Mission:Impossible2 ~甘き死よ、来たれ~ 後篇
ここは世界最大最強(以下略)
フォスイット王子執務室。
「ふう、王国剣術を修めていなかったら危なかったな」←アレアに首を絞められて一足先に復活した王子
――せよ、――せよ、――せよ、
「ん?」
破壊せよ――、破壊せよ――、破壊せよ――
殺せ――虐殺せよ――凌辱せよ――苦しめよ――絶望を与えよ
「ちょ、おま」
メインプレイヤーに――
決して――
平穏を与えるな――!
生きとし生けるもの――
全て――抹殺する――!
「すとーーっぷ!! その血の記憶の覚醒は駄目!! 神楽坂!! めっ!!」
「はっ! ふう、危なく1000年間ぐらい支配されるところでした」
「危ないところだったな」
「はい、使徒でなければ魔王として覚醒していたところです」
「…………」
「…………」
さて、振出しに戻ったわけだが……。
「神楽坂、その、どうするんだ、まず勝負を何とかしないと……」
遠慮がちに聞いた王子だったが。
「王子、勝つだけなら、楽勝じゃないですか」
と泣きそうな顔をして神楽坂が答えて、王子も一瞬考えるが。
「…………そうか、そうだったか、勝つだけなら、楽勝か」
「そのとおりですよ王子、とはいえそれは卑怯ですらない、ただのノイツへの侮辱行為ですけどね」
「…………」
王子は答えられない、確かに現段階で「勝つ」のならば、それ以外思い浮かばないからだ。
「……侮辱行為か」
「ええ、そうです、本来ならこのまま負けてもいいのですが「仲間のために」という大義を、私の為の免罪符に使いましょう」
と自虐的な神楽坂に悲痛な表情で黙る王子。神楽坂はそれを気にしないかのように続ける。
「だから、その為に、今から、セレナの下へ行ってきます、意思を確認するために、仲間の為にできることは、これぐらいですから」
(´;ω;`)ブワッ ←王子
――ファビオリ男爵家
「ごめん、大尉!」
とセレナに会いに行った時、セレナにいきなり謝られてしまった。
「……え?」
「ほら、あのノイツとの勝負の件、あれ、全部私のせいなの!」
とセレナの話によると、社交界で壁ドンされた時に、他に好きな男がいるのかと聞かれて、その時に俺の名前を出したのだという。
「なんでだろう、分からないけど、大尉の名前が出ちゃって」
「いいよ別に、俺だと波風が立たないからな」
「ああ、うん……」
「しかしやっと納得がいった、だからノイツはパグアクス息じゃなくて俺に勝負を挑んだのか」
「え? パグアクス息がどうして出てくるの?」
「(やば!! 口を滑らせた!!)いいいいや!! べべべべつに!! パグアクス息がセレナのことを好きとかじゃねえからし!!!」
「…………」
(まずい! 今のは不自然過ぎた!! どどど、どうしよう!!)
ストーカーでヤンデレとはいえ一途であることには変わりはないパグアクス息の想い、自分でどうしても伝えるということ自体は応援してるのでこんなバレ方をするのは駄目過ぎる。
そんな俺に対してセレナは合点が行った様子を見せてクスリと笑うとこういった。
「大丈夫だよ、パグアクス息が好きなのはクォナだから」
(「クォナだから」じゃないわ! 妹だわ! しかも受け入れてんのかーーーい!!(ビシッ!!))
