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最終話・里帰り


――


「全く、神々はどうしてこう、悪趣味かねえ」


 神による犠牲者は、タキザ少佐率いる中隊に任せることになった。


 もちろん今の言葉は誰にも聞こえないように言っている。


(まあ、邪神事案ならしょうがないのか)


 本来なら、ケルシール女学院の憲兵が管轄となるが、遺体の解析をしなければならないので、タキザ少佐にお鉢が回ってきたのだ。


 その時、ポート伍長がやってくる。


「少佐、報告があるのですが」


「なんだ?」


「この山賊たちのケツ持ちのマフィア共についてですが、調査したところシラを切っていますね。ここ半年前ぐらいに突然連絡が途絶えていると、我々の発見を知って初めて知ったと」


「……そうか」


「まったく、嘘も大概にして欲しいですが、まあケルシール女学院に手を出そうとしたのがバレたら、文字通りタダではすみませんからね」


「そのとおりだ。それよりも」


「分かっています、この尋常じゃない殺し方、なぜ我々がと思っていましたが納得しました」


 ここでポート伍長は遺体を見る。


「それにしてもあまりにも残酷な殺し方は、猟奇殺人者? いや個人の仕業として考えるには無理がある、人間のこのような状態で殺すには、人力ではそもそも」


「その辺りは死体の解析次第だポート伍長」


「はい、先入観を持つのはいけませんね」


「分かっているとは思うが、我々の第一の任務は遺体の保全だ、輸送部隊が到着する間、血の匂いを嗅ぎつけて獣が来る、その撃退だ」


「はっ」


 と言ってポート伍長は、再び遺体回収作業、巨大な馬車に難儀しながら回収を進めていく。


「…………」


 タキザ少佐は、再び山賊団の遺体を見る。


 人の力でなせる業ではない、これが「能力」によるものであるのなら、恐ろしいというしかないが、、、。


(ボニナの時とは全く違う)


 ボニナにとって暴力とは「威嚇手段」だ。その威嚇の為に殺す。つまり手段の一つに過ぎない。


 とはいえポートが言った猟奇殺人者とも違う。


 世を震撼させる猟奇殺人者たちの実像は、あくまで人間だ。


 人間が誰もが持つ感情と共感性の延長上にあるにすぎない。


 だが、これは、、。


「…………」


――「私は、自分の教え子が存在ごとてしまったことが、ただただ悲しい」



 本当に「神」として別の事象として考えていいのか。


 そう考えるタキザであった。




――王子サイド




「王子、セアトリナ卿より書状が届きました」


 パグアクスから書状を受け取り、中身を見る。


 それは、今回の任務に対しての礼と神楽坂の解任辞令の日程だった。


 ただ解任とはいえ非常勤講師としての身分は保持、つまり日常部の面々が卒業するまでは、籍だけは置く形となった。


 今後、日常部に対しての授業という名目で立ち入りが許されることになる。


「…………」


 王子は、大きく息を吐く。


 今回の邪神事案については、驚くほど静かに幕を閉じた。


 ケルシール女学院に実害無し。


 エテルムは自分の存在を隠し、綺麗に後始末までした。


 神楽坂が着任前に希望して、そして読破した王国に伝わる邪神の神話を記した禁書、その禁書のエテルムの項目でこのような形で後始末までした神話は存在しない。


「状況から判断して、エテルムの目的は達成したからこそ、後始末をしたというのだろうな」


「…………」


 パグアクスは、何言わない。


 王子が堪えていることを知っているからだ。


 今回を総括すると、ケルシール女学院が絶体絶命の危機に瀕していた時、自分は何もできず、神楽坂の功績により事なきを得ただけだったからだ。


「…………」


 邪神事案が始まって以降ずっと無力感に苛まれるが。


『前を向けフォスイット』


 神の声が聞こえて振り向くと、ウィズがたっていた。


『リクスは、成功よりも失敗が圧倒的に多かった人物だ。そしてリクスが成し遂げた成功は、その圧倒的に多い失敗の上に成し遂げたものだ』


『神のフォローは我に任せよ、リクスと出会い現在まで「私がしていたこと」だ、お前は私のできないことをしろ』


「……わかった、感謝する、我が主神よ」



――ケルシール女学院学院長室



「私がどれだけ怒っているか、貴方は分かっていますか?」


「お、お、お母様、、」


 修道院の休日を利用して、娘であるフロアを学院長室に呼び出したセアトリナ。


「貴方はケルシール女学院全員の命の危険を晒した、本来なら我がセアトリナ子爵家はその危険から守るべきが至上の命題の一つでありながら、これは子爵家の史上稀にみる大失態ですよ」


