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第4話:ケルシール女学院、着任


 さて、おさらいも含めて、歴史を振り返ってみよう。


 ケルシール女学院。


 かつて原初の貴族の一夫多妻制、そして女性に当主継承権を認めないというウィズ王国の施策を女性差別だとして一大論争となったのが発端。


 時の王は、その解決策として当時、実業家であり教育者でもあった女傑、ケルシール・ノトキアに当時男爵を与えウィズ王国史上初の「爵位を持つ女性貴族」の誕生させた。


 ウィズ王国においての爵位を与えられた貴族は、ウィズ王国に貢献する役割が求められるとは何回か述べたが、ケルシール家に与えられた役割は、男女平等の施策を実施せよといったものだった。


 彼女は、まず論争の最大の焦点であるウィズ王国の一夫多妻、当主を男子以外に認めないという二つについて、法律上で認められているのは原初の貴族のみであることに注目する。


 それ以外の子爵以下の上流の人間にとってはあくまで原初の貴族に倣う形である「愛人」であることをそのまま性別を逆にして利用することにした。


 まずケルシール男爵家は女性にのみ当主継承権を認めることとする。


 そして原初の貴族の一夫多妻の目的が、血を絶やさぬことであることという目的もまた転用して、一妻多夫を導入する。


 更に貴族としてのケルシール家の運営においての支配体制の幹部を彼女の息のかかる各分野においての女性有力者を招聘して固め、強固な体制を確立、それは現在でも続いている。


 更に教育者としても名を馳せていた彼女は、男女差別の論争の一つである「教育格差」の解決手段のため、貴族令嬢専門の教育機関として、ケルシール女学院を設立した。


 そして15歳から17歳までの2年間、男爵以上の貴族令嬢たち全寮制で入学させることを法律で義務づけ、同時に王からケルシール女学院を領土として与えられた。


 これがケルシール女学院の設立経緯、教育格差をなくすための目的は、結果貴族令嬢から修道院、シェヌス大学へ進む人物も出てきており成果を出す。


 その功績が認められ、男爵から子爵へ昇爵、更に爵位を持つ女性男爵も複数誕生し、まだまだ少数であるものの、爵位を持つ女性貴族も誕生し始めた時だった。


 当時のノトキア子爵家は更なる、教育施策を打ち出す。


 それは特別入学枠の創設。


 これまでの爵位を持つ貴族令嬢のみという入学資格を緩和し、能力のある淑女を参加させるという方策を打ち出す、特別入学枠を創設。


 つまり入学対象者を庶民にまで広げ、様々な分野に才能をもった人物を入学させ、上流と交流を持ち、世界で通用する人材の育成を目的として創設された。結果今では全生徒の三分の二が特別入学枠で入学している。


 結果、上流との繋がりを持つ庶民が出てこれもまた成功を収め、優秀、有能な人材を多数輩出するに至る。


 と、以上が表の事情。



 ノトキア子爵家の活躍により男女差別の論争が解決したとは「事実」ではあるが裏の「真実」はそれとはまた別にある。



 一流の教育者であり実業家、そして一流の政治家でもあったノトキアは、極めてリアリストであったと記録に残っている。


 彼女は男女差別を仮に解消したところで「女では他国から舐められる」とは真実、政治的パフォーマンス以上の成果は出ないことを理解していた。


 故に王からの命令である男女差別の解消を「不可能」と判断したノトキアは、ケルシール女学院を「女の国」として運営し、自らを女王として君臨、女が統治する国とはどういうものかと理解させること目的とした。


 結果「男女差別には当然反対するが、血を絶やさぬという意味での必要悪としての一夫多妻制度、国家運営に必要な男子のみの当主継承権は賛成」という状況を作り出すことに成功する。


 そして特別入学枠の制度についても裏がある。


 当時、その一夫多妻制度について貴族令嬢の中から第一夫人を含めた複数の妻を選んでいたのだが、家と家との関係と利権が絡み、女性側にとっても、己の美貌を使い男を利用して成り上がりたいという一定層いることから、所謂ハニートラップも問題となり腐敗が進行した。


