表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
225/238

第31話:サクィーリア選挙・序章


――生徒会室


 生徒会。


 全ての部活の頂点、部活棟の最上階に1フロアまるごとそのスペースを少人数で占領する。


 それだけの広さはそれだけの地位と権力と、、、、、責任が伴う。


 歴代のサクィーリア達が紡いできた歴史。


 定数は存在しないが、多くても5人程度で運営してきた。


 現在の生徒会は、会長、副会長、書記の3人。


 その任期は1年、その最後の仕事が迫っている。


 それは生徒会選挙の後継者指名の仕事。


 それは文化祭の最終日、次代サクィーリアに継承式をその場でおこない、それをもってお役御免、今度は卒業まで生徒会役員は、セアトリナ卿の秘書の序列最下位に臨時任命され卒業までの間、上流との繋がりを作る。


 ケルシール子爵家は、原初の貴族ではないがただの子爵家ではない。男爵家と子爵家はその全てに序列が付けられているが、ケルシール子爵家は序列2位、最下位の秘書とはいえ、一時的に上流の一員となるのだ。


 そんな生徒会長の選挙だが独自のやり方を採用している。


 立候補者は貴族以外、つまり特別入学枠に限定される、これは修道院のシステムを採用しているため当然と言える。


 そして特別入学枠の生徒であれば立候補を表明することは誰でも等しく認めらている。


 ただし、立候補を表明してもその認定権限はサクィーリアにある。


 つまり立候補を表明しても却下されることがあるという事だ。


 これは後継者候補への選定眼にも関わり、後継者の活躍を合わせてサクィーリアの功績とされるからだ。故に選挙において立候補が認定されるという事は後継者候補として認定されると同義である。


 そしてここからが最大の違いになるのだが、選挙と銘打っているものの、認定方法についてはサクィーリアに一任される。


 つまり「どう見極めるか」についての方法で、選挙と言葉で連想される「生徒達の投票」がただの認定方法の一つでしかないし、その方法は多岐に渡る。


 過去サクィーリアは様々な認定方法をもって後継者指名をしてきた。


 当然に彼女は「今回の選挙方法」について決めてある。


 彼女の選挙管理委員会委員長としての始まりの仕事、認定した候補者について推薦書をつけての学院長への上申、最終認定権者は学院長であるが、よほどのことがない限り、サクィーリアの推薦書は却下されない。


 結果、認定した立候補者は3名、全員が荘厳の儀の達成者だ。


「今年の荘厳の儀は豊作でしたね。まさか全員が達成するとは」


 ここで発言するのは書記だ。


「確かに全員達成は荘厳の儀が始まって以降、3回目の快挙ですか」


 そう発言するのは副会長。


 荘厳の儀、選ばれた生徒達が挑戦できて、達成者にはウィズ神から直接言葉を賜ることができる。



 実は、フィオ達、つまり去年の荘厳の儀の達成者はいなかったのだ。



 フィオ達もこの3人で荘厳の儀で挑んだが、初見殺し的なトラップであっという間に終わってしまったのだ。


 とはいえ、荘厳の儀の達成が自身の実績に直結するわけではない。それは自身で証明してきたつもりだし、そもそも達成者の方が圧倒的に少ないのだ。


「、、、サクィーリア、聞こうと思っていたのですが」


「なんです?」


「クエル・ケンパー、彼女の件についてです」


「伺います」



「もし、彼女が荘厳の儀を達成しなかったとしても、立候補者として認定されましたか?」



「…………」


 クエル・ケンパー。


 学業においては学年首席の能力を持つ。


 だが、副会長の指摘のとおり、サクィーリアとしては役者不足と判断していた。


 だから正直荘厳の儀の参加者立候補者の中で、徒手格闘部の部長と並んで落選候補の1人であったのだ。


 もちろんナセノーシア、ファテサ、モカナという貴族令嬢と交流があるのは知っている。


 そして政治的な力をアピールしているものの、ファテサとモカナの両男爵家の実情、ナセノーシアの男爵家も不始末をしていないというだけで序列は下位の方に属する。


 しかも結局は政治的な関係ではなく友人としての関係に過ぎない。


 更に彼女は、弁護士を目指しており、荘厳の儀やサクィーリアに落選したとしても彼女の人生にあまり影響はないと考えていた。


 ならどうして承認したのか。


「はっきり言えば、日常部部員ではなく、神楽坂先生の存在です」


 神楽坂イザナミ。


――神楽坂イザナミ文官大尉という男が産休のヒネル先生に代わる形で臨時講師の就任する


 彼の赴任は突然学院長より言い渡された。


 更に「私の知らないところ」で、学院長が神楽坂先生、そして日常部4人が一つの部活として承認され、それぞれが所属していた部活を離れて堂先生の愛人候補に立候補、更に離れの倉庫を改造しての同居を始めることが告げられた。


 男子禁制を法的整備までして貫いたケルシール女学院において、男性教諭を臨時でも採用するとは衝撃的だった。


 当然に、注目される神楽坂イザナミ。


 そしてフィオ自身も上流の付き合いがある上で彼の噂位は耳に入ってくる。


 大半が悪い噂ばかり。


 だが、一部では次期国王であるフォスイット王子の側近中の側近ではないかと噂されている。


 神聖教団の謎をメディ女医と共に解明した功績、悪名高き趣味人のドクトリアム侯爵に認められた後ろ盾を得る。


 上流で一番有名なのはラメタリア国の怪物、ワドーマー宰相と戦い勝利をおさめ共和国移行を防いだ、神算鬼謀の傑物であるという話もあり、同宰相が外交の場で先生の名前を出したのだという。


 それだけではない、世界最強最悪の亜人種として名高いボニナ族を神の眷属として認定し、配下につけ、エンチョウで起きた死者三桁近く出した大規模マフィア抗争を裏で仕組んだと噂されている。


 一方で、こういう男にはよくある話ではあるがとても女好きであると。


 仲間と称する人物は女ばかりで、ボニナ族の女達も複数手籠めにしているのだという。


 ただ一方で王国二大美女に想いを寄せられるという体の「虫よけ」としての扱い儲けているという噂もある。


 だからなのか、着任にあたり愛人枠として立候補した、ファテサ、モカナの狙いも理解する。


 利用し、利用されるのが愛人だ。


 そして赴任してきた神楽坂イザナミ。


 そんな経歴からか着任前より学院院長との密約が強く噂されており、日常部とのメンバーとも暮らし始めた。


 ただフィオ自身、彼女を含めた、、いや上流の男を良く知る大半の生徒達が十把一絡げの「ハーレム気取りの男」だと考えていたが、意外や意外、日常部の面々には手を出していない様子、聞けば教え子に手を出すつもりはないとのことだ。


 あの4人は、女の私から見ても容姿は整っているように見えるが、殿方から見れば違うのだろうか、そこはよく分からない。


 そんな神楽坂は、ぱっと見本当に冴えない男だと思った。


 あのママ先生が密約の結ぶほどの相手なのか。



 だから真相を知りたくて偶然を装っての勝負をかけた結果、こちらの立場まで危うくなるぐらい見抜かれた挙句のワンサイドゲームでの敗北。



 いや、勝負と表現したが、あれは私を対戦相手としても見ていなかった。


(つまり手加減されたのだ、この私が、、、、)


 結果、ママ先生の密約が存在することが認定される。


 失敗を報告した時も、ママ先生もまた神楽坂イザナミを次期国王の側近中の側近と表現した。


 そして荘厳の儀。


 日常部を率いての荘厳の儀の達成。


 これで実力がハッタリではなく本物であると認定された。


 そして、日常部の面々の好感度の上昇も確認している。


「あれほどの殿方です。サクィーリアとして興味があります。それにクエルは、能力が劣るからという意味で却下ではなく、あくまで政治能力に欠けているという意味ですから」


 と締めて、外の景色を見るフィオ。


「…………」


「サクィーリア」


「え?」


「どうしたのです?」


「どうした、とは?」


「荘厳の儀が終わったあたりから、落ち着かない様に見えまして」


「……ふふっ、貴方方は誤魔化せんか、ごめんなさい、ちょっと考え事を、、、、、いえ、これは」




「胸騒ぎがするの」




「……胸騒ぎ?」


「それが、なんなのか分からない、特に何か不安になることはないと思うのに、不安でいっぱいなの」


「それは、おそらく私たちの代と違い荘厳の儀の達成者が全員出たからですよ」


 と副会長自身がそんな苦い思い出を語る。


「……そうですね、私も少し過敏になりすぎたかもしれません。それに選挙管理が生徒会としての最後の仕事だというのもあるかもしれません、ありがとう」


 と書類をもって学院長室へ向かう。





「さて、今回の立候補者の3人の誰がサクィーリアとなるのか、私自身も楽しみです」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