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おまけ:カグラザカ大戦2 ~君、死にたもうことなかれ~



「すみません、ご心配をおかけして」


 ベッドで寝ながら弱々しく、俺に話しかける。


 横ではシベリアが回復魔法をかけ続けたせいか少し疲れた様子で椅子に腰を掛けている。


 シベリアは医者の資格を持っているらしく、侍女兼主治医も兼ねているそうだ。彼女によれば「体内に入った毒の量が少ないのが幸いし、命に別状はなく、後遺症も心配ない」というものだった。


 現在、テキパキとした現場処理もあったおかげで、幸いパニックになることなくスムーズに終了した。


「現在では容疑者は浮上しておりませんな、儂らが見張っていた限りでは、怪しい動きをしていた人物もおりません、これはタキザと神楽坂が見ていたから間違いありませんな、これから調べましょう……」


 ここで不自然に言葉を切るカイゼル中将、当然これから先は言える話ではない。


 何故なら友人たちがクォナ嬢の自室に全員集まっているからだ。


「でも、カイゼル中将、調べを進めるという事は、私の為に、友人たちが迷惑をかけて、場合によっては危険に身をさらすことに」


 健気なクォナ嬢の言葉に「ん……」と言葉が詰まるカイゼル中将であったが。


「水臭いですよ、クォナ嬢!」


 ここで友人の1人が声を上げて、全員が意味を理解して声を張り上げる。


「卑劣な真似をしやがって許せねえ!」

「絶対に犯人を捕まえましょう!」

「何でも言ってください! なんでもしますよ!」

「クォナ嬢の為に!」


 全員の一致団結、それを見ながら満足そうに微笑むカイゼル中将。男はこうやって意味を心で理解して一致団結する生き物なのである。


「皆さん…………」


 申し訳なさそうにしているクォナ嬢を笑顔で励ます騎士たち。


 クォナ嬢の言葉は本音だろうが、実は心の中で罪悪感に苛まれるだろうけど、その点については申し訳なく思っている。



 何故なら手掛かりは全くないのは嘘なのだから。




 友人たちを全て帰して、この場に残ったのは俺達3人とクォナ嬢とセレナとシベリア、リコは会場の後始末をしている。


 事情聴取については相手が上流の関係者とあって本来なら自分の情報を渡したくないというやりづらさがあるらしいだのが、そこは流石クォナ嬢のためと全員が協力的であり得ない程のスピードで終了したそうだ。


 実際の事件では現場の状況把握と情報収集が何よりも優先される。ただ物語と違うところは、情報の検討と検証を行う場面でありこれでいきなり犯人は分かったりしない、逆に犯人が分かってもすぐに見破ったりはしないものだ。


 だからあの時やることは一気にテンションを盛り上げて、犯人がこの友人たちの中にいる可能性が高いのならば、巻き込んでしまうのも手だと考えたのだ。


 クォナは気に病んでいたものの、カイゼル中将の「貴方が気を病む必要はありません、言ったでしょう、汚れ役はお任せを」という言葉にかろうじて納得してくれたのだ。


 さて、肝心な手掛かりではあるが、まず現場から分かったことは、毒はクォナ嬢が飲んだワインの中に入っていた。


 ワインは、いつも決まった仕入れ先から仕入れており、彼女専用に飲むものだという。ワインはパーティー会場の食事を出す前に、いつも置いておくところがあるらしいが、一度数本のワインを置き、そのまま目を離してしまったのだそうだ。