 王から命じられた当時の当主は、教育格差をなくすためという名目の下、問題そのものを自分の管轄下に置くことで解決を図る、つまりハニートラップで成り上がりたいのならばケルシール女学院の支配下に入れと宣言、当主直々に女衒まで始めたのだ。


 その成り上がりたい愛人候補たちを公式に認めるのもまた特別入学枠である。


 その枠を使わずに上流の男に接近することは女王を敵に回すという事、現にハニートラップで不興を買い、行方不明者も多数出ているウィズ王国、だが裏を返せば特別入学枠を使えば認められるということで根絶とまではいかないが鎮静化に成功する。


 結果、建前と本音両方で大きな成果を上げることになった。


(つまりケルシール子爵家は男女平等を体現したのではなく、男女差別を利用しているということだ)


 馬車の御者台に座り、荷物の生活に必要な雑貨やら何やらを一切合切を詰めて、いつものスーパーペガサス号を操りながらのんびりと動く。


 ちなみに神の力を使い馬に洗脳できるかどうか聞いたところ「動物にも効くが意味がない」とのこと。そうだよな、動物に言う事を聞かせるって難しいものな、意思疎通手段が全て違う訳だし。


「お、見えてきたぞ」


 来るのは二度目か、再び出迎えてくれたこの刑務所にも利用されている分厚い壁、生徒達が入れる門は一つだけだという。


 俺の赴任は当然に知られているので、来訪を察知したのか正門の詰所から複数人の女性憲兵が出てくる。


 トップは年は30手前ぐらい修道院出身の武官大尉が敬礼して、同じように修道院の制服に身を包んだ俺は答礼をする。


「お世話になります、神楽坂イザナミ文官大尉です。これが身分証明証、臨時講師としての着任の為、伺いました」


「報告は受けております、ようこそ神楽坂大尉」


「流石ケルシール女学院、憲兵も全て女性なんですね」


「国家施策の為ですから、それに憲兵関係なく、殿方は女性に弱いですから、手心を加えてしまうかもしれませんから」


「はは、肝に銘じておきます。どうですか、実際のところの治安については?」


「着任して1年になりますが、事件で呼ばれたことなんて一度もありません。平和そのものですよ、これでは税金泥棒と言われても言い返せませんね」


「……ですがそれが一番です」


 とお互いに笑いあうと、その憲兵大尉が主導の下、所持品検査が行われる。


「異常ありません、ご協力感謝します。それと校舎の前でお迎えがあるそうなので、その方と話して欲しいとのことです」


「わかりました」


 と第二の門が開かれて、御者台に乗り馬を進める。


「…………」


 敷地内に日は落ちており、人っ子一人おらず街灯が照らすのみだ。


 日課時限によれば、現在は自由時間みたいだが、寮からの外出は許可を得ない限り禁止されている。


 長閑な田舎道、平和そのものか、確かにそのとおりだ。


 っと見えてきた、教育棟、つまり教職員の為の建物に辿り着いた時、1人の女性教職員が立っていた。


 俺は御者台から降りると、女性職員が元気よく挨拶してくれた。


「初めまして、神楽坂先生! 私は歴史担当のルウと申します!」


「初めまして、神楽坂です、歴史担当ということは」


「はい! 神楽坂先生と一緒です! 学院長より神楽坂先生の指導教員を仰せつかりました! 正式な挨拶は明日改めて! 学院長が執務室でお待ちですよ!」


 と体育会系なノリのルウ先生に案内された先、学院長室に案内される。


「学院長! 神楽坂先生を連れてきました!」


 と中から「入りなさい」という返事を待って「それでは私はこれで」と立ち去るルウ先生。


 入るのは二度目の学院長室。



「招聘に応じていただき、感謝します、神楽坂文官大尉」



 出迎えてくれたセアトリナ子爵。



 さて、ゲームスタートだ。







 今回の俺の立場は、ケルシール女学院の臨時講師、担当科目は歴史。


