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おまけ:バカとテストと闇に舞い降りた天才:前篇



 娯楽。


 エンチョウは確かに娯楽の殿堂ではあり、提供するサービスは多岐にわたるが利用するには金がかかる娯楽なのがおおい。


 んで、そういったあまり金のかからない娯楽も当然にあり、無論日本のような最先端技術を使ったゲームなんてものは存在しないが、ゲームというジャンルの娯楽がちゃんと存在する。


 代表的なのがボドゲだ。


 ボドゲ、俺がいた世界でも紀元前にまで遡る歴史のあるゲームだ。


幼いころ誰でも双六を一回ぐらいは遊んだことがあると思うが、本格的なボドゲになると奥が深く、それこそキャラメイクに数時間かかったり、一日で終わらなかったりアナログに「セーブ」みたいなこともするやつもある。


最先端技術を使ったゲームがゲームではない、日本だってちゃんと一定数のファンが存在する。


 んで俺は自警団の奴らとは、男の浪漫話の他、ボドゲでよく遊んだりもしているし、そのボドゲは元からあったものの他、首都で買ってきたものを提供したりする。


 そんな折、リーケからこんなことを言われた。


「団長の祖国のゲームってないの? あったらやってみたい!」


 ふむ、そういえばと考えてみる。


 日本にだってボドゲが存在するが、だが当然にここは異世界なのが問題だ。それに元の世界にいた時はボドゲにはあまり興味が無かったので、こっちから来てハマったクチなので見識も無い。


 知っていたとしても言語が違うのはやっぱりハードルが高くなるし、日本語をウィズ王国語に翻訳するとなるともの凄い手間になる。


そもそも買いに行くためにルルトに頼んで日本に戻っても、異世界転移自体はルルト自身が極端に力を消耗してしまうから意味がない。


 ここでも作れて、言語の壁が無く、戦術と戦略性があり、ゲーム要素もあり、ギャンブル性もあるルールが多少複雑でも中毒性があるゲームはないものか。



 神楽坂にっっ! 電流走るっっ! ここで圧倒的っっ!! 圧倒的閃き……!!



 これが丁度セルカのお見舞いの品をどうしようか悩んでいた時で、お見舞いの時にピガンの角を使った万年筆を頼むついでに、別箇で頼んだのだ。


 それなりの量になるから納期がかかると言われて、値段もピガンの角だと高すぎるので、安価な家畜の角をふんだんに使って牌を作ってもらい、木造の台を注文したのだ。


 んなわけで、満を持して圧倒的麻雀牌と圧倒的麻雀卓を3セットを注文したのである。


 注文後、急いで自宅に戻りお手製のルールブックを作成した。


 ただ麻雀って存在自体はメジャーだから知っている人は多いけど実はルールを知らない人も同じぐらい多い。


 だから3セットも必要かなぁと思った、3セット頼むと2割引きしてくれるって言ってくれたからそれで頼んだのだけど、ちょっと多すぎたかなぁと思ったが……。



「後の3巡を買う」

「来たぜぬるりと」

「死ねば助かるのに」



 うんうん、何故か麻雀している時って福本キャラになるよね、ってそれは俺だけ、というか何でコイツらが、ってまあそれは今更か。


 そう、麻雀は男の浪漫団たちの一大ブームになっているのだ!


 うんうん、麻雀って面白いって思う人ってトコトン面白いって思うよね。一日があっという間に過ぎる時間泥棒だと思うのですよ。


 とまあ、それはさておき、もう少しだけ説明を続けよう。


 自警団は、辺境都市が設けている治安維持のための組織であり、運用は辺境都市に任されている。


 んで自警団員はティーンエージャーの若い男で構成されており彼らにとっては「割のいいバイト」としての立位置であるとも以前に述べたとおり。


 そのバイトの中で交代制の夜勤がある、主な勤務は見張り。だが万が一侵入者があった場合は、増強した壁で感知できるので、その時に動けばいいだけだけど、この曰くつきの連合都市に忍び込むような輩もそうそういない。


