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おまけ:こちらウルティミス・マルス連合都市・湖畔前・駐在所:後篇


「なななななんでででで?」


「いえ、確かに、今の話を聞く限り情操教育のは良い感じでした。戦術と戦略に長けた強者が、運という理不尽さに耐えなければならない、という発想は確かに面白いです」


「そ、そそ、そそそうなのねねねね」


「はい、ルールブックを貸してください、覚えます」


「どどどどどうぞ」


 とパラパラと読み始めるユニア。


(こうなりゃ誤魔化しとおすしかない! リーケ、デアン、セク!)


(分かってるよ団長! スィーゼはもう浪漫団の一員!)

(漢の悪戯は聖域! そこから守ってやるぜ!)

(ユニアさんには悪いけど、本気を出させてもらうよ)


 頼もしい、そしてありがたい。


(来るなら来い、スィーゼよ!)


「キリッ」


(俺は男の浪漫団団長神楽坂イザナミ! 悪いがお前とはくぐってきた修羅場が違うぜ!)


 確かにユニアはずば抜けて優秀な頭脳と能力を持っている、だがこいつらと3人なら負ける気がしない、この3人で戦えと言っている。


(そう囁くんだよ、俺のゴーストが)


「先輩」


「なんだね?」


「スィーゼを寝かしつける必要があるので、いったん貴賓室までいいですか?」


「? まあいいけど、なんでわざわざ貴賓室?」


「もちろんスィーゼの情操教育の為ですよ」


「ふーん」


 そうなんだ、本当に大変だなぁスィーゼよ。


 とテクテクと詰所を出てユニアの後を歩き、貴賓室の前に辿り着いた時だった。



「点5という表現が面白いですね、1000点で50円という額というのは、ウィズ王国貨幣に換算すると、成程、とはいえ学生だと少し高くないですか?」



!!( ; ロ)゜ ゜ ←神楽坂


「てててててんごごご? ななななにににそそれれれ?」


「ほら、このルールブックの中に、書いてあるじゃないですか、賭ける金額の隠語、んで脱衣麻雀が男の浪漫だと(ゴゴゴゴゴゴゴ!!!)」


(あああーーー!! しまったあああ!! そうだ!! 書いてた!! 圧倒的に書いてた!!)


「ほほ、ほら、それは、黒いコウノトリが、誰もいなくなる、という意味が脱衣麻雀を指し? 灰色の人間が喜んだというのは、同性同士で戦うべき? 麻雀をして脱がして盛り上げろという意味に解釈できないか?」


 意味不明、やっべ、意味わかんね。


「さて、レートですけど」


「へ? レートですけどって?」


「ピンピン(1点1円で換算)でやりましょうか」


「はいーー!? そ、そんな鉄火場みたいなの!!」


「ほら、先輩が好きな漫画あるじゃないですか、玄人ばいにんと呼ばれる雀士たちがイカサマをして金をかけて、戦って、箱割れして金が払えないとどうなるのか」


((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル ←神楽坂


「そんなことできないよ! 可愛い後輩相手だもの!!」


「大丈夫です、助っ人を頼みましたので」


「へ!?」


「そのために貴賓室に招いたのですよ」


「貴賓室でやるの!? どういうことなの!? あと2人は誰なの!?」


「もうわかるでしょう、先輩なら」


「…………」


 と貴賓室の扉を開くユニア。


 その先に舞い降りた2人。



 清楚、可憐な男の夢。


 妖艶、奔放な男の悪夢。



 ウィズ王国2大美女。



 クォナとネルフォルの王国2大美女がすでに卓に座っていて待っていた。



「さて、次はどうしようかな、ふふっ」←ネルフォル


「ネルフォル、言っておきますが、まずはご主人様を敗北させ権利を得ます、その後はいつものとおりサシで勝負ですわ」


「わかっているよ、とっても楽しみ、さあ2人とも座って」


 とユニアは座って、傍で立ち尽くしている俺を見る。


「さて、先輩の勝利報酬は私たちを自由にできること、脱衣しろというのならばしましょう、先輩大好きですよね? 男の浪漫ですものね?」


「言っておきますが、今日は王子はおりませんわ、ご主人様、お覚悟を」


「よかったじゃないイザナミ、アンタが大好きなハーレムだよ?」


「あの、ユニアさん、スィーゼの情操教育は( ;∀;)」


「ええ、スィーゼ、見ておきなさい、本当に何回言っても懲りない何回言わせるんだよいい加減にしろこの馬鹿野郎って人物がどうなるのか(ゴゴゴゴゴゴ!!!)」


「…………」


 この時、俺はスィーゼと目が合った。


 その時のスィーゼは赤ちゃんとは思えないほどの男前の顔をしてコクリと頷くと。


「ビエエエエ!!!」


と泣き出した。


(´;ω;`)ブワッ ←神楽坂


 なんという漢気!! 泣くことによってこの場を終わらせようとしている!


