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第26話:荘厳の儀・最後の試練・第二話


――神楽坂・サイド



 リクスは、元はフェンイアの出身ではなく、別の今は廃村となった村の出身だったそうだ。そこで年老いた両親に育てられたそうなのだが、2年前に他界。


 所謂限界集落だったみたいで、集団移住みたいな形でフェンイアに移り住んだのだそうだ。


 元より村でも狩りで生計を立ててたらしく知識がここでも使えることを知り、村の雰囲気も良くかつユナに一目ぼれして、ここに定住を決めたそうだ。


「ピガンを個人で仕留められれば理想なんだけどね、家畜化は絶対に不可能と言われていて、かなり危険が伴うんだけど凄い金になるんだよね、大体はチームを組んで討伐、山分けにするんだけど、そうなるとイマイチなんだよなぁ」


 そんなリクスは、ユナに一目惚れをして以降、健気にも狩った獲物をユナの宿屋兼食堂におろしているそうな。


 そんな狩りの仲間なのが、、、、。


「ドゥシュなんだよ」


 宿屋業で生計を立てられない男は狩りで生計を立てるべきというのがフェンイアの流れらしく、フェンイアで一番の狩りの腕を持つドゥシュは腕ばかりではなくリーダーシップもあり皆から一目置かれていて、更に2枚目で影がある感じがして、女性陣の憧れらしい。


「まーったく、世の女どもは男を見る目がない訳ですよ、まあイケメンなのは認めるわけですよ、無愛想ですけどいい奴なのは認めるわけですよ、だけどさ高難易度の獲物を俺と一緒に狩ったはずなのに、女どもは俺の存在を無かったことにするからなぁ」