 むしろボニナ族と関係を結んだことで、それがより強くなった。


 んで正門は完全に閉じてしまうから訪れる人物もいない、マルスはいろいろ大変みたいだから、ボニナ族を警備担当として取り入れ更なる浄化を図り、憲兵と連携を取っている。


連合都市の本拠地はここだけど、行政といった機関だけだから人気はない。だからノンビリと各々好きに過ごす。


 勉学で過ごす者、のんびり寝る者、小説を読む者、そして。



 男の浪漫を過ごすもの。



「ついに来たな、神楽坂よ」


 そういうのはお忍びで来た王子。


「はい、禁断の遊び、この日が来たのですよ」


 麻雀卓でお互いに隣に座りながら相手、今日の当直であるリーケとデアンを待つ俺と王子。


 そして俺と王子の格好はというと……。



 トランクス水着姿なのである。



 そう、本日の男の浪漫とは。



「ドキっ! 丸ごと水着! 男だらけの脱衣麻雀大会!!」



 さて、色々言いたいことがあるのは百も承知である。


 まず俺も王子もリーケもデアンもイケメンではない、ここにパグアクス息でもいれば女性需要も見込めるだろうが、ものの見事に冴えない男衆4人の脱衣麻雀大会なのである。


 そんな脱衣麻雀に何処に需要があるんだかと思いだろう、お前らの裸なんて、男はもちろん女だって見たくない、無論承知している、だが申し訳ないがその手の需要はそもそも存在しないのでご容赦願いたい。



 さて、この浪漫を体現するために、こんなやり取りがありましたとさ。



――1週間前



「脱衣麻雀?」


 ボニナから戻って1週間後、麻雀を終えて雑談をしていると自然とそんな話になった。


「うむ、俺の祖国の娯楽遊戯施設では必ず1台は設置してあってな、ルールは課題をクリアする形だったり、どんな形でもいいから上がれば女が脱いだりするのだよ」


「へー! なんかいいな! 浪漫がそそられる!」


「だが結構えぐい設定がしてあってな、後一回上がれば全裸だったのに、リーのみドラ8で爆死した時には、台パンしそうになった」


「世知辛い、だが困難を乗り越えた先にある聖域、なんと甘美な響き」


「うんうん、困難な道を乗り越えた先のご褒美って男なら向かうよね」


「脱衣麻雀か~、やってみたいよなぁ~」


 と男の浪漫話に花が咲くものの。


 俺は我が女性陣に脱衣麻雀しようぜと頼んでみる……。


 ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル ←神楽坂


 リーケとデアンも同世代女子に頼んでみる


 ((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル ←リーケ、デアン


「無理な上に、殴られるだけじゃ済まないと思う」


「「うん、普通にセクハラだよね」」


「だけどさ! いいなぁ、なんか憧れるなぁ!」


「あ!! 圧倒的閃き!!」←リーケ


「どうした!?」



「男同士だったら脱衣麻雀って犯罪にならないんじゃね!?」



「「天才現る!!」」



――現在



 女に脱衣麻雀を迫るのはセクハラではあるが男同士で脱衣麻雀をすれば倫理的にセーフティー。


 理外の発想、そんなノリ、男子高校生の日常的なノリ。


 だって、馬鹿なことしたいじゃん! 男の子じゃん!


 まあ脱衣麻雀という趣旨と目的を考えれば逆転しているのは分かっている、だがそれがいい、脱衣麻雀なんて響きを体験できる、十分だ。


 メンツをどうしようかと思った時に、ちょうど王子が近くに行幸する用事があることを聞きつけ、王子も誘ったところ二つ返事で了承、今回の脱衣麻雀が大会が実現することになったのだ。


 んでルールについては、以下のように決まった。


 持ち点は25000点のウマもオカもなし、純粋な点数勝負で順位を決める、これは脱衣麻雀というゲームの性質上、設けても意味がないからだ。


 そして脱衣の回数なのだがこれも決めた、トランクスの水着の他にパーカー、帽子、サンダルを着用した常夏スタイル、4回目でトランクスを脱いで全裸になり試合終了。


 もちろん脱ぐときは「ウエイウエイ!! ヒューヒュー!!」という茶化するのは言うまでもない。


 ではどうやって脱ぐ人物を決めるのかにつていだが、通常のゲームのように1局あがりだと、すぐに決着がついてしまうので、半荘終了時点での「最下位」の人物が脱ぐという事にした。


