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第18話・けじめとこれから


 神の魅力から復活した、ウルティミスや王国軍達に事の次第を伝えるのがまず一番の大仕事だった。


 とにかく予定者の段階では、教皇選の最高機密であるため、カイゼル中将は本当に苦労した様子だった。だが「ロード大司教に大きな貸しを作れたのは大きい」と言っていたのは流石だと思ったけど。


 ロード大司教とモストは自分がウィズ神の怒りに触れたことをもみ消すためにこれまた東奔西走していた。ロード大司教の政治力、モストの家柄の力で封じ込めることには成功したようだった。


 最終的にウィズ神の降臨は、ルルトと友好関係を結びための儀式という事になり、それを邪教によるものだと一方的に誤解し、疑われたという事になり、それを激怒したウィズが降臨したという事にした。


 まあそれでもウィズ神の不興を買ったという事実は隠しきれないようだったが、ウィズ神はちゃんとそこらへんはフォローしたらしい。


 ウルティミスの人たちにもそれで「濡れ衣」だったと納得してくれた。


 これにて一件落着、ではない、その前に直にけじめをつけなければならない相手がいる。


「災難だったな、神楽坂?」


 王国軍も撤退し、最後の事情説明に訪れたロード大司教とモストを執務室に迎えてモストが放った言葉だ。


 もみ消すことに東奔西走し、「ウィズからも許しを得る形」となって結果家名を落とさずに済んだとあって、モストの顔は明るい。


 一方的に勘違いをしているはずなのだが、そこらへんは悪いが加護を強めてもらった、あくまで今のこいつは、「勇み足」で今回のことを起こした認識となっている。


「ウィズ神に身をもって尽くすのが俺たちだからな、いい経験になったんじゃないか?」


(こいつもある意味ぶれないよな)


 この状況でこの言葉が出てくるってこいつはひょっとして大物なんじゃないか、啓示を受けただけでもある意味こいつのプライドを満たす要因だったらしい。


 さて、用件を済ませないとな。


「なあモスト、俺は正直、お前のことを過大評価していたよ」


「……なに?」


 するすると模擬刀を取り出すと、モストに構える。


 睨みつける俺に一瞬呆けたようだが。


「か、かぐらざか!」


 俺の本気が分かったのか後ずさるが、


「はぁっ!!」


 とそのまま剣道の「面」の動作で思いっきり脳天に直撃させる。


 モストは、「があぁ!」とうめき声をあげると地面に膝まづく形になり、そのまま頭を押さえて痛みに耐え、俺に攻撃されたにもかかわらず、自分が何をされたのかわからない様子のモスト。


「お前、俺の部下に手を出しただろう? 仕返しだ」


「あいつが反抗的な態度をとったからだ! それに拘束時における人権事項の制限も知らないのか! 自分が何をしたのかわかっているのか? 王国貴族を敵に回すことがどれだけのことかお前は分かって、があぁ!!」


 もう一回思いっきり脳天に面を撃ち、言葉にならないようでそのままのたうち回る。


「お前は嫌な奴だが、なんだかんだで人間味はあるやつだと思っていた。手下達には面倒も見ているみたいだからな、だがマジで自分の目的のために他人の命や名誉をないがしろにする外道だとは思わなかった」


 のたうち回っているモストの胸ぐらをつかんで持ち上げる。


「さて、これで王国貴族を敵に回したわけだが、お前の親父、えっと男爵だっけ子爵だっけ? 助けを呼んでここに来るまでどのぐらい時間がかかるんだろうな? それまでにお前が五体満足でいればいいな?」


