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仕立て屋のおばちゃんと神楽坂:後篇


――社交界の2日後・夜・ワカユ店前



 店の閉店間際の時間に、豪華な馬車が1台止まる。


 使いの物が扉を開く形で2人の身なりのいい男が下りてきた。


「ここだな、ワカユ仕立て屋」


「ああ、行くぞ」


と店に向かっていくのであった。




――店内




「そういえば、あの子は社交界上手くいったのかなぁ」


 と閉店作業をしながら独り言をつぶやく。


 社交界、王国貴族と王国より上流と認められた人物の身が出席できる場、出席者は紳士も淑女も着飾り、豪華な料理が供される華やかで煌びやかな世界は庶民の憧れ。


 だがその実、泥沼の人間関係戦争だとというのはよく聞くし、たとえ王国貴族であっても価値が無ければ無視されるような世界だそうだ。


 あの神楽坂という修道院生は自分で向いていないのをよくわかっているから、功績は挙げているみたいだけど、社交界でという話は聞かない。


 だけどあの利発そうな子は、それこそ「ヤリ手」という感じで、政治手腕もありそうだから社交界は本当にチャンスなんだと思う。


 是非成功して、これからステップアップしてほしいと思うけどと、心配していた時だった。


「失礼する」


 と玄関の扉がカランカランとなる形で2人の男が入ってきた。


「…………」


 閉店間際のこの時間、この2人の立振る舞い、どう考えても客じゃない感じ、警戒心を強めるおばちゃんに男が名乗りを上げる。


「突然の来訪失礼します、我々は王国商会会長ウィアン・ゼラティストの使いの者です、今回の来訪の用件は一つです」


 と豪華な箱を取り出す。


「ワカユ仕立て屋のトズナ・ワカユさん、貴方はこの度、功績が認められ、王国商会より一つ星を与えられることになりました、おめでとうございます」


 と豪華な衣装をが施された星が一つ入った箱と、ウィアンのサイン入りの羊皮紙を差し出し、恭しく差し出す。


「「…………」」


 だがいつまで経っても受け取る気配がない、怪訝に思って顔を上げると。



 おばちゃんは2人を不審人物を見る目を見ていた。



「あ、あの」


「はーん、今どきの詐欺ってのは、こういうことをするのかい、そうだね、確かに星に憧れなかったというのなら嘘になる、だけどね」


「え? え?」



「そこまで落ちぶれちゃいないんだよ詐欺野郎!!」



「ええーー!!! いや、あの!! 我々は!!」


「功績!? 悪いけど、そんな功績あげちゃいないんだよ!! どうせ次はこの星を渡す代わりに金を寄越せというんだね!? 全部お見通しだよ!! 憲兵呼ばれない内に帰れ帰れ!!」


