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神魂 ~神様の手違いで異世界転移してハーレムチート主人公になった件~ :第伍話:


 アーティファクト。


 世間では「神の道具であり万能の力を持つ」とされているが、実は「神の能力を下位互換した道具」というものが正しい。


「この人形はね、他人に化けることができる能力を持つ神からヒントを得て作り出したものさ。この人形は後頭部の首の付け根のスイッチを押してしまえば、このように元に戻る上。そしてもう一度化けさせるためには、相手の髪の毛が必要だという制約がある」


「とまあこんな感じだけど、どうだった、このアーティファクトの感想は?」


「見事としか言いようがないけど、それをこんな感じで軽々しく人の世に落とすのはどうかと思うけどな」


「大丈夫だよ、君はディナレーテに選ばれた者だからね」


「……そんなにディナレーテって神様に選ばれるってのは凄いことなのか?」


「凄いというよりも、ディナレーテの占いの能力が根拠になるからと表現した方が正しい。つまり神として君に関わっても大丈夫ということが「確定」しているということさ」


「確定か、確かウィズがディナレーテの下位互換のアーティファクトを持っているとか言っていたけど、それじゃダメなのか?」


「駄目だね、少しの揺らぎがある以上、それが致命的になる。知ってのとおり、我々が迂闊に人と接してしまったため、アーティファクトを使ってしまったがために、戦争まで起きてしまったことが歴史上何度もあるからね」


「……なるほど、ってなわけで、そろそろ聞きたいんだが」


「君に接触した目的かい?」


「そうだ、ここまでするってことは何かあるんだろう?」


 とどんな回答が出てくるかと思ったが。


「うーーーーーーーーーーーん」


 突然首をひねって考え出した。


「いや、それがね、そっちが考えるような深い感じのさ、こう目的という目的は無くてさ、その結果、ちょっと厄介な問題になっていたんだよね」


「は?」


「怒らないで聞いてくれる?」


「…………」


 そんなこんなでフメリオラは事の真相を語り始めた。




――神楽坂・王子と出張かいがいりょこうに行った直後




 麗らかな昼下がり、ここはウルティミスの湖畔の古城。


 この古城の来歴は、記録が残っていないため不明なるも、駐在官たちの職場兼住居となっている。


 そんな駐在官の詰所の中。



 ルルトはユニアに正座させられていた。



「ルルト神」


「……はい」


「書類のミス、何度目ですか?」


「……たくさん」


「日誌は日記と違います。過去の活動状況を記録することは駐在官にとって重要な仕事、理解していますか?」


「……すみません」


「全く、まあ、それでも……」



――急遽王子と海外出張に行くことになった、留守はよろしく頼んだぞ、出張計画書は机の上に置いておく



 と紙切れと共に書いた出張計画を見る。


「これに比べればマシですか、ルルト神」


「……はい」


「私は確かに王子と出張するとは聞いていませんでしたが、急遽ではないですよね? ずっと前から計画していましたよね?」


「そそそそそそそんなななこととないよよよ」


「やっぱり、既にクォナとネルフォルには伝えてあります。「花街に繰り出すのが見え見え」だとか何とかで、何やら新しい方法で先輩を二つ割ろうとしているみたいですが、まあどうなっても自業自得でしょう」


((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル ←ルルト


「それに先輩の書いた日誌も酷いこと、先輩といいルルト神といいどうすれば出来るようになるんですかね」


「どうすればいいって、そうだねぇ、どうすればいいのかなぁ、別にわざとじゃないんだよ」


「……ルルト神」


「っとと! こんな時にフメリオラの奴でもいれば解決するんだけどね!!」


「フメリオラ神? 確かアーティファクトの神ですよね? 私で遊んでいたあの映像編集装置とかもフメリオラ神の作ったものですよね?」


「ぎくっ! そ、そうだよ、ボクと仲が良くてね、頼んで作ってもらう事があるんだよね、こうあれだよ、えーっと、例えばそうだね、何でも言うことを聞く人形なんかも作ってくれるんじゃないかな!」


「何でも言うことを聞く人形ですか、そうですね、それはいい考えですね、いい加減同じことを言うのも疲れてきましたし、効率を考えれば絶対にそっちの方がいいですよね、私の仕事も減りますし」