 そして一番の懸念材料である男の全裸を努力して見るなんて我に返った瞬間に首吊り案件であることについてだが、それはマルスで夕飯奢りというペナルティをつけたのだ。


 んで俺も王子も楽しみに待っているのだが……。


「しかし遅いな」


 とは王子。


「変ですね、さっき「夕飯は食べ終わったらすぐに行くよ~」って言っていたんですけどね」


「まあ何か用事ができたんだろうさ、それと神楽坂、一応確認だがヒラ(イカサマなし)で打つんだろ?」


「もちろんです。イカサマなんて興ざめですからね」


「ふむ、我がコンビ打ちを披露したかったんだがなぁ」


「まあ、そんな必要に迫られることなんてないですからね」


「実際、そんな必要ってないよな、フィクションじゃあるまいし」


「「HAHAHA!!」」


 と笑っていると、詰所の扉がノックする音が聞こえる。


「お! 来たぞ! ってなんでノック? はーい、入っておいで~」


 と言っても開く気配がない。


 開けてほしいという事なのだろうか、なんだろう。


「神楽坂、ひょっとして夜食代わりの菓子でも買ってきてくれたのではないか?」


「おお!! それは気が利きますね!! はいはい、今出ますよ~」



 とガチャっと扉が開けた先。



 そこには予想通りリーケとデアンがいた。



「「zzzzz」」



 クォナとネルフォルにお姫様抱っこされる形で。



「「…………」」



 ここから本当の地獄だ、とベジータが言っていたなぁと思った。





 クォナとネルフォルは、そのまま自警団員のソファに2人を寝かせる、うん、男1人をお姫様抱っこか、流石パワー型女子。


「「…………」」


(なあ神楽坂よ)


(ええ、なんでこの2人がわざわざ運んできたんですかね)


「「…………」」←澄ました顔で待っている


(…………なんか2人とも話しかけるの待っているような気が)


(嫌な予感がしますけど、じゃ、じゃあ)


「あ、あの、クォナさん、ネルフォルさん、2人はどうして寝ているのかなぁ?」


「リーケさんとデアンさんも疲れていたのでしょう、廊下で寝ていましたの、ねえネルフォル?」


「うん、自警団の当直勤務は過酷だものね」


「いやいやいやいや!! 違うよね!! 廊下で寝るって!! 酔っ払いか!!」


 そんなツッコミをよそに2人はすっと俺と王子の麻雀卓の対面に座る。


「さあ、始めましょうか」


「はじめねーよ!?」


「もう、ご主人様は奥手ですのね」


「ええー! 奥手とかという問題なの!? いきなり何!? ネルフォルもなんでいんの!?」


「彼氏が脱がされるって聞いて大人しろっての?」


「脱がされるって男同士だからね! しかも彼氏じゃないし! というか今から何をするかわかっているのか!? 俺たちがする脱衣麻雀ってのはな! 負けたら服を脱ぐのはもちろん、全裸になるまで終わらないってルールなんだぞ!?」


「「わかってる」ですわ」


「ええーー!! あ、あのね、このゲームに参加するってことは性別による差別はないんだぞ、全裸は本当の意味での全裸なの!! 女だから勘弁してくれるとかはないの!!」


「はい、ですから、私が負けた暁には王子には退出していただいた後に、ポッ」


「それは脱衣麻雀と微妙に関係がない! それにネルフォルは嫌だよな? いいか? 俺と王子にいやらしい目で見られるんだぜ? あの時は相当に嫌な思いをしただろ? ってさせた本人が言うのもあれだけどさ!」


「え? なんだって?」


 くっ、これってやられるとイラッとくるな。


 しかしどうするんだよ、女相手に脱衣麻雀ってさ、男の浪漫なんだけど、こう、いざ本人たち目の前にすると罪悪感が先行して、テンションが上がらないんだよな。


 と悩んでいた時だった。



「クォナ、ネルフォル、聞くが良い」



 王子の威厳のある言葉に、背筋が伸びすぐさま聞く姿勢を取る2人。



「お前たち原初の貴族は我が配下であるが、同時にかけがえのない同朋であると解釈している。リクスもまた、公の場では配下として扱っていたが、場を離れれば同朋として振る舞っていたそうだ。故に今でも我が王族は敬意を払っている」


「故にいくら遊戯とはいえ、お前たちに女性の尊厳を傷つけるような行為を強いたくないのだよ」


「「…………」」


 おお! 流石王子! こういう時の王子は本当にかっこいいのだ!