「「ちょちょちょちょ!!」」


 と勢いよく追い出されてしまった。



「「…………」」


 ささっと、馬車の近くに戻り絶句する2人であったが。


「ど、どうする?」


「どうするって、こんなのは完全に予想外だぞ」


「だ、だが、追い返されましたなんて、会長に言えるわけがない!」


と2人が困っている時、ふと仕立て屋に若い1人の男が来店する。


「あ! アイツは!」


「くそう! 折角先んじたのに!」


「いや、渡りに船だと思おう! もう一度行くぞ!」


と再び店に向かうのであった。




――店内




「おばちゃーん、いるー?」


 と神楽坂が来店した先、おばちゃんはぷりぷり怒っていた。


「どうしたの?」


「いやね、詐欺野郎が来てね、全く、場末の仕立て屋だと思って舐めてんだよ!」


「あらら、本当に何処にでもあるもんだね、大丈夫だった?」


「もちろん、叩きだしてやったよ!」


「おおー! 流石!(パチパチ)」


「だてに40年仕立て屋をやっちゃいないよ、ってそういえば、あの子の社交界はどうだったの? それを教えてに来てくれたんでしょ?」


「うん、それについてなんだけど……」


 と言いかけた時、扉が開き2人の男が入ってきた瞬間。


「あ! また来たな詐欺野郎共!」


 とおばちゃんが凄い剣幕で怒る。


「……へぇ、コイツらが?」


「ああ、そうなんだよ、星を与える代わりに金をせしめようとした奴らなんだ!!」


「まったく、おい、そこのお二人さんよ」



「ちょっと待ってください神楽坂大尉!!」



 という言葉に俺は歩みを止める。


 なるほどなるほど、そういうことですか。



「え? え? お兄さんの名前を知っているなんて、ひょっとして知り合いだったの? だったら悪いことをしちゃったかな」

「騙されないで、知り合いでも何でもないだよ」

「え? だってお兄さんの名前……」

「おばちゃん、こういう相手の名前を知ってるぞというのは、ハッタリの基本中の基本なんだよ。気を付けて、俺の祖国で家族の名前を騙って金品をだまし取る詐欺が、深刻な問題になっているんだ」

「まあ、ろくでもないことを」



 という会話を「( ゜д゜)」みたいな顔をして聞いていた2人だったが、2人はしょうがないとばかりに意を決して、懐からある者を取り出す。


「神楽坂大尉、このバッジを見ればわかるだろう?」


と光り輝く銅色のバッジを俺に見せた。


「? なんだそりゃ?」


「なんだそりゃじゃないだろうよ! 王国商会の幹部バッジだよ! お前のところのヤド・ナタムがつけてるやつ!!」


 はーん、今度はそう来ますか。


「お兄さん、あれって幹部商人バッジなの? しかもヤド・ナタムは知っているよ、大物じゃない……ってそういえばお兄さんのところのウルティミス連合都市に所属していたよね? まさか」

「落ち着いておばちゃん、バッジなんて本物かどうかわからないでしょ? それにこういう仲間の名前を出すのも、脅しとハッタリの基本中の基本、特にマフィアが好んで使う手段だね」

「ま、マフィアって!?」

「安心しておばちゃん、俺ちょっとだけ裏社会に顔が利くんだ」



 すっと俺は2人に対峙する。



「おい、マフィアなら分かっているな? いいか? 俺がここにいる意味を考えろ、俺が神楽坂に見えているのは、俺が非戦争じょうたいだからだ、わかるな? それを理解したなら引き下がった方がいいんじゃないか?」



「だからマフィアじゃねえよ!! 王国商会の幹部商人だつってんだろ!!!」


「バッジなんていくらでも偽造できる、誰が信じるかボケが、そもそも幹部商人と言えば全員が大物、それが2人もここにいる事態が変過ぎ、はい論破」


「こ、こ、この野郎!! 分かれよ!! ウィアン会長の命令なんだよ!!」


「はいはい、わかったわかった、言うてみ、何の用件か言うてみ、王国商会長殿が何の用件か言うてみ!」


 と俺の態度にプルプルと震えつつ、もう一度豪華な意匠が施された箱と、羊皮紙を取り出す。


「この度、功績が認められ、王国商会より一つ星を授与します、おめでとうございます」


 と恭しく差し出す。



「「…………」」



 2人して、それを一瞥すると。


「おばちゃん、功績ってなに?」


「はん、王国商会に認められるような功績なんてあげちゃいないよ」


「はーーん、だそうだぜ? 功績とはなんだね? 言うてみ! 王国商会長様がお認めになった功績がなんだか言うてみ!!」


「そそ、それは、その、な、長年、被服業界に尽くした功績で」


「ふーーん、おばちゃん、それで星ってもらえるの?」


「まさか、だったらここら辺一帯は、全部老舗だから全員が貰えるね。それにここを仕切る地区商会長はヤリ手で金持ちなんだけど、ここ5年ずっと星を得る為に頑張ってきて、それでも尚与えられていないからね」