もういい、ラノベ主人公に正論突っ込むと疲れるだけだ、となれば用件を済ませないと……。
「ごほん! セレナ、それでさ、その……」
「…………」
「ノイツのこと、どうすんだよ」
とここでピンと空気が張り詰める。
「…………どうしようかな、今度は誠実な人みたいだし、文句はないよね」
「…………」
そうだよな、そりゃあ、そうだ、女だったら誰だって……。
と思った時にセレナは近づいてくると。
軽くデコピンされた。
「なんてね、もしその気だったら大尉の名前を出さないよ」
「え、でも、今回は」
「クォナにはもう伝えてあるのよ、今はクォナと遊んだり、大尉の下で遊ぶのが楽しいからお断りするってね」
「そ、そんなものなのか」
「うん」
声をこそ小さいがはっきりとした意思、そしてバツが悪そうにしている。
「となると問題なのは勝負だよね、あの時はあんまり考えてなかったけど、その、種を蒔いたのは私だから、私が」
「必要ないよ、勝負に勝つだけなら楽勝だから」
「ええ!? 楽勝!?」
「うん、楽勝だよ、本当に、その気持ちが聞けただけよかった、じゃあ、準備があるから」
「ちょ、ちょっと! 大尉!」
「ごめんね、準備が忙しいから、日時と場所は負って知らせるから、立会いよろしく」
と戸惑うセレナを尻目に一方的に告げて一方的に立ち去る。
何故なら、このまま話していると自滅しそうだからだ。
ああ、思えば……
異世界転移して、、、。
異世界チート主人公をやるのって初めてだっけ。
――7日後・勝負の日
「一本目、剣術対決! 勝者、神楽坂イザナミ!!」
「二本目、勉学対決! 勝者、神楽坂イザナミ!!」
「二連勝!! よって、この勝負、神楽坂イザナミの勝ちとする!!」
と王子が宣言して勝負が終わった。
「…………」
ノイツは、悔しさをにじませながら空を見上げていたが……。
「ありがとう、神楽坂イザナミ、傑物の君と全力で戦えたことに、感謝を」
と笑顔で手を差し出してくれた。
「こちらこそ感謝を、ノイツ・バノリア、貴方と勝負を出来たこと、そして得難い出会いに感謝を」
と固い握手を交わし、敗れたとはいえ笑顔のノイツ。
「貴方に敗れたのなら納得がいきます。それに元よりこの勝負、私が勝っても意味がなかったかもしれません、彼女の想いは決まっていたようですから」
(…………)
握手して握った手、剣だこが出来たゴツゴツの手。
夜遅くまで勉強していたからであろう寝不足による目の隈。
さて、今回の勝負、楽勝だったのは繰り返し述べたとおり。
え? どうやって勝ったのかって?
難しく考える必要なんてない、剣術はいつもの身体強化の加護を使えば楽勝、勉学については、ウィズに協力を頼んで俺に扮して代わりに解いてもらっただけだ。
優れた己の才覚に胡坐をかかず、必死の努力をしていた人間をチートを使い勝つ。
だから侮辱。
しかし異世界物のチート主人公はいつもこんな感じで戦って勝っているのか、凄いなぁ。
ああ、なんて、なんて……。
気分が悪いのだろう……。
なればせめて……。
「ノイツ、一つよろしいか?」
「? 何でしょう?」
「貴方は今、得難い出会いと言いました、そしてそれは私も同意見、連合都市との付き合いをどうですか?」
「え!?」
余程驚いたのか、目を見開くノイツ。
「はっきり言ってしまえば、貴方と懇意にしているウィアン・ゼラティストと付き合いが欲しいと我が街長セルカ・コントラストが言っています。その窓口として貴方程適任者はいないかと思います」
「セルカ・コントラスト! 4等都市の街長でありながら王国議会の台風の目と言われる女傑! 秘書に原初の貴族の直系ユニア嬢とのコンビは太刀打ちできないといわれる! いいのですか!?」
「無論です。既に話を通してありますから、ですけど、そちらこそいいんですか? ウィアンは我々にあまりいい感情を抱いていないのですが」
