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おまけ:男之黙示破戒堕天録 カグラザカ:前半


 都市と都市はラインと呼ばれる道で繋がっており、その治安は憲兵の責任において保たれている。


 とはいえ人のいない道の灯りは全くなく、夜は漆黒の闇に包まれ、少しの先も見えなくなる。


 そのラインに灯りが見えるのなら、それは馬車の光だ。


 ラインを適度な速度で走る馬車、荷台の天井角の外に行燈を灯し馬の蹄のみが響く。


 一見してただの馬車に見えるが、その造りは丈夫で御者台も外部から視認できない様に覆われており、馬も強靭な筋力と、急所に身に着けた防具も一級品。


 それは自分の身を守るものという意味に加え、中に乗っている人物の身分を現していた。


 その馬車の中で3人の男が鎮座していた。


「分かっているな?」


 そう問いかけるのはカイゼル・ベルバーグ。


 第三方面本部武官総司令官、武官中将、第三方面本部に所属する武官の頂点。

 実は彼は恩賜組ではなく、修道院ではむしろ劣等生の部類であった。

 だがその卓越した指揮能力と人柄で上からも下からも尊敬を受け、現在の階級に上り詰める。


「分かっている、何度も言わせるな、カイゼル」


 答えるのは、第三方面本部憲兵隊第34中隊長・タキザ・ドゥロス武官大尉。

 カイゼルとは30年来の付き合いの大親友、兵卒から叩き上げ、胆力と度胸を兼ね備え部下たちを引っ張り、武勲を立ててきた第三方面の切り込み隊長。


 タキザ武官大尉の言葉にカイゼル中将は首を振る。


「まあそういうな、こういう会話も楽しむものだ、なあ」


 カイゼルは最後の1人に問いかける。



「神楽坂よ」



 最後の1人、神楽坂イザナミ文官中尉。

 第5等都市議会議長兼ウルティミス・マルス駐在官。

 ウルティミス・マルス連合都市誕生の黒幕、教皇猊下に認められた神との繋がりも噂される人物。


 カイゼルの問いかけに表情を崩さない神楽坂はそのまま答えた。


「ふぁ、ふぁい!」


 ガッチガチに緊張した神楽坂は、そう返事すら噛み噛みで答えるのが精いっぱいだった。


――


 そんな俺の噛み噛みの反応にニマァと笑うカイゼル中将。


「うんうん、初々しい反応だ、なあタキザよ」


「ああ、俺も最初はこうだったなぁ、なあ神楽坂、緊張するのは無理はないが、折角の機会だからちゃんと楽しまないともったいないぞ」


 タキザの言葉にカイゼルもうんうんと頷く。


「もったいないか、俺もお前に誘われて悪い遊びを覚えたのだったな」


「ふざけろカイゼル、素質がない人物はそもそも誘わない」


「ははっ、さて、神楽坂文官中尉、本作戦におけるを肝を復唱せよ」


「ふぁい! 我々はただの一善良な市民です、サー!!」


「サー? まあいい、善良な市民たる我々はどこの会社の者か?」


「レギオンに拠点を置く流通業会社、カイゼル中将がオーナー社長、タキザ大尉が専務、私が平社員であります、サー!!」


「よし、後少し声を抑えて似非軍隊口調は辞めろ、まあ素性を聞かれることは無いと思うが、階級社会で生きている人間は無意識にその言動が出てしまうからな、お忍びという事を忘れるなよ」


「はっ! い、いえ、はい!」


 うんうんと頷くカイゼルに窓の外の景色を見ていたタキザが話しかける。


「おい、カイゼル、神楽坂、気を引き締めろ、見えて来たぜ」


 タキザ大尉と共に窓からその景色をみる。



 今は夜ではあるが、窓から見えるものは人工の光輝く宝石箱。



 それは男の夢をかなえる場所。



 遊廓都市マルス。



 そう、今回の戦場は再びマルス。


 俺は、ここでこの果てしなく遠い男坂を登ろうとしていた。



 時はさかのぼり1週間前のこと。


 ウルティミス・マルス連合都市が誕生し正式な自治体として認められて丁度一か月、今のところ連合都市の運営は順調、細かなトラブルは起きているも想定の範囲内でお互いに慣れてきたときだった。


