『おいしいイチゴが付け根もおいしいとは限らない』
多分一か月に一本、気分が乗ったら二本目が出来上がる。
白の食事と黄金の申し訳程度の準備を終えて家から出る。
とりあえず、神社に先に行くことにした。すぐ近くなので歩きだ。
「・・・」
家を出てからというか、そもそも俺自身喋る方ではないので家を出る前からほぼ無言である。
双子のほうも話さず素直に後ろをついて来るだけなので気まずいったらありゃしない。
む・・・いや待てよ?双子が人外で狐系と考えると念話とかできて、それで二人会話してるって可能性もあるんじゃなかろうか。そう考えると念話って便利だな・・・いや、場合によっては俺の思考が読み取られているという可能性も微レ存?(ファミチキください)とか送った方が良いやつか?
仮に思考を読むとして、どういう風に読み取るのだろうか。本だとカッコ付きの言葉で出てきて、動画だと字幕と音声で本音と建て前が分かれて出てたりするが・・・
「あの」
「なんだ?」
「ずっと聞きそびれていたんですけど、なんで私たちを怖がらないんですか?」
「怖がったほうが良かったか?」
「いえ、人間は自分達とは違うもの自分達が理解できない未知を恐れ、差別し、迫害するじゃないですか」
「そうだな。肌を一つ、目の色一つ、思想一欠片違うだけで異物として囲んで棒で叩くなんて日常茶飯事だな」
普通とは違うものを崇拝対象に仕立てる事もあるが、結局はそれも差別である。
わざとそれを生み出そうとする人達もいるらしいけれど。
「それなのに「お前らは」はい?」
「お前らは殺されたら死ぬか?」
「え、ええ。まあ、はい」
「じゃあ、そこは人間と一緒だな」
「あ」
「言葉を話せて、殺せば死ぬ、正体なんて後で知ればいい。怪物じゃないなら恐れる必要はないだろ。その程度で怖がるなんて面白くない」
銀の方・・・黄金だったか?が黙ってしまった。さすがに物言いが物騒だったか?
でもなぁ・・・ほかに何かあるかと言われたらこいつらが面白そうで嫌いじゃないってだけだしなぁ。
金の方だから・・・白だったか?が小走りで追いついてくる。
「ねえ、私たちが面白そうってなんで?やっぱり人じゃないから?」
「あ?違うぞ」
人外でも面白そうじゃなかったらただの解剖対象、その他の分析データだしな。
「もっと純粋に人として・・・?人?・・・まあいいや、そいつが俺にとって関わって話して面白そうな人格してるかってだけだ。面白そうな奴ってのは人生を豊かにするのに大切だからな」
見た目も当てにならないし当たりハズレの差は大きい、良い悪いに関わらず面白くない人はいるしな。
まあ、大半は無味無臭の人間が大半だけれども。
「私と黄金はあなたにとって面白そうってこと?」
「知らん」
えー、と不満げな声を上げる白。
「土下座した上に俺がいるから住みたいとか言い出すのは面白いと思うが、それだけだ」
「違いが判んない」
「全体か一部かって話だ。先がおいしいイチゴが付け根もおいしいとは限らないだろ?でも腐ってるわけじゃないし味が薄くて青臭いだけでまずいわけじゃないだろ?」
「成る程」
上手く例えられたようだ。
まあ、人間はイチゴ程味が簡単じゃないけれど。
・・・というか。
「金の」
「白」
あ?
「名前教えたんだから名前で呼んで」
「・・・」
なんか、一気に距離を詰めてきたな。
一晩立って地が出てきてるのか?それとも餌付けでも成功したのか?・・・どうでもいいか。
「じゃあ、白」
「うん」
名前を呼ばれてにへらと笑う白。こんなのに名前呼ばれても嬉しいもんじゃ無いだろうに。
「お前サラッと心を読んだよな?」
「そ、そんな事ないじょ?」
やってしまったと言う顔を隠しきれず、言葉からもどうやったって隠しきれてない白。さてはコイツ嘘つくの下手だな?
背後の黄金からも緊張したような気配を感じる。
「まあ良いけどな。大した事どころか何も考えてない事も少なくないからな。なんだったら読めないだろう言語を使うか、読まれても問題無いような思考をすればいいし」
もしくは読み取れない程高速に思考を巡らせられたらそれも良いのかもしれないが、残念ながら俺は転生も転移も生まれながらのチートもどれ一つも持ってないからな。あれって訓練してできるものなのか?
まあ、あったら便利かもしれないけど面倒事に巻き込まれる事間違いなしだからいらないけど。
「え、外国語話せるの?」
「外国っていうか・・・異世界語?いや、創作言語だから暗号みたいなものだな」
まあ、グロンギ語とかキーボード言語とかって創作言語の中では有名だから調べたらすぐに出てくるかもしれないけれど。
若気の至りと興味の方向性って怖いね。英語なんてゲームで使う分以外喋れるほども覚えられなかったのにこういう日常生活で役に立たない事を覚えちまうんだもの。
「教えてって言ったら教えてくれる?」
「良いが・・・対して面白いもんじゃ無いぞ?」
それでもいいと笑う白。
不思議なこった。
偰の怖いの基準は「理不尽な苦しい事をするかしないか」の二択。
心を読まれるのは痛くも苦しくもないので気にしてない。