「ウィアン会長は超一流の商人です、利益をもたらす関係を構築すれば、おのずと認めざるを得ないですから」
「道理ですね、セルカも喜ぶかと思います、王国商会との関係は悩みの種でもあったので」
「いや、確かにセルカ街長と繋がりを得られるのは願ってもないことです。流石女傑に一目置かれる神楽坂大尉だ」
「……一目というか、まあいい奴で友達なのは事実で」
「ご謙遜を、原初の貴族の直系ユニアを繋いだのは神楽坂大尉なのでしょう?」
「……繋いだわけではなく、ユニアは元々私ではなくセルカに興味があって」
「まあ、サノラ・ケハト家の関係上そうする必要もあったのでしょうね。私にとっては神楽坂大尉との関係もそれ以上に嬉しく思います」
「……いえ、私は別に、普段は自警団員と遊んでいて、それ以外だと釣りに旅行にギャンブルで実務は、そのユニアに毎回怒られてて」
「神楽坂大尉、謙遜も過ぎると嫌味になるんですよ」
「……別に謙遜なんて一つも」
「貴方は覚えていないでしょうね、アーキコバの物体の解明の祝賀会の時、実は少しだけ会話をしているんですよ」
「……そうだったのですか、申し訳ありません、実は記憶になくて」
「いいのです、ですが私は覚えています、ドクトリアム侯爵との邂逅、痺れました。そして卿の後ろ盾の宣言、思えばあの時点で貴方が傑物だと見抜いていたのですね」
「……そんなことありません、私の噂は御存じの事でしょう?」
「そうですね、確かに無能だという噂は耳に入っていました。ですかそれはとんでもないデマなのは一目瞭然。能力はもちろん他者を認められる器の大きさ、先ほど申し上げた自警団の団員達からも慕われ人望も厚いと聞いていますよ、流石ウィズ王国、いや世界から認められる傑物です」
「………………過分な評価です」
「その証拠に」
「今回の勝負にしても、貴方からすれば「楽勝」だったのでしょう?」
「……………………そんなことありませんよ、私はズルばかりですから」
「あはは、祝賀会の時と同じだ、240年に一度の解の論文も「メディ女医が9割5分書いていた」と言っていましたよ、解明の発見功績も「まぐれ」だと言っていました」
「………………………………事実ですから」
「そういうことにしておいた方がいいのでしょうね、だからこそフォスイット王子も貴方を守るのでしょうから、分かりました、このノイツ、この件については申し上げません、礼にせめて連合都市に尽力しましょう、それでは」
と踵を返して胸を張って踵を返して歩き出す、自身も満足できる敗北だったのか、セレナに挨拶をした後で、その場を後にした。
「…………………………」
「あ、あの、大尉」
そっと近づいてきて心配そうに声をかけようとするが。
「まてセレナ、お前はこのまま帰るがよい」
と王子は間に入る。
「え? で、ですが、大尉は私の為に……」
「そうだ、だからこそだ」
「だからこそだって」
「こういう言い方はしてはいけないことを分かっていてあえて言わせてもらう」
「女が立ち入るな、それで理解せよセレナ」
「は、はっ!」
「うむ、クォナにはよろしく言っておいてくれ、神楽坂、行くぞ」
「はい……」
と堪えた様子の神楽坂の肩を抱いて、その場を後にするのであった。
――ウィズ王国城
「…………」←壁に向かって体育座りをしている神楽坂
ポン ←優しく肩を叩く王子
「…………」←無言で振り向く神楽坂
(;´・ω・)スッ/エロ本
「…………」
「…………」
「ウルウル」
「神楽坂、俺は分かっているからな」
「お、おぉ~じぃ~!」
「神楽坂!」
だきっ!!
「もおおおおなんなんだよもおおおーーー!!!」
「うんうんそうだよな! お前はよく頑張った!!」
「もおおおぉぉぉ!! ふざけんなよもおおおお!!! なんなんだよもおおおぉぉぉ~~~!!!! いけめんしねよおおおぉぉぉ!!!」
:おしまい:
旧のエヴァの劇場版は当時映画館で見てたのですが、衝撃的でした。
新の完結版がいよいよ公開、楽しみです。