 無断で立ち入るだけで性犯罪の法律が適用される程の徹底した男子禁制、そんな女学院での俺の運用はというと。



 特別入学枠の創設に続く、第三の改革である男性講師の臨時運用、その改革のために選ばれたのが、神楽坂イザナミ。



 俺が赴任するにあたって、王子は流石で、陰謀論を最大限に利用してくれた。


 実際は存在しない陰謀、とはいえ今回はマジで公に出来ない事情があるため、たっぷりと含みを持たせて情報を流すようにパグアクス息に依頼してくれた。


 周りの反応は凄く、挙げればキリがない程の陰謀論が走っているが、むしろそれを隠れ蓑にして好き勝手やらせてもらった。


 そして既に、セアトリナ卿には今回の俺のやり方を話してある、とはいえ、実際はどうなんだろう。


 男女差別を利用しているとはいえ、女王の彼女が男の俺に従うのは……。




「神楽坂文官大尉、貴方の要望通り絶対服従を誓いましょう」




 このタイミング、流石、そう、今回の件について俺の好き放題やらせること、その際に俺の要望は理由を聞かず無条件で通すこと。


「ご協力、感謝します」


「いいえ、感謝をしているのは私です。結局貴方に命を賭けさせることになってしまった事」


「構いませんよ、さて、今回の私の身分については確認ですが」


「はい、繰り返す通り、貴方は臨時講師として着任してもらいます」


 自分の着任については「短期出向扱い」という状況になった。


 つまり身分と階級はそのままに、ケルシール女学院としての教師として着任、それでいて給料はケルシール女学院から出る扱いになる。


 臨時講師の任期はセアトリナ卿の専権となっている。


「臨時講師と言えど、基本的には普通に教師としての待遇に違いはありません。今日付で貴方は、ケルシール女学院の歴史担当の教師となりました」


 そう俺の担当は歴史、それは何故かというと……。


「行方不明のヒネル先生については?」


「相変わらず何処にいるのかわかりません」


 そう、ヒネル先生が歴史担当で、その枠を補充するためにという名目で赴任したからだ。


「周りの反応は?」


「私以外全員が未だに産休と認識しています。ただ、突然いなくなったので失踪したのではないか、なんて噂も出ていますが」


「失踪か……」


「つまり神楽坂先生の雇用は男性教諭の実験である同時に後任が見つかるまでの間という方便を通しています」


「分かりました」


「先ほど案内したルウ先生ですが、彼女がヒネル先生が担任をしていたクラスの副担任をしていて、同時に担任へ昇任、神楽坂先生は副担任をしてもらうことになります」


「さて我が女学院の生徒の構成は2学年合わせて総員111名、その中で特別入学枠が78名、そして一クラス10名前後の学年混合の少人数編成。授業はそれぞれの教室で学年別に行われます」


「分かりました、セアトリナ卿、っと学院長と呼べばいいですか、一つ質問が」


「なんなりと」


「前にフロアが言っていた私に興味があるという特別入学枠の生徒たちは何人いて、どのクラスに所属していますか?」


「4人います、そして神楽坂先生がもつクラスの生徒の中に全員在籍しています」


「……彼女たちは、私の愛人候補達と解釈していいですか?」


「はい、今回の着任にあたってクラス替えを行い、彼女たちを配置したのは私ですから」


 なるほど、邪神事案だと言いつつちゃんと、教育者として政治家としての動きもしているのか、流石だ。


「とはいえ腑に落ちません、私は官吏ですよ、愛人を抱える程の収入はありませんが、それはどうして?」


「何か誤解をされているようだけど、私は女衒ではありますが、あくまで美貌を持った子たちが誰を選ぶかについては本人の自由意志です。人身売買みたいな真似をしたところで生むのは確執、買うのは恨み、結果足元をすくわれますもの」