「マスター、申し訳ありません」


 消え入りそうな涙声のリコの声にクォナは首を振る。


「しょうがありませんわ、封が切られていなければ、中身を改めようとは思いませんもの」


 優しく頭をなでる。そんな雰囲気に少しだけ救われる中、もう一つの手がかりについて検証しなければならない。


 もう一つの手がかりは、クォナ嬢から手渡された魔法写真の方からで、その手掛かりに気が付いたのはタキザ大尉だった。


「クォナ嬢、間違いありません、こいつらはボニナ族です」


「「「「ボニナ族!!」」」」


 反応したのは俺を除く全員だった。タキザ大尉は3枚の魔法写真を見ながら説明する。


「この腰のあたりの不自然なふくらみ、これは尻尾だ、分かりづらいが3枚目の男の前歯が全部犬歯になっている、そして3人とも手袋で爪も隠しているな」


「タキザ大尉、なんですボニナ族って?」


「そっか、お前は外国人だったな。こうしてみると姿は人と同じだがこれでも亜人種なんだぜ、尻尾が生えていて、常人の数倍の力を持っており、爪も鉄を超える丈夫さを持っており切り付けることも刺すことも可能、犬歯が多く噛みつき、噛みちぎるに便利。まさに戦うために特化した肉弾戦の戦闘民族だよ」


 尻尾の生えた肉弾戦の戦闘民族なんて、どこのサイヤ人だと思うが、ボニナ族は本気でキレると相手を皆殺しにするか自分たちの命を落とすまで暴れるらしい。


 ボニナ族のことは王国の統一戦争時の記録にも残っている、掟を何よりも優先し、掟に反したものは例え身内といえど容赦のない制裁をかしたという。卓越した戦闘能力から、統一戦争以前から統一されるまで有力候補であったらしい。


「だがその気質故に戦闘力は一番でも、有力候補どまりで勝者までは至らなかった。今ではウィズ王国の辺境都市で独自の文化を築いている閉鎖都市の一つさ。中に入るためには都市民から招待されなきゃ入れないのだ」


 ボニナ族は閉鎖的な民族ではあり外との交流はほとんどない。


 その閉鎖都市故に様々な憶測が飛び交う、フリーランスで反社会的勢力の暗殺依頼を受けているとか、ひたすらに暴力の噂が絶えない民族、何より一番厄介なのは思想を持たず、ひたすらに暴れるという点なのだそうだ。


