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おまけ:バカとテストと闇に舞い降りた天才:後篇


――次の半荘



 数え役満直撃、当然箱割れ。


 これで最下位2回目、サンダルに続いて帽子を脱ぎ、これで後2回で全裸。


 大丈夫、まだあわてる時間じゃない、咲だって、そんなに連荘で上がっていたわけじゃない、負けることも多いじゃないか。


(だけど気になるのは……)


 ネルフォルの立ち位置はどうなんだろう、まさか魔王の姉ポジション……。


 いや、違う、その傾向はない、ぞっとするほどの徹底したデジタル打ち、となると原村、いや、のどっちの覚醒は必要ない感じだからこれも違う。


 誰だ、どのキャラなんだ。


 これが攻略のカギになると思うのだが……。


(っと、よし、これで聴牌、そのためには9索切りか)


 とネルフォルの手牌と捨牌を見る。


 ネルフォルはさっき九筒を加槓したが嶺上開花ならず、九索は、クォナには現物、ネルフォルはチャンタかトイトイ。


んで八索が切れているから9索だと地獄単騎確定、その形なら切った嶺上から持ってきた1萬の初牌に待ちを変えるだろう。


 だから神楽坂の一手は、これ。


「どうかいね!」


「ロン」


「っ!」


「振ってしもうた、チャンタか、まあ安く親を流せたからいいと……」


「日頃からチャンタの安さには疑問を感じ取ったんだけど、今回ばかりはその安さには感謝しないとね」


(;゜д゜)ア!!…コノテンカイ!! ←神楽坂


 手牌を倒す。


(やっぱり! 9筒を槓しているのに1萬を槓していない! あ、ああ! この手! まさか!!)



「清老頭!!!」



「32000」



「そんなん考慮しとらんよぉ~(泣)」



――次の半荘



 やばい、もうトランクス一丁、後がない。


 だがやっとわかった、なるほど、愛宕ネキだったか、異能バトル麻雀漫画で異能無しで全国区の強さだからなぁ、強い筈だ……。


(めげるわ……)


いや悲観することはない、才能の壁なんて今まで何回も痛感してきた、そう、末原のような凡才に出来ること。


 それはイカサマ!! ←暴言


(王子!)


(分かっている!! 手段は選んでられない!! 仕掛けるぞ!!)


 さて、麻雀をやるかたはお分かりだろうが、配牌時においてシャンテン数、つまり聴牌にまでにかかる牌の数のことだが、3,4、2の順番で確率が高く、この3つだけで合計の確率は9割を超える。


 とはいえシャンテン数が1でも、聴牌に時間がかかるのが麻雀なのだけど。


 今局の俺のシャン点数は4、確率は28パーセント、そして自分の山を前に出すふりをして両端の牌を有効牌を取り換えて2シャンテン、そして王子との卓の下を通じて牌交換で配牌時聴牌。


 んでこういう牌交換系のイカサマは、配牌時に牌整理の時がセオリー。


(よし!)


手牌に視線を落とした2人を確認した後、素早くイカサマを完了する。


(王子)


(勝ったな)


(はい)


と何処ぞの特務機関の指令と副指令の会話を交わし、改めて牌整理をする傍ら手牌を見て心の中でほくそ笑む。


(これで配牌時聴牌、これで第一自摸が上がりなら、地和すらも視野、まあ王子に俺の有効牌は無いの分かったものの理想的多面張、俺かもしくは王子が入り次第差し込みか、俺が自摸れば、ん?)


 と変だなと思い視線を上げた先、まだ牌が打たれていていないのに気づく。


 今回の親はネルフォルなのだが……。



 ネルフォルは牌を切らず俺を見て微笑んでいた、



 え、なに、どういうこと、早く牌を切りなよと思った時。



 ネルフォルはこう言い放った。



「明日は、晴れるかなぁ」



 牌をパタパタと倒れる。



「大三元、字一色、四暗刻、天和」



 そして俺はこう叫んだ。



「作品統一しろよおおおおぉぉぉ!!」



 とガックリと項垂れる。


 もちろんこれはイカサマである、そのイカサマをアピールするための明らかなフォース役満、そしてネルフォルがしたイカサマ技の名前はかの有名な。


「燕返し!!」


 作品、その哲也で有名になったイカサマ、このイカサマは言葉で説明するよりも動画で見たほうが早いと言える程ダイナミックなイカサマであり「こんなあからさま過ぎるイカサマ、出来たとしても成功なんてするのか?」と思われるほどだ。だが古き時代で戦ってきた玄人達はそういう人ほど騙せるのだという。