「……か、かぐらざ、か?」


 俺の本気が分かるのか、モストの威勢は消えて怯えの色が見える。


「不思議か? お前、俺の死について、部下のフィリア軍曹にどう説明したんだっけ?」


「え? え? そ、それは、そのっ……」


「えーっと、心が弱くて自殺しそうな奴だった、だっけか? 折角だから親父さんにはそう説明しておいてやるよ、モスト君は修道院時代から心が弱かったってな」


 モストを放り投げると再び剣道の構えをとる。


 すり足をした瞬間。


「やめてくれええぇぇぇぇ!!!!」


 と恥も外聞もなくそのまま頭を手で守る形で震えるモスト。ここでもまだ謝罪の言葉が出ないとこがこいつらしい。


 俺は今度は打ちおろさず、模擬刀をそのまま肩に担ぐ形で執務室の部屋にいるもう一人の人物に視線を向ける。


「ロード大司教、大人しいじゃないですか、どうしたんですか?」


 何故か何も言わないロード大司教、俺は2人に対峙する。


 俺の命を正真正銘軽く見ているのはウィズじゃなくてこいつらだ、とりあえず穏便に事は納めたのはあくまで表面的、ここからが本番だ。


 とはいってもこっちが圧倒的に有利、ロード大司教のあの勝利宣言と一緒だ、向こうが手段を選ばないのならこっちも選ばない。


 元より政治力はある2人、やるなら徹底的にやらないといけない、中途半端はいけない、 さあ何と言ってくるか、ロード大司教は口を開いた。


「か、神楽坂よ、このようなことを頼める立場ではないことは十分に承知しているが、許してもらえないだろうか?」


「……え? え!?」


「ルルト神は偉大なるウィズ神と友好関係にある、友好関係にあるというのは同じ信仰の徒であるも同様、我らが争えば両方の神の友好を損なうことになりかねない、となれば両方の神を悲しませることになると私は考えるのだよ」


 まさかの言葉が意外過ぎて思考が止まる。


 どうしたんだロード大司教、いつものと雰囲気が違う、顔が引きつっている。


「そ、それと以前私の授業中に、お前の複数の神を信奉することについて咎めたのは私が狭量であった、今後は私もその態度は改めることを約束する、だから許してくれないか?」


 引きつった顔のまま手を差し出してきた、まさかこう来るとは思わず、しかもこの状況で変に誇示するのはこっちが不利になる、これも計算なのだろうか、とはいえしょうがないでおずおずと握ると。


(うわっ、手汗がびっしょり!)


 思わず手を引きそうになるが、我慢して握手をする、なんなんだ、ウィズ神に気を使ったからという割には変だ、友好的ならばもっと上手に俺を取り込んでくるものなのに。


「ありえない、絶対にありえない」


 とここで小声でぶつぶつ言っているロード大司教の言葉が聞こえる、なんだろう。いかにも死にそうな顔しているけど、ロード大司教の顔は、これは、そうだ……。


(怯えとか、恐怖とか……)


 って自分で考えておいてまるで説得力がない。


 でも、何がありえないんだろう、俺が復活したことじゃないよな、モストはあっさり納得したし、ってあれ。


(どうして加護の利き方に差が出ているんだ?)


 これってよく考えればおかしい、同じような加護をかけたはずなのに、ひょっとして個人差でもあるのだろうか、それともウィズが力加減を間違えたとでもいうのだろうか。


(そうだ、確か大司教以上の教徒はウィズ神の降臨を受けて、啓示を受けている、つまり加護を受けていると解釈できるんじゃないか?)


 ルルトの言葉から元々加護の利き方の基準はアナログだ、確か、最初失神したとき、ロード大司教だけ反応があったよな、俺が起こしてその場を立ち去った後に本当に意識を取り戻したんじゃないか。


 となればあの場面では、ひょっとして、ロード大司教もかろうじて正気を保っていたんじゃないか、俺のような例外が1人だけと考えるのは早計のような気がする。


 そして自分が崇めている神が腹を出し、許しを請う人物が目の前にいた場合、どう思うんだろう。そうだよあのウィズの様子を見た時に俺も似たようなこと考えたじゃないか。


 正確には相手はルルトになんだけど、そう見えないし、「ありえない」と思うよな、時間がたてば見間違いだったと解釈するだろう、だけどウィズの啓示を受ければ、自分の見た光景が事実だと思うんじゃないか。