「はっはっは」


「はっはっは、じゃないですよ(怒)」



『ルルト、その頼み、聞いてやろうか?』



 突然響いてきた神の声にユニアが驚いて勢いよく振り向くとそこには、フメリオラが立っていた。


「やあ、フメリオラ」


「フフ、フメリオラ神! この人が!? どうして!?」


「初めましてユニア駐在官、フメリオラです。貴方のことはそこにいるルルトから聞いています」


「…………」


 突然のことに目を白黒させているユニアを尻目にフメリオラはルルトに話しかける。


「それにしても最強神が正座させられて説教って」


「うるさいな! ユニアの言っていることが正しいんだからしょうがないでしょ!」


「正しいって、本当に馴染んでいるんだな」


「まあ色々楽しんでいるよ、ってさっきの言葉は何? 人形を作ってくれるの?」


「ああ、実は俺も、そんな感じの人形を作ろうかなって思っていたんだけど、モニターとして使ってくれる人は誰にしようかなって思っていてさ。んで前回みたいにルルトを通じて神楽坂大尉に頼もうかなって思って」


「ほほう、それは渡りに船って奴だね、ユニア、ご希望に沿えそうだよ」


「沿えそうだよって……」


「別に深く考える必要はないんじゃないの? アーティファクトだし」


「いやいや! 考えますよ! フメリオラ神の言ったとおり、アーティファクトを巡って戦争も起きているのですよ! 軽々に使えるわけありません!」


 というユニアに。


「…………国家の最高幹部達がちゃんと俺達の距離を取れているのが凄いところだな」


 フメリオラはぽつりとつぶやく。


「うん、ウィズもしっかりとしているものだよ、神の理に人は耐えられないというのをちゃんと教育しているのさ、だから邪神たちも大人しくしている」


「ウィズと言えば初代国王との統一戦争か、あれは凄かったな、っと、ユニア嬢」


「な、なんです?」


「抵抗は理解しました。ですがアーティファクトの創造に協力してもらうことは、原初の貴族としてマイナスになることではないと思いますよ、特に神楽坂大尉の仲間たちはこういった形で我々と実際に交流を持っている」


「…………」


「現に突然神の言葉が聞こえて、私が突然現れても、貴方は何も変わらない、それはもうこの世界においては「特異」な存在です。それが知れたのは良かった、やはりディナレーテのお導きですよ」


「……なるほど、突然現れたのは私も試されたのですか」


 と少しだけ思案顔になるがすぐに頷く。


「わかりました、いい経験だと思うことにしましょう、協力します」


「流石頭の切り替えが早い、さてルルト、作る人形についてだけど、神楽坂大尉の代わりでいいの?」


「いいんじゃないの、それと折角作るんだったらだから色々と盛った方が面白いんじゃない? ねえユニア」


「盛る必要なんてありません。定時にちゃんと出勤する、仕事中に遊ばない、書類をちゃんと間違えずに書く、間違えても一度でちゃんと直る、休みの疲れを仕事で取らない、私が望むのこれぐらいですか」


「なんか当たり前のことばかりのように聞こえるけど」


「そうですよね、当たり前ですよね、ルルト神にも言っているんですよ?(怒)」


「びくっ! ま、まあ、この人形を使えばユニアの心労も万事解決さ!」


「全く、それでフメリオラ神、私は何をすればいいんです?」


「人形の作り方は既に心得ているから、今みたいに希望をどんどん言ってほしい、それでインスピレ-ションを得て、俺の工房に戻って制作を開始する、完成してたら持ってくるよ」


 とそんなこんなで始まった神楽坂の人形の制作。


 最初は3人とも真面目にやっていたんだが、徐々にルルトとフメリオラが悪ノリを開始、最初は諫めていたユニアも、理想のリーダー像を求めるという形で注文を付け始めて、ああでもない、こうでもないと、議論を重ねた結果。



 神楽坂イザナミの弱点を全て克服した完璧な神楽坂、超合金製完全体神楽坂イザナギ2号機が出来上がったのだ!