 と会話すると俺は2人に向き直る。


「ほーん、だそうだぜ? 星を授与するという長年の功績とやらは、他の店にあげているんのか? あーん? 言うてみ!? あげているか言うてみ!?」


「そ、それは、その」



「けけけ、化けの皮がはがれたな詐欺野郎共!! 帰れ帰れ!! 俺はこれから大事な用があるんだよ!」



と2人を追い出した。




「「…………」」


 再び馬車に戻る2人。



「ア、アイツわざとやっているんじゃないか!?」

「ウィアン会長があまり好ましく思っていないのは向こうだって分かっているからな」

「だ、だが本気でやっているように見えるたが」

「う、うむ、神楽坂の普段の評判って、ああいうのが原因じゃないか?」

「どの道、神楽坂がいるってことは、間もなく来るぞ!」

「ああ、折角早く来たんだ、早くしないと!」



 とここで店の前で別の馬車が止まり、中からある人物が下りて仕立て屋に向かう。



「ああ! くそう!」

「しょうがない! とにかく会長の命令を実行すればいい!」

「よし行くぞ!」




――店内




「まったく、話が進まないったらないね」


「怖い世の中だよ、あ、そうだ、お兄さん、あの子の」


「ああ、うん、それがさ、実はその、あの、ごめん!!」


 と勢いよく頭を下げる。


「実はおばちゃんに嘘ついたんだ! 事前に話を通すことも出来なかった!!」


 という俺の言葉に、何かを察したおばちゃん。


「いいよいいよ、お兄さんなら今更だもの。それにいくら辺境都市の駐在官とはいえ、修道院出身の将校ともなれば話せない事情あるんでしょう。んで、今日はそれを話してくれるんでしょ? だったらそれでチャラにしたげる」


「ウルウル、ありがとおばちゃん、んでね、前段階として合わせたい人物がいるんだ」


「合わせたい人物?」


「うん、本当は用件を話した後にしたかったんだけどね」


 と言い終わった時、カランカランと扉が鳴ると1人の男が入ってくる。


「あ、ヤド商会長、お疲れ様です」


 その来訪者に今度こそおばちゃんは目を丸くする。


「ヤド・ナタム! ウルティミス連合会社専務で幹部商人!!」


 おばちゃんの反応を見てヤド商会長は俺に話しかける。


「ん? まだ話していないのか?」


「申し訳ないです、ヤド商会長の知り合いを名乗る詐欺野郎どもが来てね、追い払っていたんだ」


「詐欺? 内容は?」


「星を与える代わりに金を寄越せと、本来なら金なんて要らないし、こんな早く手続きが終わるはずないから、すぐに見抜けたけど……」


 俺の言葉に、顔をしかめるヤド商会長。


「そうか、まあ、そうだよな、そうなってしまうか、ワカユさん」


「は、はい!」


「今回のことの責任の一端は我々にある、神楽坂大尉、説明を」


「わかった、おばちゃんごめんね、さっきの話の続き、実は、色々と話さなければいけないことが」



 とカランカランと再び扉が開くとさっきの男2人組が入ってきた。



「あーー!! また来たな詐欺野郎共!! お前らが来ると話が進まないんだよ!! ヤド商会長! バシッと言っていやってくださいよ! お前らなんか知り合いじゃないって!!」