 ここまでタキザ大尉は語り終えると重たい空気が支配する。


 相手が悪い、口に出さずとも誰しも同じことを思っているのだろう。


 そう、思っているのだろうけど……。


「…………」


 違和感がある、最初からずっと、だけどこれは……。


「クスクス、また何か閃いたのですか?」


 と指摘されてびっくり、また俺はクォナ嬢のことを見ていたらしい。


「はは、いえ、なにも、すみません……」


 誤魔化すしかない、カイゼル中将からも「見とれるのは分かるがな」と窘められてしまった。


「マスター!」


 ここで焦った様子で自室に入ってきたのは会場の後始末をしていたリコ。彼女は手に何か封書を持って入ってきたのだ。


「どうしたのですか?」


「こ、これを! 皆さんも!」


 リコのただことではない焦り様にここで少し恐怖にかられたのか、手を出しあぐねるクォナ嬢、それを察して「儂が見てよろしいですかな?」と伺いを立てるカイゼル中将。


 頷くクォナ嬢の許可を得て、便せん受け取り裏返すと露骨に顔をしかめた。


 続いて中を見るとそのままの表情でタキザ大尉に渡す。


「舐めやがって!」


 思わず出たであろうタキザ大尉の言葉に今度は俺に手渡される封書。


「これは……」



 差出人はボニナ族の街長、中に入っていた便せんはボニナ都市からの招待状だった。




 ボニナ都市、格付けは5等の辺境都市。


 目立った産業は無く糧を得る手段は不明、タキザ大尉のいうとおり暴力行為による対価だと言われているが真偽は不明だ。


 よそ者は目立つのか、入った瞬間から都市民全員が俺達3人に注目している。


 とはいえ何をしてくるわけではない、ただただ観察しているだけだ、それは街長の家を訪れ、通された後も変わらない。


「よくぞ来てくださった、まあくつろいでくだされ」


 白髪の小太りの初老の男性、名をオストと名乗った彼がボニナ都市の街長だ。


 くつろいでくれ、という言葉だけで煙管をふかすだけの街長、その瞳の奥でじっとりとねっとりとした目で俺達3人を見る。


 視線を庭に移せば、男だけじゃない女も好戦的な視線をこちらに送っている。


「女だと甘く見ない方がいい、そこら辺の「雑魚憲兵」じゃ相手にならない程の戦闘力を持っておるよ」


 とタキザ大尉を見ながら話すオスト街長にひきつった顔で応対するタキザ大尉。


 だが男たちはどっちかというと視線が……。


「あー、神楽坂文官中尉、悪く思わないでくれ、アンタがここに来るって聞きつけてな、ボニナの血が騒いでいるようなのじゃ」


「……私?」


「とぼけなさるな、異国の地の剣の達人だと聞いている、多数の山賊団やマフィア相手に大立ち回りを演じたともな」


「いくつか誤解がありますね、私が得意とするのは正々堂々の勝負ではなく、不意打ち、そして姑息な作戦を使った闇討ちですよ」


「それは十分に正々堂々の戦いというものだ。ボニナ族の掟において正々堂々とは、自らの能力を駆使することだ。それに多勢に無勢で勝利をしている時点で察するさ、ふむ、アンタには手を出すのには、ちと骨が折れそうじゃな」


「…………」


「おっとそちらこそ誤解なさるな、儂らは何の思想も持たない、ただただ平穏に暮らしたいだけじゃ。だけどなんでかのう、血生臭いものが向こうから寄ってきおる、その火の粉を払うだけで大変だ」


 ここで街長は煙管の灰を落とす。


「だからこそわざわざこうやって来てもらったのは、敵意がないという事を知っていて欲しいのじゃよ、直に会わないとこう言ったことは分からないからな」


 なるほど、ずいぶんと回りくどい言い方をしたものだ。



「つまり、貴方方のタブーをクォナ嬢側が犯したと言いたいのですね」



「「なんだと!?」」


 カイゼル中将とタキザ大尉が2人が視線集まる。


「流石、修道院出身は頭の良さが違う、おい」


 街長が物陰に声をかけるとまさに魔法写真に写っていたチンピラ3人が出てきて思わず腰が上がる。


「大丈夫だ、攻撃をするなと「儂が命令」してある、タドー、あれを見せろ」


「で、ですが、街長!」


「かまわん、ボニナ族の名において、名誉は私が守ろう」


「…………はい」


 3人の中の中央にいた若者で、タドーと呼ばれた男はゆっくりと悔しそうに手袋を外す。


 その手の甲には、文字、だろうが、そんなものが刻まれて……いや刻まれているんじゃない、これは痣だ。


「掟は何よりも優先される、先ほど我々は自分の能力を駆使して正々堂々と戦うことを旨とすると言ったように、ご先祖様は統一戦争に敗れはしたが、それでも掟だけは守りとおしたのだ」


 煙管を台に置くと自分の隠れた手袋ごと手を握りしめる。


「掟の中でこの痣は仲間に見られることは絆として解釈される、だがこの痣を部外者に見られることは……」



「屈辱として侮辱として解釈されるのさ、見られたものが死を選んでも責められないほどのな」



「この痣は、かつて亜人種を飼うことを趣味とするイカれた「飼い主」が、その子孫にも受け継がれるように施した呪いなのだよ。その痣を、彼女の侍女が見たんだ、ああもちろん偶然だ、彼女に悪意がないこと自体はきちんと分かっている、だが我々は屈辱と侮辱を受けたと解釈する」


「これも掟だ、悪く思わんでくれ。他人から見てはどうでもいいことでも、存在することが大事だ、それは公僕である貴方方ならこの説明だけで理解できるだろう?」


 街長の言うとおり、ここで完全な逆恨みじゃないかといって簡単に処理できる単純な問題ではない。


 よく法律を始めとした決まりごとに「こんな決まりは意味なんてない」という批判はついて回るが、実際どんなことでも決まりでも元となった行動や現象のものがあるものだ。


 俺たちの考えを理解したのだろう、街長は続ける。


「何やらクォナ嬢は自分の友人を疑っていると聞いたのでな、儂らのせいで友情にひびが入るのは忍びない。故にこうやって招かせてもらった。なに、目的は侍女の1人だけだ、彼女さえ処分すれば終わる、明日にはお邪魔をするから、そのつもりでいてくれ」


