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おまけ:こちらウルティミス・マルス連合都市・湖畔前・駐在所:前篇


――駐在官の執務室


 さて、いつものとおり「本当は嫌なんだけど、誰も世話にする人がいないから連れてきたんだからね!」という誰得のツンデレを発揮したユニアがスィーゼを連れてきたものの、セルカの秘書としての仕事が入ったのでいつものとおり俺に預かることになったのだ。


「先輩、分かってますね、賭場にも女遊びも連れて行かないでくださいね」


「わーってるよ」


「スィーゼは偉いですよ、賭場も女遊びも先輩に合わせているのですから、分かってますか、本当はスィーゼは嫌がっているんですからね」


「はいはい、連れて行かないよ、信じたまえよ」


「もちろん信じられないので、これをどうぞ」


「えーーーー!! また訳の分からない小冊子!? 前貰った奴あれ全然役に立たなかったんだぞ!! 好みの食い物ぐらいしか参考にならなかったぞ!」


「役に立たないとは何事ですか!! 今から渡すのはスィーゼが良い男になるための必須書物なんですよ!!」


「本当に大変だな、スィーゼよ(ナデナデ)」


「…………」←無表情


 とユニアより渡されたのは、かなり薄い一冊の詩集だった、タイトルは「赤子に聞かせる詩」って書いてある。


「な、なにこれ?」


「タイトルのとおり先輩が読んで聞かせるんです。この詩はですね、ウィズ王国語の基本言語が全て集約されており、更にこの音の組み合わせが情操教育として脳に成長を促すのです。これを繰り返して読ませると綺麗な発音も身に付き、精神的にも正しく育つのですよ」


(なんかこれだけ聞いていると宗教の勧誘文句みたいだな……)


 まああれか、なんか俺の世界でも子供の時に聞かせると頭がよくなる音楽とか色々あるよな、要はこれもその一つか。


 改めて考えるとこんなので正しく育つのなら、それはそれで恐ろしい。


「いいですね、朝昼晩の1回づつお願いします、先輩はもうどうしようもないからいいかもしれませんが、スィーゼには未来があるんですからね」


「わかった、わかったけど、相変わらず人にものを頼む態度じゃないぞユニアさんや」


「失礼、ですが赤ちゃんを連れて行くなととかいう時点でそもそも」


「だーー! わかったよ! セルカが待ってるだろ! いってらっしゃい!!」


「……本当に頼みましたよ」


 と言いつつ後にした。


「…………」


 まったく、相変わらず固い奴だな、いい加減に分かりなさいよ。


 とはいえ、情操教育によい詩か、何だろう、普通に道徳の教科書に載っている奴みたいな感じだろうか。


 どんなの詩なのか読んでみる。


 ふむ、まず最初は星をテーマにした詩か、どれそれ。


――


 星がきらめく、トゥインクトゥインク、流れ星がウィンク


 あの星と私はきっと双子、次代を超えて百光年の彼方


 誰も願いも叶えない流れ星、心臓の音と一緒に消えてゆく、きらめきと共に消えてゆく、ただ意味もなく流れていく、私と一緒


 きっと天の川は願いの墓場、空に浮かべた誰かの祈り


 トゥインクトゥインク


 今日も少女は流れ星に願う


――


「…………」


(なるほどな、うん、やっべ全然わかんね)


 なんだろう、このどこぞの恋愛頭脳戦の夢女子が書いたような詩。


 これで脳が成長するのか、単純すぎるだろう脳。


 って、まだあるんかい、次は何だろう。


――


 真っ黒なコウノトリが唄うよ、百年ぶりの祝祭だ


 枯れたキャベツの種を蒔こう、真っ黒なコウノトリが空を飛ぶよ


 青い煙が上へ下へ、緑の煙が街を覆うよ、鐘の音が永遠に続く、もう怖い夢は見ない


 真っ黒なコウノトリが唄を唄えば、灰色の人間だけがそれを喜んだ


 この街にはもう誰も居ない


――


(怖いよぉ~、真っ黒なコウノトリ怖いよぉ~、何で最後街に誰も居ないんだよ~、誰か居てよ~)


 なんかイケメンボイスで癒されている夢女子の闇を感じるな、しかもタイトルもついていないし、何がテーマなのかもわからないし、これが情操教育に役に立つのか。


「なあスィーゼ、どうだった?」


「…………」←無表情


「だよなぁ、これで頭がよくなるのなら苦労はない、というかモストもユニアもこんな育て方されたのか? いやぁ、違うよなぁ、いくら修道院の恩賜組が「為になる」とか言っていることとはいえ、これは流石に胡散臭い、ってそもそもこんなの何処で買ってきたんだアイツは」