「更に本人が誰にしようか迷っている時は、見合いを斡旋したりします。その他にも男受けする格好やメイク、所作についてもアドバイスします」


「…………」


 なるほど、確かに誤解していた、物凄い分かりやすく言うと結婚相談所みたいな部分も含まれているのか。


「ただ会ったことも無い俺に対して興味と言われても」


「だからこその女衒です、それが今回であると、生徒達は言っております、実際に会って判断して、それで好みで無いのなら乗り換えればよいのですよ」


「…………色々言いつつも、生徒達に先生との恋愛を勧めるわけですか、凄いですね」


 ここでセアトリナ卿は吹き出す。


「失礼、そうね、確かに一般には禁忌よね、でも障害があればある程盛り上がるものでしょう?」


「その反応も凄いような、特別入学枠は美貌で採用したりするんですか?」


「まさか、無論美貌は加点要素ではありますが、それで合格を決定したりはしません。選抜方法も試験だったり、推薦だったり、スカウトだったり、様々ですよ」


「例えば貴方がよく知っているミローユは私がスカウトしました。私には色々な教育界の人脈があって、日々私の元に、地元の教育者の中から有力候補たちが上がってくる、私はその情報を元に、国内中を見て歩き、適正があればスカウトする、ミローユはそのパターン」


「ケルシール女学院は、庶民に門戸を開いているとはいえ品格は落としてはなりません。だから素行調査が命、面接も何度も実施します、素行不良者はどうやっても治らないから、ただし生まれを左右しない、何故ならそれこそ貧困層でも品格を持った人物はいますから」


(素行不良者はどうやっても治らないと断言するのか……)


 教育者らしからぬ、いや教育者だからこそか、思えば一流の結果を出している人間の共通事項は、一流のリアリストだという点だと思う。


「私に興味があるという女の子たちの詳しいことを知りたいのですが」


「それは資料を読んだ方が早いけど、実はあなたに興味を持っている特別入学枠の生徒は1人だけで、後は貴族令嬢3人よ」


「…………」


「神楽坂大尉」


「なんです?」


「答えられないかもしれませんが、邪神は何処に潜んでいると思うのですか?」


「潜んでいるも何も、ぶっちゃけて言ってしまえば、セアトリナ卿以外全員が容疑者です」


 ここで初めて驚いて立ち上がるセアトリナ卿。


「ぜ、全員って! 私以外が、その!」


「まあ、落ち着いてください、詳しくは言えませんがセアトリナ卿が邪神に操られているかどうかを別にすれば、神々は私に対して姿を誤魔化すことができないんですよ」


「…………」


 理解はしておらず納得もしていない様子、となるとある程度の説明はいるか。


「セアトリナ卿、今の状況、おかしいと思いませんか?」


「おかしいって、何が言いたいのです?」


「そもそも神と人自体は、本来であれば勝負にならない。勝つことが目的なら最初から神のフィールドで戦えばいいじゃないですか?」


「そ、それはウィズ神を恐れて、このような戦い方を」


「となると、ますます今回のことに意味がなくなる。神との繋がりを噂されている私に喧嘩を売ってどうしようというんです? ウィズ神の怒りを買うだけの行為をどうしてするんです? しかも私を呼べというだけで正直私にどうして欲しいのです? つまり何もかも分からないというのが今の状況なんですよ」


「待ってください、それこそ神楽坂大尉を操って」


「その可能性は低いですね、そもそも私を思い通りにしたところで、メリットがほとんどない、俺が邪神でウィズ王国が目的だったらモストを操ります」


「え?」


「原初の貴族の中では飛び抜けた能力、予算決議権という別格の権力を独占する超名門の侯爵家の次期当主、方法と目的と別にすれば抜群の政治手腕も持つ、それだけの高い能力を持ちながら周りをイエスマンで囲む自己承認欲求の塊、これ以上ない相手です」