「お、お言葉ですがお母様、事案の把握は次期当主として把握は当然と判断して」


「黙りなさいフロア」


「っ」



「そもそも論として私は、貴方の未熟を知るからこそ、邪神事案であるとだけは伝えた、余計な事をしないようにと、そして私はそれで己の自覚を促したであろうと思いましたがこの体たらく、貴方を未熟と言いつつ私の未熟さも同時に痛感させられましたが」



 未熟、繰り返される言葉に不満をあらわにフロアであったが、セアトリナは緩めない。


「まだ分からない様子ですね。そうですね、モスト息が首席監督生として着任した神楽坂大尉の動向を計る為、スパイをさせ裏切りをするように仕向けたことを知っていますね?」


「そ、それは!」


「今回貴方もまた自分の息のかかったフィオを利用して動向を計ろうとした。その理由は貴方の行動は次期当主としてではなく、自分の知らないところで事が起こることを許せない器の小ささによるものです」


「ち、違います!」


「貴方の器の小ささを当然のように神楽坂大尉は初見で見抜いた。だからこそ貴方の横槍に対して相当に焦っていました。そして結果クエルケンパーの試験が、その試験の意味をなさなくなってしまい、エテルムが描いたゲームに横やりが入れられることになったという最悪の結果を招いてしまった」


「お、お母様!」


「結果、神楽坂大尉が試験を解決する形になってしまった。その時の神楽坂大尉の先生の焦りと怒りは推して知るべき、結果貴方の後輩であるフィオも恥をかくことになった。そのフォローをするために、神楽坂先生への失態を不問に処す代わりに「私との繋がりがただの繋がりではない」と生徒達が知ることになった」