 俺は都市議会議長として様々な手続きに追われて、レギオンとウルティミスを往復する日々、泊まり込みになることも少なくなかった。


 そんな俺の姿を見たカイゼル中将より、かなりの量が残っているからレギオンで臨時に宿舎を借りるようにという指示の下、ここ2週間はずっと臨時の住まいで詰めていたのだ。


 それもあと1週間で終わり、山場は終わり今の仕事は調整のみ、勤務時間も9時5時のお役所仕事の喜びを噛み締めている時だった。


「神楽坂、今日は、ロッソファミリー襲撃の報告書の決済を貰いにカイゼルのところに持っていくから付き合ってくれ」


 というタキザ大尉の一言で始まった。


 あれ、変だなと思いながらタキザ大尉の後をついていく。


 ロッソの襲撃に俺も関与していたのは事実だがあくまで主体は憲兵であり作戦従事者に俺の名前は実は無い。


 というのもあくまでメディとは個人的な知り合いで、プライベートで診療を受けて見抜いたという方便を使ったからだ。


 とはいえ、そんなことは向こうだって百も承知、何かあるのだろうと思いついていくと、方面本部の最上階にあるカイゼル中将の執務室に辿り着く。


 コンコンとノックして名乗るタキザに「入れ」との言葉の後に2人で入室する。


 思えば初めて入るカイゼル中将の執務室だったが。


(広い!)


 ウィズ王国は格差を許容、というよりむしろ格差を利用するのは知っていたが、執務室の入った第一印象はこれだ。


 こんなに広い部屋は要らないだろうという広さに、窓からの眺めはレギオンを一望できる。


(勝ち組の眺めって奴だなぁ)


 こんな俗なことを思ってしまう自分に苦笑する。

 まあそうか、中将なんて、それこそ30代前半で少佐に昇格したウルヴ文官少佐だって困難な上に運すらも必要な地位なのだから。


「よく来たな、神楽坂、突然の呼び出しすまない、座りたまえ」


 いつになく真剣な顔のカイゼル中将、緊張気味にタキザ大尉と座り、対面にカイゼル中将が座ると早速とばかりに切り出す。


「実はな、もうすべての手続きは終わっており、明日からの1週間、仕事はもうないのだよ」


 意外な言葉に俺は目を丸くするが、カイゼル中将はうんうんと頷く。


「それにしてもマルスを傘下に置くとはな、アイカから聞いたぞ、胆力も度胸も知略も持つ、あの時に気に入ったのは間違いじゃなかった、どうかな、アイカは? 親ばかだと自分でも思うが、あれで妻によく似た美人だと思うんだ。はねっかえりで気が強いが、気立てがよくて、実は裁縫も得意でな、料理がちと苦手だが、何、妻から教わって、そこはなんとかしよう」


「え? え?」


「おいカイゼル、話が逸れてるぜ」


 と戸惑う俺にタキザ大尉が呆れて注意する。ゴホンゴホンと、咳払いをするカイゼル中将。


「失礼、どうしてこんなことをしたのかという話なのだが、私の美学に仕事が一流であるためには遊びも一流でなければならない、というものがあってな、そして我々の仕事は普段なら残業なしだが、今回のようなことがあると休みは無くなる、加えて24時間の緊張状態を強いられるわけだ」


 ここでカイゼルは言葉を切り「というわけで」と言葉を続かせて、笑顔を見せた。


 その笑顔は、策略でも、知略でもそんな笑顔ではなく。



「マルスに遊びに行こうではないか、功労者に対して大衆遊廓などケチなことは言わん、私のとっておきの場所にな」



 カイゼルは穢れの無い目をしてこう言い放った。



「今宵の舞台は楼主長であるアキス・イミが一夜愛の浪漫を提供してくれる!! 圧倒的最高級遊廓、その名も……!!」



「天河っっ!!!」




 天河。


 会員制、会員登録資格は貴族及び準貴族に限定され、それ以外の人物が利用するためには会員の付き添いのみ許可される徹底ぶり。


 花代は時価、故にいくら請求されて文句言えない、否! 文句を言うは遊び人として最低最悪の無粋! 圧倒的無粋である!