「明日!? ここからエナロアでは半日、今すぐ戻っても伝えてすぐじゃないか! もう少し時間を!」


 続けようとしたカイゼル中将を遮って不愉快げに顔を歪ませる街長。



「これが「善意の提案」であることはいうまでもないだろう、貴方方はそれを伝えればいいのだ、これ以上首を突っ込むのならどうなるか分かっているのだろうな?」



「そ、そんな! 痣なんて! あの時は襲われて! 手なんて見てません! 見たとしても覚えていません!」


 クォナ嬢の邸宅に戻り、事情を聴いた痣を見たという侍女リコが激しく取り乱している、セレナとシベリアが彼女のフォローにまわっている。


「お恥ずかしい限りです、取りつく島もなかった、という状況でした」


 苦渋の状況で発言するカイゼル中将。


 結局あの後とんぼ返りをするだけで、何もできなかったのだ。


「しかももう時間がありませんぞ」


 これが問題だとばかりに切り出すカイゼル中将にタキザ大尉が続ける。


「クォナ嬢、憲兵として言わせてもらえば、ここはもう事を大きくするのも手だと思いますぜ。向こうが掟とやらを掲げるのならば、こちらはウィズ王国憲法を掲げるまで、なれば国家権力も堂々と使うことができる」


 正しい、確かにここまで来てはそれが最善策であるが、やはりクォナ嬢とそして同じ上流であるカイゼル中将も余りいい顔をしない。


 醜聞を嫌うからと、言葉にせずとも事情を察したタキザ大尉は黙ってしまう。


 ここまでくればクォナ嬢の判断を待ってだ、彼女は熟考した上で口を開いた。



「セレナ、シベリア、本日をもってあなたたち2人を解雇します。これまでよく私につくてくれました、ありがとう」



「マスター! 急に何を言うのですか!!」


 一斉に詰め寄る2人。


「マスター! 私は貴方に全然恩を返していないのですよ!」

「私もです、そんな言い方はないと思います!!」


 詰め寄る侍女たちを文字通り払いのけるクォナ嬢。


「私に恩を感じて、それを返したいと思うのなら、私の言う事を聞きなさい! あなたたちは解雇です! さあ早く出ていきなさい!」


 ドアを指さしながら言葉を荒げるクォナ嬢、突然のことにセレナとシベリアがオロオロする中、クォナ嬢は手を降ろして泣きそうな顔をしているリコを抱きしめる。


「リコ、大丈夫ですよ、私がいますから、安心して」


「で、ですけど! マスターを巻き込むわけには!」


「いいのですよ。貴方達は恩を返すと言いましたが、私だって普段十分に貴方たちの世話になっています。私の方こそ恩を返さないといけませんから。とはいっても、私に出来ることは原初の貴族の特権を振り回すぐらいですけど、ひょっとして向こうもそれで引くかもしれませんよ」


「それは楽観的に過ぎます! 相手はむしろそれで意固地になる可能性もありますぞ!」


 思わず出たであろうカイゼル中将の忠告にも首を振り聞く耳を持たない。


「タキザ! 何とかならんのか!」


「さっきも言ったとおり、今の俺には非公式で動いている以上武力にはかなりの制限がかかっている、しかもかかっていなくても相手はボニナ族だ、本来なら特殊部隊を出さなければならない程の相手だ」


 言いながら表情が苦渋に歪むタキザ大尉。


 どうすればいいのか、どうしようもないのかと、そんな空気が場を支配した時だった。


 バリーン!