 だがそんなことは今回どうでもいい。


 そう、どうでもいいのだ、イカサマをしたことも、そのイカサマが燕返しであることも。


 ネルフォルは「手慣れた様子」で牌を伏せると、再び俺の目の前で「~♪」華麗に燕返しをやってのける。


 あの時、ネルフォルはこう言ったはずだ。



――「私も麻雀は時間がなかったからルールしか覚えていない」



「ネルフォル、お前、本当に麻雀って初めてか?」


「1万局」


「え?」


「私がこの勝負のために打った局数よ」


「い、いちまん……」


「あら、少ないくらいよ、イザナミが麻雀を仕入れたのが最近であったし、すぐに同じ物を取り寄せたんだけどね、女優としての活動の傍らだったから時間も取れなかった」


「そしてこれは確かに運の要素が絡み、そしてイカサマしがいがあると思った。どんなイカサマをしてくるのか、どんなイカサマが効果的なのか、そのイカサマの技術もまた誰でもできる難易度の低いものから高いものまで様々、このツバメ返しってイカサマは、難易度が高く心理の裏をつく私好みのイカサマね、んで難易度が低いイカサマは、そう」



「イザナミと王子がしていた、山を前に出すふりをして牌を二つ変えたり、卓の下で王子と牌交換をしたり、暗号を決めて普通の会話を装い、捨て牌を決めたりね」



「ぐっ」


「だけど、練度が全然駄目よ、全然練習していないから、ミスをしない様にと手いっぱいで、私が積み込みをしたことも全然気づく様子もないし、私が一流の賭場人であることを知りながら、イカサマを仕掛けてくるなんてことを疑う様子すらなかった」


 俺はネルフォルの言葉を受けてクォナに視線を移す。


「私は正真正銘初めてですわ、直感で色々とわかるのでイカサマは必要ありませんでした。というよりもこの手のイカサマはネルフォルが言ったとおり技術を磨くのに時間がかかりますし、王子とご主人様のコンビ打ちはそもそもネルフォルとはできませんから、私は好きに打ってよいという指示をされただけです」


「…………一つ聞かせてくれ、ネルフォル」


「なんでしょう?」


「1万局といったが、どうしてこれだけの努力をしたんだ、芸能活動だって忙しいだろうに、どうして麻雀に勝つまで、そこまで?」


「それが賭場人としての矜持、なんていえばかっこ付くかもしれないけど、そりゃ貴方と暑い夜を過ごせるんだものね、その価値は十分にあると、私は判断したの」


「…………」


 たったそれだけ、いや、それだけに全てを賭けるか。


 つまり、俺たちは始まる前から負けていたという事だ。


 これが一流の賭場人か。


「さて、これで私以外同率最下位、そしてイザナミは4回目、さあ、脱いで頂戴」


「…………」


 ここで俺は王子を見る。


(王子、申し訳ありません、敗北を喫しました、敗因は油断、責任は全て私にあります)


(いや、責任は私だ、原初の貴族のことは私の方がよく知っていなければならなかったからな)


(王子、後を頼みます)


(分かっている)


「さて、脱ぐ前にちょっと用を足しに行ってくるよ、2人とも待っていてくれ」


「「…………」」


「ばーか、にげはしないよ」


 とそのまま決意を込めて自警団の詰所のトイレの中に入り。




(さて、逃げるか)




と用具入れから清掃用の脚立を持ち出すと窓に向かって立てかける。


(けけけ!! そっちが哲也で来るならこっちも哲也でいくもんねー!! 哲也だけじゃなくてハヤテだってやっていたから、大丈夫!)


 もちろん王子とは目線で確認済みなのだ。


 うん、あの2人の前で全裸とか割と本気で貞操の危機を感じるからな、初めてはもっとムーディーな場所で、だって男の子だもん!


