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おまけ:こちらウルティミス・マルス連合都市・湖畔前・駐在所・番外篇



 原初の貴族のサノラ・ケハト家直系ユニア、原初の貴族では最小規模ではあるが、それは予算決定権という強すぎる決定権を持っているからだ。


 歴代のサノラケハト家の人間は、その特権の強さを理解し、必要最低限以外の子孫を残さないようにしている。


 現当主ドクトリアム侯爵も兄弟は2人しかいない。


 そして自分の兄妹は兄であるモスト1人だけだったが……。


 この度弟が生まれた、ちなみに生んだのは自分の母親ではなく、第二夫人だ。


 他の原初の貴族の家では当たり前のようにある腹違いの兄弟だが、ユニアにとっては初めての自分の弟だった。


 どういう感情を抱くのだろうと不安があったが……。


(か、か、か……)


(かわいいーーーー!!!!)


と思わず抱き上げて頬ずりしまくってしまった、気が付いたら一日たっていた。


 こんなにも可愛いと思うとは思わなかった。特に殺伐とした修道院生活の潤い、んで私は元より他の修道院生と交流を持たないようにしていたから、休日になれば必ず会いに行っていた。


 この子の母親も私が可愛がっていることは良しと思っているのか、好きにさせてくれる。


 スィーゼの姉としてユニアにある一つの使命感が芽生えた、それは。


(父や兄のようにはさせない!!!)


 父親、原初の貴族としては名君であることは間違いない。しかし人を本気で虫として飼う趣味も、神楽坂は面白いと言っていたが、娘としては到底感心できないし、父親としては息子である兄を甘やかした結果、劣化コピーなんて呼ばれる事態になってしまった。


 まあ兄は能力は歴代の当主では飛びぬけた持っているし、父を超えているのは私だってわかる。だが気と器が小さく常に自分の取り巻きが必要な承認欲求の塊のような人になってしまった。


 ちなみに案の定というか、兄にとってスィーゼについては。


――「こいつは俺が何かあった時の予備だからな、あまり恥ずかしくないようにしておけ」


と「第二夫人に」言い放つような相変わらずの傲慢さだ。


 だからこそ、この子をちゃんと導くのは姉として責務なのだ。


「いいですね、スィーゼ、確かに原初の貴族は一夫多妻制度を採用しています、そしてそれは必要悪という部分でも認める、この制度が無ければ今この世に、私は生まれていないのだから、ですが貴方はちゃんと1人の女性に愛を貫くのよ」


「そもそも、我が原初の貴族の一夫多妻制度は、血を残せない場合に緊急避難的に第二夫人を娶るというのが本来の意味、それを男どもは「女を侍らせてもいい」という解釈をしたんです」


「こういう思考は、どの国でも見られますが、まったく嘆かわしいことです、ねえスィーゼ」


「…………」←無表情


 よしよし、表情は変わらないけど、この子は賢い子、ちゃんと理解しているだろう。


 とまあこんな感じで、ずっと色々言い聞かせてきた、それなのに……。



――【ひがしむらやぁ~まぁ~、いっちょめいっちょめワオ!! いっちょめいっちょめワオ!!】



とアーティファクトの画面の向こうでアホな踊りをしながら、脱衣麻雀に負けたリーケの脱衣を見ながら歌い続けるこのアンポンタン、まあこれはいい、今更だ、病気だからもう治らないだろう、だが問題なのは。



