第3話:面接と展望
そんなわけで、突然現れたエシルと名乗った女のボニナ族に案内されることになった。
さてさて、道すがら都市の中はどんな感じかと思ってキョロキョロ見るが、閉鎖都市といえど景色は普通の村といった感じだ。
「なーんもない田舎でしょ、ウルティミスと変わらないんじゃない?」
「ああ、そうだな、まあ違いと言えば」
違い、ウルティミスは農業もしているから畑があるが、ボニナ都市に畑はない、代わりに何をしているのかというと体を鍛えているのだ。
個人でトレーニングしている者、組み手をしている者、筋トレやロードワークといったメニューをこなしている。、
「有事に備えてね、強いのがボニナじゃいい男といい女の条件なの」
「タドーも言っていたなあ、そういえば、エシルはどうなんだ、随分男達がビビっていたけど」
「まあそれは私が最強だからね」
「へー! 最強なんだ! 凄い凄い!」
「ま、タドーじゃないけど、私も手合わせをお願いね、他に何か聞きたいことはある?」
「だったら1個質問、自警団員達はラムオピナの用心棒に出かけたりするのか?」
「ここでは用心棒稼業の給金で生活しているから大人の仕事なんだけど、年長者達は見習いって形で参加してる、私もタドーと見習いとして組み込まれているの」
「そういった街の方策というのはどうやって決めているんだ?」
「その時々で変えているみたいだよ、今は街長が凄い人だからさ、何か問題が発生したら大人たちが街長の家に相談しに行って、決定を下すって感じかな」
とこんな感じで特段隠すことなく色々と教えてくれた。
ボニナ族はその民族の特殊性から外部との交流はない。故にここで生まれた子供はある程度大きくなると、ボニナ族独自の格闘技と勉学は学の有る大人たちが教えたりしているそうだ。
なるほど、これがボニナ族か……。
「着いたよ」
というエシルの声に我に返る、まあ、色々なことは後でゆっくりと考えるとしますか。
ボニナ族の街長の家に来るのは2度目、会うのも2度目、平屋で広い一軒家だ。
なるほど、つまりここはウルティミスのルルト教会のようなものか、彼女に案内されるまま、屋敷の玄関の前に行き、そのまま靴を脱いで上がると、彼女は部屋の前に行き正座する。
「街長、神楽坂駐在官を連れてきました」
「入れ」
という声がして、彼女に「私はそばで控えているから」と促されて1人で入る。
そこには応接室であろう部屋に、街長は椅子に座り煙管をくゆらせていた。俺の姿を見ると、街長は煙管をポンと叩いて灰を落とす。
「ようこそ、神楽坂文官大尉、久しぶりだ、名乗るのは初めてか、ワイズだ」
「神楽坂です、よろしくお願いします」
「そう固くならずに、くつろいでくれ、それと着任早々仕事をしてきたようで何よりだ、噂と違い勤勉なんだな」
突然そんなことを言い出す街長、一瞬何のことだろうと思ったけど、なるほど、喧嘩のことを言っているのかすぐに思い至る。
「はい、とても気持ちが良い連中でした、仲良くなる手段が喧嘩だなんて、久しぶりにすっきりとした交流をしたような気がします」
「だが、精神的に未熟もいいところだがな、さて神楽坂大尉、お前のことはあらかた調べ終わっている、王子との繋がりも含めて、な」
「…………」
「それと駐在官として招いておいてだが、私の方で特段何をして欲しいという指示はない、だから好きなように過ごし生活追々馴染んでいってくれ、だが一つだけ、肝に銘じてほしいことがある」
「伺います」
「お前は部外者じゃないってことだ」
「…………」
「駐在官がずっと空位だったのは知っているな? それは何故か、部外者を入れる必要はないからだ。我々の我々の好きなようにやらせてもらう、その代わりウィズ王国の決めた決まりに従っているのだからな」
「街長、となると今回の私の着任は今まで空位だった駐在官の枠を埋める程に利益がある、という事ですよね、その利益について伺っても?」