 実際、一番最初のロード大司教と戦った時、俺を計る為のスケープゴートとしてウィズは同じ理由でモストを選んだわけだからな。


「…………」


 一方、神楽坂の言を聞いてセアトリナ卿は驚いていた。


 原初の貴族の次期当主の悪口を私の前ではっきりと言う。


 神楽坂のこういった言動は「王子の後ろ盾があるから好き放題言えるだけ」という「中傷が通説」となっているが、それは間違いなのはセアトリナ卿は知っている。


 何故なら、この神楽坂の言動は修道院の時から変わっていないのだから。


「……分かりました、そもそも邪神は混とんをもたらす存在、正直正常な思考を求めることが無意味かもしれませんね」


「ん-、どうでしょうね」


「え?」


「混沌はあくまで結果で、理性は持っていますよ。もちろん「狂っている」邪神もいますけど、この邪神は理性はあるかなと」


「理性……となれば、私は操作されているということになりませんか?」


「はい、いうか、現に教職員が発狂したり、失踪したヒネル先生が産休と認識されたり、既に邪神の影響はケルシール女学院全体に及んでいます」


「っ!」


「ですが崩壊していない、教職員を発狂までさせているにも関わらずです。つまり操作の具合を調整してと宣言している。故に日常生活に支障をきたさないレベルにまで落とし込んでいる、不自然な部分を不自然に思わないといった程に……、つまり、既に邪神はケルシール女学院の関係者として認識されているのです」


 ここまで言った神楽坂の言葉でようやく気が付くセアトリナ。



「絶対服従とはそういう意味ですか!」



「はい、今回の戦いは、私1人で戦わなければなりません。だからこその絶対に服従なのです」


「…………」


 きゅっと唇をかむセアトリナ。


「私は、何の戦力にもならないと言ったところですか」


「まさか、というよりも真逆です、セアトリナ卿が私にとっての生命線です。だからこそ疑問を持たず、私の言ったことに従う事なのですよ」


 淡々とした言葉にセアトリナ卿はため息をつく。


「……貴方にとっては命懸けだものね、死ぬことだけは避けないと」


「? みんな勘違いしますけど、それは別に構いませんよ、正確に言えば私の死は敗北でありません、詰みとは違いますよ」


「……え?」


「俺が死ぬことをちゃんと周りが知っている、状況がはっきりしていますから、つまり負けならいいんですよ。後は王子が何とかしてくれます」


「…………」


 セアトリナは神楽坂をじっと見る。


 先程から神楽坂は情報は必要最小限度にしか出していない。さっきの邪神の推論も、多分出したくなったのだろうが、自分を通して邪神を知られるリスクよりも自分の信用を得たいと考えたのか。


 そして命を懸けるというのも状況を理解していないのではなく、それこそ神楽坂はちゃんと理性を持って取り組んでいる。


 ありがちな陶酔感が皆無、こちらが考えるよりもずっと向こうを見ている。


 神楽坂は変わらない。



 娘が「冴えない」と侮った神楽坂イザナミそのままだ。



(やはりボニナ族とマフィアが戦いが虐殺ではなく戦争だったのか、それが期せずして理解できた、ネルフォルとクォナが惚れるとはこういうことか……そう考えれば納得)


「セアトリナ卿?」


「なんでもありません、そうだ、それと貴方が着任にあたっての要望ですが、その一つだけ衣食住の住について」


「もしかして風呂の件が駄目になったんですか!?」


「え、え、い、いえ、それは、何とかしました、ただ人の口に戸は立てられぬ、貴方のことは既に噂になっています、貴方の住まいの場所も」


「ああ、それは別に構いませんよ、来る人もいないでしょうし」


「……そう、ですね」


 と歯切れの悪いセアトリナ卿であったものの。


「明日は初日です。定刻までに礼拝堂まで来てもらえれば、ルウ先生が席まで案内します。その後は、ルウ先生について学んでください。早速ですが明後日から授業を持ってもらいますよ。それとこれがケルシール女学院の校則冊子と地図、職員証と生徒たちの日課時限、受け持つクラスの名簿と全校生徒の名簿、全職員の名簿です」


「ありがとうございます」


「それでは、何かあればいつでも来てください、神楽坂「先生」の居住場所は地図で印をつけてあります」


 とこんな感じでセアトリナ卿の対面が終わったのであった。



ここ一か月現在、色々な小説のネタが突然思い付いてしまい、忘れないうちにそっちを書いている状況です(汗)


間隔が空いてしまい申し訳ありません。


投稿期間は空いても自分に何かない限りはちゃんと終わりまで書きますし、エンディングは決めてあります。


お待ちいただければ幸いです。

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