「…………」


 本当にそんなところにいけるのか、嬉しさよりも戸惑いが進行する神楽坂。


「話を進めよう、その様子からすると中尉は女遊びはしたことないか。マルスにおいて天河に限らず遊ぶときは「通称名」で予約をするものだからな。向こうもこちらの身分と名前を察しつつも聞かない、これが不文律だ」


「そして、私はカイゼルではなく、カイゼルの双子の弟、マヒクトだ。レギオンに流通業の会社のオーナー社長だ」


 カイゼル中将にタキザ大尉もそれに倣う。


「俺も、タキザの双子の弟ヘザロだ、マヒクトの会社の専務取締役だ、さて」



「お前は誰だ?」



 問いかけるタキザ大尉、ここに至って理解が及ばないほど間抜けではない、俺は立ち上がり敬礼する。



「神楽坂の双子の弟、飯田橋と申します。社長、専務、お供します」



 俺の返事に満足気に笑うカイゼル中将ではあったものの。


「さて、遊廓で遊ぶ前で達成しなければならない前提条件がある、それが何だかわかるか?」


「はい、女の勘ですね」


「そうだ、女は鋭い、私にもタキザにも妻がいるが、まあ鋭い、男の嘘は簡単に見破られてしまう。とはいえ正直に言うのは論外、無論妻がこの世で一番の女性だ、当たり前だ。だがそれはそれ、これはこれだが当然理解などされない、これも当たり前だ」


 そう、男の嘘は見破られてしまう。


 思えば高校の時、女の先輩が「どうして男って嘘をつくのが下手なの?」としみじみとそれでいて真剣に聞かれた時は答えに窮したものだ。

 「そんなに下手ですかね?」って答えたら「いや、騙されてやるのに苦労するとかさ、そこまでしなきゃいけないの?」と言い知れぬ怒りが込められていたものだ。


 怒りの理由は怖くて聞けなかったけど。


 と思い出に浸っているとタキザ大尉が問いかけてくる。


「神楽坂は彼女はいるのか?」


「いません、が……」


「わかってる、狭い職場に少ない同僚に女がいるのだろう、恋人ではないとはいえ、ご婦人方の前では悟らせないのがエチケットという奴だ」


「はい、ただ、それでも……」


 俺は再度言葉を濁す。


 知り合いの女性…。


 一番に思い浮かべるのがやっぱりセルカ司祭とアイカとウィズ、ルルトは不明だから置いておくとして、あの妙に勘の鋭い3人の女性陣を騙しきれる自信がない。どんな手段を使っても結果的に墓穴を掘りそうな気がする。


 俺の表情で何を考えているのか理解したのだろう、安心させるように問いかけるカイゼル中将。


「安心したまえ神楽坂、無論手は打ってある、気づかないか「私はお前の予定を何といった」のだ?」


 カイゼル中将の言っていることが最初は理解できなかったが。


「っっ!!」


 理解した瞬間、電撃が走る、カイゼル中将の圧倒的悪魔的戦略を理解する。


 カイゼル中将はこういった、今の俺はもう仕事は無く、1週間はいわゆる休みが入っているのだ。


 そして俺は長く続くから臨時で宿舎を借りろと指示をしたのはカイゼル中将、そして俺はウルティミスを発つ時に何と言ったのか、つまり……。


 俺の思考を理解したのだろう、カイゼル中将が切り出してくる。


「よく上手な嘘は本当を混ぜると良いと聞くが、それが愚行であることは分かるな?」


 俺は頷く。


 その方法は質疑を繰り返せば簡単に嘘が浮き彫りになり、嘘をつく側も混ざってしまうので徐々に辻褄合わせが困難になりボロが出てくるのだ。


 ならば、上手な嘘とは何なのか…。


「嘘をつかないのが一番の嘘、ですね?」


 頷くカイゼル中将。


 理外の発想、一番上手な嘘は嘘をつかないこと…!


 「嘘をつかないのなら嘘を見破られることは無い」のだ。言葉遊びのように聞こえるが、経験を積めば嘘を見破るのではなく利用すら出来るようになる。


 今回の辞令に当てはめて説明すると今俺がレギオンにいるのは全員知っている。そして俺は皆に「レギオンに仕事に行く」と告げてウルティミスを発ち、それに嘘はない。


 そしてマルスに遊びに行くことは今知った。


 ここで味噌となるのは、現時点においてルルト達に「マルスに遊びに行くのかと聞かれた時に遊びになんて行かない」と「嘘をつくことになる」ということ。


 だが今はレギオンにいてルルト達に会うことは無いのだから「俺がマルスに遊びに行くことについて嘘をつかない、故に見破られることも無い」というわけだ、お分かりだろうか。


