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第3話:神楽坂の賭け


 王子は出頭した神楽坂とルルトに、本件が邪神事案であるという現状を伝え、ケルシール女学院への潜入調査だと告げた時、神楽坂は表情を崩すさず、何かを考えたあと。


「ウィズ、ルルト、色々聞きたいことがある、言えないことは言わなくていい」


 と聞いた。


「この条件で、神の力を感じ取れるとのことだが、それって普段から分かる事なのか?」


「だが神であるか人間であるかは力を出さない限りは分からないよ、だから一般人に紛れていたら分からない」


 ルルトに続いてウィズも発言する。


「更に邪神と言えど、人に善をもたらした神も、アーティファクトを悪用されて結果邪神と認定された例もありますよ」


「ということは、今回の犯人である邪神と聞いて心当たりはない、ってことか?」


「うーーーーん、正直邪神というのはウィズも言ったとおり「人間にとって害悪だと認定された神」というのが定義だからねぇ、一概には言えない」


「2人が知る人間に害悪があるという意味での今回の犯人である邪神に心当たりは?」


「無いね、つまり僕は犯人が分からない、ウィズは?」


「私もありません、それに神楽坂様、神話に記されていないというだけで、それこそ「人に害悪をもたらす」と限定しても、凄惨な事例はかなりありました」


「…………」


「ただ一つ言えるのは……」




「人に害悪をもたらす邪神は、私たちにとっても忌むべき存在、という意味においては変わりありません」




「……なるほど、次に今更ながら俺の体である使徒について、どう定義すればいいんだ?」


「「神の理にある程度適応した人間の身体」ということです」


「俺の加護を得ない場合での単純な肉体的な強さはどれぐらいだ?」


「使徒になったから強くなるという事はありません。不老不死を伴わない不死身が定義、あくまで神の力に耐えうるようになったというだけです」


「ふむ、ルルト、普段から使っている神石を使徒以外が使った場合はどうなる?」


「一般人なら耐えられず「壊れてしまう」だろうね、そういう意味においての適応だよ」


「つまり使徒と言えど神の加護無しに神との喧嘩は成立しないってことか」


 そう、神と人の喧嘩は、そもそも成立しない。


 それは最強剣士のトカートとルルトの勝負のとおりだ。


 結果は簡単、文字通り捻じり殺される。


「…………」


 ふむ……。


「ルルト、フメリオラを呼べるか? 出来れば今すぐ」


「え? フメリオラ? 呼べるけど」


「早速あの時の借りを返してもらう、いくつかアーティファクトを作って欲しいんだ」


「ちょっと待て神楽坂!」


 黙って聞いていた王子が神楽坂に呼びかける。


「さっきからやけに落ち着いているが、邪神事案でこの状況を鑑みれば、事は急を要するとは思わないのか?」


「正確には急を要しますが猶予があるのが現在の状況ですよ、もちろん余り遅すぎるのもダメですけど」


 とあっさり断言した。


「今回は、そもそも論としていつもの作戦が使えない。とはいえ無手無策は自殺行為、その為のフメリオラですよ」



――数刻後



「状況は分かったよ、んで何を作って欲しいの?」


 ルルトに呼び出されて執務室に来て説明を受けたフメリオラの一言がこれ。


 今すぐ、という言葉のとおり、ルルトはアーティファクトを使ってフメリオラと連絡を取り神の速さで合流ここに来た、これを数時間でやってのけるのだから、やはり神というのは規格外だ。


 フメリオラの言葉を受けて神楽坂は答える。


「まず最優先は通信機器、これだけは何としても持っていく」


「? 作るも何もユニアが映像付きのアーティファクトを持っていただろう、あれは簡単な通信機能もつけてあるけど」


「アレは目立ちすぎる」


「小型化しろってこと?」


「違う、手に持っていくなんて馬鹿な真似はしたくないって意味だよ」


「?? 手に持つってのは馬鹿な真似なのかい? バレてしまうから?」


「ちがーう、手に持つというのはそれだけで、制約されてしまうって意味、つまり」




「俺の体の中に直接埋め込めて動きに障害とならないもの、任意でオンオフが出来て、後で取り出せるものがいい、そして出来れば第三者が取り出そうとした場合は、俺が死ぬとかにすればなおよし」




