おまけ:バカとテストと闇に舞い降りた天才:中篇
勝負開始から半荘3回経過、俺は帽子と取りサンダルを抜いた状態の俺。
その間、ネルフォルが最初の半荘で1回負けただで、後の半荘2回は俺の1人凹みの2連敗だ。
さっきの言葉のとおり、麻雀は戦術と戦略要素が強いが、運要素も強くトッププロでも勝率は3割といった程度とは述べたとおり、だから1人凹みも普通に起こりうる。
とはいえ運要素が強いとはいえ、ちゃんと麻雀に強い弱いという戦術もあるし、それを語りだすと本当にきりがないので割愛するとして、まあ要は何を言いたいのかというと。
(狙い撃ちっっ!! 神楽坂!! 狙い撃ちっっ!!)←王子
「…………」←それを察して半泣き状態の神楽坂
まずクォナは正直普通の初心者という感じだ、時々放銃もするが、持ち前の第六感で大失点は避けている感じで役を作るのに精いっぱいといった様子。
やはり特筆すべきはネルフォルだった。おっかなびっくりで触ってたのは最初半荘だけ、しかも最初の半荘も最下位だったとはいえ終盤辺りからネルフォルは、麻雀の本質を見抜いていた。
麻雀とは如何に相手から上がるゲームではなく、相手を下ろすゲームであるかと。
「私には声が聞こえるのよ、捨て牌三種の声」
(なんか聞いたことがある台詞を言っている!!)
確かラムオピナをギャンブルで手に入れたとかあっさりと言ったが、後でよく聞いてみると、原初の貴族の中でも語り草になっているような伝説となる勝負だったそうだ。
「…………」
俺は何処か「初心者」だと思って舐めていた。
ギャンブラーとしてネルフォルは文字通り「俺とは桁が違う」のだ。
思えばネルフォルの初対面の時に仕掛けたナンパ、結果俺はロシアンルーレットというギャンブルで勝ったかもしれないが、あんなのはよく考えてみればギャンブルですらない、それこそ相手の油断に付け込むような手段で勝ちともいえないものだ。
証拠に前回の半荘も何とか南3局まで粘ったが、勝てるビジョンが見えなかった。
そう、認めなければならないだろう。
(王子……)
(分かっている、これは失策だった、油断をしていたな、格下は私たちだったのだ)
(はい、なれば)
(こちらも全力で行くぞ! コンビ打ちだ!)
コンビ打ち。
簡単に言えば、2人で協力して麻雀を打つという意味だ。その協力プレイとは自分に振り込ませるといった単純な方法の他、当然にイカサマも含まれる。
麻雀を打つ方は分かるだろうが、単独で戦うものにとってコンビ打ちというのはチート技に近い、だが相手は伝説のギャンブラーだ。
獣と戦うのに人が銃を使うのは卑怯でもなんでもない、何故なら銃を持って初めて獣と対等になるのだから、と刃牙でも言ってた。
俺と王子は目くばせをして早速コンビ打ちを始める。
「こんだけ負けが込むと、もうやってらんなくならないか? バカバカしくて」←王子
「まあ気を落とさずいきますよ、勝負はこれからですから、それポン!」
「おいおいよく入っているなぁ、ここでデッカイの振るとやばいな」
「そうそう手なんて入りませんよ、ゴミ手なんです」
「お前のゴミ手ってのは、信用できないからなぁ」タン!
「それです! 悪いですね、王子、南トイトイで5200です」
「あーあ、やってらんね」
と頭をボリボリとかく王子。
((よし!!))
内心ガッツポーズをする俺と王子。
これは「通し」と呼ばれるイカサマ、普通の会話を装い、相手の手牌から望むを切らせる方法だ。
――「「そ」うそう手なんて入りませんよ、「ゴ」ミ手なんです」(訳:ソーズの5を切れ)
こんな感じ、そう、勝てない相手に無理して勝つ必要なんてない。
そう、無理してネルフォルから上がる必要なんてない、王子の25000点がそのまま自分の持ち点となる。
これで次が南四局のオーラス、1000点でもいいから上がれば今度は俺がトップとなる、これが「必ず負けない策」なのだ。
麻雀というのは一位が価値の利益をほぼ独占する形の盤上遊戯であるが、今回の脱衣麻雀のルールは、あくまで最下位を取らなければ負けないからだ。
あ、そうそう、もちろんクォナとネルフォルが4回負けた時のペナルティは無効にするのは当たり前のことなのは変わらない。
そして洗牌の後、手牌を整理し、親はクォナ、最終局。
「やれやれ、中途半端な自摸が続きますね、手牌が進みませんよ」(訳:中を切れ)
「また三味線か、神楽坂」タン!
「ポン!」
(よし! これで聴牌な上に、特急券をゲット! これで次巡で王子からの差し込み、捨て牌はネルフォルの現物! これで)
(俺の勝ちだ!!)
タン!