 だが!!


 動かない!! 神楽坂!! 動かない!!


 俺はギュッとスィーゼを抱きしめる。


「…………?」←泣き止んで怪訝そうな表情を浮かべる


(ありがとう、スィーゼ、お前、カッコいいよ、男の浪漫団に誘った俺の目に狂いはなかったな)


(だがお前に、一つだけ教えていないことがある、それが何だかわかるか?)


「フルフル」←首を振る



(悪戯がバレた時の男の生き様って奴だ!! そこで見てろスィーゼよ!!!)



――数時間後



「ら、らめええええ!!!」


という絶叫が木霊し、その絶叫を聞いた自警団員もまた涙するのであった。



――次の日



「これはEカードと言ってな、俺の祖国のボードゲームの中では圧倒的ギャンブル要素があるんだ、さてスィーゼよ、相手はデアンだ、んで何を切るかについてはお前に全部任せる、どれがいいかね?」


スッ ←市民のカードを指さす


「…………」←無表情


スッ ←皇帝のカードを指さす


「キリッ」


(おお!! 初手皇帝!! 利根川でもできなかったのに!!)


(流石だスィーゼよ!!(ナデナデ))


「ニコニコ」



 カランカラン



「男の浪漫団!! 第一種戦闘配置!!」←神楽坂


 号令と共にシュパパっと準備を整える浪漫団、その間10秒。


 そして更に10秒。


「お疲れ様です」


 とユニアが現れた。


「お疲れ様、っとスィーゼよ、奴隷のカードは必ず出さなければならない、確率論として考えることもできるが、いつ出すかについては確率よりも心理戦としてとらえるんだ」


「キリッ」


「っとまあちょっと休憩するか、この間の詩を読んでやろう」


「ニコニコ」


「先輩」


「よう、お疲れさん」


「スィーゼにカードゲームを教えているのですか?」


「お? 馬鹿にするか? これは、完全な心理戦だぜ。スィーゼは原初の貴族の直系だ、だから心理戦の一つもできないと思ってな」


「なるほど、真っ黒なコウノトリの詩と同じですね」


「ええーー!!?? そうなの!? 前と全然違くね!?」


「色々な説があるので」


「そ、そうなのか」


「というわけで先輩」


「ん? なに?」



「貴賓室に行きましょう」



「…………」


「…………」


「なんで?」


「ですから「スィーゼの情操教育」の為ですよ」


「…………」


 そうか、バレたのかー、早いな~、間髪入れずだものな~。


 とここでスィーゼと目が合った。


この時の、スィーゼは赤ちゃんとは思えないぐらい漢前な表情を浮かべて……。


「キャッキャッキャ!!」←ユニアに手を伸ばしている


(´;ω;`)ブワッ ←神楽坂


 理外の発想! 「お姉ちゃんと一緒が良いの」的な!! 悪魔的発想っっ!! いや小悪魔的発想っっ!! 


 スィーゼよ、俺は感動しているぞ、齢1歳でのこの漢気を持つとは。


 思えばお前は年は離れているとはいえ原初の貴族の直系、つまり次世代の人間、そういう意味では俺と同じ。


 いや、俺と一緒はお前に失礼か、俺は血と誇りは受け継いでいるわけじゃない、王子が見込んでくれているからこその立場、だからやりたい放題できるのだから。


 お前が大きくなった時、俺がその立場をまだ許されるのなら、その時は。



(一緒に「遊ぼう」な、男の浪漫団として、そして原初の貴族として)



 ぎゅっとスィーゼは抱きしめる。


「?」


「ああ、そうだな、情操教育の為に、貴賓室へ行こう」


「!!」


(スィーゼよ、男ってのは子供はもちろん大人になっても悪戯をするのさ、だが言い逃れが出来なくなったら、ちゃんとお仕置きを受けるんだぜ)