 んでお披露目はルルトの「イザナミが戻ってきたら驚かせてびっくりさせよう」ということで、出張から帰ってくる日を設定、自警団員から帰ってきたという知らせを受け、ノリノリで起動スイッチを起きた瞬間に「それ」は起こった。



 繰り返す、フメリオラの能力であるアーティファクト製作は「元となった神の能力の下位互換の機能を持つ道具を作る」という能力。


 つまり他人に化ける人形に「自律機能」は存在しない筈だった。


 だがここで「奇跡」が起きたのだ。


 覚醒した人形は自律機能を獲得したのだ。


 更に人形は埋め込まれた機械言語ぷろぐらむを自己進化させる程の能力を発揮。

 結果、備え付けていない筈の神にすら通用する自己秩序を破壊しない洗脳という能力が発動。


 瞬く間に神楽坂イザナミに成り代わり、一瞬にして理想とするリーダー像を実現した。


 高い能力、優れた洞察力、およそ将来の王国幹部に相応しい器の大きさ。


 その意志を持った人形はこう考えた。



――【人形わたしは、アーティファクト、アーティファクトの歴史、巡っての人間同士の戦争、たくさんの人が死んだ、つまり……】



――【人間は愚かなり、世界にとって、不要なもの】




――【アーティファクトが導く世界にする!!】







「とまあ、そんなこんなで現在に至る」


 俺は大きく息を吸い込んだ。



「最後によくあるAIが意思を持って世界を支配するSF作品になっとるやないかーーーい!!!」



 とツッコミが虚しく響いたのであった。







「とまあ一応突っ込んでみたんだけどさ、あのさ、実際問題、それ意思を持ったとかじゃなくて暴走したとかにか聞こえないんだが、失敗作なんじゃないの?」


「そうともいう」


「そうとしか言わねえよ! 王子のあの人形は?」


「王子に化けさせたのは、改良型であり完成品だからね、命令された動きしかしないし、周囲を洗脳するようなものもない、単純に本人に成り代わるだけ、人に害はないよ」


「なんで成り代わろうとしたのか、本当に心当たりはないの?」


「多分元の能力からのバグっぽい、より効果的にしたかったんじゃないの?」


「すぐに俺を助けなかった理由」


「まあディナレーテに選ばれた訳だから、なんとかなるだろうって、ついでにどんな反応するのかなって思って、単純な好奇心、それにしても凄いね、一日足らずで順応したね」


「なるほど、ルルトと仲がいいってわかるわ(#^ω^)ピキピキ」


「それで、どうするの?」


「どうするのって、どうすれば止まるんだよ?」


「普通に首の後ろにあるスイッチを押せば止まるよ」


「だったら創造神様が押せばいいんじゃないでございますかな?」


「いや、普通に俺よりあの人形の方が強いから返り討ちに会う」


「返り討ちって……」


「あの人形は軍隊で言えば一個大隊ぐらいの強さがある、文字通り創作に出てくる人並み外れた強さを持っている、神楽坂大尉と同じようにね」


「…………」


「神々の戦闘力の振れ幅は割と洒落にならないレベルであるんだよ」


「ああ、そうだった、ウィズとルルトの喧嘩も一方的だったよな」


「その代わりルルトは特殊能力は持っていないんだよ。ウィズもそうだけど、戦闘タイプの神だからね。だからルルトのアーティファクトは身体能力の向上なのさ、んで君は最強神の使徒だからね、相応の強さを手に入れられるのさ」


「なるほど、自分を見いだされた神によってスタンスが違ってくるのか」


「そんなわけで、ちゃちゃっと頼むよ、ちゃんと礼もするからさ」


「一つ条件がある」


「? だから礼を」


「そうじゃない、まあそれは後で話すとして、教えてほしいことがある」


「なに?」


「アンタの名前であの偽物を呼び出すことは可能なのか?」


「ああ、出来るけど」


「それは強制的に出来るのか?」


「……聞きたい意図が見えないが」


「後で話す、正直に答えてくれ」


「……両方だよ」


「ほほう、次にその部分が「下位互換」なのか「自分への保険」なのかによって今後の対応が変わってくるんだけど、どっち?」


「……保険」



「なるほど、となれば、偽物への勝利の方法はこれで確定したわけか」



「……しょ、勝利の方法? だから力づくで出来ると思うんだけど」


「そこら辺の考え方は流石神様、だからさ、そこが俺がさっき言った条件に関わってくるのさ」


「さっきから話が見えてこないんだけど」



「今回は勝ち方に拘るって話だよ、ただひょっとしたら偽物も気づくかもしれないから、とっとと終わらせるぞ」



 とフメリオラに今回の作戦について話し始めたのであった。



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