おまけ:グッドルーザー神楽坂 ~I need you~
「な、なあ、神楽坂よ」
執務室に呼ばれた俺に、どこか気まずそうに俺に話しかけてくる王子。
「えーっとだな、あのー、そのー、げふんげふん!」
「フッ……」
スッ(*。・ω・)っエロ本
「か、神楽坂……」
王子は差し出された紙袋を受け取る。呼び出した時の感じがらしてそうだろうなと思っていたのだ。
「すまない、はは、カッコつけておいて、ざまあないな」
「いいんですよ王子、同じ男です、寂しくなっちゃうんですよね」
寂しくなる、繰り返すが男にはエロ本はただの性欲の対象にあらず、思い出のエロ本が存在する、もちろん俺にだってある。
「エロ本を失うのは思い出を失う事と同義、取り戻せない寂しさ、これは男にしか理解できないものですものね」
「ああ、離れてみて、こいつらがいかに大事かって、やっとわかったんだ、ほんと、バカだよな、俺ってさ」
「分かります、男ってそうですよね、だから取っておいたんです、大事にね」
「ありがとうな、こいつらを守ってくれてさ、あ、そうだ、これ、誰かに見つからなかったか、大丈夫だったか?」
「もちろんです、誰にも見つかっていません、絶対に見つからないように隠しましたから」
「そうか、何よりだ、いやね、こんなことを聞くのはアレアがさ、アイツどんなに隠しても絶対に見つけて勝手に読むんだよ、それで文句つけてくるんだぜ?」
「うわあ……」
「本当に辞めて欲しいよな、男の純情を何だと思っているんだと聞きたいね! 好みまで勝手に分析されるし「この巨乳は「嘘」ね、こんなのに騙されてんのアンタww」とかさ、泣きたくなる」
「あー! あー! ききたくなーい!」
「こうやって聞きたくもない真実を知って俺は強制的に大人になったんだよ、グスッ」
「だから王子は素朴な感じが好きなんですね」
「ああ、おかげさまでパッと目を引く美人とか磨けば光るような美人とかにはトキめかなくてな、良いんだか悪いんだか」
「むふふ、だからエンシラ王女ですか~、なるほどねぇ~」
「むむ、なんだよ、じゃあお前の好みはどうなんだよ?」
「クォナ様ガ理想ノ女性デス」
「…………」
「…………」
「え? なに、今の?」
「え? 今のって?」
「いやいや! 今、ほら、クォナが理想の女性とか、凄い顔をして言っていたぞ!」
「? 言ってませんよ?」
「…………」
――「王子、年長者云々の話は嘘ではないですが、神楽坂が受けている女性陣からのお仕置きについては壮絶を極めているのです。この状況で更に神楽坂に負担をかけてしまうのはやはり忍びないという理由もあるのですよ」
蘇るカイゼル中将の言葉。
「……ん?」
ここで王子は初めて気が付いた、紙袋に手紙が入ってのだ。
「ちょっと失礼」
と神楽坂に背を向けて、白い封筒を取り出す、そこには女性らしいとてもきれいな字で「王子へ」と書かれており、裏にはクォナの名前が記されていた。
「…………」
無言で開くとこう書いてあった。
――
フォスイット王子
もし、この本の持ち主について、万が一ご主人様が密告したのではないかと疑っているのなら、それは違うとだけ申し上げます。
ご主人様は、幻覚を見せられてもなお、これは自分が買ったものであると最後まで主張を続けました。
ただそれだけでは王子も分からないと思いますので、筆をとった次第です。
状況を説明しますと、ご主人様の様子がおかしく乙女の勘でピンときた私は、ご主人様んの部屋の中を乙女の勘でピンときて発見しました。
しかしこれらの本は乙女の勘でご主人様の趣味ではないことに気が付きました。
ご主人様を問い詰めましたが、先ほど申しあげたとおり、自分の物であると主張、そこで乙女の勘でピンときた私はアレアに現物を確認、王子の物であると判明したのです。
――
「…………」←ペラッと2枚目を見る。
――
ただ王子に申し上げたいことがあります。
まず少し数が多すぎるように存じます。当然殿方のそういった部分については理解しておりますし、女性側もある程度許容すべきところもあるでしょう。
ですが恋人からすればあまり気持ちのいい話ではありません。失くせとは申しませんが、数を減らすように努力をするべきだと存じます。
次に1冊ではありますが女性を縄で縛り上げている本がありました。
その趣味は感心しません。そしてそれも含めてですが、本の中に出てくる全ての行為は女性側からすれば全く気持ちいいことではなく、むしろ苦痛を伴う行為です。間違っても真似をしない様にしてください。
ならば何をすればいいのか、別に難しい話ではありません。優しく抱きしめるだけでいいのです、女性はそれだけで満足するものですよ。
――
「…………」←ペラッと3枚目を見る。
――
まあもちろん私はこの本に書かれている如何なることもご主人様が求めるのならばそれを受ける容易と覚悟は当然にしているのは当たり前であり、ご主人様のプライドが傷つかない様に演技の練習も常日頃から欠かさないのは当たり前のこととして、どうしてそこまでするかといえば、それは私がなぜ生まれたかについて、それこそ運命でご主人様と結ばれることが最初から決まっております故、神によって選ばれた相手であることは王子も理解されていると思いますが、運命という言葉に安寧して甘えていてはいつかご主人様に飽きられてしまう可能性があり、まあもちろん私はご主人様に飽きるなどというこ
――
「…………」←スッとそのまま手紙を閉じる。
「…………」←神楽坂を見る。
――「もちろんです、誰にも見つかっていません、絶対に見つからないように隠しましたから」
「………………あの、神楽坂」
「なんですか?」
「もう一回聞くけど、このエロ本さ、誰かにさ、えーっと、例えば、あ、お前クォナのところで世話になっているんだよな? だからひょっとしてクォナとかには見つかったんじゃないか? アイツ、結構勘が鋭そうだし、べ、別に、見つかったって責めないぜ、俺が悪いんだからな」
「心配性ですなぁ王子は、大丈夫ですよ、だって……」
「クォナに見つかったらタダで済むわけないじゃないですか、王子も見たでしょ、クォナは怖いんですから」
「だ、だよねー」
「…………」
「…………」
「なあ、神楽坂」
「なんです?」
「お、お前の、好みのタイプの女ってなに?」
「クォナ様ガ私ノ理想ノ女性デス」
「すまん神楽坂! 俺! こんなことになるとは思わなくて!」
「? どうしたんですか?」
「神楽坂、医者に行こう! 名医を知っているんだ! な?」
「え? 医者? あの、俺どこも悪くない……」
「分かった、分かってる! でもほら、お前今回頑張ったからさ、色々と心労も重なっていると思うんだよ、仲間のメンタルヘルスも気を使ってこその王子だろう!」
「は、はあ、大丈夫なんですけど」
「まあまあ、俺の顔を立てると思ってさ、な? 神楽坂、お願い、ね?」
「はあ、そこまで言うのなら、受けるだけなら」
「ありがとう、そうだ! 診断が終わったら、豪華な飯を奢ってやるよ!」
「ホントですか!? 王族が言う豪華な飯ってめっちゃ凄そうですね!」
「おう、期待していてくれ! 思えばちゃんとした礼をしていなかったからな!」
「わーい、やたー、あ、そうだ、王子!」
「なんだ?」
「今度、女子風呂覗きに行きましょうよ! 前に約束したじゃないですか! 実はとっても楽しみにしているんですよ!」
「っっ!! そ、そうだな! えっと、まあそれはさ! あの、その! 時期を見てさ! バ、バレる可能性もあるからな!」
「ああ、確かに、女の勘は鋭いですからね、何故かバレてしまうんですよね~」
「いや~、まったく、女も困ったものだな、ほっといてくれっての、騙されたふりをして欲しいのになあ?」
「ですよね~」
「「あっはっはっは!」」
とお互いに肩を抱き合って、神楽坂は心の底から楽しく、王子は心の底から震えながら執務室を後にしたのだった。
これにておまけ含めて王族篇完結です!
完結登録をしておりますが続きます!
次章の投稿は未定ですが、投稿された際はよろしくお願いします!




