じないし、言葉の端々に棘を感じる・・・でも、多分悪い人じゃないって思うかな?お姉ちゃんは?お姉ちゃんの勘なら何かわかることもあるんじゃない?」
首を横に振る。
「私も同じ。危険な雰囲気も、そういうのを隠したり誤魔化したりしている感じはしなけど・・・」
姉妹の共通認識。
普通じゃない私たちだからこそわかること。
「まず、おじさんがいう通り悪い人じゃない」
「つぎに|私たち(人外)に興味がないわけじゃないけどあの人たちみたいじゃない」
「でも、ご飯にかき消されるぐらいには私たちに興味がない」
「あと、少し怖い言葉遣いだった」
「「何よりも、あの人は凄い変態だ!」」
そう、あろうことか私たちの耳や尻尾を見て不満を漏らすどころか普通の範囲内だと言い放ったのだ。
大体の人間は自分と違うを恐れたり嫌悪するのに、その違う部分を好意的にも見ていてくれた。
そこまで言ってふと思い出す。
「ごはん美味しかったね」
「うん」
わたし達がお腹を空いてる事が分かると少し苛立ちながらも、ご飯を提供してくれた。
大雑把で如何にも男の手料理って感じだったけど・・・
「お替わりもくれたね」
「うん」
思い出すと涙が出そうになるくらいの暖かかった。
呆れながらも受け入れてくれた不器用な暖かさがそこにあった。
「ねえ黄金、私はこの家に厄介になりたいと思う。あの人はこの家に住むことを妥協するような事だと言ってたけど、此処を逃したら此処以上に暖かい場所は無い気がするの」
「それ、お姉ちゃんのいつもの感?」
「うん、感」
「ん、分かった。こういう時のお姉ちゃんの感は外れないからね」
感、言葉にすれば一文字で済んでしまう簡潔すぎて頼りないモノ。それでもコレは私たちをずっと助けてくれた。
「じゃあ、まずはおじさんに話そ。あの人を納得させるにはおじさんの力がきっと必要だから」
黄金の提案に一つ頷き、二人で外でタバコを吸いながら誰かと話しているおじさんの元へ向かう。
期待からか不安からか金色の尾が少し揺れた。
銀髪の方が黄金、金髪の方が白。
髪の色と名前が逆だから面倒かも?
そういえば、ここで初めて人物名を出した気がする。