 がここで一つ大事なことがある。


「しかし、カイゼル中将、アキス楼主長は私の顔を知っているのです」


 そう、アキス楼主長がいる。当然遊びに来たらそんなお膳立ては水泡に帰すと思ったが。


「それがどうかしたのか?」


 と平然としている。そんな俺にカイゼル中将は続ける。


「神楽坂よ、天河の利用方法を私はなんといったのか、思い出したまえ」


「っっ!」


 再び電撃が走る。


「そうか! 遊廓は我々と一緒、情報統制が何よりも大事…!」


「そう、会員情報を漏らすことは、信用を失う行為だ。随伴者は個人情報の登録は必要ないが、それでもアキスが神楽坂であると知って、例えばあの美人街長に情報を流すということもまた信用失墜行為、女遊びは男の弱点になりうる、だがその弱点は使わない、それが信用であることの証左!」


 マルスの遊廓の秩序は情報統制の名のもとに保たれているのだ。


 更にカイゼル中将は穿つ…!


「中尉よ、マルスで一泊した後にもう一泊レギオンに泊まりたまえ「遊び終わりもまた、気づかれる」のだ」


 ここでカイゼル中将は完成を告げる。


「そして最後の駄目押し、アイカは別の事件の取り調べ補助官として別の事件に応援に出ている」


 カイゼル中将は、イスに深く腰を掛け悟りを開いた表情で言葉を放つ。


「兄は残念ながら、風邪をひいて伏せっている」


 嘘をつくのではなく、そもそも嘘をつかない、故に騙し騙されることもない。そもそも顔すら合わせない。


「兄貴は、愛する妻と一緒に家族旅行中だ」


 そして顧客情報は完全に守られる。遊びのために時間もかけて、手間も賭けて、これが……。


 俺の好きな漫画の言葉にこんなものがある。



 奇跡なんて望むな!

 勝つってことは…そんな神頼みなんかじゃなく…具体的な賞賛の彼方にある…現実だ…!

 勝つべくして勝つ…!



 そうだ、マルスを傘下に置くときも、俺は現実を見ていた、辛いこともあった、今後は恨みもねたみも受けるだろう、それを覚悟したじゃないか!


 俺の理解を悟ったのだろう、カイゼル中将は、片手をあげ、タキザ大尉もまた片手をあげる。


 もう言葉などいらない、言葉などなくとも魂で繋がっているのだから。


 後は、誓うだけだ、俺は立ち上がり片手をあげる。



「盟約に誓って(アッシェンテ)」




 そして迎えた当日、出立前に体をゴシゴシ洗って、表上は別の予定を入れてあるから、レギオンの隣の都市で集合、夜になるのを待って極秘に出発したのだった。


 それにしても、まさか客で来るとは思わなかった、もちろん遊廓なんて1人では絶対に来れない、仮に来たら絶対にバレる。


 だけどこれだけおぜん立てが整い、頼りになる先輩方と一緒に来れたことに感謝しかない。


(しかも初めてが最高級遊廓なんて…!)


 何回も見たのに、いつもより巨大に建物が巨大に見える。


 いよいよだ、いよいよなんだ。


「っ!」


 震える手を抑える。


(くそう! みっともない!)


 男はもっと堂々としていなければならないのに。


「神楽坂、別にいいんだよ、緊張して、不安だものな」


 タキザ大尉が優しい表情で俺に微笑む。


「どんなに遊び慣れた人物でも「初めて」はある、俺も先輩に連れられてきたんだが、不安で怖かったよ、だけど慣れてくるから余裕があるってことなんだよ」


 タキザ大尉にカイゼル中将も優しく諭す。


「構える必要はない、天河は予約さえしてしまえば受付や手続きと言ったものは存在しない。既に好みは伝えてあるから、それでいいのさ。後は、美人が来る、それもどうして遊女なんてやっているんだというレベルでな」


「ほ、本当なんですか!?」


 俺の食らいつくような質問に安心させるように微笑む。


「カイゼルに何度も連れて行ってくれているが、その全てで極上だよ、ちなみに俺は遊びのたびに相手は変える、カイゼルは同じ相手をひたすら指名する、神楽坂は神楽坂の遊びう方を見出してくれ、綺麗なお姉さんに手ほどきを受けるんだ、楽しみだろ?」