「まーったく、何処も一緒だよね」


「でも何より、ユナちゃんと付き合っている噂があって、噂だけじゃなくて、泊まっているって目撃情報もあって、はぁ」


「本人達に聞いてみたの?」


「うん、思い切って聞いたら「絶対ない」って言ったけど、、、、、」


「まあ、ちょっと信じられないよなぁ」


 と言いつつ、ドゥシュメシア・イエグアニートは兄だから事実なんだけど、それは後で分かることだから、黙っている。


 と冴えない会話を続けていた時だった。




 ふと端に彼女が舞い降りた姿を目の端でとらえる。




「っと、リクス、俺もピガンの様子を見たいから行ってくる。後で飯、ユナちゃんのところで一緒にどう?」


「分かった待ってるよ」


 と言ってリクスと別れた。


 そして俺は、リクスが街に戻って歩き出したところを確認すると。



「こんにちは」



 と舞い降りた彼女に対して挨拶する。


「…………」


 当然、突然の挨拶に不審がる彼女。


「なに? 誰?」


「いえ、俺はただの旅人、声をかけた理由は何か神秘的な雰囲気を纏っているからで、ああ、言っておくけど、ナンパではないよ」


「…………」


 ここで露骨に警戒心を出す。


「……見ない顔ね」


「初対面だからね、それよりも、お探しの人物はあちらに」


 と視線を移し、彼女がその男を視線に捉えた瞬間。


「っ!!」


 ダンと地面にたたきつけられる形で組み伏せられた。


「騒ぐと殺す、嘘だと思うならどうぞ騒いで」


「短気だなぁ」


「軽口も禁止、次やったら殺す」


「…………」


「何者?」


「名前は神楽坂イザナミ、何者と言われても、この時代の人間じゃないからね、ありていに言えば未来人」


「…………」


 すっと目が冷たくなるが、、、、、。


「……貴方、ひょっとして使徒?」




「そうだよ、ウィズ」




「……どこでそれを?」


「どこでと言われても、後世、アンタの顔を知らない人間はいなくなるよ、世界中に肖像画が飾られている、ウィズの探し人であるリクス・バージシナと共にね」


「……誰の使徒?」


「ルルト神」


「!!!」


 ビクッと震える。


「とはいえ俺が住んでいた時間は未来だからなぁ、ルルト曰く、俺が初めての使徒みたいだから、確認取ったところで確証は得られない」


「…………お前の目的は?」


「ウィズに協力する事」


「協力する理由は? ルルト神は知っているの?」


「だからさっき言ったとおり、俺は遠い未来から来たんだ。だからルルトは知らない、協力する理由は、未来にとって大事だから」


「…………」


 俺の答えにウィズはスッと手を振り上げると。


 少し力を籠めて手をふるい、傍の大岩が真っ二つになった。


「……神である私の姿を見抜いているから使徒であることも事実か、まあいい、ただ邪魔をすると殺すからね、私は急いでいるから」


「わかったよ」


 彼女は、リクスの後を追う。



 この時代ではまだ、神の理が人に耐えられない、それがまだ一般に浸透していない、そういう時代だ。



 アーキコバ・イシアルとラベリスク神が作り上げた神聖教団の短期間による壊滅、これは神の力を得たことにより「狂ってしまった周りの世界」により消滅してしまったのだ。


 それにしてもウィズの印象がまた違う、今よりもこう、、、短慮だったんだなぁ。


 フメリオラも言っていたっけ、ウィズは元々はルルトと一緒で特殊能力を持たない戦闘タイプの神だから、短気でけんかっ早い性格をしていたと。リクスとの付き合いで変わったと。


 そういう意味ではやはりルルトの名前を出すことは思ったより効果的だったようだ。俺を殺して万が一ルルト使徒であることが本当で不興を買うのを恐れたのだろう。ウィズにはそれよりも大事な用があるからな。


 さてどう関係を構築するのだろうと思いながら見ていたらウィズは、リクスにいきなり話しかけるが。


(あ、なんか揉めてる)


 リクスの明らかに不審者を見る目、デート商法でも疑っているような感じ。


 そんな疑いに気付かず「運命の人」とか聞こえてくる、うーん、いくら美人でも初対面でそんなこと言われたら、それは駄目だよなぁ。


 あ、そんなこと考えている間に自分が神って速攻ばらしているっぽい、対するリクスから邪神とか聞こえてきてそれにウィズがキレてる、それもそうだよなぁ。


 お、何とか説得、というか多分根負けした感じで、ついていく形となって、フェンイアに向かっていき。


(お、姿変えたか)