――【キャッキャッキャ!!】



 と抱っこ紐で抱えられている大はしゃぎのスィーゼだ。


 懐いているのはいい、だが問題なのはその懐いている相手が男の浪漫団とかいう意味不明な奇行を繰り返す集団なところだ。


 暇さえあれば男の浪漫を叫びながら女遊びに賭場に意味不明な悪戯を積極的にやることについて、あの子が喜んでいるのはどういうことだろう。


 いやいや、そうじゃない。


「スィーゼは嫌がっているに決まっています! だって私よりも先輩に懐いているとかありえないでしょう! そう思いませんかセルカ姉さま!?」


 と休憩中のセルカに向かって話しかける。


「ふふっ、そうだね、でもスィーゼは男の子だからね、男って「男同士」とか大好きじゃない」


「姉さま甘すぎます! あのアンポンタンは賭場に連れて行くは女遊びに連れて行くは、まったく何を考えているのか!! このままではスィーゼが不良になります!!」


「はは、まあ、でもイザナミさんは優しいし、情に厚い人だと思うから大丈夫じゃない?」


「……まあ、そこら辺は、だからスィーゼを預けるわけですし」


 そう、そこら辺は信用できるのだ、情に厚く面倒見がよく優しい、だから自警団員達からは兄貴分として慕われているのだ。


 んで、実際スィーゼを可愛がってくれている、それは単純に嬉しい。



 だがこのままでは兄とは真逆の意味のアホになるのではないかと心配しているのだ。



「私の方が一緒にいるのに! 私の方が愛しているのに! 本当にもう!!」



 とむくれるユニアにセルカはよしよしと頭を撫でる。まあたくさん可愛がっていたのに、自分よりも懐いては単純に面白くないのだろう。


 そう、結局預けていても、不安になってこうやってアーティファクトを使って監視しているのだ。



――【諸君、ハーレムは男の浪漫である】



という例のアンポンタンの声が聞こえてきた。


(また、アホな事を……)


 基本的にこういう話かしないが、せめてスィーゼの居ないところで何とかならないのか。


 まったくと思った時だった。



――【だがハーレムはファンタジー、そう思っていた時期が私にもありました、そうこのスィーゼが現れるまでは】


「…………」



――男の浪漫団詰所



「さて、上流では一夫多妻制度があるものの、実際は原初の貴族しか認められておらず、他の上流はそれに倣う形で採用されているそうなのだが、実際には愛人としての立ち位置だそうなのだよ」


 ここで言葉を切るとデアンが発言する。


「団長、原初の貴族に適用されるってことは、次期当主だけ適用されるの?」


「いや、調べてみたところ、直系も適用される、当主筋だけにしてしまうと血が途絶えてしまう危険性があるからだそうだ」


「なるほど、つまり上流の一夫多妻制度ってのは、血を絶やさないための緊急避難的措置ってことになるのか」


「うむ、そのとおりだ」


「そうだよな、俺達は紳士、女を侍らせる目的なんて、そんなことは出来ないよな」


「当たり前だ、男の浪漫団は、女性を尊重して尊敬するからこそだ」


「ああそうだ、当たり前だよな」

「いくら制度で認められているとはいえな」

「ああ、紳士だからな」



 と無言でそのまま立ち上がる。



「「「でもそんなの関係ねえぇ!! そんなの関係ねぇ!! そんなの関係ねぇ!!」」」



「ごほん! さて男の浪漫団諸君! 繰り返すがハーレムは男の浪漫ではあるがファンタジーである、ならどうしてファンタジーなのかというと、実際には実現不可能だからなんだね」


「俺の祖国は、今は一夫一妻制だが、昔は側室制度を設けていた、とはいえ当時も庶民に適用されているわけではない。これは経済的もそうだけど、倫理的な制約、そもそも侍らせるなんて、女性側が納得するわけがない、一夫一妻が当時だって普通だった」


「つまり側室を持つというのは「特権階級の特権」と解釈していい。そしてそれはウィズ王国も同様だ、上流は一夫多妻かもしれないが、俺達庶民は普通に一夫一妻だからな」


「さて、以上のことを踏まえて検証していこう」


「まずスィーゼはサノラ・ケハト家直系、特権階級の人間、そしてウィズ王国はそれを法として認められている、経済的にも原初の貴族全部が資産運用をする形での金持ち、そして見てのとおりスィーゼは男前、つまりスィーゼが大人になるとイケメンになる、故に異性を惹きつける魅力もある、つまり」



「ウィズ王国において、一夫多妻制度を認めている国においてハーレムを許された数少ない男の1人! それがスィーゼなのだよ!!」



「「「「な、なんだってーーー!!!!」」」」



「想像したまえ! 大人になりイケメンになったスィーゼ! 豪華で大きな椅子に座り! 周りに下着姿の美女たちを侍らせている姿を! いいか! これはファンタジーではない! 繰り返す! これはファンタジーではない!!」