「…………おーう、本気も本気か、やっぱりイカレているねぇ」


「イカレているいうな、外部連絡手段は、最優先であると同時に、もっとも対処されてはいけないものである、だが神相手となるとバレた時のことも想定しないといけないのさ」


「想定って、バレたら殺されるんじゃないの? そう書いてあるじゃない?」


「どうかな? まあ、俺は大丈夫だと踏んでいるけど、保険は必要だ」


「……保険か、そうだねぇ「我々弱い者」には必要なものだ、今回は外部協力も得られないからね」


「それは正直大した問題じゃないよ」


「え!? だって君は今まで仲間の力を得て功績を挙げてきたんだろ? つまり大ピンチで、だから俺を呼んだんじゃないのか?」


「そうだよ。んで今回の俺の保険って意味はそうじゃない、今回のゲームはな、俺の負け、つまり俺が死ぬなり廃人になるのなら、結果がはっきりしているからいいんだよ」


「いいんだよって」



「一番避けなければならないのは、引き分け、これが最悪の形であり「詰み」状態となる」



「言っている意味がよく分からないが」


「つまり俺が死んだのか生きているかもわからず邪神の脅威が去ったのかもどうかも分からないことだよ、これが今回の引き分けだ」


「……随分冷静だね、既に死を覚悟して任務にあたるってことか、凄いね」


「アホか、なーにが死を覚悟してだ、俺は絶対に死にたくなんてないんだよ、だから呼んだのだろうが」


「え、ええー!」


「いいか? 神と違って人間は必ず死ぬんだよ。だから俺は死ぬまでに、美味しいもの一杯食べて、色々なところに旅行に行って、お芝居だって見たいし、盤上遊戯も強くなりたいし、美術鑑賞に芸術鑑賞も含めて、もーーーやりたいことが盛りだくさんで困ったものだ」


「となるとだ、今回の任務は何としてでも勝ちに持っていきたい。んで今回の任務で俺が持てる武器はアーティファクト以外考えられない。だからアーティファクトの神様であるフメリオラの技術に俺の生存確率の全てがかかっている。だからこれから俺と打ち合わせだ。それと王子」


「な、なんだ?」


「今回のことは仲間には極秘に、私がケルシール女学院の臨時講師に着任後に今回のことを仲間に知らせてください。その時の任務付与については王子に任せますが、ウィズとルルトだけは、ケルシール女学院を監視させることを徹底させてください、それと」



「申し訳ありません、これからの打ち合わせは私とフメリオラ、ルルトとウィズだけでやります。王子はケルシール女学院の臨時講師としての赴任の件は了承すると早急に伝えると同時に、「なるべく遅い日」を赴任日に指定願います。ただし融通を利かせすぎると駄目なので、通常の講師を雇う上での範囲内でお願いします」



 王子の目を見てはっきりと告げる神楽坂。


 覚悟は決まっているとはフメリオラの言葉だが……。


「すまない、国家の重要事態は私が指揮をとらなければいけないのに、結果お前に全て任せてしまうことになるか」


「まさか、私はタダの先兵ですよ。それは邪神も分かっているからこそだと思うので」


「え?」


「よって先兵のできることは与えられた状況で生き残るために打てる手はすべて打つこと、その為のルルトとウィズとフメリオラ、特にフメリオラが作るアーティファクトが攻略の生命線なんですよ」


「ああ…………」


 ん? とここで思案顔になる。


 今神楽坂は何といった、そう……。


「か、神楽坂!」


 執務室を後にしようとした神楽坂達を呼びとめる。


「お前、今、攻略といったよな、それだけじゃない、聞き流してしまったが、お前、今回の事案を」



「はい、ゲームです」



「ゲ、ゲーム……」



「邪神が仕掛けた、命がけのね、だけどゲームなので、楽しん攻略してきます」



 と笑顔で言い放って、執務室を後にした。




――現在・執務室




「…………」


 そう、こんな感じ、何処か締まらない感じ、神楽坂はいつものとおりだった。


「どうしたんです?」


 と話しかけてきたのはネルフォルだったが……。


「いや、神楽坂は今回のことを「邪神が仕掛けた命がけのゲーム」だと言っていたことを思い出した、だから「楽しんで攻略してくる」とさ」


「……流石ダーリン、それをあのいつもの冴えない感じで言ったのですか?」


「さ、冴えないって、お前な」


「今のは私の最大限の賛辞ですよ、無論「男性として」のね」


 ネルフォルの言葉に「余りからかうなよ」とくぎを刺す王子。


 まあ確かに、いつものとおりの神楽坂の言葉で、自分もその言葉に安心したものだ。


(頼んだぞ)


 と執務室の窓から外を見て、想いを馳せる王子であった。




――その数刻後・ケルシール女学院・神楽坂自室




「先生それロン、タンピンドラドラ、満貫」


( ゜д゜) ←神楽坂


「逆筋のひっかけって、ええーー、お前ら初心者じゃ」



「つーか、先生、本当に弱いよね、持ってきたの先生でしょ」

「先生、手を見せてよ」

「って面前でダマなのにイーハン? よくもまあ、そんな強気の打牌を」



「弱いも何も流れがきてたの! これは上がる流れだったの! だからダマで打ってたの!」



「うわぁ」

「先生、流れって存在しないからね」

「そもそもこのギャンブルは、確率論で計算した方がいい」

「運に惑わされてしまうと、流れに頼るんだよね」

「先生本当にギャンブルとか向いていないよね」



「だーー!! うるさい!! 次は勝つ!!」



「じゃあ、先生、次は私の相手してね」

「だったら私は抜ける、もう十分に勝ったし、食券盛りだくさん、これはデカいね」

「卒業したら食券のお金で卒業旅行しようよ!」

「いいね! そう決まれば本気を出さないと」

「ってなわけで」




「「「「今日は私たちが満足するまで、何回でも相手してもらうからね!!」」」」



「お前ら少しは手加減しろよ箱入りお嬢様よ(´;ω;`)ブワッ」



 と洗牌する。


 ここは俺のケルシール女学院の敷地の外れにある今回の俺の拠点。


 目の前にいるのは、俺の教え子たち4人。



 さて、話は遡ろう、俺が赴任するその日まで。




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