神魂 ~神様の手違いで異世界転移してハーレムチート主人公になった件~ :第二話:
――男の浪漫団詰所
俺の名前はデアン、念願の私立ウルティミス学院に入学を果した学院生。
そんな俺の学院生活は勉強に恋って決めていたけど……。
――「ごめんデアン、貴方、洗ってない犬の匂いがするから無理なの」
そんな彼女の言葉で、俺の恋は終わりを告げた。
「…………」←詰所の机で突っ伏しているデアン
「おいおいデアン、元気出せよ」
とリーケが話しかけてくる。
「はあ、やっぱり無理だったんだよ、学校一の美少女に俺なんかが釣り合うはずなかったんだ」
そう、俺を振ったのは学校レベルの高嶺の花、可愛くてスタイル抜群で読者モデルもやっていて俺達男子たちの憧れの的だ。
そんな彼女の想い人は同じクラスメイトの「金持ちの息子で運動部の主将で軽音部のギター兼ボーカルで顔も良くて勉強も出来てスポーツも出来て爽やかで、それでいてちょっとHなところが何故か受けるクソ野郎」が好きだって話だ。
んで、その彼女の想い人のクソ野郎だけど……。
――「努力が足らないんだよ努力が、まあお前じゃ努力しても無理だろうけどな」
そんなクソ野郎の名に違わぬ嫌な奴なのだ!
「だったら見返してやればいいじゃないか、運動も勉強も頑張ってさ」
「だけどさ、どんどん勉強も難しくなってくるし、その勉強に追われて運動部の部活にも集中できなくなってさ、どうしようもないんだよ」
といじけるデアンはリーケを見て続ける。
「それにしてもお前は何か最近凄いよな。成績もぐんぐん上がっていって、部活もレギュラーを取ってたよな」
というデアンの言葉にリーケが自慢げに胸を張る。
「そりゃそうさ、なんてたって、アレをやっているからな」
「アレ?」
「神楽坂ゼミだよ」
「か、神楽坂ゼミって、今確か団長がやってるやつだよな? それって本当に凄いのか?」
「ああ、ほら、これがゼミのテキストと付属の問題集、そしてこの間の試験の問題なんだけど、見てみろよ」
「どれどれ、あ! これ! 問題がそのまま出てる!」
「だろ? 俺も最初は半信半疑だったんだけど、テキストは余分なところは省いて大事なところだけを載せているんだ。だから勉強時間も短縮できるし、その時間を問題集に使い反復することによって確実に学力が身につくんだよ、余った時間で部活に打ち込んでレギュラーを取ったのさ!」
「そうだったのか! わかった! 俺もやってみるよ! 神楽坂ゼミ!」
「ああ! お互いに頑張ろうぜ!」
こうして、俺は神楽坂ゼミをスタートした。
申し込んですぐに届いたテキストを見ると、ありがちな文字の羅列だけではなく、色々工夫されていて、イラスト付きで分かりやすく解説してあった。
余分な範囲を省いた効率的な勉強で時間は大幅に短縮できて、最初は「本当にこれぐらいの勉強で大丈夫かな」って思ったけど結果はすぐに次のテスト出てきた。
「うそ、前より30点もアップしてる」
成績もぐんぐん上昇、精神的にも余裕が出来て自分に自信が持てるようになった、そして部活に打ち込むことが出来て、ついに部活の顧問の先生から。
――「デアン、次のレギュラーはお前だ」
そう! レギュラーを勝ち取ることが出来たのだ!
一方、あのイケメンの嫌な奴は、行き詰っているみたいで成績が低迷している、一回神楽坂ゼミを進めてみたけど「俺は自分の力で何とか出来る!」って言っていたけど、成績はどんどん下がり今では部活のレギュラーも落とされてしまった、意地を張らずにゼミをやればいいのに。
そして……。
――「あのさ、デアン」
俺は今、憧れのあの子に校舎裏に呼び出されてここにいる。
――「あの時は、あの男が好きかもって思っていたんだけど、成績も落ちて、部活のレギュラーも落とされて、親の会社が倒産して貧乏になって、だからちょっとHなところもキモくなってきて、顔が良いだけの冴えない男になってがっかりしてさ……」
ここで言葉を切ると、ザアって二人の間に風が吹き、彼女は少しだけ乱れた髪をかき上げる、そんな綺麗な笑みを浮かべて俺にこういった。
――「あの時の返事ってまだ有効かな?」
「神楽坂ゼミを始める前は冴えなかった俺、だけどゼミを始めたおかげで学校一の美少女の彼女が出来た!!」
「神楽坂ゼミは苦手なところを重点的に出来るから、すぐに成績が向上して、第一志望校に合格も近い!」←トカート
「神楽坂ゼミのおかげで部活を頑張れば俺みたいにレギュラーになれる!!」←リーケ
「現役修道院生もお勧め! 神楽坂ゼミ!!」←セク
「「「「なりたい自分になれる! さあ皆神楽坂ゼミを始めよう!!」」」」
(……………………)
(目を見張るぐらい美少女の性格が悪い!!!)