 その王子としての言葉にまずクォナが恭しく言葉を返す。


「王子、よろしいですか?」


「うむ、述べよ」


「滅私奉王を掟とするシレーゼ・ディオユシル家直系として申し上げます、大変失礼ながら王子は、女心を存じ上げないと進言いたしますわ」


「ほう?」


 クォナの挑発的な文言に王子はにやりと笑い、クォナは目をそらさず言い放つ。


「ご主人様に操を捧げると決めて以降、私が手を抜くとでも? 上流の至宝の字を背負う覚悟は半端なものではなしえないもの、私はいつでもご主人様に見せても恥ずかしくないように「整えて」おりますわ」


 クォナの覚悟を受けてネルフォルも続く。


「王子、同じ理由で悪女優を舐めないでいただきたいです、私の噂はご存知の事でしょう? 殿方は女性の付けている下着にすらも「夢」を見る、そして私は清楚な男の夢ではなく淫靡な男の悪夢を実現させることをお約束しましょう」


「ふっ、くっくっく、はっはっは、そうか、それは失礼したな、覚悟が足らなかったのは私の方、という事か」


 と決め顔の王子は俺に視線を送る。


(どうしよう神楽坂、脱衣に躊躇ないがないんだけど?)


(変ですね、私が好きな作品だと「もーえっちー!」とかのリアクションがあるはずなんですが)


((…………))


 ここで「ふっ」とお互いに笑いあう。


(まあいいじゃないですか、王子、勝負、受けましょうよ)


(ああ、そうだな、元は女相手の脱衣麻雀なんて実現不可能だから、男同士でやろうという話になったんだからな)


(リーケとデアンには悪いですけど、あの2人も男の浪漫団団員、理解してくれますよ)


(だな、よし、決まりだ)


「わかった、勝負を受ける、2人とも麻雀経験は?」


「先ほどリーケさんとデアンさんが持っていたルールブックを読んで覚えただけですわ」


「私も急だったからルールしか覚えていない」


「分かった、んで今回の脱衣麻雀のルールについてなんだが」


 と説明を始める王子。


んで、通常のルールに加えて唯一のハンデというか、脱衣方法についてだがクォナとネルフォルは徐々に脱ぐというわけではなく「4回負けた時点で全て脱ぐ」という臨時ルールを追加した。


それはそうだ、男のセミヌードと女のセミヌードでは意味がまったく違う。男はこの姿のトランクス水着姿のとおり、セミヌードなんて何とも思わないが、女にとっては全裸に等しい屈辱であることはいうまでもない、当たり前の配慮だ。


 そして誤解なきように言っておくが、クォナかネルフォルが4回負けた時点で、勝負はその時点で「無効」にするつもりだということも付け加えておく。


 これも当たり前だ、さっきの王子の話ではないが、ルールとはいえ強制的に服を脱がして女を全裸にさせるなんてことは男の浪漫ではない、ただの暴力だ。


 まあクォナもネルフォルも「仮に裸になったとしても俺と王子は安全な男だから大丈夫」なーんて軽く見ているに違いない。


 まあそう見られるのは不本意ではあるが、そういう「男の矜持」は女にはわかるまい。


 ならばせめて格の違いを見せつけ「俺たちが「安全な男」でよかったな」なんて皮肉を言わせてもらう。


(よし! 神楽坂! いくぞ!)


(はい! 後悔させてやりましょう!!)








「辞めればよかった(涙目)」←神楽坂


 と既に帽子を取り、既にオーラスで最下位で後悔させられた神楽坂なのであった。



:続く:


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