「ふぁ、ふぁい!!」


「ははっ、いい笑顔になってきたじゃないか、それとちゃんとこう言った場所は初めてだと伝えろ、そうすれば向こうもプロだ、大事なのは一緒に楽しむという姿勢だぞ、相手も人間、礼儀と常識をわきまえろ」


「はい!」


「天河は、女性と出会い一夜を過ごし別れる場、一夜愛の場所、なのだから」


 一夜愛の場所、なんて浪漫な響き……。


「そういえば、お前はどんな好みを伝えたんだ」


「えーっと、可愛い系よりも美人系、グラマラスじゃなくても、こう細身で形がいい胸があればと」


「お前は若いなぁ、この年になるとな、女はおっぱいだ、形のいい巨乳、おっぱいの力は偉大なんだ、覚えておけ」


「そ、そんな極端な」


「思い出せ、男はおっぱいからはじまるんだ、そこから年を重ねると好みにそれぞれの個性が出て、そしておっさんになった時に再びおっぱいに戻るのだよ」


(なんて綺麗な目…!)


 タキザ大尉は他にも毎回相手を変える遊び方を知ったのか「何人かの美女を並べてその中から選ぶ、なんてこともあったぞ」と楽しそうに話してくれる。


 それにしても凄いなぁ、2人とも奥さんがいるに堂々と遊んでいる、素直にかっこいい。


「妻が怖くて悪巧みも悪い遊びもできるか、もしバレても堂々としていればいいのだ、小さく縮こまるな、男だろう?」


 とはカイゼル中将。


「これが俺の仕事だと言えばいいのさ、神楽坂」


 そんな頼もしい人生の大先輩方と一緒に、桃源郷へ向かうのだ。


 そして馬車は、目立たないところにある豪華な扉から中に入り、そこは通り抜ける部屋のような作り、恭しく従業員が扉を馬車から降りた先、品のいい服を着て恭しく出迎える。


 それだけでわかる、訓練されている、充分に上品な洗練された雰囲気。


 すぐさま、俺達が乗ってきた馬車はどこかへと静かに消えた。


「ようこそいらっしゃいました、どうぞこちらへ」


 そのまま俺達3人は歩き出す。


 その道中は静か、だが不快な静かさじゃない、無音ではない音、という表現が合うような、そんな音のある静寂。


 あのアキスが楼主を勤める天河とはこんな場所だったのか、任務中は無我夢中で気がつかなかったけど、最高級は伊達じゃない、俺以外の他の客がいるはずなのに全く音が聞こえないのだ。


 受付も金の受け渡しも無粋か、凄い。


「じゃあな」


 と自然にカイゼル中将とタキザ大尉と別れる形になり、自然と1人で部屋に案内されることになり心細くなるが、それもつかの間、「ここです」と部屋に通された。


「それでは、失礼します、どうぞお寛ぎください」


 俺を案内した案内役の人は、何も言わず、そのまま消えた。


 広さは10畳程度、数奇造りの一部屋といった感じ、特段変わった様子はないが、何故か落ち着ける雰囲気。


「はぁ~」


 ひとしきり部屋を見て、調度品をいじったりして時間を潰し、床に座る。自分でも驚いた、ため息が出て、体が楽になり、自然とくつろぐ。



 その時スタスタという足音が聞こえて、心臓が飛び上がるように跳ね上がる。


(や、やば!)


 忘れていた緊張を思い出すかのように体が震える。やばいやばい、今喋ったら声が掠れるか裏返りそうだ…!


 とここで気づく


「足音が複数っ! 複数だっ!」


 とここでタキザ大尉の「複数の美女から選べる」なんて台詞を思い出す。


 ちょちょちょ、でもいざとなると、選べるのか、なんか1人の方がよかったかも!


(ま、まって!)


 頭がついていかない、という俺の願いも虚しく、扉が開いた。


 想像したとおり、この部屋に来たのは複数人。


 最初に入ってきた人物は、髪をショートカットにまとめ、細身過ぎず、グラマラスではないが、清楚な雰囲気の美女。


 続いて入ってきたのは、髪形はポニーテールにまとめ、スレンダーな体系に凛とした雰囲気を持つ美女。


 その次に入ってきたのは、金髪の髪を腰のあたりまで伸ばした、グラマラスでありながら知性的な雰囲気を持っている美女。


 最後に入ってきたのが、中性的、美少年とも美少女ともとれる美人。


























 セルカ司祭、アイカ、ウィズ、ルルトが入ってきたのだった。




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