「…………」


 と2人の男を見て軽く頭を抱えるヤド商会長。


「なあ神楽坂大尉よ」


「なんです?」


「この2人、本当に王国の幹部商人なんだが」


(´・ω・`)エ? ←神楽坂


 やっと話が通じるとばかりに2人がヤド商会長に話しかける。


「お、お久しぶりです、ヤド・ナタム幹部商人」


「お久しぶりです、えっと用件はこの店に星を与えるとか言っていたが、ウィアン会長の意向なのか?」


「ええ」


「悪いが、こういう抜け駆けは無しにしてくれ」


「……会長の意向ですよ?」


「分かっているさ、だが優先順位というものがある。こっちが先だ、違うかい?」


「…………」


「と言われて引き下がれないよな、となればセルカ街長からの意向を伝える「正式な手続きを踏めど、この速さは歪みを生む」とな」


「……やはり見抜かれますか、分かりました、帰ります、星の受勲はいずれ正式に」


「ずいぶんあっさりと引くんだな」


「会長の意向ですから」


「……なるほど、理解したよ」


 と2人の幹部商人は今度こそ帰った。


(´・ω・`)ワルイコトシタカナ? ←神楽坂


「神楽坂大尉……」


(´・ω・`)ショボン ←神楽坂


「まあ神楽坂大尉のこういうところは今更か、ただ状況の説明は頼むぞ、俺だとそれこそ誤解を生みかねない」


 という俺達の会話を目を白黒させて聞いていたおばちゃんだったが。


「おばちゃん、あのね、ドレスを頼んだあの後輩についてなんだけど……」


 という俺の言葉に、何かを察したようだった。


「……まあ、ひょっとして高貴な生まれじゃないかなぁとは思っていたのよ」


「そうなの? アイツ自身は割と身を隠して行動していたはずだけど」


「お兄さんね、生まれついての立ち振る舞いの品の良さって消せないものよ」


 品の良さ、まあ、確かにクォナはもちろんあのネルフォルだって、露出が激しい服を好み性に奔放な男の悪夢を体現した言われていても、あれだけ人気があるのは確かに「品の良さ」があるからだと思う。


「なるほどね、えっとおばちゃん、改めて伝える」


「いいよ、きくよ」


「俺が連れてきた女の子は原初の貴族の一門サノラ・ケハト侯爵家当主ドクトリアム侯爵の娘、ユニア・サノラ・ケハト・グリーベルト、原初の貴族の直系なんだ」


「彼女は元より贔屓にしていた4星の仕立て屋があったんだけど、代替わりしたことで質が著しく低下、つまり「ユニアは気に入らない」と判断し、新しい仕立て屋を探していてさ。その時にミローユ先輩の結婚式のドレスが気に入ったみたいで、俺に紹介を頼んできた。それがあの時の経緯」


「そして先般参加した社交界参加時に披露したドレスは、誇張抜きに上流で素晴らしい評価を得た。これが嘘ではないことは、先の王国商会の幹部商人たちの星の授与が証拠になっちゃったね」


「そして今の上流ではね、今はユニアの他にクォナとネルフォルと社交界では常に一緒にいるようにしているんだよ」


 ここで俺の意図を察したのかおばちゃんは目を見開く。


「クォナ嬢とネルフォル嬢って、ひょっとして、あの、王国二大美女!?」


「そう、おばちゃんのドレスは、そのシレーゼ・ディオユシル伯爵家当主ラエル伯爵の直系、クォナ・シレーゼ・ディオユシル・ロロス、そしてツバル・トゥメアル・シーチバル侯爵家当主ラーザインアド侯爵の直系、ネルフォル・ツバル・トゥメアル・シーチバル・デルタントが興味を持った」


「そして俺とヤド商会長は、その名代で来た、用件は簡単に言えば出張依頼」


「出張依頼、またドレスを作って欲しいってこと?」


「そう、シレーゼ・ディオユシル本家で、2人のドレスを作って欲しい」


 と封書を出す。


「これが招待状。これだけでも貴族領に入れるし本家にも向かえるんだけど、実際はクォナの侍女長、ディル男爵家当主マヴァン男爵家の直系、セレナ嬢が馬車で迎えに来るからそれに乗ることになるけどね」


「…………」


 原初の貴族。


 偉大の名を冠する唯一の王初代国王リクス・バージシナの直の配下を始祖とするウィズ王国の大貴族、現在も王族を中心にウィズ王国に君臨し、その力は他の有力国も震えあがるほどの殿上人達。


 その当主の直系の2人が自分にドレスを作って欲しいそうだ。


 黙って聞いていたおばちゃんだったが。


「ぷはは!!」


 と吹き出した、吹き出した理由は。


「お兄さん似合わないね~、そんな出来る男の感じの言動、いつもの感じが分かりやすくていいよ」


「たは~、やっぱり? いやさ、実際問題、大きい事案になったのは事実なのよ、さっきの王国商会会長まで速攻動くほどにさ、俺だとそのフォローが出来ないから今後の対応も含めて諸々相談したいの」