しかも絶対ゼミ関係ないし!! 大丈夫かデアン!! 何かあるぞそれ!! いくら美少女でもその女はアカンやろ!! って進研ゼミかよって突っ込もうとしたらそっちに持っていかれたわ!! いや、DMに同封されていた、進研ゼミに入れば、部活も勉強も上手くいき、おまけに可愛い彼女まで出来るという漫画の様式美は好きだけどもね!! ってセクとデアンとリーケと後当たり前のように馴染んでいるもう1人は誰やねん!! ってあーーもう!! ツッコミが追い付かない!!
「ってすとーーっぷ!!!」
「って、え、え、お兄さん誰? 誰かのお客さん?」
「お客さんじゃないわい!! なにが神楽坂ゼミやねん!! いつもはおっぱいの話とかギャンブルとかしてるじゃん!!」
と言った時だった。
「もちろんだ、それが男の潤いだからな」
とまた俺の偽物が現れた。
「だけど、コイツらは将来のウルティミスを背負って立つ立場だ、一時一時を無駄に出来ないからな、こうやってゼミを開いているんだよ、なあ皆」
「ああ、修道院出身のエリートから授業なんてなかなか受けられないからな」
「首席監督生まで務めだけあって、分かりやすいし」
「流石首席卒業なだけあるよな」
「それでいて剣術も強いし」
「男の浪漫活動も楽しいよ!」
「普通に自警団の為になっているのがまた……って、ちょっと待った! 今なんて!? 修道院の……首席卒業生? いや、俺は最下位だったんだけども!!」
「え? お客さんの事じゃなくて、ってお客さんも修道院生なの? 団長のことだよ」
「だから団長は俺なの!!」
「え、ええ? えっと、その」
「まあまあ、男の浪漫を愛する者は全員団長だからな、さて、リーケとデアン、俺は今から首都へ出張に行ってくる、留守は頼んだぜ」
「ああ、団長、いってらっしゃい!」
と全員に見送られて旅立った。
「さて、お客さん、団長の頼みとあれば、その時点で仲間! 悩みがあるのなら」
「いや、俺も首都に行ってくる」
「へ!?」
「そんなわけで、用事が終わったら戻ってくるから頼むぞ!」
「あ、ああ、分かったよ、団長」
と言って詰所を後にした。
取り残された自警団員達。
「あれ?」
●
首都に行くって言っていたな。
ちなみに俺は普段の通行手段として馬車を利用している。ルルトの能力を借りる時はお忍びの時だけだ。
その馬車についてなんだが、元はウルティミスで使う共用馬車としての立ち位置だった。
修理に修理を重ねたおんぼろ馬車に、引いている馬も大飯ぐらいでパワーだけは馬一倍、ずんぐりむっくりの太ましい馬だ。
んで連合都市の4等昇格を機に馬も馬車を一新する話を聞いて、引き取り手もなく丁度移動手段が欲しかった俺の専属の馬となったのだ。
動物の世話って凄い手間がかかるらしいが、コイツは飯をたくさん食わせて、綺麗好きだからたくさん水浴びさせておけば満足するから、本当に手がかからなかったんだよな。性格も適当でマイペースでぐうたら、でも体は丈夫で病気もしないし、やる時はやる感じだから気が合うし。
んで名前はスーパーペガサスとつけた、時々運動がてら乗馬して走らせるんだが、これがまた気持ちいい。
って、それは置いといて、あの感じだとアイツも馬に乗っていくんだよな、ほら、元ネタだと造りが違うとかでロボットと動物には効かなかったじゃないか。
とそんな考えを余所に、偽物は詰所を後にして馬房へと歩を進めると……。
「今日も頼むぜ、相棒」
「ヒヒン(白馬のサラブレッド)」
(おいいぃぃぃぃぃ!! 何で馬もイケ馬になってんだよ!! お前は違うだろ!! あっさり俺のことを忘れやがって! この間牝馬に盛りついた挙句キレて蹴とばされて失神して看病してやったのは誰だと思ってんだコノヤローー!!)
ワナワナと震える俺を尻目に、偽物はスーパーペガサスの首をペチペチと叩くとこういった。
「いくぜ、ルーディスロックフェード!」
「ヒヒーーン!!」
(名前までスタイリッシュ!! って何普通に返事してんだよ!! お前のスーパーペガサスって名前はな! ばんえい競馬の史上最強馬と謳われた馬からくれてやった名誉ある名前なんだぞ!!)