 いきなりすさまじい音が部屋に木霊し、全員の鼓膜が震えて、その音が自室の窓ガラスが割れた音だと認識する。


「…………え?」


 それは誰の声だったのだろうか、全員が視線集まる先、そこには人、いや。


「ボニナ族!!!」


 誰かの絶叫と共に立ち上がるボニナ族、数は3人、間違いないあの魔法写真に写っていた3人だ。


「ここ2階だぞ! 飛び上がってきたのか!!」


 前に出るタキザ大尉とカイゼル中将、それに呼応するように次々に窓を割って入ってくるボニナ族たち。


「まさか! もう来たのか! ってクォナ嬢!?」


 ここで前に出たのは、クォナ嬢だ。


「さあ2人とも早く逃げなさい! カイゼル中将! タキザ大尉! 非公式の場故に権力を使えないのでしょう? でもせめてシベリアとセレナを守ってください!」


「貴方を置いてそんなことできるわけなかろう!」


「大丈夫です、ここは私に任せてください、神楽坂文官中尉!」


 ここまで言い放った後にクォナ嬢が真っすぐに俺を見つめる。


「お願い、します、その、ここに、いてくれませんか?」


 絞り出すようなクォナ嬢の懇願、それに俺はこう返す。


「いいですよ、貴方と一緒なら」


「ありがとう、感謝しますわ、神楽坂文官中尉」


 かみしめるようなクォナ嬢にカイゼル中将が止める。


「か、神楽坂! いくらなんでもお前1人では!」


「いいのですよ。シベリアとセレナにカイゼル中将とタキザ大尉という騎士がいるのです。ならばクォナ嬢の騎士は私以外におりますまいよ」


 覚悟を持った俺の台詞、カイゼル中将とタキザ大尉はお互いに頷くと。


「「失礼!」」


 という声と共にシベリアとセレナを担ぎ上げて自室を後にした。



「…………」


 扉が勢いよくバタンとしまり。自室に取り残されたのは俺とリコとクォナ嬢だけになった。


「さて、いいかな?」


 ボニナ族の1人、タドーは俺たちのやり取りが終わったのを見計らって話しかけてくる。


「俺が受けた屈辱は、その身をもって償う、だがその前に、クォナ嬢、アンタの侍女であるリコ・フランチェスカを渡してもらうか」


 タドーが一歩を前に出ようとした時だった。


「止まりなさい狼藉者!!」


 刺すようなクォナ嬢の言葉にタドーは驚いたように歩みを止める。


 クォナ嬢はタドーを含めたボニナ族たちに高らかに宣言する。



「私は、初代国王に仕えし24人の原初の貴族1人! シレーゼ・ディオユシルの誇りと意志を受け継ぐ末裔の1人、クォナ・シレーゼ・ディオユシル・ロロス! 私の侍女に手を出すことは私に手を出すことと同義! 私に手を出せるものなら出してみなさい! その時貴方たちは原初の貴族の恐ろしさを知ることになるでしょう!」



 誇り高き宣言に、同じ戦闘民族としての誇りを持つボニナ族も目を見張る。


 だが当然。


「足が震えているぜ、クォナ嬢よ」


 タドーの指摘され歯を食いしばるクォナ嬢、体に出てしまっていたようだ。


「だが、アンタの言うとおり誇りは大事だ、ボニナ族も誇りに命をかけてきたからな。リコを連れ出すことがあんたの誇りを傷つける、なるほどそれは確かに問題だ」


「だがな!」


 瞬時にクォナの後ろに回りリコの襟首をつかみ軽く持ち上げて、「リコ!」という声と共にクォナ嬢が助けようとするが1人の女性のボニナ族に羽交い絞めにされる。


「放しなさい! リコ! リコ!!」


「マスタァーー!!」


 悲痛にお互いを呼び合う2人に歪に笑うタドー。


「もめた相手が例え原初の貴族、既に覚悟の上だ、さあどうする、あんたら2人にはどうにもできない、となればだ……」


 タドーはリコを持ち上げながら俺への挑発的な視線を投げかけてくる。


「神楽坂文官中尉、神に愛されたアンタはどうするんだ?」


 と嬉しそうにジロリと睨んだ先に。



「もぐもぐ、お菓子ウマー、ウーマウマ! お菓子一つにしてもこれだけのものを用意するとは流石原初の貴族ですなぁ~、あ、紅茶も美味しい~」



 お菓子をモグモグ食べながらずず~とお茶を飲む俺の間の抜けた声に、ボニナ族は固まる。


 タドーを始めたとしたボニナ族の面々はお互いに顔を見合わせた後、何やら話し合っている様子だったが、俺の方を見て。


「あの――、あれ? もしかして、もう気づいています?」


 バツが悪そうに頭をポリポリかく、タドーに俺は確信する。


「ああ」


 俺は笑顔で立ち上がるとタドー達ボニナ族に告げた。



























「クォナ嬢のたくらみだったんだろ? 最初からぜーんぶ!!」






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