 よくある「東大生の勉強法!」みたいな感じにいい具合に洗脳されている感があるような。


 うーーーーーーーーーーん。


「なあスィーゼよ」


「…………」←無表情


「男の浪漫団行きたい?」


「キャッキャッキャ!!」


「だよな!! 可愛い奴め!!(ナデナデ)」


「ニコニコ」


「今日はな! お前の為にイベントを用意したのだよ!!」



――詰所



「ドキッ! 丸ごと水着! 男だらけの脱衣麻雀大会、第2回!!」


「「「「「ウエイウエーーイ!!」」」」」←自警団員達


「キャッキャッキャ!!」


「さて、男の浪漫団への正式入団おめでとうスィーゼよ、お前に是非紹介したい奴がいるんだ! セク! ちょっと来い!」


 と丁度里帰りをしていたセクを呼び寄せる。


「セク、コイツはスィーゼ、ユニアの年が離れた弟だ、原初の貴族の直系だぞ!」


「へぇ、ユニアさんに弟いたんだ(ナデナデ)」


「ニコニコ」


「スィーゼよ、コイツはセク・オードビア! ウルティミス初の修道院生だ! 丁度里帰りをしたところでな! 大きくなったらよろしく頼むぞ!」


「キリッ」


「うんうん、スィーゼは将来大物になるからな、お兄さん今から楽しみだ、セク、言っておくがモストのバカボンよりもこの子の方が絶対にいいぞ」


「それを本気で言える団長って本当に凄いよね、修道院に入ってよりそう感じるようになった」


「キリッ」←神楽坂


「いや、キリッじゃなしに」


「いいの! 細かいことを気にするな!」


「でも大丈夫なの、脱衣麻雀大会って、確か前回、王子……フォス先輩と一緒にコテンパンにされたとか聞いたけど、それにユニアさんにスィーゼを賭場やら女遊びに連れて行ったのがバレてこれも凄いお仕置きされたって」


「我に策あり(ドヤァ)」


「…………」


「だから細かいことを気にするな! さあ脱衣麻雀大会開催じゃい!!」





 優勝は、流石のセクだった。


 んでセク以外俺を含めて全員全裸になった、まあ状況描写は控えよう、俺もしたくないし、全員イケメンではないから皆さんも望んではないだろう。パグアクス息がいれば、その時は数少ない女性需要に応えるために頑張ろうと思うので、その時はよろしくお願いします。


まあでも凄い楽しかった、スィーゼは大喜びだった、あ、念のため言っておきますが、スィーゼは風邪をひくといけないのでちゃんと服は着せていますよ。


 んでセクの勝ち方は派手に勝ったわけではないが堅実に一着を取った形、放銃したとしてもケロッとして引きずらない。


理由を聞いてみると、牌効率を確率論として計算した時、放銃は一定確率で発生するものであるそう。んで如何にその点数を少なくするかが勝利効率と照らし合わせて一番高いかを計算し、結果最良に近いから満足したとか何とか頭のいいことを言っていた。


「本当の頭脳戦って感じ、流石修道院生」


「だから団長も修道院出身だからね、何で他人事なの?」


「俺はマグレだからなぁ」


「首席監督生までやってるのに?」


「それはタナボタみたいなものだからなぁ、まあ最終的には、ティラーの世話してピガンの流通ルートも確保できしたし、ユニアをスカウトできたからよかったけど」


「…………」


「? どした?」


「あのさ、団長、聞いていい? 真面目な話」


 とセクは真剣な顔で問いかけてきた。


「団長は本当に中央政府に興味ないの? 首席監督生で国家最優秀官吏勲章を受勲して、桁違いの功績も挙げている。そりゃ修道院は最下位だったかもしれないけど、エリートになれる功績を十分すぎるほどにあげていると思うんだけど」


「…………」


 なるほど、セクは修道院に入って、色々とわかったこと、考えたことがあったってことか、なれば。


「全然興味ない、何故なら向いてないからな」


「向いてないって」


「俺が例えば王国府のエリートに異動になったら一か月で使えないって言われて外に追い出されるね」


「そ、そうなの?」


「そうだよ、お前も分かったと思うが、ウィズ王国は能力第一主義を採用している。そして能力という部分では、頭脳明晰はもちろんのことだが、出世という分野で力を発揮するためには人間関係能力が必須となってくるのは分かったよな?」


「王国府をはじめとした中央政府は、その修道院をそのまま体現したような場所だ、そして俺の順位を知っていれば、いくら功績を上げようが、それはエリートとしての適性があるということにはならないのさ」