 加護の効きが良くないのならひょっとして……。


 少しカマをかけてみるか。


「見たんですか?」


「っ! なんのことだ! 私は何も見ていない!!」


 政治家らしくない、俺のカマかけにまるで気づかず叫ぶロード大司教、ああ見たんだ、あの光景。


 俺はロード大司教に近づくが後ずさる。ずいと迫って睨みつける、ロード大司教はガタガタ震えていた。


「ロード大司教、貴方の「大失態」については、ウィズが大変お怒りだったのです、鎮めるのが大変でした、これは貸しにしますよ、これからのウルティミスの件については、どうか便宜を」


「…………」


 コクコクと頷く、やっぱりだ、ロード大司教は今回の教皇選絡みがなかったことになっていることに恐怖を感じているのか。


 あの様子を見ればそれに俺が関わっていると考えるのは自然だな、んで今の俺の言葉でそれが確定したってことか。


 青い顔のまま踵を返すロード大司教に、慌てて後を追っていくモスト。


 あー少しはスッキリしたかな、これで本当に一件落着だ、長かったな本当に。


――


 最終報告会、立位置は中間報告会と一緒ではある、出席者はそれぞれの有力者と在校生達、それぞれの健闘をたたえて、表彰も行っているのだ。この最終報告会をもって、初任教養は終了する。


「文官部門、最優秀生徒、モストグリーベルト文官少尉!」


 モストは、総合部門は逃したものの王国府での卓越した事務処理能力及び周囲への面倒見の良さも評価され、という形での受賞となった。


 貴族枠でのクラスヘッドは快挙であるのは言ったとおり、有力者たちの期待を一身に背負うのも面倒そうだが、まああいつの場合は好きでやっていることだから辛くもないのだろう。


 ちなみにモストは睨みつけるだけで面倒くさく絡んでくることは無かった。


 根に持つタイプだから今後嫌がらせみたいなことをしてくるかもしれないが、その時は相手をすればいいか。


 今回もセルカ司祭に一緒に来てもらっているし、アイカにもフルーツ食べ放題を奢らないといけない。後のパーティーはさぼろうかなと考えていた時だった。


 登壇していた教官たちがざわつき始める、なんだろう、予想外のことが起きているようだけど、と思った時、部隊袖からある人物が姿を現し、そのざわつきの理由が判明する。


 温厚な、厳しさの中にも優しさを兼ね備える迫力と言えばいいのか、それはある人物しかまとえない法衣をまとって現れる。


(モーガルマン・エーデルハイセ教皇!)


 ウィズの使徒、ウィズ教の最高位にある人物、今まで中間報告会や最終報告会で出席したんて聞いたことがない。


 おそらく教官たちの様子を見るに何か目的があってきたのだろうけど。


 流石雰囲気を持っているだけある、全員が注目するカリスマと言えばいいのか、登壇して話し始めようとした瞬間に全員が静まる。


「王立修道院の皆さんは、ただ功績をあげればよいという話ではありません。確かに高い資質を王立修道院が求めているのは事実、ですがそれはエリートという立場ではなく、立場を与えられ、その立場に対して真摯に向き合うことが何より大事となります」


 抑揚をつけていないのに、落ち着き染みわたるような声は変わらずだ。お偉いさんの話なんて眠くなるばかりだと思ったものだが、それは改まったものだ。


「私は教皇としてウィズ神の使徒として、与えられた立場を全うするために日々何をするべきかという事を考えながら過ごしています、その中で最も難題がなんであるか、分かりますか?」