 リクスが何かアドバイスをしたと思ったら、神の力を感じた。


 そうだよな、それが自然の姿だし。



 さてさて、そんな訳で、俺はピガンの姿だけ確認しておきますか。



 そのあとは約束通り、、、。




――宿屋兼食堂




「あ!! あの時の胡散臭い奴!!」


 例の食堂に入った時、俺の姿を見て開口一番ウィズが放った台詞がこれだ。


「あれ、神楽坂さん用事終わったの?」


 というリクスの言葉に仰天するウィズ。


「って、リクス知ってるの?」


「まあちょっとね、飯食う約束してたんだよ」


「そうそう、そのとおり、それじゃ失礼」


 と図々しく合流する。


「…………」


 ウィズからは凄いメンチ切られてる。


「神楽坂さん……ひょっとしてウィズが神って知っているの?」


「まあね」


「……なるほど、神楽坂さんが何なのかやっと見えて来たよ」


「驚かないんだ」


「驚いているよ」


 そんな会話にウィズが反応する。


「なーーんか胡散臭いのよね、いいリクス、初対面で仲良くしようとか、利することをしようしている奴って全員詐欺師だからね」


「……お前も同じようなものなんだが、、、」


「細かい男はモテない、そう言ってるよね?」


「…………」


 とモグモグと飯を食べるウィズ。


 まあいいかとばかりに、俺を見るリクス。


「……胡散臭いか、そんな感じはしないんだよな」


「はいはい、あ、そうだ、神楽坂って言ったっけ、私はクォイラって名乗って人間として活動しているからね」


「分かったよ、クォイラ、それで、ユナちゃんは?」


「それが、まだ来てなくて」


「って、まさか」


「いや、それはドゥシュが警戒しているから、大丈夫だと思う」


「色々と心労をすり減らしているんじゃ」


「い、いや、それが」


 とリクスが言った時だった。


「お父さん! お母さん! 遅れてごめんね! 孤児院の手伝いで遅くなっちゃって」


 と言いながらユナが入ってきた。


「「キタ!!」」


 と2人して視線を送る。


 急いでエプロンをつけると、すぐに皿洗いをやりだす。


 そんな彼女を見て。



「いいなぁ」

「可愛いな」

「嫁さんに欲しい」



と客たちも騒ぎ出す。


「「…………」」


「やっぱりライバルが多いんだ」


「うん、狙っている奴多くて」


「告白とかされてんのかなぁ」


「いや、みんなドゥシュが怖いし、2人の関係は公然の秘密みたいな感じだし」


「ううむ、女心が分かる人がいれば」


ドヤァ ←神楽坂


「え? 誰か心当たりが?」


「実は教え子たち全員女の子」


「マジ!? よし! 我に勝算あり!!」


 とそんな2人を見てウィズは思った。


(この2人のモブ感よ)


「あ、そうだ、神楽坂さん、アドバイスもありがたいんだけど、それは後日で、俺達はもう飯を食い終わっててさ、ちょっとやることがあるから」


「そうなんだ、じゃあまたね」


「へ? なんなのやる事って?」←ウィズ


「いいから、じゃあね~」


 と手を引っ張ってリクスとウィズは店を後にした。




――日常部・サイド




「っと失礼」


 と食堂から出てきた2人とすれ違い「こちらこそ」と返すも心ここにあらずの日常部の面々。


 日常部は、神楽坂の指示により、情報を整理した後に、食堂の前に立っていた。


「「「「…………」」」」


 でもなかなか入っていけない。


 理由はもちろん一つしかない。


 どうしようと立ち尽くしていた時だった。


「いらっしゃいませ、何処か迷っているのなら、当店に是非どうぞ」


 と迷っている日常部を出迎えてくれた看板娘。


 それを看板娘を見て全員が立ち尽くす。



 ユナ・ヒノアエルナだ。



 間違いない、肖像画より、少し若い。


「「「「っ!!」」」」


 我に返り全員が飛び上がるほど驚くと。


 すぐさま上流の姿勢で跪く。


「え、え、え?」


「偉大なる初代国王を支えし、偉大なる初代王妃ユナ・ヒノアエルナ、まさか、お目にかかれるとは思いませんでした」


「ちょ、ちょ、お、おきゃくさん? あの、もし利用でしたら、席に座って、ご注文か宿屋の手続きを」


「め、滅相もありません! 偉大なる初代王妃に対してそのような!」


「あ、あの、お客さま、こ、こまるんですけど」


「申し訳ありません!」


「あ、はい、あの、その、え、ええ」


「えっと、お姉さん! こいつら俺の連れなんだ! んで定食四つお願いね! 席は適当に開いている所を座るね! それと部屋は一番いい部屋をお願い! 後で受け付けは俺が行くから!」←店の外に出てきた神楽坂