「お母様、我々は被害者です!」



「…………」


「そもそも今回の出来事は、我々は一方的に巻き込まれただけ! 元をただせば神楽坂大尉が邪神に目をつけられたからじゃないですか!」



「いい加減にしろフロア!! まだわからないのか!!!」



 怒鳴るセアトリナに凍り付く。


「私は直接言われたのです! 邪神エテルムに! ナセノーシアに! お前の娘の未熟さは織り込み済みだったと! 無能は劇のスパイスだと! その上でこう言われた!」



――神楽坂に感謝せよ



「これが分かりますか? 私がどれだけあなたに失望したか!!」


「そ、それは、その」


「言っても分からない人間には、どうするべきか、体罰は論外、親として教育者として考えました」


 と執務室の机の中からとある本を1冊取り出す。



「この本は、ウィズ王国の禁書の一つ、邪神の神話です」



 その本を見て顔が青くなるフロア。


「存在自体は知っていますね。神楽坂大尉は、赴任前に邪神の神話に目を通して対策を練っていた。私が王子から頼み、特別な許可を取り借り受けてきました」


「今、この場で読みなさい。読み飛ばすことは許しません」



 そして、、、。



「う、う……」


「うげええぇぇ!!」


 フロアは吐き戻してしまった。


 びちゃびちゃと吐しゃ物に床が汚される。


 吐しゃ物にまみれながらも、かろうじて本を保ったのはプライドだろうか。


「まだ五分の一程度ですか、エテルムの項目は半分ぐらいのところまでありますよ」


「おかあさ、ま……」


「これが今回の敵です。フロア、修道院は狭い世界だと知りなさい、そんな狭い世界の女王に満足するのは辞めなさい、貴方は、我が国の半分を支配するのよ」


「…………」


「さあ、全て読みなさい「神楽坂大尉に感謝せよ」この言葉の「奇蹟」と、神楽坂大尉の狂気ともいえる思考を、この全てを知りつつ、神楽坂大尉はこう言いました」



――「ナセノーシアが自分事存在を消したことが、ただただ悲しい」



「…………」


「これがもう読みたくないという無言の抗議は受けいりません」



 口調はいつもと変わらず穏やかであるも、そこから湧き上がる凄まじい怒りを感じ取り、何も言わないフロアだった。



――ケルシール女学院・歴史科職員室



「簡単でいいやね、俺の場合」


 綺麗になった自分の机を見てそんなことをつぶやく。


 先日、セアトリナ子爵卿から正式な解任辞令が降りて、今日が発令日。


 俺は本日付で、再び駐在官に戻ることになる。


 既に他の荷物はまとめて一足先にウルティミスへ送ってある。


「短い間ですけど、色々とお疲れさまでした、神楽坂先生」


 とはルウ先生。


「いいえ、俺の為に送別会まで開いてくれて、こちらこそありがとうございました」


 そう、昨日は食堂で送別会を開いてくれたりしてくれた。


 思えば最初は法整備まで敷いた男子禁制の女学院ってことで閉鎖的で排他的なのかなと思ったが、全然そんなことなくて、皆快く受け入れてくれた。


 バイア先生も最初はとっつきにくいと思ったけど、自分にも他人にも厳しい人で、尊敬できる人だったし、ルウ先生も裏表無く、同僚の人たちも仲良くできた。


 俺の後任については、流石ケルシール女学院、希望多数らしくあっさりと決まった。本来なら、その先生に対して引継ぎ書を作成し、後はバイア先生が取りなしてくれるそうだ。


「名誉顧問になるんですね」


 とはルウ先生だ。


「はい、辞めるにあたって学院長にお願いした形が通って良かったです」


 少し触れたとおり、俺は籍だけ残すことになった。


 その任期は日常部が卒業するまでの間。俺が上流で活動する上で秘書としての役割も得るため、直接授業を持たないが、日常部に対して授業に来ることは許可された。


「神楽坂先生」


 バイア先生が話しかけてくる。


「私は、縁というものを信じる方です」


「…………」


「そして縁は、一度結ばれたものは、形は変わるかもしれませんが続くものであると考えています。私と神楽坂先生が出会ったことは間違いなく縁であると考えているのです。それはここにいる全員も縁があるものだと考えます」


