『人外度が足りん』
あれ?おかしいな、ゲームのやりすぎで目が疲れてんのかな。
目頭を押さえて窓から見える景色を見てもう一度荷物を確認する。
箱の中には襤褸を着た金髪と銀髪の女の子二人が抱き合うようにして体を丸くして寝ている。
そこからの行動は早かった。
机の上に放ってあるスマホを取り、壁に立て掛けてあった木刀(税込900円)を糞親父に構える。
スマホには110番を素早く入力直ぐに掛けられるような状態にしてある。
「くっそ。ロクデナシだとは思っていたが人身売買にまで手を出すような下種だとは思わなかったぞ」
「ま、待て!話せばわかる!」
「弁明が有るなら一応聞く三単語で話せ」
「単語?!」
「ほら、早よ。もう二話目突入してるんだから」
「密入国、手助け、それでも僕はやっていない」
チッ、冤罪映画を出すって事はマジでやってないのか。
最後のだけ単語か怪しいけれど今回は見逃すとしよう。
「つか、密入国ってどういう事だよ。親父が手伝って家に送るって事はやっぱり訳ありか?」
「ん、まあ・・・詳しい事はこの子達を起こしてからにしよう」
なんか歯切れが悪いな?
「ほら、二人とも着いたぞ。おきろー」
「もう起きているです」
「煩くて寝ていられなかったです」
どうやら、騒がしくしすぎていたようだ。
まったく・・・朝から怒鳴ったりするから・・・
「ほら、親父のせいだぞ。泣いて許しを乞え、命乞いをしろ」
「乞わねーよ。何処の悪役のセリフだよそれ」
「ん?一応オリジナルですが何か?」
「酷い息子を見た」
「酷い親の子だもの仕方ない」
二人の少女が俺と親父のやり取りを尻目に起き上がる。二人とも白いワンピースを着ている。そして、肌が病的に白いせいか嫌な想像が横切る。
「で?この日本人の地毛では出せないような色をしたこの少女達は一体何処の何のモルモットなんだ?」
「私たちはモルモットじゃないです」
「どちらかと言うとキツネなのです」
二人が少しむっとした顔で言ってくる。その目には少しの怯えが籠って居るように見えた。
モルモットはそういう意味で言ったんじゃ無いんだが・・・
視線を戻すと親父が少しだけ険しい目をしていた。これは成功だな。
「その様子だと本当にモルモットのようだな」
「なっ・・・お前、カマかけたな?!」
「こんなにあからさまなのにあっさり引っ掛かるとは思わなかったがな。で?何のだ?俺の勘だと生き残りとかじゃ無さそうだが?」
「・・・今のカマかけ何割が勘だ?」
「八割九分九厘」
「ほぼ九割じゃねえか!」
「で?どうなんだ」
「解ってると思うが二人の事は「言ってもまともに相手されねぇよ」
妄想と現実が区別付かない痛い人だと思われるだろ。中二病はギリギリ卒業してるんだ。
「そうか・・・。じゃあ二人とも、話を聞いていれば分かるかも知れないがアイツが俺の息子だ。口も性格も悪いが悪い奴じゃない。口も堅いから安心しても大丈夫だ」
「性質が悪い親父から安心なんて言葉が出てきても安心できねぇだろ」
「事が事だけに冗談で言えるような事じゃ無いんだよ」
親父が見た事の無いくらいに真剣に念を押す。
二人は親父を見たあと俺を見る。
何かを探っているような気がするが正直どうでもいい。
早く玄関閉めて、着替えたい。薄着寒い。
二人は顔を見合わせるともう一度俺を見てくる。
そんな事より、腹がきゅるきゅると切ない感じになってくる。
そういえばまだ、朝飯食べてなかったな。パン、今日はジャムとバターどっち付けよう。
無駄に時間も経ってるからこのまま昼飯にするのもありか。
二人は再度顔を見合わせると一つ頷いて目を瞑って力を籠め始める。
お?何か起こるのか?変化か召喚かサイキックか呪いか魔法か・・・
ヒョコン!
二人の頭から一対のイヌ科と思われる耳が出てきた。尻尾も出ていた。
・・・・・・
・・・・・・
「・・・え?これだけ?」
勝手に変な期待しといてアレだけど・・・あれだけ引っ張っておいて安易な擬人化みたいに耳と尻尾が出るだけ?
ケモミミも嫌いじゃないけど・・・んー・・・満たされない。
「お前、どんなの期待してたんだよ・・・」
「いや、再三注意するもんだから・・・こう・・・魂の生贄的なゲームというか・・・闇の魂的なゲーム的な感じになるんじゃ無いかと・・・」
「人の家に住ませられる様な見た目じゃないだろ・・・アレは」
とは言ったものの、見た感じ洗って居ない犬みたいにゴワゴワしているがそれでも毛量と毛並はかなりのモノだ。洗ったらもっとふわっふわの毛並みに成るだろう。できる事なら是非、モフりたい。
「で、どうだ?」
「いや、どうだと言われても」
「怖いか?」
「この程度まだノーマルの内だろ。人外度が足りん。見た目七割程人間離れしてからその質問をしてほしい」
「」
「どうかしたか?」
何故か親父が絶句していた。少女達からも驚いているような空気を感る
あれ?何か変なこと言ったか?
「いやぁ・・・研究所も中々に闇が深かったが、息子が別のベクトルで闇が深くなってるとは思いもしなかった」
「住めば都の奈落荘、こっちの水は甘依存ってやつだ」
「いろいろと酷いフレーズだな」
「課金兵の沼よりは酷くないぞ」
「あれを引き合いに出したら殆どのモノがマシになるだろうが」
重課金兵の課金額は深く重い・・・らしい。
高級車や一等地に家が建つ程の課金額とは一体・・・うごごご!
「まあ、俺の事も面倒くさい話もさて置きだ」
「さて置くなよ」
「・・・さて置きだ。その二人を俺に見せてどうしろと?」
まあ、大体の予測はつくが。
「この子たちを家で預かるから面倒を見てくれ。どうせ彼女とか居ない寂しい独り身なんだろ?」
「めどい。あとんなもん、できる気も無ければ欲しくもねーよ」
「なんだ、ホモか?」
「金と時間使ってまで繁殖行動する気が無いだけだ。ホモじゃねーよ」
ったく・・・彼女作る気ない=ホモと捉えるとかロクでもない。
そんな下らないやり取りをする俺達を二人の少女が何処か縋る様な目で見てた。
こんな感じの人外を出してほしいみたいな案があったら感想か何処かに書いてください。
自分の技量と知識が間に合えば採用して出したいと思います。