 とそのまま、窓から降り立ち、ぱんぱんと膝についた土を落として目線を上げると。




 クォナとネルフォルが立っていた。




「…………」


 視線を後ろに移すと王子が立っていた。


(あ、あの、王子)


(ごめん、ほんとごめん、乙女の勘がどうこうとか騒ぎ始めて、トイレに入った直後からもう既にここに向かってたのよ)


「…………」


「…………」


 シーン。


「あの、俺と暑い一夜なんて、俺、女心とか全然わからないし、面白くないよ(涙)」


「困難を乗り越えてこそのだからこそご褒美が甘美となる、ご主人様の言葉ですわ、まあでもまだ半分ですけど」


「はんぶん?」


「倍プッシュ」


(;゜д゜)ェ… ←神楽坂


「どどどどどういうこと!?」


「どういうことも何もイザナミを半分にする訳にはいかないでしょ?」


「考えれば分かることですわ」


「だから半分ってなんなのよ!?」


「つまり勝負はついていないという事ですわ」


「へ!?」


「今度は私とネルフォルのサシ勝負、勝った方がご主人様を好きなようにできるのです」


「脱衣麻雀は脱げば終わりのルールですよ!?」


「ですから倍プッシュなのですわ」


「圧倒的意味不明!」


「要は、アンタを好きにできるという事だよ、んでイザナミが勝てば私たち2人を自由にしていいよ」


「お前らに対して自由にしたいことが何一つとして思い浮かばない!!!」


「「…………」」


「アガガガガ!!」←2人からアイアンクローをされている


「」←神楽坂


 ぐったりしている神楽坂をよそに対峙する2人。


「ネルフォル、私はね、ご主人様がね」



「私に蹂躙されて、更に求める私に応えることができないと屈辱に震える姿が見たいのよ!!」



「」←神楽坂



「はっ! いくらなんでも、役に立たなくなったのを蹂躙する趣味は流石に無いわ、可愛そうじゃない! 私はね」



「私の下で強制的に快楽で悶えまくっているイザナミの姿が見たいのよ!! だけど絶対に許さないの!! なぜなら罰だから!!」



「」←神楽坂



「わかったわ、やはり話はお互いに平行線、まあいいでしょう、それぐらいがちょうどいい」



「「まだ終わっていない…まだまだ終わらせらない…! 地獄のふちが見えるまで限度いっぱいまでいく…! どちらかが完全に倒れるまで……勝負の後は骨も残さない……!」」



 そのバチバチと火花を散らすその横で。


(しめしめ、なんか盛り上がっている隙にこっそりと……)←王子


 ペチペチと頬をたたいて目が覚めた神楽坂、すぐに合点がいき、2人で抜き足差し足忍び足で立ち去り。



 2人そろって仲良くグルグル簀巻きにされた。



「「ですよね」」


「どこに行くのよ、まだ話は終わってないわ」


「王子も勝手に帰られては困ります、勝負を見届けていただかないと、さて詰所に戻りましょう」


 とそれぞれに縄を担いでずるずると引きずられる


「お、おぉ~じぃ~」


 と横でウルウルする神楽坂。


「…………」



「クォナ、ネルフォルよ、聞くがよい」



「「っ!」」


 威厳のある王子の言葉に無意識に背筋が伸びピタッととまる2人。


 その2人に対し、王子は天を仰ぎ、手を握りしめ、逡巡の後はなった。



「賭博は違法ざんす! なーし・・・! この勝負なーし!」



(´;ω;`)ブワッ ←神楽坂


「元々遊びのつもりだったし! お前らが負けたらちゃんと勝負は無効にするつもりだったし! 罰も夕飯おごり程度にするつもりだったザンス!!」


 何もかも切り捨てての、反則技、見苦しさの天才っ! 


「そもそも神楽坂は友人! 俺の友人に手を出したらどうなるのか分かってんだろうなぁ!? あぁーん!? お前ら自分の立場分かってんのか!? 次期国王の命令だぞあーん!?」


「「…………」」


「王子!! もうおやめください!!」


 と絶叫する俺。


「ありがとうございます、ウィズ王国の次期国王としての尊厳を捨ててまで、私を助けようとしてくれたこと、この神楽坂一生忘れません!」


「かぐらざかっ!」


「おうじっ!」


 だきっ! ←地面で八の字になっている


「「…………」」


 ちらっ。


「満足した?」


「はい(泣)」



:おしまい:



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