「ウルウル」


「じゃあ行ってくる、後は頼んだぜ」


「団長……」


 敬礼して見送る男の浪漫団。


 この時の浪漫団に見送られる神楽坂こそ、まさに漢の顔をしていた。



――小一時間後



「45ミリは、らめえええぇぇ!!!」



 という絶叫が木霊し浪漫団は目頭を揉むのであった。




――次の日




「スィーゼ、これは3個のダイスを使ったチンチロリンと言うのだよ。セク、とりあえず勝負は俺の勝ちで終わったわけだが、今回の勝負についてお前なら何か疑問に思うことはあるか?」


「疑問って、団長の出目の良さが通常の確率をかなり超えた数値だったのが気にはなるけど、でも短期間で見れば」


「いいや、流石セク、大ビンゴだ、ほれ」


 とセクにダイスを渡すと。


「だ、団長! これ!」


「すまん、これはイカサマダイスだ、通称ジゴロ賽という」


 ジゴロ賽。


 賽子に振られた数が4、5、6のみのイカサマ賽子だ。


「はー、凄い、全然気が付かなかった」


「凄いだろ、トリックは本当に簡単なのに見破るのは難しく、それでいて技術もいらない、個人的には傑作だと思う」


 余談ではあるがとある漫画家が、アシスタント含めた同士の買い出しの賭けを賽子で決めた時、1年間気が付かなかったそうだ。


「スィーゼ、よく見ておけ、イカサマってのはやってはいけない事ではあるのだが、必要悪でもある、俺自身にもそれが言えるからな。だからこそ、その技を磨くのは決して悪じゃなと思う、だが一番大事なのは覚悟なんだ。だからこそジゴロ賽を初めとしてイカサマを使うのに必要なのは、技術よりも度胸だったりするんだよ」


「キリッ」


「それと、これはイカサマトランプ」


 カランカラン。



「男の浪漫団! 第一種戦闘配置!!」←神楽坂



 いつものとおりシュパパっと準備を済ませること10秒、そして更に10秒後。


「お疲れ様です」


とユニアがやってきた。


「あ、お疲れ~」


「どうも、ん? 双六をしているんですか?」


「ああ、そうだよ、童心に返ってな、な、スィーゼ?」


「キャッキャッキャ!」←かわいいイラストに手を伸ばしている


「はっはっは、本当に子供らしいな(ナデナデ)」


 けっけっけ、よしよし、ユニアはスィーゼに夢を見ているからな、これでオーケー。


「私もやりましょう」


「お? いいぞ、座りたまえよ、これは人生ゲームという奴なんだよ、本来ならルーレットなんだが、作りきれなくてな、賽子で出目を進めて、イベントをこなすんだ」


「キャッキャッキャ!」←ユニアに手を伸ばしている


「おーよしよし、お前はお姉ちゃん子だからな、お姉ちゃんがいいよな~(ナデナデ)」


 そんな和やかな雰囲気、これは今度こそ本当にただの双六だからな。


「先輩」


「なんだね?」



「賽子が足りませんよ、これでは目が出ません」



「………………………………」



 そうか、またかぁ、なんでバレるのかなぁ、どうしてなのかなぁ。


 流石にスィーゼもこうまでバレ続けると「???」と首をかしげている。


「そうだね、目が出ないな、スィーゼよ(ナデナデ)」


「ウルウル」


「よしよし泣くなスィーゼよ、しょうがないのさ、お仕置きは甘んじて受ける、これが男ってもんよ」


「コクリ」


「覚悟が決まっているようで何よりです、それでは貴賓室へ行きましょう」


「ああ、また最期を看取ってくれ、いつも悪いなスィーゼよ」


「ウルウル」


 とクルリとユニアに背を向ける。


((計画通り))


 けけけ!! 同じことを何回もやればいい加減学習するっての!! もう想定済みだぜ!!


 ちなみにポケット内にさっきのジゴロ賽を仕込んでいる、さて、スィーゼよ、これからが本番だ。


「キリッ」


(よく聞くがいい、多くに人間が勘違いしているが、失敗は恥なんかじゃない、失敗を織り込み済みで考えるのが大事なのだよ)



 さあ行こう! 俺たちの戦いはこれからだ!!



――小一時間後。




「ノーカン!! ノーカン!! ノーカン!! ノーカン!! ノーカン!! ノーカン!!」




 という声が響き、自警団員達は目頭を揉むのであった。



:番外編へ続く:



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