「私たちは、ケルシール女学院という縁を離れても、同じ職場の同士であることは変わらないという事です」


 バイア先生の威厳がありつつも温かい言葉。


 うんうん、バイア先生みたいなタイプは外部からは嫌われていても身内には人気あるタイプだよね。


「ありがとうございます。私も皆さんと出会えてよかったです。是非連合都市に遊びに来てください」


「お見送りが出来ず申し訳ありません、神楽坂先生、その代わり」


 というバイア先生は。


「日常部の子達に頼みました。それではお元気で」


「はい、バイア先生、出来れば一度歌声を聞きたかったです。王子が今でもファンであると言っていました」


 突然の俺の言葉にバイア先生には珍しく驚いた顔をするけど。


「……それは光栄ですが、今の歌声は現役時代ならともかく、今は聞かせるに値しません」


 あくまで、歌手としてのバイア先生。



「それでは皆さんのお元気で!!」



――ケルシール女学院・正門前



 正門に来た俺には懐かしい馬車がそこにいた。


「おお、なんか久しぶりだなスーパーペガサス」


「ヒヒン(元気そうだなご主人)」


「よしよし」


 とペチペチ叩き、、。


「じゃあな、少しの間お別れだ」


 と日常部の3人に話しかける。


「先生、お世話になりました」


 とまずはクエル。


「お前は、自分の未熟な部分とちゃんと向き合えるのが長所だ。だから今後も遠慮なく周りを頼れよ。それとシェヌス大学への合格、頑張んな」


「先生、また神話を聞かせてくださいね」


 とはモカナ。


「もちろんだ、ナセノーシアが戻るまでの日常部の部長はお前だ。2人をちゃんと引っ張ってやれよ」


「先生、一度手合わせを願いたかったです」


「おおう、言っておくが、神の力抜きだと多分普通に負けると思うけど」


 と会話が切れたところでニヤリとモカナが笑って前に出る。


「それと、最後に私達からいい?」


「な、なんだよ?」



「ほったらかすと浮気するからね?」



「ええ!?」


 とびっくりするが、、、やばい目がマジだ。


「ちゃ、ちゃんと大事にするよ!」


 必死な俺の言葉に。


「まあいいでしょう、暫定的に信じてあげる」


 そんな言葉を貰ったのであった。



 こうして、締まらないながらも、任務を終えたのであった。




――ウルティミス自警団・詰所




「恥ずかしながら戻って参りました(`・ω・´)ゞ!!」


「あ、団長久しぶり~」


「早速ボドゲやろうぜ!」


「あのさ、なんか感動的な再会とかないの?(´;ω;`)ブワッ」


「というか、あのケルシール女学院の突然の臨時講師なんて、どう考えても変だけど、ツッコミ無用なんでしょ?」


「まあ、そうなんだけど」


「ならいいじゃん、というかさ、それよりもさ、団長が戻ってくるって聞いてさ、そのさ」


 とそわそわする自警団員達。


( ̄ー ̄)ニヤリ ←神楽坂


「ふっ」


 そう、そうなのだ。


 男子禁制のケルシール女学院。


 それは許可なく男が立ち入れば法律で処罰されるほどに徹底している。


「何が聞きたいかね?」


「え?」


「何が聞きたいかねと聞いたんだよ」


「え、え、それはその、、、」


 とここで不自然に言葉を切る。


 あれれ、どうしたんだろう、極秘のパンチラスポットとか教えてやろうと思ったのに。



「団長大丈夫?」



 とリーケが代表して聞いてきた。


「…………なんで?」


「団長変なところで強がるからなぁ、大分ひどい顔してるけど、全然自覚ないのか」


 俺はグニグニと頬を押す。


「そんなに俺って分かりやすいか?」


「うん、すぐに顔に出る」


「そっかー、まあ大丈夫は大丈夫なんだけど、正直辛いのは事実、ってな訳で、お言葉に甘えてさ」



「俺、里帰りしてくる」



 里帰り、その意味を少し考えて理解したデアンが問いかけてくる。


「……里帰りって、ニホン国だっけ? そういえば団長赴任して里帰りした子と会ったっけ?」


「一度も帰ってないんだよね」


「ああー、なら実家に帰って両親に顔を見せてやらないとね、後さ」



「戻ってくるんでしょ?」



「ああ、当たり前だろ、ちょっと疲れが溜まっていてな、リフレッシュをしにいくだけだから」


「いつ?」


「明日にしようかなって思っていたけど、お言葉に甘えて今日からにするかって」


「うん、わかった早い方がいいね」

「お土産よろしくね~」

「団長の祖国のエロ本とか欲しい!」


(*・ω・)………… ←神楽坂


 何も聞かないでくれるか。


 確かにありがたい。



「ああ、分かった、買ってくるよ、戻ってきたら改めて遊ぼうぜ!!」



 と言って、部屋で簡単に荷物を纏めて。



 向かうはフメリオラの工房。



――フメリオラの工房



「はい、いらっしゃーい」


 という軽いノリで現れたのはフメリオラ、その隣にルルトもいる。


「準備はもうできているんだけど、アーティファクトはどうするの? 取り出す?」


「今、色々と考えている。だから取り出すのは後にするよ」


「はいよ、こっちへおいで」


 と言って、フメリオラが案内してくれたのは、、。


「へー、これが異世界転移装置か」


 造り自体は、簡単逆U字型のゲートに隣にボックス型の機械がある分かりやすいものだった。


「やり方自体は簡単なんだよ、このボックス型の機械にルルトの力を入れて貯める。その力で転移装置が使えるようになる。まあ言うのは簡単だけど、作るのには滅茶苦茶苦労したけどね」


「んで出来上がったはいいものの、神の世界最強のルルトの力を往復分で半分使うという、事実上ルルト以外に使えないものが出来上がってさ。もちろん使い物にならないままなのは許せないから、改良を重ねた結果、往復分でルルトの10分の1にまで力を落とした。それならルルトも力の回復までに20日で回復できる程にね!」


 というフメリオラの説明に。


「なるほど、フメリオラさ、お前もすでに何回も日本に行っているだろ、しかも秋葉原」


「なんで分かるの?」


「荘厳の儀で出てきたぞ、秋葉原」


「ああ、そんなこと言ってたね、そうだよ、いや~、ラノベも漫画もアニメも面白いのなんの、日本って凄いよね、インスピレーションバリバリだね」


「凄い染まってるな」


「そんな訳で、私がいま計画しているのは、電気を何とか安定供給したいとかんがえているんだよね、ってわけで」


「これがお土産リストね、よろしく」


 と渡されたリストを見ると、漫画やらラノベやら機械部品やらパソコンやらスマホやら色々と書いてあった。


「い、いや、これ普通に合計でいくらになるのやら、金ないぞ俺」


「もちろんお代はこちら持ち、お駄賃含めてこれどうぞ」


 とフメリオラが渡されたのは。


「ぎょ! 普通に日本の金じゃん! しかも100万!? お前! 言っておくが日本の印刷技術舐めんなよ! 世界最高の印刷技術で偽札創るのが難しくて、仮に使えたとしても絶対にいつかは発覚して、捕まれば罪も重く」