「お前は神に近い位置にいる、これはもう確実と言っていいほどに、さっきの喧嘩が証拠だ。そして我々にとって神の力は無関係ではないのは知っているか?」
「無論です、統一戦争の話をされているのですね」
「そうだ、初代国王リクスは神の力を使い我々は敗北した。その後リクス率いるフェンイア国に全面協力する形で参戦し、統一戦争勝利に導いた。そして後世、我がボニナ族とリクスとの戦いは統一戦争時に挙げた偉大な三つの勝利の一つとして後世まで語り継がれている、故に他人事ではない」
「だがそれでも神との繋がりとしての人物はリクスただ1人であるし、そして現在神と関係する人物は教皇ただ1人。故に神の力は我々にとっても「語り継がれる」ものであることは変わりはないのだよ」
「だがここで例外が現れた、それがお前だ」
「ウィズ神とルルト神の橋渡し役、神に近しく、その力を得て功績をあげる。故に私達はその「真実」を知りたいと思ったのだよ、尊敬する御先祖様達が誰と戦ったのか、これがお前が欲しいと思った理由だ」
「…………」
ふーむ。
「理解しました、ですが私は駐在官、その立場として出来ないことは出来ません。言えることは言えますし、言えないことは言えませんよ」
「それで構わん、言っただろ、部外者ではないのだと、お前はただここで普通に過ごしてくれればいい」
「分かりました、それともう二つほどいいですか?」
「なんだ?」
「グーファミリーを皆殺しにしたのは誰ですか?」
俺のこの言葉に街長は凄惨に笑う。
「それを聞いてどうするんだ、ガキ」
「どうって言われても、単純に興味本位ですよ」
「ああそうか、仲間に確か憲兵がいたか。最悪の武闘派と呼ばれる憲兵中隊を率いるタキザ・ドゥロス大尉隊長とキマナ・グランベル少尉副長、そしてアイカ・ベルバーグ少尉副長補佐」
「…………」
「将校だけじゃない、拷問に長けたポート伍長、十数人相手を全員再起不能にした喧嘩自慢ドミック伍長といった逸材揃いだ、なるほどなるほど、我々の喧嘩の相手には箔が付くことを含めて悪くないか、どうだ?」
「どうだって、ボニナが犯罪組織で無いのならその喧嘩は実現しませんよ、何を言っているんですか?」
「…………」
「ふむ、憲兵はなるほど、確かに権力をかさに着て偉そうだとか色々言われていますけど、ちゃんと理性をもって喧嘩しますからね」
「それは残念だ、それと神楽坂大尉、一緒に連れてきたレティシアという女性文官はお前の女か?」
「へ? 違いますよ、ただの同僚です、あ、そうだ、先に言っておきますけど」
「なんだ?」
「彼女は確かにスタイル抜群のグラマーな美人さん、頭脳明晰でウルティミス学院の主任教員、んで自警団員達からウルティミスじゃアイドル的存在ですけど、手は出さないでくださいよ、何故なら」
「怒るととっても怖いですし、しかも強いんです、そうなった場合は私でも止められませんからね」
「……分かった、言い含めておこう、それで?」
「それで、とは?」
「聞きたいことが二つあると言っただろう、もう一つは何なんだ?」
「ああ、そうだ、えっと~」
「俺は、何処に住めばいいんですか? タドーたちと遊びまくっていて聞くの忘れてました」
街長は俺のこの質問に軽くため息をつく。
「お前の世話役についてはタドーとエシルに任せてあるから2人に聞け。さて、面接は終わりだ、エシル!」
との言葉で、呼応する形でエシルが入ってきた。
「後は頼む」
「分かりました、失礼します、行こう神楽坂さん」
というエシルの言葉で街長との面談は終わったのだった。
●
そんなわけでエシルに案内された駐在官としての拠点なのだが。
「ここか~」
エシルに案内された場所は、街の中にポツンと立っている一軒家だった。
「掃除はしておいたから、中は自由に使ってね。じゃあ明日は朝食の時間に自警団の奴らのところに行って、んでレティシアさん」