「は、はい」


「本当ごめんね! 悪気は無いんだ! ちゃんと言っておくから!」


 という俺の言葉に、ユナは困惑した様子で店の中に戻っていった。


「騒がしいから来てみれば、とにかく普通にしてろ、向こうが混乱している。明らかにこっちが迷惑な客になっているぜ」



「現実ではないとはいえ、あの方が偉大なる初代王妃」

「肖像画のままなんだ」

「凄い!」

「綺麗な方、、、」



「…………」


 上流は原初の貴族とそれ以外に分けられるとは繰り返し述べたとおり。



 その上流の世界に王族は含まれない、何故なら王族は上流というよりも国そのものだから。



 ウィズ王国を作った偉大なる初代、その初代国王を支えた初代国王ユナ・ヒノアエルナはリクス・バージシナと同じぐらいに讃えられているのだ。


「全員聞け」


 緊張感を持った俺の言葉に会話が止まる。


「ドゥシュメシア・イエグアニートについて」


「「「「!!」」」」


「当然に彼がいるが、いいか、対外的にはあの2人は兄妹であることを隠している。絶対に言うなよ」


「え?」



「これは荘厳の儀に関わる、この第三の試練で失敗条件に付いては見当がついているだろ?」


「は、はい」


「その鍵では俺達であると同時に、異物でもある」


「!!」


「そう、つまり俺達の動きで歴史が悪い方に改変された場合が、この場合での失敗を意味するのさ」


「先生」


 ここでモカナが問いかけてくる。


「その口調だと、クリア条件は見当がついているのですか」


「まあな」


「それは?」


「まあ慌てなさんな、折角だから偉大なる初代王妃がおつくりあそばした飯に舌鼓を打ち、情報収集の結果とモカナの神話の知識についてのすり合わせをするぞ」



――寝室



 飯を済ませ宿屋の一室で俺はモカナの神話の話を聞く。


 その中で創世神話の部分で確かなことが何一つわかっていないことも。


「すみません、偉大なる初代国王の神話は、エンチョウ国との同盟を結んでからの話が起点となっている場合が多くて」


「ふむ、、、、」


 誰でも知っている初代国王の話。


 今まで世界規模の戦争は二度起きており、共倒れの形で戦争が終結し、多くの人が死んだ。


 そして3回目の戦争の時に、ウィズはディナレーテ神の導きの下、リクスと出会い、統一戦争と呼ばれた時代の勝者となり、世界に平和が訪れた。


「やはり、このまま歴史が改悪されれば、統一戦争はどんな結末を迎えるか分からないため、前の2回と同じ結果になる可能性が高いってことか」


「モカナ、不確かでもいい、創世神話の話はどれぐらい知っている?」


「本当に色々と諸説あるのです。リクス初代国王一つにとっても生まれがフェンイアだったり、流れ着いた者だったり、はっきりしなくて、ウィズ神と偉大なる初代国王の出会いすらも」


「あの大聖堂に飾られている宗教画は?」


「あれは有力視されているというだけで確定ではありません。不敬になるかもしれないので皆言えないんですが「出会いにしては出来すぎている」なんて話もあって」


「初代国王の第一次資料はどれぐらいある?」


「実は初代国王の一次資料は国家の最高機密文書として指定されていて、教皇と王族のみ閲覧可なのです。それに一説によれば、ウィズ神のみ閲覧可能である資料もあるとか」


「なるほど、噂の域を出ないってことか、ちなみに実際の聖庭であるフェンイアの再現率はどれぐらいなんだ?」


「その一次資料を使い限りなく近い形だと聞いています、現に私が入学前にいた聖庭と記憶の限りに差はありません」


「…………」


 一次資料、そしてウィズのみ閲覧できる資料か、、、、。


「となれば、多分……」


「え?」


「いや、なんでもない、モカナ、お前の知る限りでいい、フェンイアは治安組織についてはどうなっている? それとフェンイアの経済状況についても教えてくれ」


 そんなモカナの話、これは俺が仕入れたのと同じ。


 今の院長先生が、村長としての役割になってから、ギルドを結成し、結果、質の高い部屋と質の高い食事で評判になっていた。


 だが、治安維持組織は、それこそウルティミスと同じ「自警団」しかない。



 その状況は、俺がウルティミスに一番最初に訪れた時、自警団だけで山賊団をおさえることは当然に出来なかった状況と似てる。



 つまり暴力組織を独占できない程に弱いのだ。



(なるほど、戦争が始まればいの一番に滅ぼされるか征服されるか、、、、)


