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第15話:荘厳の儀へ・後篇


――日常部部室(俺の以下略)




「おかえり、ファテサ、どうだった?」


 と部室に帰ってきたファテサにナセノーシアが話しかける。


「楽しんできたよ、流石神楽坂先生、息一つ切らせていなかった、剣豪というのは本当だったようだね」


「ファテサのお眼鏡にかないそう?」


「それは保留、だけどもし愛人となれば、クエルとは喧嘩せずいい関係を続けたいね」


「おおう、流石イケメン、先生は今?」


「風呂に入っているよ」


「ふむふむ、先生も順調に親睦を深めている訳か、さて、となればいよいよ次のフェーズに移る必要があるね」


 とナセノーシアが立ち上がる・


「さて皆様方、我々は日常を楽しむための日常部、その楽しむ日常に先生の愛人候補としても含まれると思っている、そんな私たち愛人候補がする役割と言えば、先生に女への幻想を捨てて現実を見てもらうかについてですけど、モカナ」


「はい、それでは皆様御覧下さい」


 と本を広げ、プロジェクターの要領で壁に映し出されたものとは。



 巨乳美女のヌード写真だった。



「さて、これは先日、先生の留守を狙って家探しした時に発見した、巨乳美女のヌード写真集です」


 淡々としたモカナの言葉に対して。


「ん? モカナ、これって」


 と首をかしげるのはファテサだ。


「ええ、確かにこれ」


 続いてクエルも気が付く。


「そうよね、だけどね、実は殿方って気づかないのよ、もちろん先生もね」


 というナセノーシアの言葉に全員が黙る。


「ふーむ、殿方は夢見がちだと聞いたことがあるが」


「確かにこれは問題かも」


 と言った時、日常部の部室の扉が開いた。


「ふいー、気持ちよかった~、五右衛門風呂は最高だね~」


Σ( ̄□ ̄|||) ←神楽坂


「あああーーーー!! それ! それ! 昨日から無いなって思ってたらさ!! なにしてんのもう!! 女の子がそんなの見ちゃいけません!!(゜Д゜)ゴルァ!!」


「何しているも何も、先生に対して講義資料ですから」


「は!? 講義!? なんの!?」



「この巨乳は嘘だなぁと、男はどうして分からないのか」



「……え? 嘘って何が?」


「だからこの巨乳が嘘ってこと」


「え? え? 巨乳が嘘ってどういうこと? 写真に細工をしてるってこと?」


「まあ細工は細工ですが」


 と言って4人は頷く。


「そうか、本当に分からないんですね、先生、一つよろしいですか?」


 とモカナが話しかけてくる。


「先生は女の胸って脂肪なのはご存知ですか?」


「あ、ああ」


「そして、このヌードの女の人って腰が凄い細いですよね」


「あ、ああ」


「ということは、つまりこの女の人って「胸だけ太っている」という事になるんですよ」


「…………ぇ? そ、それは、太るって、ホルモンで、そうなるんじゃ?」


「ですから「胸だけ太る」というのが現実味がありません、両方太るのなら分かりますけど、だから先生、これ」



「入れてんのよ」



「…………」


 いや、そんな「あててんのよ」みたいに言われても。


「ち、ちがうよ、だって、女性ホルモンが、保健体育の授業で」


「はい、そう言うと思ったので、次のページを見てみましょう」


 と次に映し出されたのは女豹のポーズをしている姿だった。俺の大好物のページだった。


「これなんて分かりやすいですよね、ほら、この胸の、このラインに沿って入れているのが、よく分かる構図で」



「おいいいぃぃ!! やめろよおおぉぉぉ!! もう巨乳で興奮できなくなるだろおお!! そういうのはいらないの! 女の胸には夢が詰まっているの!」



「「「「あはははは!(大爆笑)」」」」


 こ、このやろう。


「すみません、いや、先生に、ちゃんと現実を知ってもらわないと判断しました。その他にも、あ、この折り目が入っているお気に入りのページの、この胸の角度とラインで分かりますね、明らかに入っています」