「偽札な訳ないでしょ、ちゃんとした本物だよ」


「え!? なら、この金どうしたんだよ!」


「金を換金した。こっちでも希少金属だけど、まあこのレベルならどうとでもなる」


「またベタな」


「でもインチキはしてないよ。まあ身分証は偽造したけどね」


「うーん、まあ他人様には迷惑をかけてないから、まあいいか」


「ちなみにお釣りは要らない、この100万もお釣りは要らないよ」


「え!?」


「出会ってから色々と協力してくれるし、今回の身体のアーティファクトのデータは中々によかったよ」


「フメリオラ、お前の研究が進むと、大丈夫なのか?」


「愚門だよ神楽坂、アーティファクトは人類が望む「ひみつ道具」だからね。そしてそのひみつ道具を使いこなした人類は、アーキコバやリクスといった歴史上数えるほどだ、人の欲望は因果なものだね」


「へいへい、なら100万は貰っておくよ」


「えっと、息は必ずここのゲートを通る必要があるけど、帰る時はこの首飾りを使えば大丈夫だけど、任意の場所指定が必要だけど、何処にする」


「ここでいいか?」


「いいけど、どうして?」


「お土産渡すがてら、今後の事も色々と」


「わかった、報酬は弾むよん。てなわけで何処に転移する?」


「うーーん、まずは実家に行かなきゃだけど、いつも人がたくさんいるからなぁ~、ということで、区立公園のトイレの真裏ね」


「はいはい」


「てなわけでルルトよ」


「わかったよ、というか安心したよ」


「? 何が?」


「今の君は相当に疲れているからね、リフレッシュしてきなよ」


「……それ皆に言われるよ、大丈夫さ、ちゃんと戻ってくるから」


 とルルトが力を籠めると、そのまま扉の稼働音がして、虹色の膜の様なものが出現する。


「おおう、これをくぐるのか、ちょっと勇気がいるけど」


 と扉の前に立ち2人に話しかける。


「適当な時に戻ってくるからじゃあね~」


 と手を振り扉の中に入ると。



 全身がまばゆい光に包まれて、、、、。



(ああそうか、そういえば、最初のこの感覚だったっけ)


と思いながら神楽坂は姿を消した。



――神楽坂が転移した後のフメリオラの工房



「…………」


 少し心配そうにしているルルト。


「戻ってくるでしょ、彼自身がそう言ったんだから」


 とはフメリオラ。


「神楽坂の強みは、自分が弱っている時にちゃんとそれを自覚して動ける事さ」


「ま、そうだね」


「神楽坂から、連絡が来たら連絡するよ」


「お願いするよ、さて、ボクは後始末を色々としないとね?」


「そうなの? ウィズにやらせればいいのに」


「王子からの頼まれごともあるからさ、じゃあね~」


 と言って工房を後にする。


「…………」


「まあ楽しんでいるようなら何より、さてさて」


 と前に買い込んだ、電化製品を見る。


「解析解析と♪」


 と工具を取り出したのであった。




――千代田区立和泉公園




「…………」


 ふと光から晴れると、すぐ横にはビルと白い公衆便所の裏だった。


 辺りを軽く見渡して、公衆便所の裏から出ると。



 人の喧騒、雑多な雰囲気、高いビルとマンション、古い雑居ビル、狭い空、匂い、、、。



「凄いな、戻ってきたんだなぁ」



とか言ってみるものの、意外なほどに懐かしさは感じなかった。



「さーて、まずは実家に帰らないとなぁ、何も言わずいなくなったからな、どうしよう」



とテクテクと歩き始めたのであった。



::終




ケルシール女学院篇の本編はこれで終わりです。


いつものおまけはどうするか考え中。


今後の事も色々と考え中。


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