 あたりを見渡すが誰も答えようとしない、それを確認した教皇は「それはですね」と言葉を切り嬉しそうに言葉を紡ぐ。


「私がここに来たのは、その難題をクリアした人物がここにいて、是非後学のために話が聞きたいと思ったからです。神楽坂イザナミ文官少尉、よろしいですか?」


 教皇は真っすぐ俺を見つめて穏やかに言い放つ。


「…………」


 自然と全員から注目を浴びることになる。


 名前、今俺の名前を呼んだように聞こえたのだが。


「か、神楽坂! 教皇猊下がお呼びだぞ!」


 教官の声で我に返り「はい!」と立ち上がる。え、え、呼ばれたはいいけど、そのまま登壇するのか。


「こちらへどうぞ、神楽坂文官少尉」


 やっぱり、そうだ、なんなんだ、ひょっとしてウィズが何かしたのかと思いながら、歩きながらの登壇することになる。


 いきなりすぎて現実感がない、目の前にいる教皇は俺に対して微笑む。


「初めまして神楽坂イザナミ文官少尉、突然お呼びして申し訳ありません、お話はあとで伺うとして、先ほどの答えなのですが」


 ここで言葉を切ると再び参加者たちの方を向く。


「他宗教との友好交流です」


 この言葉で教官を含めた全員が驚く。


「神学に詳しい方はこれがどれほどの難題であるかは分かると思います。神の世界は謎が多く、ほとんどが解明されていない状態です。最高神ウィズの名のもとに統制はされていても、未だに他宗教との交流は果たせていません。ですがこのたびルルト教との友好関係を結ぶことに成功したと、先日啓示を受けました」


 教皇の言葉に本当なのかと、口々に確認しあう、そうなのか、神と神が手を取り合うというのは前代未聞なのか。


 修道院じゃ教えてくれなかった、というか、常識だからそもそも教わるまでもないってことだったのか。


(なら、俺のとった手段って、あの時のウィズの深刻そうな顔は、この意味も含んでいて)


 呆然とする俺に教皇は続ける。


「本来ならば教皇たる私が一番に行わなければならないことを、若い人材がなしえたことに、自分の未熟さを反省するとともにこれほど嬉しいこともありませんでした」


 ここで言葉を区切るとお供の2人に視線を送る。


「よって、これは私からの感謝の証です」


 お供はそれぞれ一つずつ豪華な箱を持っている、教皇の指示によって1人が最初の箱を開けて、中には恩賜勲章が入っていた。


「今でこそ恩賜組は成績上位10名という形で叙勲されていますが、本来はウィズ王国に貢献できる人物としての意味が本来の意味です、神楽坂文官少尉への叙勲は後進へのいい励みになるでしょう」


 続いて2人目の秘書が開けた箱の中、それを掲げた時再び会場がざわめく。


 ウィズ神の象徴たる金色の宝石に翼を用いた勲章、2つの翼の数から第5級功績勲章、個人でもらえる最高の勲章が2級だから上から3番目の勲章だ。


 そして今度は教皇は自らの懐から階級章を取り出す、中尉の階級章だ。


「既に辞令は降りています、本日付で貴方は文官中尉に特別昇任、併せてウィズ教助祭の地位を付与、これからも精進してください」


 二つの勲章と階級章を見て呆然とする俺。


「か、か、過大評価が過ぎます教皇猊下、恐れながら私は何もしておりません、こう言っては何ですが、協力をしてほしいとのルルト神を啓示を受けたのみです、誰でも出来ることですが」


 すっと、俺の手を取り握手をするついでにハグをする教皇。


「私は友好関係を結んだとだけ啓示を受けました、ですがアレは多分、ウィズ神が迷惑をかけた形ではないのですか?」


「っ!!!」


 教皇とは思えない言葉、驚く俺をよそにさらに続ける。


「神楽坂文官中尉、申し訳ないですが、貴方は何故か今置かれている状況について今一つ理解に及んでいない節がある、頭だけで理解しているような、そんな感じがします。もしこれから何かあった時にこの三つは必ず役に立ちますよ」


(この人は……)