「で、でも」


「セク、人間ってのは全員違うんだよ」


「そりゃそうだけど」


「本当に「そりゃそう」なのか? 当たり前の話なんだが、人間ってのは全員違うってのは言葉で言えば「そうだ」と答えるかもしれないが、実際は自分の杓子で計るし、計れないものなんだぜ?」


「そ、そんな言い方は」


「セク、はっきり言う、俺は首席監督生というエリートを一か月やっただけで嫌になった。んでそれが「嫌にならないということはない」とも分かった。努力でどうにもならないってな。俺はそういった勘みたいなのに従う主義なのさ、それこそ周りがどう言おうとな」


「…………」


「言いたいことはわかる、修道院で過ごせば色々考えることもあったんだろ、エリートの世界ってのがどういうものなのか、肌で感じた筈だからな、そして、わかったはずだ」



「俺が落ちこぼれと言われる理由もな、そして俺は落ちこぼれと扱われていることについてお前は納得している筈だ、それが分かっているからこそ俺は、自分が不当に評価されているなんて思ったことはないと」



「…………」


「だがそれは俺の話だ「セクは違う」からな、どんどん変わって自分の道を見つけて進んでくれ、それと」


 とフフンと笑うとセクを見る。



「今みたいに「首席監督生を勤めた落ちこぼれ」の話が聞きたければ変に遠慮するなよ」



「う……」


「セクは「後輩」だからな、そしてそれが先輩の務めだ、俺が首席監督生としてユニアとティラーにしてやれたことは同じことだったからな」


「あ、あの、別に、俺は団長の事」


「わーってるよ! お前は落ちこぼれるなよ~、とりゃとりゃ!」


「うん、ありがと団長」


 と会話をしていたら、リーケとデアンが何とも言えない顔でじっと見ていた。


「修道院って、本当に色々と凄い所なんだな」


 とはリーケの言葉。


「まあ色々とな、興味があるのなら話してもいいけど」


「いや、いい、団長じゃないけど、俺にも向いてないかも」


「ああ、まあ、向いていないもなにも修道院なんてとてもじゃないが入れないけどな」


 と場を誤魔化すようなリーケの言葉に、少しだけ和んだ時だった。


 カランカランと鳴子が鳴る。


「「「「「っっっ!!!」」」」」



「浪漫団! 第一種戦闘配置!!!」 ←神楽坂



 俺の号令の下、しゅぱぱっと、凄まじいスピードで体制を整える浪漫団達。その間わずか10秒足らずで配置完了。


 その更に10秒後。


「お疲れ様です、先輩」


とユニアが詰所に帰ってきて、俺達をの姿を見て怪訝な表情をする。


 俺とリーケとデアンとセクで麻雀卓を囲んでいたのだ。


「? 何をしているんです? 見たことのないボードゲームですが」


「ああ、これは麻雀と言ってな、俺の祖国のボードゲームだ、っと、スィーゼ、今セクが手出しで4索を出しただろう? 9巡目で手出しということは、周囲に近い数の索子がある可能性が高いという事なんだ、わかるかい?」


「コクリ」


「よしいい子だ、ちょっと休憩するかな、さあユニアがくれた詩を読んでやろう」


「……先輩、スィーゼにボードゲームを教えているのですか?」


「お? 馬鹿にするか? この麻雀というボードゲームはな、どんなに強い奴でも運という理不尽な要素で負けてしまうのさ。どんなに読み鋭く、戦略と戦術を練ろうともな」


「なるほど、あの真っ黒なコウノトリの歌も同じですね」


「ええーー!!?? そうなのぉ!?」


「はい、あれは諸説ありますが、この世に存在する理不尽を表すと言われているんです」


「ノストラダムスの大予言みたいな扱いなんかい、とまあそういうわけで、知的ゲームとして俺の祖国でも広まっているのだ、な? スィーゼよ(ナデナデ)」


「キリッ」←スィーゼ


「ほら、心なしか賢くなったような感じだろ?」


「心なしかではなくスィーゼは賢いんですよ」


「へいへい」


(計画通り……)


 これがユニアに対しての秘策、実は先日セクが帰ってくる前に鳴子を作り、ユニアが戻ってきたとき、開門と同時に受付役の浪漫団が鳴子を鳴らすように頼んでおいたのだ。


 そして麻雀の件で嘘はついていない、まあ実際は脱衣麻雀してましたけどね、それは当然言わない、けーっけっけ。


 よし、これで誤魔化しきれた、後はスィーゼをユニアに返しておしまい。


(また遊ぼうな、最年少団員殿)


「ニコニコ」




「それでは、私も参加しましょう」




「(*´Д`)え゛!?」



:続く:


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