「先生、いいですか?」


 モカナが問いかけてくる。


「なんだ?」


「この荘厳の儀の攻略は、要は脅しているマフィアがの撃退ということですよね? そしてあのマフィア達がエンチョウ国で手配されていると聞きました。ならエンチョウ国に通報して、奴らを引き渡し、そこから繋がりを」


「それだけは駄目だぞ」


「ど、どうしてです?」


「だって、メリットがないだろ」


「メリット?」


「だから、エンチョウからすれば自分の国から折角いなくなったマフィアが、フェンイアにいるから対処しろって通報するのは「厄介事を持ち込んできた」という程度にしかならない」


「ええ!!?? いや、それは違うでしょう!?」


「なにが?」


「元は、エンチョウ国のマフィアで、そっちが蒔いた種じゃないですか!」


「何言ってんだよ、マフィアがやらかすのは、アイツラの勝手だろ? エンチョウ国に責任はないさ」


「い、いやありますよ!」


「ほほーーう、ならはっきりと言うぜ」




「今のままエンチョウに話を持ってくのは、あのマフィア共とやっていることは変わらない」




「っ!」


「金を持つというのはろくでもない輩が寄ってくる。そのろくでもないってのは、今問題のマフィアだけじゃない、無自覚な奴らも含まれるんだよ」


「…………」


「今、エンチョウ国の三兄弟にそう判断をされれば、それこそ扱いは良くて属国だ。いいか? 三兄弟の責任はエンチョウ国内の治安維持だけだ、それを理解しろ」


「で、でも! 先生はマフィア達に有効なのは通報することだって!」



「それは「いざとなれば国内を武力鎮圧できる強力な暴力装置」を持っている国に限られる」



「あっ、そういうこと!」



「そう「自分が無力です」って言っているんだよ」



「…………」


「それに、今後は言動にも気をつけろ、あの食堂、明らかにカタギじゃないのがいたぜ」


「え!? そんな人相の悪い奴は」


「マフィアには色々な役割がある、憲兵と同様にな」


 暴力装置の役割、いつも世話になっているタキザ大尉は武力行使をためらわない喧嘩担当。


 だけど、隠密行動には全然向いていない。


 だから隠密行動には、一見して憲兵に見えない人物が適している。


「俺達の動向を探る意味もあるんだろう。つまり、その程度には組織力があるってことだ。だからあまり舐めるなよ」


「あ、あのさ、先生、ここで食事したのって、ユナ初代王妃に会うためだけじゃなくて」


「そのとおり、男1人に女4人、目立つ新入りだ、さあ、どんな風に解釈するかな」


「せ、先生」


「大丈夫だ、その為に一番いい部屋を取ってある、それに今チンピラ共も事を起こすことは避けたいはずだ」


「どうして?」


「脅している内容が「憲兵の役割を俺達が担ってやる」って弁を立てている。そんなアイツラが揉め事を起こしたんじゃあ本末転倒。馬鹿じゃなければまずは俺達の情報収集をするさ」


「もし馬鹿だったらどうするの? 襲い掛かってきたら」


「そうすれば願ったり叶ったりなんだかなぁ」


「ええ!!??」


「マルスの時な、当時あそこの表を統治していたマフィアのロッソファミリーがまさに馬鹿でな。いやぁ、あの時は考え無しに襲ってくれたおかげで手順が5ぐらい省略出来てまさに願ったりだったよ」