「カン」←クォナ
「……へ? カン?」
「はい、カンは確か同じ図柄の4つ揃えばいいのでしょう? 相手が捨てた牌からも槓できるとルールブックに書いてありましたわ」
「ああ、そうなんだけど、なんでわざわざ大明槓?」
「はい、これで私がツモ上がれば、槓をさせた人物の責任払いというルールが書いてありましたから」
「は、はあ……」
責任払い。
ツモは本来、ツモ上がりした点数を4で割り、親が2分の1、子が4分の1を払うルールなのだが、その中の例外ルールがあり、それがクォナが言った「責任払い」というルールだ。
責任払いとは、これでクォナがツモ上がりをすれば、槓をさせた牌を捨てた人物が全て点数を払うという意味だ。
んで実際に上がられて責任払いをする羽目になるってのは麻雀漫画だと割とよくある展開なんだけど、実際はルールが設けてあるだけで、それこそイカサマでもしない限り非現実的レベル、だからこその例外ルールなんだけど。
うーーん、そんな運否天賦に縋る、まあルール違反ではないから大丈夫なんだけど、でもクォナってそんなキャラだっけ、どっちかというと第六感で戦うイメージが……。
「ツモ」
「…………は?」
「嶺上開花、トイトイ」
「…………」
大明槓の責任払い、これで逆転を許してしまったわけで。今度は逆にクォナが1000点でも上がればトップで終わることが確定する。
「まあ気を落とすな神楽坂、これは完全な事故だからな」
とケロッとした様子の王子。
そう、王子の言うとおり、リーチ一発だったりダブリーに振り込むのと一緒、いやそれ以下だ。
「そう、ですよね」
繰り返す、麻雀は確かに、戦術と戦略も大事ではあるが、運の要素が絡んでくる。だからトッププロでも勝率は3割ってところ。
「……この展開は麻雀漫画ではよくある展開……いやいや、いつもなら「こっち」だと思うんだよなぁ、だけど「あっち」なのか」
「どうした神楽坂?」
「い、いえ、そもそも俺達の立ち位置が、あの部分だとコレだし、でも、うーんうーん」
なんだろう。
コンビ技というチートを使った俺達に死角はない筈なのに。
疑念がぬぐえないまま洗牌を終えて配牌を終えて牌整理を終える。
「なあ、神楽坂、まだ引きずってるのか? そりゃこんな形で上がられて悔しいのは認めるけどさ、でも……」
王子は爽やかに笑って言い放つ。
「麻雀って楽しいよね!」
「…………………………………………」
いや、いやいやいやいや、そうじゃない、そうじゃない、うんうん。
「そそ、そうですね、麻雀って、楽しいですよね」タン!
「カン」←クォナ
「…………」
「自摸、嶺上開花のみ、これで私の勝ちですわ」
「ややややばい!! おおお、王子!!!(ベシベシベシ!!)」
「いだだだ! な、なんだよ! しかし2回連続嶺上開花って、しかも嶺上開花のみとか凄い偶然だな、こんなことがあるのか、しかもこれでクォナがトップで終わりか、ある意味貴重なものを見せてもらったわけか」
※着順のみを争うため、最終局での親の連荘は親がトップになった時点で自動的に終わる。
「…………」←クォナの上り牌を見ている神楽坂
それに答えず牌を崩して洗牌を終えて、配牌を終える……。
|)゜0゜(| ホェー!! ←神楽坂
「ど、どうした?」
「ス、スコア表!!」
「は?」
「お、王子! スコア表! スコア表って何処にあります!?」
「スコア表? ここにあるけど、見て意味あるのか?」
「ちょちょ、ちょっと失礼!」
半分ひったくるような形でスコア表を見る。
「…………」
((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル ←神楽坂
「おおおおおうじ!!!(ベシベシベシ)」
「いたたた! なんだよ!」
「ククククォナのスコア!! 3回連続±0です!!」
「ふーん、それも凄い偶然だな」
「偶然じゃないんです! 計算すればわかると思いますが! 天文学的に低い確率でしか出ないようなことなんですよ!!」
「はあ、それは分かったけど、出てしまったものはしょうがない、そもそもそんなの意図的に起こせるわけないだろう、っていやいや、クォナはさっきトップで±0じゃないんだが」
「ちちちがいます! 最初の持ち点を1000点として計算したとき! この点数だと±ゼロになるんです!!」
「なんでそんなことワザワザするんだ?」
「魔王がきます!! 魔王が!! 魔王がぁ!!」
「まま、まおう?」
「SS世界ではそう扱われているんです! 圧倒的ではないんです! 違和感の正体がやっとわかりました!! 福本じゃなくて小林だったんですよ!! 森林限界を超えた先で花が咲くんですよ王子!!」
「おおお、落ち着け、なんだよ、フクモトとかコバヤシとか何なんだ?」
「これが続きます!」
「は? 嶺上開花が続くの?」
「はい!」
「あ、あ、あのさ、神楽坂」
「そんなオカルトありえません」
「ひ、ひー! 王子! その言葉は回が進むにつれて最強のデジタル打ちという設定よりも「空気読めていない」感じになっているんですよ!!」
「ど、どういう意味?」タン!
「カン……」
「へ?」←王子
「自摸、嶺上開花」
「かかか、神楽坂!!」
「ね!? ね!? 私の言ったとおりでしょ!?」
(もうこうなれば! 本当に手段は選んでられない!! クォナとネルフォル、どっちかにでも剥かれたら戻ってこれないような気がするもん!!)
(安心しろ神楽坂!! お前のことは俺が守る!!)
(王子、ウルウル)
(よし! 行くぜ!!)
――最終局
よし、通しを駆使したおかげで、王子1着、俺が3着でオーラス。
これでイーピンを切れば聴牌でタンヤオが付き、王子からの差し込みで順位確定。
クォナには現物ではないが、クォナに大物手の気配はない、この感覚を信じるのなら。
(俺の勝ちだ!!)
タン!
「上がるか?」
「いいえ、それでロンしたら私の負けです、ですが、槓!」←牌を倒す
※BGM・神の領域
( ¯•ω•¯ ) ←神楽坂
「もう一個、槓!」
。°(´∩ω∩`)°。 ←神楽坂
「もう一個、槓!!」
ρ(´д⊂)イジイジイジ ←神楽坂
「ツモ」
「清一色、対々和、三暗刻、三槓子、赤一、嶺上開花」
「32000です」←目が燃える
「」 ←神楽坂
神楽坂、死へのカウントダウンスタート。
:続く: