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おまけ:グッドルーザー神楽坂 ~MAGMADIVER~ 前半


 ウィズ王国城。


 統一戦争時代、すい星のごとく現れたリクス・バージシナ。彼はウィズ神の加護を得た彼と24人の部下が中心となり、統一戦争時代に勝利し、建国した国家。


 現在でも初代国王たちの意志は受け継がれ、世界最大最強国家の名をほしいままにしている。


 場所はウィズ王国首都、ウィズ王国城、裏門付近。


 時刻は草木も眠る丑三つ時。



――そこから今回の物語は始まる。



 裏門付近、既に人通りが絶え、見回りの兵士しか姿が見えない時間、そこに3人のフードを被った男たちがいた。


「もう少しで約束の時間だ、ぬかるなよ?」


 そう発言したのは、3人の中で一番大柄の、声からすると中年男性と察せられる声。


「分かっている、ことが公になればタダでは済まないからな」


 答えるは別の同じく細身、同じく中年男性の声、そしてもう1人のフードの男が同調する。


「いよいよこの時が来ましたね。そのために打った布石の数々、今こそ成就する時が来たのです」


「布石の具合はどうか?」


「問題なく、定石を外さず打ちました、定石を考えず奇をてらえば自滅です、なんせ相手は我々が未だ勝利をあげていない強敵、ですからね」


「よし、お前の策謀には期待している、ん?」


 その時、キィとゆっくりと周りを伺うように裏門が開き、そこから1人のフードを被った男が姿を現した。


「時間丁度だ、間違いない、行くぞ」


 恰幅の良い男の指示があると同時に、3人は裏門から出てきた男に足音を立てずそれでも小走りに近づく。


 裏門から出てきた男は近づいてきた男たちに3人に気付き、お互いに正対する形になる。


「お待ちしておりました、用意はできております」


 大柄の男にそう伝えられた男は無言で頷くと、今度は4人で小走りに、その大柄の男に誘導される形で裏口付近に分からない様にとめてあった、馬車に辿り着く。


 4人の姿を認めると、御者台に座っている同じくフードを被った人物が頭を下げる。


「御者台の座っているのは、私の腹心の部下です。そのまま出立しましょう」


 そのまま辺りを伺いながら、4人は足早に駆け込み、そのまま馬車は出立、馬車は裏門を抜けて城下町へ出たのであった。



「ふう」


 誰のため息か、ここで全員やがっと一息ついた。


「ここまで来ればもう大丈夫ですぞ」


 恰幅のいい男がフードを外す。


 出てきたのはカイゼルベルバーグ、第三方面本部武官司令、武官中将、上から下からも認められた稀有な人物。


 それを受けてもう1人の中年男性がフードを外す。


「この馬車は戦にも使われる馬車を民間用に改造した特別製、外敵からの攻撃や会話も遮断することができ、窓も内側は見れますが外からは見れない、優れものですぜ」


 出てきたのは、タキザ・ドゥロス、第三方面本部、第39中隊長、武官大尉、たたき上げの将校の武闘派憲兵、数々の武勲を立てた切り込み隊長。


 そして最後。


「本来ならばこんな形ではなくて、ちゃんとした形でと考えていたのですが」


 神楽坂イザナミ、ウルティミス・マルス駐在官、武官中尉、神の力を使い相手の心理を読みぬく、その能力は一流の策士であり一国の宰相をもって敗北を認めさせた。


 最後にフードを取った現れた人物。


「かまわん、堂々とするわけにもいかないからな」


 現れた人物はフォスイット・リクス・バージシナ・ユナ・ヒノアエルナ・イテルア。


 世界最大最強国家ウィズ王国。


 その次期国王となる人物である。


 王子はまずはカイゼル中将とタキザ大尉に手を差し出す。


「カイゼル、タキザよ、ドゥシュメシア・イエグアニート家の直系として、仲間として、今日会うのを楽しみにしていた、神楽坂から粋人だと聞いているからな」


「はっはっは、粋人とまでは過大評価ですな、さて、王子」


 カイゼル中将が真顔になり、それにつられて、全員の気が引き締まる。


「偉大なる初代国王リクス・バージシナ、偉大なる原初の貴族の始祖の1人、ドゥシュメシア・イエグアニート、血は受け継がれずとも、意志を受け継がれる原初の貴族、その直系に連ねることを許されたこのカイゼル・ベルバーグの名において」


 すうと息を吸うとバンと両手を広げる。




「男子会の開催の宣言をいたしましょう!!」





 男子会。


 女子会と逆、女子会が実はキャピキャピではなくオラオラらしい、「らしい」というのは実際にどうなのかは知らない。


 知らないが、知り合いが「欠席すると私の悪口で盛り上がるから面倒なんだよ」とか非常に怖いことを言っていたのでそれ以上は聞かないことにした。何故なら男は女に夢を見たいからでそれは全男子の(以下略)。


 ならば男子会とは何なのか。



 実は男子会こそオラオラではなく、キャピキャピなのである!



――気の置けない仲間同士で集まって好きなこと目一杯楽しもうね♪ キャピキャピ♪



 それが男子会である、女子会に夢を見るのは男子会がそうであるから女子会もそうであろうという願望がそれを生み出すのだ。ほら、女の子同士のキャッキャウフフって浪漫じゃないか。


 だから実際の女子会見て怖いとか思うのね、これマメな。


 ちなみに一緒にやる「楽しいこと」については、色々と男同士の仲間で違ってくる、そして今回の楽しいことは当然。


「な、なあカイゼルよ、こ、今回の遊び、美女揃いと聞いたのだが」


 身を乗り出してくる王子にカイゼル中将はニヤリと笑う。


「無論ですぞ、今回は記念すべきドゥシュメシア・イエグアニート家誕生とあって、派手にしました、今回のプランについてなんですが……」


 カイゼル中将はゴニョゴニョと王子に耳打ちすると……。


「フォー!! す、スゴイじゃないか! ほ、ほ、ほんとにそこマデ!?」


「はい、全員情があっていい女ばっかりですぞ」


「で、でも、急だと、心の準備が」


「ご安心くだされ、今回は王子も神楽坂も初めてですからな、1対1ではなく、我々対複数という形にしました、いずれは、ほら、ねえ?」


「よし! フンフンだな!! って、あれ? 神楽坂も初めてなのか?」


「ええ、まあ、初めてというか、トラウマというか、あはははは!!」


 突然笑い出した神楽坂にびっくりする王子。


「かか、神楽坂? トト、トラウマって? え? カ、カイゼル?」


 王子が振り返るとカイゼルとタキザは目頭を押さえていた。


「い、いえ、我々が不甲斐ないばかりに、神楽坂にトラウマを、王子、その過ちを繰り返さないためにそのトラウマを話す必要がありますな」


「え、で、でも」


と言い淀む王子を制したのは他でもない神楽坂だった。


「私から話しましょう、王子、心して聞いてください」


「ごくっ」


「私たち3人は以前マルスに遊びに行ったんです。利用した店は天河、マルスで一番の最高級遊廓です」


「天河! 知っているぞ、極上の美女揃いだと聞いている」


「はい、そこで私は1人、部屋に通されて、そこで滅茶苦茶緊張して滅茶苦茶期待しながら待っていました。そしてひたひたと聞こえる足音、ついに来たぞと心臓が跳ね上がりました」


「そして部屋に入ってきた美女なんですが、そうですね、私が王子であると仮定すると」



「アレアが来たんですよ」



「……………………………………………………………………マジ?」



 絶句する王子に俺は告げる。


 今回の敵、それはもう明らかだ。



「マジです王子! 覚悟を決めてください! 今回の敵は女の勘です! 古来、いえ神話の時代から男がどーーしても勝てないやつです!」



――グッドルーザー神楽坂 第一幕 ~愛、覚えてますか~



「女の勘か、いや、鋭いとは聞いていたが、恐ろしい……」


 今の話を聞けばそれがタダの妄言ではないことが分かるのだろう、畏怖を込めた様子で呟く王子。


「王子、我々はその女の勘に既に圧倒的2連敗を喫しております」


「え? もう一個あるの?」


「はい、マルスに遊びに行った後、ほとぼりが冷めた私たちは、3人でクォナのところに内緒で遊びに行きました、それも全部バレましたね」


「あ、あのさ、なんでバレるの?」


「それが、マルスの時もクォナの時も、アイカがいうには「態度でモロバレ」って」


「どうしようもないじゃないか! 何か対策法がないのか!?」


 ここで俺が首を振る。


「難しいです、態度でモロバレとか、もう超能力の領域じゃないかって感じです、どうしようもない、神の力使っても無理ですね」


「神の力をここで引き合いに出すのって凄いね」


「とはいえ大事なのは失敗を誤魔化すのではなく学ぶこと! 敗北を分析した結果やっと自分の過ちに気付いたんですよ」


「というと?」


「策というのはそもそもバレることを前提で組まなければ話になりません。それなのに我々は策を練るにあたりノーリスクで行こうとしたのです、都合のいいことを考えてもそのとおりになる訳がないのですから」


「ふむ、つまりバレた時のことの対策が大事だということだな、どうするつもりだ?」



「簡単です、王子、もしばれたら私に無理矢理誘われたと相手に言えばいいのです、これで責は王子が負わなくて済むのですよ」



「そ、そうか! その手があったか!」


 そう、これが俺が打った布石、バレた時にどうするか、人身御供といういい方は悪いかもしれないが、つまり「バレない様にする」のではなく「どうバレるか」に重点を置いたものだ。


「これで王子が責められることはありません、私が悪く思われることで終わるのです」


「だがそれは!」


「いいのです、私には特定の相手はおりませんから……」


 という神楽坂を遮ったのはカイゼル中将だった。


「いや神楽坂、その責は儂とタキザが負うぞ」


「え?」


 この申し出は予想外だったようで神楽坂は驚く。


「で、でも!」


「神楽坂、こういう時は年長者に華を持たせるものだよ、なに、もしばれたとしても土下座で済むからな」


「カイゼル中将、タキザ大尉……」


 感激する神楽坂にニヒルに微笑む2人。


 さて、場は整ったとばかりにそれぞれに男の浪漫を話し始める、神楽坂はタキザ大尉と話している。「まったく、女遊びは最高だぜ!」と盛り上がっている2人。


 その2人を見ながら王子が小声でカイゼルに話しかける。


「なあ、でも本当に」


「王子、年長者云々の話は嘘ではないですが、神楽坂が受けている女性陣からのお仕置きについては壮絶を極めているのです。この状況で更に神楽坂に負担をかけてしまうのはやはり忍びないという理由もあるのですよ」


「え? でも、平気そうで」


「まあ見ていてください、なあ神楽坂、マルスに行ったあとの女性陣のお仕置きってどんなだった?」


 カイゼルの問いかけに神楽坂はにっこり笑うとこう答えた。


「お仕置きなんて受けていませんよ、前に言ったじゃないですか」


「そうだったか?」


「もちろんですよ、我が仲間の女性陣は全員優しくていい女ばかりなんです、この体を見てください、傷一つありません、よく覚えていませんが、無事でいることが許してくれている証拠だと思うんですよ」


「そうか、そうだったな」


「もう、カイゼル中将も心配性ですね」


「はっはっは、これも年のせいかな」


 とカイゼル中将は王子の視線を移す。


「お、おい! カカ、カイゼル! あれ!」


「ええ、完全に記憶が飛んでいるのです。んで、さっき言ったクォナ嬢のところへ内緒に遊びに行った時の話なんですが、なあ神楽坂」


「なんです?」


「クォナ嬢のところに行ってバレてどんなお仕置きを受けたんだ?」


「うーん、執務室で正座させられて、何か飲んだような気がするんですけどね。よくわかりませんが、最後は皆笑顔で許してくれたんです、あいつらなんだかんだで優しくていい奴らですから」


「そうか、そうだったな」


「もう、カイゼル中将も心配性ですね」


「はっはっは、これも年のせいかな」


 とカイゼル中将は王子に視線を移す。


「お、おい! カカ、カイゼル! あれ!」


「はい、一服盛られています、何かを飲んで記憶が飛んでいるのに、何故かそれを疑問に思わないのですよ。それで、我が娘に聞いてみたんですよ、なんかお仕置き受けた後の神楽坂の様子がなんか変だぞって、そしたらこう答えたんです」


――「別に何もしてないよ」


「嘘じゃないか!」


「凄いですよ、神楽坂の様子が変じゃなければ信じてしまうほどに自然な言い方でした、我が娘ながら、しっかり女になっているのだなと実感した次第です」


「恐ろしい……なあ、あのさ、なんか俺、怖くなってきたんだけど、まさかとは思うが、今の我々がバレたりとかしていないよな? バレることを想定するとはいえ、バレないようにはしているのだろう?」


「もちろんです、だからこそ今回の出張計画書はだからこそ王子に頼んだのです。王子が作成するだけでその資料全てが国家機密指定第Ⅱレベルに認定されます。無条件閲覧の権限は原初の貴族及び王族のみに限定されます」


「う、うむ、まあ仮に見られたとしても、俺の行幸に際し、カイゼルが案内役、タキザが身辺警護、神楽坂が秘書ということで作成しているから大丈夫だがな、はっきり言えばバレたら問題のレベルだ」


「今までは個人レベルでしたが今回は国家レベル、いかに女の勘が鋭かろうと、そもそも及ぶことができないレベルで話を進めている以上手出しのしようがありませんからな」


「そうだよな……そのとおりだよ、大丈夫だよな!」


「そのとおりですぞ! バレる訳がありません! 現にここに来るまで人の気配なんてなかったではありませんか!」


「うんうん、さて、後は楽しむだけだな……」


 とここで少し不安げな表情を見せる王子をカイゼルは見逃さない。


「王子、突然で失礼ですが、恋人がおりますな?」


「さ、流石わかるのか、まあ、その相手は」


「分かっております、誰かなどという詮索はしません、しませんが、王子は今ひょっとしてこう考えてはいませんか?」



――「恋人がいるのに、女遊びをしていいのか、恋人以外の女と遊ぶ、それは浮気ではないのか」



「っ!」


 顔が強張る王子を見て、カイゼルは優しく微笑む。


「王子、僭越ながら儂が女遊びの心構えの極意を教えましょうぞ」


「女遊びの、心構えの極意?」


「はい、それはですな」


 とここで王子の目を見据えてはっきりと告げる。



「儂は高等学院時代、当時後輩であった妻に恋をして結ばれ、子供を授かりそして現在に至るまで、他の女に心を奪われたことは一度もありませんぞ」



「…………」


 それが女遊びの極意であると伝えるカイゼル。


「世の中には妻以外の女に心を奪われ、不貞行為を行う男がおりますな、あれは論外です。抱いた女の数が男の勲章、その気持ちは分からぬとは申しません、申しませんが、そのような勲章は要りません。私の勲章は生涯愛した女性は妻だけ1人だけというものですよ」


「か、かっこいい!」


「はっはっは、少しカッコつけ過ぎましたかな、タキザ、お前はどうなのだ」


 いつの間にか話を聞いていたのだろう、会話の輪に参加していたタキザはフフンと笑う。


「私はカイゼルとは違います、妻は、はっきり言ってしまえば2番ですね」


「え!? お、おまえは!」


「娘ですよ」


「…………」


「娘を抱いたあの日に私の心はずっと娘に奪われたままです。今まで女に騙される男は阿呆だと思っていました。だけどもうそんな男のことは言えません、娘に騙されても幸せなんですよ、娘が結婚するその日まで、絶対に届くことのない永遠の片思いです、妻には申し訳ないと思いますが」


 娘の結婚式で父親が流す涙とは失恋の涙なのだという。そして娘の結婚式で流す父親の涙を女々しいという男はいない。


「妻に、娘か、カイゼル、タキザ! 俺は感動したぞ! そのとおりだ! 俺はこれからたくさんの女遊びをしまくっても、今の相手に純情を貫くぞ!」


「その意気ですぞ、ちなみに王子、王子はどんな好みを伝えたんです?」


「え!? も、もちろん、恋人と似た女だ! 女遊びと言えど、それが筋だろう!?」


「若い! 若いですな! なあタキザ!」


「ああ、俺にもあったなそんな時が!」


「2人は違うのか?」


 2人は顔を見合わせると晴れやかにこういった。



「「なんで妻と似た女と遊ばなくてはいけないんですかwww」」



 今確実に「www」が付いていた、そんな感じでハモッた2人。


「そういうものなの!? 純愛は!?」


「もちろん貫いております、おりますが出会った頃の妻が一番可愛かった、か弱く儚げな女性、儂はこの女性を一生守ろう、そう思って結婚したのに、それがどうして今はあんなに強く……」


 しくしくと泣き出すカイゼルであったものの、次の瞬間パッと明るくなる。


「でもこれから行く、店のカイミちゃん、あ、カイミちゃんは儂の今お気に入りの女の子なんですけど、本当に健気で優しくて、妻よりもよっぽどいい女なんですよ♪」


 とツヤツヤして語る、そのカイゼルの横で膝を抱えるタキザ。


「純愛、そう、健気に俺に尽くしてくれたいじらしい妻はもう過去の話、今では粗大ごみ扱い」


 とパッと表情が明るくなる。


「でもこれから行く店の、ミレバちゃんは、俺に尽くしてくれて、妻よりも全然いい女なんですぜ、俺はたくさんの女と遊ぶ主義なんですが、ミレバちゃんだけは別です」


と2人してケタケタ笑う。そんな2人を見て自分と王子が思うことは一つだ。


「カッコいいなぁ」


 ここでのカッコいいなんて言葉が出る感覚は、女にはわからない、でもそれでもいいのだ、だって。


「男子会だものな、楽しみだな、神楽坂」


「はい、王子、あ、そうだ、折角こうやって深夜に出かけているんですから、怪談とかどうでしょう?」


 俺の提案に全員が乗ってくる。


「これはですね本当にあった話なんですが」


 とお決まりの前口上で話し始める。


――


 チョーダイさん。


 その怪異の名前はそう呼ばれていた。


 判明しているのは名前と出現場所のみ、そのチョーダイさんがどうやって現れるのか、どんな姿をしているのか、「何を」チョーダイと言っているのかは誰も分からなかった。


 調べればわかると思うだろうが、その出現場所が問題で、そこはかつて合戦があり、どちらも勝つことも負けることもない戦いで生産を極め、多数の死者が出た場所。その後も死者たちの目撃情報が絶えない誰も畏れて近づかない場所だった。


 だがそんなチョーダイさんの正体を暴こうと、4人の男たち、ここでは、××さん、△△さん、□□さん、〇〇さんと呼称しましょう、その4人がその出現場所に馬車で向かう。


 もちろん怪異なんて本気で信じているわけではなく、半分は面白半分で、もう半分は本当に怪異なんて存在していたら倒してやると意気込んでいました。


 そして4人の乗った馬車がいよいよその出現場所に差し掛かった時。


 突然馬車が止まり、そのまま動かなくなった。


 当然、辺りは平地で突然止まるような障害もなく、そもそも人なんていない場所、ひょっとして獣でも見て馬が怖がってしまったかと思うもその気配もなく、馬が動く気配がない。


 そもそも御者台に座っている人物が止まった理由について何も言わないのがおかしい。


 当然4人の脳裏にチョーダイさんの話がよぎった時。


――「……チョーダイ」


と声が聞こえてきて、一気に場が凍り付きます、え、まさかひょっとしてと思った時。


「ふん、ばかばかしい、おそらくチョーダイさんの噂を利用して俺達をビビらせ、逃げた隙に金品を奪うようなコスい奴らがいるんだろう、返り討ちにしてやるぜ」


 と××さんが言います。××さんはいわゆる喧嘩慣れした男、意気揚々と降りていきました。


 ××さんは数々の武勇伝を持つ男、もう大丈夫だと安心した3人ですが。


 いつまで待っても男は帰ってきません。


――「……チョーダイ」


 相変わらず聞こえてきます。


 ここでピンと来たのは××さんと仲がいい△△さん、彼はこう言いました。


「分かったぞ、あいつのことだ、コスい奴を締めた後、俺達をビビらせて楽しませようとしているな」


 と「逆にビビらせてやるよ」と意気揚々と男が降りていきました。


 △△さんも××さんに負けず劣らずの喧嘩慣れした男、後は帰ってくるのを待つだけだと思っていた2人ですが。


 やはりいつまで待っても2人は帰って来ません。


――「……チョーダイ」


 徐々に状況が呑み込めてきた2人、ひょっとしたら洒落にならない状況ではないかと思った時。


――「……チョーダイ」


――「……チョーダイ」


 2人の恐怖に顔が引きつり、尋常じゃない事態であると分かってきた。


 その時だった。


 コンコン。


 とノックする音。


 そして次の瞬間!


「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」


 馬車が揺れるほどのドンドンという音と共にパニックになった2人はそのまま我も忘れて馬車を出そうとするも御者台に行くためには外に出なければならないから出るに出られず、どうしていいかパニックになった時。


 ドンドンという激しいノックが突然終わる。


 シンと静まりかえる馬車、ひょっとして終わったのかと思った瞬間。


 バン! という凄い音と主にドアが全開に開かれた。


 その扉に見える漆黒の闇、その闇から伸びてきた複数の腕、それがバンバンと、這いずる形で馬車の扉の縁に手をかけた。


「なんだよ! 何が欲しいんだよ!!」


 と半狂乱で叫ぶ2人、再びしんと静まり返った次の瞬間。



――「心臓! 心臓心臓! しんぞーう! ちょーーーだーーーい!!!!」



 と無数の手が伸びてきたのであった。



――数日後。



 返ってこない男たちを心配した家族から行方不明という通報を受けて探しにきた憲兵が、4人に乗った馬車を発見、調べるために中に入った時だった。



「残された馬車の中には、文字通り血の海、ですが誰もいなかったのです。この血の量です、おそらく男たちは死んでいるのでしょう。ですが男たちの死体が何処にあるのか、そもそもどうして死んでしまったのか、それは誰も分かりません、興味本位でチョーダイさんを調べたばっかりに」


 と怪談を語り終える。


 ここでシンとした後。


「「「はっはっは」」」


と全員が笑い出した。


「神楽坂よ、いや、ベタすぎるが、まあまあだったかな」


 とはカイゼル中将、さて、この話でどうして笑うのか、これもまたこういった怪談系の定番突っ込みがあるからだ。


――「誰もいないのになんで詳細が分かってるやねん!」


 という奴だ。


 「前人未踏の地に生息する人食いワニ」と何処ぞのコントのネタにも使えるほどだ。次は王子が身を乗り出す。


「じゃあ次は俺が行こう、これは城の中に伝わる話なんだが……」


 と語り始めようとした時だった。


「ん? あれ?」


 王子が辺りを見渡すと、それと同時に自分たちも気が付いた。


 そう、馬車が揺れていないのだ、いつの間にか止まっていたのだ。


「あれ? どうしたんだろうな?」


 御者台から何の報告もない。変だなと思って窓の外を見ると首都の外れだろうか、真っ暗な闇に覆われていて、時折風邪で揺れる草木の音しか聞こえてこない。


「タキザ大尉、私が見てきますよ」


 神楽坂が馬車の出入口に向かおうとするがそれを制したのはタキザ大尉だ。


「いや、俺が見てくるよ、それと」


 ククッと自分で笑うタキザ大尉。


「チョーダイさんが出たら、締めてやるさ」


と言いながら外に出た、相変わらず頼もしい人だと、安心して俺達は話を続ける。


「カイゼルよ、は女の胸とか尻とか好きな部位はあるのか?」


「女はおっぱいです、それ以外にありません」


「そ、そんな極端な……」


「王子、いいですか? 男は最初誰でもおっぱいから入ります。そして年を重ねるほどに、別の好みに別れていき、年を重ねて再びおっぱいに戻るのです」


「なんて綺麗な目!!」


「まだ王子も神楽坂も若いですから、おっぱいの力はピンとこないと思います。おっぱいの力がどれだけ偉大か、おっぱいがいっぱいがある光景を思い描いてください、それだけで幸せでしょう?」


( ゜д゜)ハッ! ←王子


 相変わらずの説得力、凄いよな、俺もこのカイゼル中将の言葉で、貧乳とか巨乳とかどうでもよくなっておっぱいなら全部好きだって気が付いたんだよな。


「ってあれ? タキザ大尉はまだ戻ってこないんですか?」


 そう、様子を見に行くだけなのに、まだ帰ってこないのだ。


「変ですね、どうしたんでしょう? 今度こそ私が見てきますか」


「いや、儂が見てこよう、まあチョーダイさんではないと思うがな」


と言ってカイゼル中将が姿を消した。


「なあ神楽坂、さっきのおっぱいの話なんだが、アレは目から鱗だよな」


「はい、男にとって永遠のテーマ、貧乳派か巨乳派か、この議論の一つの答えなんですよ。ちなみに王子はどっち派です?」


「俺は巨乳派だ、お前は?」


「私も巨乳派です。でも王子、貧乳って見たいですか?」


「見たいね、凄い見たいね、お前は?」


「私も超見たいです。見るだけでとっても幸せになるんですよ、理屈抜きに、おっぱいだけでですよ? 女って偉大だなって思います」


「そっかー」


「…………」


「…………」


「なあ、神楽坂」


「なんでしょう?」


「やっぱり、遅くない? 2人とも?」


「遅い、ですね」


「…………」


「…………」



 ガサガサっ!!



「「ぎゃあああああ!!!!」」←2人とも抱き合っている


「って、ただの動物ですよこの音!」


「あ、そっかー」


「…………」


「…………」


「あれ? 王子、ひょっとしてビビってます?」


「び、ビビってねーし! お前こそどうなんだよ、さっき悲鳴上げてさ、お前こそビビってんだろ?」


「悲鳴じゃないですぅ! しゃっくりですぅ!」


「しゃっくりじゃないだろ!? あんな悲鳴みたいなしゃっくりがあるか!」


「じゃあ王子はどうなんですか!? 悲鳴ですよね!?」


「悲鳴じゃないですぅ! くしゃみですぅ!」


「くしゃみじゃないですよね!? あんな悲鳴みたいなくしゃみがあるわけないですよね!」


「…………」


「…………」



 コンコン



「「ビクッ!」」



「な、なんだよ、扉のノックかよ、やっと戻ってきたのか」


 と王子が近づこうとしたので。


 俺は王子の手をガシッと握る。


「な、なんだよ、男同士で気持ち悪いな」


((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル ←神楽坂


「おいいぃぃ! 辞めろよその顔!」


「いい、いや、変ですよ、ノックだけって」


「え?」


「普通なら、まあノックしたとして、同時に声かけません? 開けてくれーとか、しかも」



「鍵かかっていないですよ、あの扉」



「…………」


「…………」


「あ、じゃあ今のノックの音って、俺の聞き間違いかな?」


「ですよ、な、なんかすみません、俺が変な話をしたせいで」


「い、いいんだよ、別にビビってねーし」


「俺もビビってないですけどねー」


「…………」


「…………」


「じゃあ、なんで2人ともさ」



「モドッテコナインダ?」



 コンコン。



「…………」


「…………」



 コンコン。



「…………」


「…………」


――「チョーダイ」


「え? なに? 神楽坂? なんか欲しいの?」


「え? いや、王子ですよね?」


「…………」


「…………」



 ドンドンドンドン!!



「「ぎゃあああああ!!!!」」



「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」「チョーダイ!」



「「いいぃぃやああああぁぁぁ!!!!!」



 と バン! 開け放たれる扉。


 そこからぬっ伸びてくる手、一本、二本、それがガシっと壁を掴む。


 そして次の瞬間。




「心臓! 心臓心臓! しんぞーう! ちょーーーだーーーい!!!!」




 と叫びながらフードをつけた人物が入ってきた。


「…………」


「…………」


「ん? あれ?」


 何の反応もないのを不思議に思ったのか、フードを取ると。



 そこにはアレアが現れた。



 アレアは改めて目の前にいるであろう2人を見る。


「うわっ」


 思わず引いてしまう、彼女の視線の先には2人とも半笑いのまま白目向いて気絶していた。


「あららー、これはエンシラとクォナ嬢には見せられないわ、よかったね、私で、さてと、まずは起こさないとね、恋人がいるくせに女遊びしようとしたバカと、自分を思ってくれている女そっちのけで女遊びしようとしたアンポンタンをね」


 と思いっきり手を振り上げたのであった。






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