「団長!!」


「なんだね?」


「想像してみた、まずは、羨ましい、俺には不可能だから。特権階級ってだけじゃない、金持ちじゃないし、金持ちにだってなれないだろうし、イケメンじゃないし、だけど」


「だけど?」


「変だけどさ、嬉しいんだ、スィーゼが、いや、スィーゼが、じゃないな、スィーゼが俺に代わって下着姿の美女を侍らせてくれる、それが嬉しいんだ」


 ポン ←優しい笑顔で肩に手を置く


「だ、団長」


「俺も同じ気持ちだ、みんなはどうだ?」


「俺も、俺もだよ! 凄い羨ましい! だけど同じぐらい嬉しい!!」

「ああ、なんでだろうな、別に俺がハーレム作れるわけじゃないのに!」

「うんうん、別にこっちに何の利益もないのに、スィーゼがハーレム作ったら多分、俺、うれし泣きすると思う」


(*-ω-)ウンウン♪ ←神楽坂


「その嬉しいって感情はな、絶対に叶えられない夢があった、だけどそれを代わりに叶えてくれる奴がいる、その叶えてくれた人物が、仲間だから、だよ」


「だ、団長」


「嬉しいという感情を持ってくれて、俺も嬉しい、スィーゼよ!」


「キリッ!」


「聞いていたな、後はお前次第だ」


「…………」


「お前はおっぱいが二つだけで満足か?」


「…………」←無表情


「おっぱいがいくつ欲しい? 四つか?」


「…………」←無表情


「ならば六つか?」


「…………」←無表情


「ええい、ならば飛び越えて18か!?」


「キャッキャッキャ!」


「おお、おお~、おーいおいおい! おーおいおいおい!(号泣)」


「浪漫団諸君! 知っているか、現在、原初の貴族の中で一番数多く夫人を娶ったのは、原初の貴族外交担当、カモルア・ビトゥツェシア家当主の第八夫人! それを超える第九夫人まで欲しいとは!」


「す、すげえよだんちょう、9人て!」

「まだ1歳なのに!」

「チクショウ! 9人か! 俺は5人いれば大満足だと思っていたのに! 1歳に負けるなんて!」


 全員がスィーゼを讃える微笑ましい空気、自分の代わりに夢を叶えてくれる将来の「漢」であるスィーゼに全員が期待する、この子なら夢を実現してくれるだろう。


「って、そういや団長! そろそろユニアさんが帰ってくるだろうから、対策をちゃんとしておかないと!」


「っとと、そうだな、アイツのことだから「一夫多妻制度は緊急避難的な決まりザマス! 女を侍らせる目的ではないザマス!」とか言っているに違いない! ってなわけでスィーゼよ、お姉ちゃんに言われた時は、純愛を貫くと回答するんだよ、いいね?」


「ニコニコ」


「よし!」



 カランカラン



「男の浪漫団!! 第一種戦闘配置!!」←神楽坂



 シュパパっと体制を整えること10秒、更に10秒。


「お疲れ様です」


 とユニアが現れた。


「いいかスィーゼよ、男とは純愛を貫く生き物だ、本命がいるのに他の女に現を抜かすなんてもっても他だ、分かったね?」


「キリッ」


「よしよし、さあ今日も詩を読んでやろう」


「先輩、スィーゼに何を教えているんですか?」


「ん? ほら原初の貴族は一夫多妻制度の適用範囲内だと聞いてな、だからこうやって純愛を貫くように教えているのだよ」


「そうなんですか?」


「うむ、女を侍らせるなんてとんでもないことだ、男の浪漫とは女性を尊敬し尊重し、その上で楽しむものだからな」


「そうなんですか、素晴らしいですね」


「まあ当たり前だよ」


「そうですよね、女性を侍らせるなんて、女を物としか扱っていないような男の発想ですね」


「全く持ってその通りだ(爽)」



「そんな男は貴賓室で情操教育をしないといけないですよね、さあ行きましょうか」



「…………………………え? なんで俺?(小声)」


「いえ、だから女を物としか扱っていない男には、情操教育が必要だなと思っているだけです。男の浪漫だか知りませんが、ハーレムの期待を1歳の赤ちゃんにかけるような成人男性には必要かと思いますが」


「…………………………うん、そう言われると、本当に駄目な奴だよな、その成人男性」


「それでは行きましょうか」


「ユニアさん、今回の情操教育おしおきは何なん(半泣)?」


「いいえ、情操教育おしおきではなく情操教育ごほうびですよ。なんとその男の浪漫であるハーレムを是非叶えてあげたいと王国二大美女がお待ちかねです」


「…………そうか、じゃあ、はい、とりあえずスィーゼを返すね」


「ウルウル」


「よしよし、俺の生き様を見てくれたまえよ、ってなわけで、情操教育の前に、ちょっとトイレに行ってくるよ、スィーゼ、後は頼むぞ」


「キリッ」



 とそのまま決意を込めて自警団の詰所のトイレの中に入り。




(さて、逃げるか)




と用具入れから清掃用の脚立を持ち出すと窓に向かって立てかける。


(はん!! ハーレムって何やねん!! ルビがおかしいんだよ!! 死にそんな読み方はないんだよ!! こんなハーレムなんて誰が望むかーい!! 流石に死を前にすれば逃亡すべし!!)