「…………」


「まあ安心して寝たまえよ、それといよいよ明日からお前達も動いてもらうからな!」


「え? 何するの?」


「それはな、、、、」


 と説明するが意図は分かっていない様子。


「とにかく頼む、逆に俺がいると難航するかもしれないからな」


「う、うん」


 と結局、次の日の朝、何事もなく終わり「ちっ、何もなかったか」という神楽坂の台詞を聞いて呆気にとられる日常部の面々だった。




――、一方、神楽坂と別れた後のリクスとウィズ




「クォイラ、一つお願いしたいことがある」


「? ああ、さっきの言っていたことね、何?」


「神楽坂イザナミについてだ」


「ふむ、やっぱり胡散臭いからね、でも調べるといっても、いくら神とはいえ、個人を調べることは私にはできないけど」


「その必要はない、というか多分無駄だと思うし、調べて欲しいのは、神楽坂イザナミって名前についてだよ」


「名前? なんで? どっかの有名人とか?」


「いやいや、何でって、それはお前の方が詳しいんじゃないか?」


「?」


「だから、人と人が交流する上で欠かせないのが言語だろ? そしてそれは文字や文法全てが独自の発展を遂げる、ここまで言えばわかるだろ?」


「あー、何処の国の言葉かってこと?」


「そう、神楽坂は自分の出身国について「日本」と答えた、つまり「神楽坂イザナミ」という名前は「日本語」ということになる、俺は日本国なんて知らないし、あの言語も聞いたこともない。でもそれは俺の見方だけじゃ狭い世界だろ、だから」



「ないわ、日本なんて国」



「即答するんだな」


「まあね、私たちにとってその時代その時代の国家情勢を把握するのは基本中の基本だものね」


「…………そうか」


「どうするの? 殺すのなら」


「だーかーらー、すぐに殺すという結論は駄目だっつってんだろ。大体どう考えてもワザとだろうが」


「わ、わざと?」


「そう、自分の名前を名乗ったことと日本という国出身と言ったことだよ、わざわざ文字まで書いてくれた」


「え?」


「正体を知られたくないのなら偽名を使えばいい出身国を偽ればいいじゃないか、しかもその結果架空の国だった、こんなの調べて欲しいってことなんだろう」


「ど、どうしてそんなことをしたの?」


「それもこっちが聞きたい、神楽坂から聞いていないのか? 俺と出会う前に会って何か話していた感じだったが」


「あ! そうだ! なんか未来人とか言って、使徒で俺の目的の為とか言ってた!」


「…………未来人か」


「ま、まさか、信じるの? あのね、神の力と言えどタイムマシンは不可能なのよ、過去に行くことも、未来に行くこともできないの」


「保留」


「保留!?」


「感じるままにね、それと神楽坂の使徒ってのは、誰の使徒とか言ってた?」


「ルルト神」


「ルルト神? 聞いたことがない神様だね」


「これは内緒なんだけど、、、」


 とウィズは説明する、神の世界の話、神の序列は強さで決まり、最強がルルトであること。


「強さが序列が決まるか、えげつないね。つまりそのルルト神という神様のさじ加減で世界が終わるってこと?」


「そんなことは「絶対」にしないけど」


「絶対? 知り合いなの?」


「全然、何回か話した程度、まあ正直、無礼をしない限りは、無害というか、自分の好きな事をして遊んでいるだけというか」


「…………」


「まあ、話せないこともあるのよ、そこは安心して。それでどうするの? ルルト神に会って確かめることもできない訳じゃないけど、気ままな方だからどこにいるかまでは」


「ん? 未来人なんでしょ? ルルト神に確認したところで無駄じゃないか、いないって回答で終わりだろ?」


「ちょ、ちょ、あのさ、さっきから聞いてたらさ、貴方は、統一戦争において重要な役割を果たすというディナレーテの占いが出ている。もう少し慎重に」


「どっちもでいいのさ」


「は!?」


「ディナレーテの占いで出ているのなら、神楽坂が嘘か本当か、悪意、善意どちらでもいいということ」


「あ、あなた」


 唖然としている、ウィズに淡々としているリクス。


「ってわけで早速明日、神楽坂と街はずれで待ち合わせしているんだ、お前も付き合ってもらうぞ」


「ほ、ほんとうに、大丈夫なの?」


「大丈夫、向こうも同じことを考えている、それは、、、」




「「ディナレーテ神の御心のままに」」



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