「はいはい、分かった、良いよ、依頼を受けるよ、日時はいつがいいの?」


「いいの!?」


「要は客が凄い偉い人ってだけで、私の腕が認められたんでしょ? それは単純に嬉しいものなのよ」


「ウルウル、おばちゃん、本当にごめんね、一方的に巻き込んでしまって」


「まあ、こういうのも面白いでしょ」


 とカラカラ笑うおばちゃんなのであった。







 そうして、おばちゃんは後日、シレーゼ・ディオユシル家本家に赴き、2人のドレスを作った。


 そのドレスの出来もまた素晴らしく、社交界での評判は上々で、おばちゃんの名声はさらに上がることになった。


 そして地元でも原初の貴族を顧客に持つ、その事実は瞬く間に広がり、我に続けとばかりに名の知れた上流の人物たちがデザインの依頼を出したが、その「被害」は連合都市の保護という形でなんとか封じ込める。


 そして続いて星についてなのだが……。


「結局、辞退したんだね」


 そう、後日王国商会より正式に授与の伝達があったのだが辞退したと聞いて、心配になって店に行って話を聞いてみた。


「うん、まあね」


「理由って聞いていい?」


「んー、あのね、私のところの地区商会長がヤリ手の人なんだけどね、そのやり手の部分なんだけど」


 と切り出したおばちゃんは、


「正直仕事以外にすることが多すぎるのよ」


 という言葉で話し始めた。


「地区商会長は毎日毎日地区の店全部に顔を出して、自分達を繋がりを維持して顧客にもしてる。そして空いた時間は百貨店店長の太鼓持ちとして常に接待をしている。つまりさ、ヤリ手ってそれを苦と思わない「気質」が必要だってことなのよ。それは貴方が世話になった先輩のミローユさんもそんな部分はない?」


「あー言われてみればそうだね「よくここまで気が利くよな」って凄い思う。同時に心労が凄いんじゃないかって心配したんだけど「好きでやっているから苦じゃない」ってあっさり返されたっけ」


「それも地区商会長と一緒だね、だけど私は無理、もちろん星に憧れていたよ? 星が一つでも一流の証だし。だけど星を与えられるってことがどういうことなのか、当事者になって分かったのよね、だから辞退したの」


「それで王国商会とか地区商会長さんの関係は大丈夫なの?」


「王国商会って、そりゃ貴方の連合会社レベルならともかく、私みたいな弱小商店をどうしようってのよ。それに星の辞退自体は、与えられても耐えられなくて辞退するって話は割とあるからね」


「そ、そんな実態があるんだ」


「ちなみに心配している地区商会長はもっとしたたかよ、嫉妬や嫌がらせどころか「原初の貴族を顧客に持つ私とは旧知の仲」だと上にアピールしているもの」


「おおう、そ、それは普通に凄いことだよね、感情論じゃなくて損得勘定で立振る舞いで変えられるって、なるほど、ヤリ手って本当なんだ」


「ね? 私には向かないのよ。だからこそ今の私の気持ちはね」



「社交界が相手ってことに技術屋として凄い燃えてる。だから今私が一番気になっているのは、その3人の貴族令嬢たちは私をどう評価しているのかということよね」



「…………」


 おばちゃんへの評価、それはもちろん。


「今後もお願いしたいって言っていたよ、世辞でも何でもなく」


「よし!! ちなみにそのお嬢様方の言葉は「今後もお願いしたいけど保証しているわけではない」ってことでしょ? つまり気に入らなければ実力がないとみなされ私もまた切られるってこと、いいじゃない、ワクワクする」


「…………」


 大らかで細かいことを気にしないけど、自分の仕事は誇りを持っていて大好き、そんなところが気に入って通っているんだろうなと改めて理解する。だから先輩の結婚式だとか、ユニアに聞かれた時に、おばちゃんの名前をあげたのだ。


「それにしてもさ、お兄さん、貴方は一体何者なの? あのヤド・ナタムとも距離が近い感じがしたし、原初の貴族の繋がりもあるし、勲章だって凄い貰っている、そう考えれば普通はただ者じゃないんだけどさ」


 というおばちゃんだったけど。



「俺はタダの平平凡凡な駐在官だよ、今までも、そしてこれからも。んでおばちゃんも知ってのとおり、今は部下に怒られながら日々好きに過ごす、神楽坂イザナミだよ」



 と返し


「お兄さんの事だから、一言一句真実なんだろうね」


 とお互いにからからと笑うのであった。



:::おしまい


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