 もちろんスィーゼとは目線で確認済みなのだ、スィーゼは赤ちゃんだし、ユニアは被害者として扱っているから大丈夫。


 うん、まあ実際あの2人のハーレムなんて想像しただけで背筋が凍る、男の夢だか悪夢だか知らないが、アイツ等って中身は一緒の似た者同士だからね、本気で俺を二つに割ろうとするだろう、割れないからね、人は二つに割れないからね。


 とそのまま、窓から降り立ち、ぱんぱんと膝についた土を落として目線を上げると。




 クォナとネルフォルが立っていた。




 だが!!


(甘い! 2回目だぜ!! 俺は、それすらも予想していた!!)


 と踵を返して逃走する。


 全力で逃げる人間を捕まえるというのは容易ではない、それこそ憲兵であってもだ。



 おお! 凄いぞ! 体が軽い!!



 周囲の景色がぐんぐん上に上昇していく!!



 雲の高さが俺の目線の高さだ!!



 何故なら空を飛んでいるからだ!! 



 わーいわーい!! 体に羽が生えて空が飛んでいる!!



 はっ!! あれは!! 成長してイケメンになったスィーゼ!! しかも周りは下着姿の美人達!!



 流石だスィーゼ!! よかったな!! ハーレムを実現したんだ!! お兄さんとっても嬉しい!!



 え!? 俺も仲間に入れてくれるって!? ありがとうスィーゼ!!



――



「ふひひ、やったぜハーレム、男の浪漫だ、スィーゼ、一緒に楽しもうぜ、むにゃむにゃ」←幸せそうな顔をして寝ている神楽坂


「まったく、本当にどうしようもない方ですわね、クスクス」←吹き矢を片手に持つクォナ


「可愛いよね~(ナデナデ)」←ネルフォル


「可愛い? この顔見ると女に同時に奉仕されて喜ぶ妄想してるんでしょ? 普通に気持ち悪い、というか本気で連合都市の女性陣侍らせるつもりなのか」←スィーゼを抱っこしているユニア


「まあまあまあまあ、私達を? ご主人様、ふっ、ふふふふふふふふふふ!!」


「という訳で、どうするクォナ、同時に奉仕は私もごめんだわ、割る?」


「当然ですわ」


 ( ;゜д゜)ェ....... ←スィーゼ


「半分でもネルフォルと一晩過ごすことを考えると気が狂いそうですが、まあご主人様の夢を叶えてあげるためですからシカタナイデスワ」


「パタパタパタ!∑(゜◇゜ノ)ノ」 ←手をパタパタと振っているスィーゼ


「というか、二つでいいの? ユニアは要らないの?」


「いるわけないでしょ、キモい」


「パタパタパタ!!( ノ゜◇゜)ノ」 ←手をパタパタと凄い勢いで上下させているスィーゼ


 よっこらせっと、二人で両脇を固める形で持ち上げられてズルズル引きずられる神楽坂。


「ビエエエ!!(≧д≦)」 ←泣きながら神楽坂に必死に手を伸ばすスィーゼ


「ふひひ、スィーゼよ、そんなはしゃぐなよ、ハーレム万歳、俺もとっても嬉しい、むにゃむにゃ」←幸せそうな顔をしている神楽坂


「ビエエエエエエエ!!!!・゜・(>Д<)・゜・」 ←更に泣きながら必死に手を伸ばすスィーゼ



:おしまい:



これにておまけ含めてボニナ族篇完結となります。


完結してありますが続きます。


尚、現在、異世界転生物である「花も恥じらう~」を不定期連載しておりますので、そちらもよろしくお願いします。


ただ内容は女性向け……だと思います、多分、おそらく、きっと(;゜Д゜)。


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