「だからやめろよぉぉぉ!! そんなことをして何が楽しんだよう!!(´;ω;`)ウゥゥ」



「私たち、全員薄いんで」



「そ、それを言うために?(´;ω;`)ウゥゥ」


「そうです、明日荘厳の儀の参加者が発表されます。ケルシール女学院の3大イベントの一つがいよいよです。つまり一致団結する時、そのために必要だったのです」


「「「コクコク」」」


「勢いで誤魔化されないぞ、今の流れ必要じゃないよな?( ゜д゜)ゴルァ!」


「小さいことは気にしない、男でしょう?」


「男は関係ないんじゃないかなぁ(#^ω^)ピキピキ」


「そうですね、無いですね、先生も女に夢を見るのはほどほどにしてくださいね、私たちの為に」


「…………」


 ここでナセノーシアが立ち上がる。



「さて真面目な話、明日だね、荘厳の儀の参加者が発表されるの」



 ここで言葉が切れて少し雰囲気を重たくなるが。


「でも、もう候補者は決まっている、その為に私たちはこれ以上ない努力をしてきた」



「だから果報は寝て待て! 人事を尽くして天命を待つ! ね! みんな!」



 ナセノーシアの言葉にファテサとモカナがクエルに話しかける。


「クエルなら大丈夫だよ、私は信じている」

「うん、その為に必死になってクエストをクリアして、Sランクに昇格したんだものね」


 と2人に囲まれるクエルを、、、。


 ナセノーシアが3人いっぺんに抱きしめる。


「クエル、もし万が一があっても、選挙に立候補してはいけないという決まりはない。型破り、横紙破り上等よ!!」


 とみんなの言葉に。


「みんな、ぐすっ、ありがとう、わたし、皆と出会えてよかった」


 とクエルは涙ぐんで答えた。


「って、そろそろ就寝時間よね、もし立候補者に決まれば、荘厳の儀まであっという間、忙しくなるから今日は寝ないとね! 夜更かしは美容にも大敵! あそうだ先生! 言っておくけど荘厳の儀には先生も参加してもらうからね! みんなもそれでいいでしょ?」



「はい、先生なら頼りになりそうです」

「戦略と戦術を期待しています」

「先生、出来ないことがあれば先生を頼るとの教えのとおり、遠慮なく頼ります」



「………………………………」



 荘厳の儀。


 ケルシール女学院の創立した時代は、女性差別が一大論争になった時代だというのは前に述べたとおりだが、同時にウィズ王国が国力増大政策に邁進していた時でもある。


 その一環として取り入れたのが宗教施策だ。


 宗教というと、日本だとカルトのイメージが付きまとうため、マイナスのイメージが先行するが、神を信じるという文化は普遍的に存在するものだ。


 そして繰り返すとおり俺が住んでいた世界と異世界で唯一違うのは、神が実在する事、神話とは神と人が紡いできた歴史書であること。


 そして神が人にもたらす利益が実在する事。


 故にウィズ王国が宗教を政策として取り入れるのはごく自然流れだと言える。


 故に統一戦争時代からリクスはその施策を重要視しており、最大の功績と言われる宗教施策は人の理を外れた存在である神を人の世界に落とし込むために、ウィズを「神」として君臨させ、公的に様々な恩恵を与えることにしたことだ。


 その宗教施策を派生させる形で、王国の女性貴族教育を一手に引き受けるケルシール女学院のみのイベントとして設けられた荘厳の儀だ。


 その荘厳の儀であるが、簡単に流れを説明すると、まず参加者希望者は生徒会に対して立候補を届出る。


 届出を受理した生徒会は、立候補者の中から選抜し、セアトリナ卿に上申、セアトリナ卿の選定が行われ、その後、指定された日の朝礼にて参加者が発表される。


 その後、参加者たちは前日から荘厳の儀の為に聖堂に泊まり聖泉で禊を受け身体を清める。


 翌日、聖堂に設置されている普段は閉じられている聖櫃が開かれて、参加者たちが入り、荘厳の儀が始まる。


 荘厳の儀の内容は、複数の試練が与えられ、それをクリアすると達成者として呼ばれある恩恵が受けられる。


 それは達成者に対してウィズが直接降臨し言葉が与えられる。


 直接降臨して言葉を賜ることができるのは、ウィズ教なら大司教以上、王族、原初の貴族当主及び次期当主並びに直系、後は特別な功績があった人物のみ。


 直接言葉を賜ることはその「特別な功績があった人物」としての分類されて「格」が与えられ、結果ケルシール女学院の立場を確固たるものにしたのだ。


 なお繰り返しナセノーシア達が言っているとおり、荘厳の儀はサクィーリア選挙の前哨戦とも言われ、セアトリナ卿が発表する生徒達は、そのままサクィーリア選挙の立候補者となるのが通例だ。


 もちろん荘厳の儀を達成しなくてもサクィーリアに就任した事例は多々あるものの、それでも達成者と非達成者では就任人数の差が明確に出ている。


「サクィーリア、ちゃんと、推薦してくれているのかな」


 そんなモカナの言葉だったが。


「……いや、フィオからクエルを荘厳の儀の参加者として推薦したとは直接聞いた、そこは心配しなくてもいいんじゃないか」


 とやっと心の傷から復活して俺が返すが……。


「「「「…………」」」」


 何故かジト目で見られる俺。


「随分仲良くなったんですね」


 とはクエル。


「な、仲良くって」


「噂になっていますよ。後出しの愛人候補になるのではって」


「そんなことはないと思うが、割ときつくやり込めたからむしろ嫌われていると思うけど」


「嫌いな相手に、オフレコとはいえ立候補者の届け出状況を話すんですね、彼女は割と秘密主義者なんですけどね」


「え、ええーー、それは、俺が先生だからだと思うけど」


 と不機嫌そうな日常部な面々に


「ま、まあ余程のことがない限り、セアトリナ卿はそのまま通すそうだぞ!」


 と強引に場を締めると咳ばらいをするが。


「ふーん、あ、そうだ、先生、そのエロ本、私達で「色々と修正」しておきましたから、おやすみなさい先生、また明日ね」


 と冷たくそれぞれの部屋に帰っていった。


「…………………………………………」


 チラッ ←エロ本を見る


 パラパラ ←エロ本を眺める


「……………………………………………………………………………………」


 そのままエロ本をもって部屋に戻ったのであった。




 いよいよ、明日、荘厳の儀の参加者が発表される。




 1人の男が心の傷を二度も負いながら、日常部の面々は眠りについたのであった。




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