と偽物はそのまま馬車(これも新しい奴)と共に旅立っていったのであった。
――首都・ルール宿屋
偽物は、首都に到着すると連合都市の首都の拠点、ルール宿屋に辿り着いた時だった。
「あ、あの!!」
と若くてかわいい従業員に声をかけられたと思ったら。
「ここ、これ! 読んでください!!」
文を強引に押し付けられて、顔を真っ赤にしてその場を走り去っていった。
いきなりの出来事で偽物が戸惑っていたら、そんな様子を見ていたとばかりに奥からミローユ先輩が出てきた。
「まーったく、アンタはまた女泣かせたの?」
「お疲れ様です、ミローユ先輩、お世話になります、って泣かせたなんて辞めてくださいよ」
「言っとくけどウチの従業員に手を出すのならそれなりの責任を取ってもらわないとね、全体の士気に関わるんだからね」
「勘弁してくださいよ、弄ぶなんてしませんよ」
「ま、アンタは天然タラシだからね~」
とここでメトアンさんが入ってきてとスッと夜食を出してくれた「天然タラシというよりも女難の相だよな」とばかりの笑顔だ。
「あはは、そうですね、メトアンさんの女難の相ってのが正しいですよ」
(ハーレム主人公にありがちの称号! 天然タラシ!! 女難の相!!)
「それ食べたら貴賓室に行ってきなよ、クォナ嬢とネルフォル嬢が待ってるよ、王国二大美女相手がね、全くこんな男の何処が良いんだか」
「相変わらず先輩はひどいなぁ、メトアンさん、御馳走様でした、本当に美味しかったです」
とルール夫婦は笑顔で送り出してくれて、偽物は部屋を後にする。
(ん? 待てよ、女難の相か……)
なるほどなるほど、女難の相とは言い得て妙!! 毎回毎回毎回毎回毎回、同じように悪戯がバレて血祭りにあげられているし、勝ちの目が見えない戦を繰り返しているのだ! ぬかったな偽物め! 何処まで耐えられるか見ものだな!!
けーっけっけっけ!!
――別室
別室、ウルティミス・マルス連合都市の首都拠点である。
VIP部屋であり、長期滞在にも対応できる。その利便性から、連合都市の幹部達の会合や極秘の会談に使われており、利用方法は多岐にわたる。
ちなみに俺のお仕置きに使われたこともある、ミローユ先輩に惚れているという濡れ衣を着せられた上に、こっちの弁解は一切認められずの有罪判決、しかもミローユ先輩に振られるという公開処刑、俺の人権は一切認められなかった。
「イザナギ! 果物食べ放題! 奢ってくれるって言ったでしょ! 一緒に行こうよ!」←アイカ
「イザナギさん、ユニアから出張の件聞いたよ、その、お礼に、その、な、なんでもない!」←セルカ
「イザナギ、たまには私の相手をしてくれてもいいんじゃない?」←ネルフォル
「大尉、紅茶を買いに私と、って別に大尉のこと好きでも何でもないんだからね!」←セレナ
「神楽坂様、その、全員の後でいいので、最後に私の相手をしてください」←ウィズ
そう、認められなかったのだ、人権の一切が、しかもミローユ先輩に振られて自棄を起こしてハーレムを作ろうとしているという驚天動地な濡れ衣も着せられたなぁ。ひょっとしたらアレだ、みんな俺には何をしても大丈夫だと勘違いしているのではないか。そんなことないんだけどなぁ。
「困ったわ、ご主人様の体は一つ、ふーむ、不本意ですけどだったら、解決方法は一つだけですわね」←クォナ
クォナの言葉に全員が頷く。
ああ、そうだ、そうだった、そういえばタイトルがこんな感じに変わっているんだったっけ。
次に放つ言葉は例の奴、さあ皆さんご一緒に。
「「「「「みんなで幸せになろうね!!」」」」」
(ふーーーーーーーーーーーーー)←目頭を押さえている。
神楽坂は大きく息を吸い込んだ。
(ハーレムヒロインかーーーーーーーい!!!!!)
はい、終わりでーす、一応ツッコミを入れておかないとね、まあこれを読んでいる皆さんもそうだと思いますが、予想してました、そのとおりでした。
というかこいつら、こんなことをしにわざわざここに来たのだろうかと思ったら。
「って早くみんな、始めないと」
との偽物の言葉により、会議が始まる。
その内容は今までのノリは何処へやら、連合都市の3等昇格により、駐在官の運用計画の見直しと、都市運営への応用というとてもまじめな議題だった。