 そうか、この人は「他人のために尽くすことが自分に返ってくることを理解して、その仕組みを作れる人」なのか。


 頭だけで理解しているとは、まったくもってその通りだ。


 俺は教皇猊下に正対し、敬礼する。


「謹んで承ります、過分なご配慮感謝いたします」



「あー、疲れたー」


 最終報告会はあの後、30分ぐらいだったが教皇とずっと話をしていた。色々貴重な話を聞けたのは面白かったけど、独特の迫力と威圧感があって凄い疲れた。


「んで、その後のパーティーをさぼるのがアンタよねぇ」


「いいの、教皇はああいったけど、やっぱり政治は合わないよ、合わないことをするとろくなことがないのさ、昔っからな」


 執務室にてのんびりとするのは俺と、アイカだ。


 結果的に、教皇と話した後は普通にパーティー抜け出した。


 待ち構えていたアイカと一緒に王都へ行き、約束のフルーツ食べ放題を奢った。


 しかし高くついた、本当に美味しそうによく食べるから気前良くしたものの、あんなに容赦ないとは思わなかった。


 だけど、中間報告会と違うのは、サボった理由はちゃんとあるという事、だからアイカに気前よく食べてもらったのもある。


 教皇猊下の言葉は、自分の仲間を作るべきという俺の考えを確固たるものとなった。


 それは、今後何かあった時、自分だけの力ではどうにもならないこと、自分にとって協力者の確保が最重要、リスクを増やしてでも自分の陣地に引き入れる。


 まず俺の仲間の1人目。


「それにしても、まだ信じられないよ、アンタがルルト神の使徒で、フィリア軍曹がルルト神だったなんて」


 まずアイカ・ベルバーグ武官少尉、俺の唯一信用できる同期であり恩賜組でもある準貴族、職種は憲兵、秘密を打ち明けた時も「面白そうじゃない」と乗り気だった。

 憲兵はつまりは警察情報だからそれが今後入ってくるのはありがたい。


 次に2人目。


「ルルト神がまだちゃんとウルティミスを見ておられた、それが分かっただけで嬉しいです」


 セルカ・コントラスト司祭、ウルティミス街長、公ではない民間の協力者、元より教皇選であることは伝えていたし、どうしてもウルティミス側に味方が一人欲しかった、セルカ司祭なら申し分ない。


 ちなみに打ち明けた時は「やっぱりそうだったんですね」ときたものだ、流石切れ者。


 次に3人目。


「まあ、いいよ別に、こっちが好きでやっていることだし、というか照れくさいからやめてくれ、公式の場ではフィリア・アーカイブだよ」


 最強神ルルト、適当ではあるものの、神の世界でのこれ以上ないコネクションだ。なんだかんだで俺の相棒だ。


 さて、最後の1人は……。


(さて、そろそろだな)


 と思った時に、扉が開き1人の兵卒の制服を着た女性が立っていた。


「本日付で赴任しました、レティシア・ガムグリー文官二等兵です。よろしくお願いします」


 と長い髪をたなびかせながらお辞儀をするウィズ神、結果秘書官としての役割を引き受けてくれたのだ。


 当然、彼女の正体も全員には伝えてある。セルカ司祭はあっさりと、アイカは最初は疑っていたが、アイカにだけは、加護をかけていなかったので最後は信じてくれた。


「ウィズ神、お目に描かれて光栄です、私はアイカ・ベルバーグ武官少尉です、職種は憲兵です」


 跪くアイカを両肩に手を添えて立たせるウィズ、認識疎外の加護は、この俺とアイカとセルカ司祭だけにはかけていないので、肖像画のとおりの姿のままだ。


「レティシアでいいですよ、かしこまる必要はありません」


「はい、しかしウィズ神が本当に、いや、疑っていたわけではないのですが」


「もちろん神楽坂中尉には返しきれないほどの恩がありますが、単にここが面白そうだと思ったからですよ」


 すっかり落ち着きを取り戻したウィズ、威厳というものがあるから、制裁をちらつかせることは絶対にしないようにとルルトには固く言いつけてある。


 さてこれで全員揃った。今後、このメンバーで戦っていくことになる。


 色々面倒も多そうだが、それ以上に楽しみの気持ちの方が大きい。


「神楽坂中尉!」


 扉を開けて自警団の男が姿を現す。


「教育資材一式が届いた! 教会に運ぶから手伝ってくれ!」


 さて千里の道も一歩からだ、頼もしい仲間たちと戦っていこうじゃないか。


「分かった、皆も悪いが手伝ってくれ!」


 と新たな一歩を踏み出す。


 今後、ウィズ王国で表裏問わず活躍する部隊になる、神楽坂イザナミ率いるウルティミスの部隊の誕生の瞬間であった。




これにて序章完結です。ありがとうございました。


神楽坂の拠点となるウルティミスの一番最初の地盤が整いました。


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