といつの間にか俺の後ろにいるウィズに話しかけた。
「? ウィズ? どうしてここにいるんだ?」
「どうしても何も、ここが2人の拠点だからね」
代わりに答えたのはエシルに思わず「え?」となるが。
「どうやらそのようですよ、神楽坂駐在官、一緒の方が何かと便利なので助かりますね」
と意に介していない様子のウィズ、うむむ、まあいいけど。
「後は何か聞きたいことがある?」
「もちろんあるぞエシルよ」
とガシっと肩を掴む。
「な、なに?」
「風呂」
「へ?」
「だから風呂! 俺は今日一杯喧嘩して汗をかいた! だから風呂に入ってさっぱりしたい! 何故なら日本人だからです! 風呂はあるよな? な? な?」
「ふ、ふろって、あるにはあるけど、今日は駄目」
「ええーー!!!」
「ボニナにとって風呂も交流場だから共用浴場なんだけど、使える時間が決まっているの。その時間が終わっているから駄目」
「そんなぁ、シクシク」
「一日ぐらい我慢しなよ、その代わりボニナの共用浴場は天然温泉で凄い広いから」
「マジで!!??」
「う、うん、本当」
「わーいやたー! だったら我慢するぜ!!」
「そ、それとちなみに時間帯によって男女交互で使うから気を付けて、んで掃除は交代で私達女と自警団員達が清掃する決まりになっているからね。んで飯は、男どもは詰所で食べて一緒に風呂入って遊んで、後は当直の自警団員以外は家に帰って寝るって感じかな」
「ほほーう、そこら辺はウルティミスと変わらないのう」
「あとレティシアさんは、朝食の時間に今度は女たちの溜り場が公用館だから来てね、んで私達に交じって馴染んでいってね、んで分からないことがあればタドーとか私に聞いてね、以上、後は?」
「大丈夫だぜ!」
と言いながら「じゃあね」と俺とウィズに手をひらひらさせながらその場をエシルは後にしたのだった。
「あ~、色々あって疲れた~、風呂に入れないのなら、荷物適当に置いて、そのまま眠るかね」
「…………神楽坂様、周囲に人の気配や不審物はありません」
そんな横で相変わらず警戒を解かないウィズ。
「りょーかい、なあウィズ、肩の力を抜けと言われて無理だろうけど、折角だからもっと楽しみなよ」
「は、はあ、ですが」
「ですがもないの、果報は寝て待て、まずは明日は早く起きなきゃだから、簡単な荷物整理から始めようぜ」
「…………」←じっと見つめる。
「だー! もうわかったよ! まだ分かっていることは少ないし、まだちぐはぐな部分も多いから、俺自身整理しきれていないのが本音なんだけども、それでもよければ」
「伺います!!」
「う、うん、じゃあ、とりあえず、家の中に入ろうぜ」
「はい! 応接室の準備は終わっています、そこで!」
「わ、わかった、わかったから、ね?」
●
そんなこんなで荷物を適当に整理すると応接室でウィズと合流、さあ待ってましたとばかりにお茶まで用意してくれて「さあお願いします!」と気合十分だった。
うむむ、と思いながらも、俺はまず街長との面談の会話を全て彼女に話す、ウィズは真剣な様子で話を聞いており、全て話し終わったところで俺はウィズに問いかける。
「さて、まずは復習がてら一つ一つ潰していくぜ、まずは街長との会話で明らかにおかしい部分があるよな?」
「明らかにおかしい部分?」
「脅しがベタすぎる」
「ベタ? 典型的な手法だと思いますが」
「最初に「俺のことを調べた」とか言っていたから、どの程度まで俺達のことを知っているのかなと思って、挑発ついでに街長にグーファミリーの件を単刀直入に聞いてみたんだよ」
「よくそんなことをして無事でしたね」
「まあね、そんな挑発にどうするのかと思ったら、これ見よがしに仲間の名前を上げていったんだよ。タキザ大尉の部隊の下士官まで事細かにね、まあ向こうも俺がどういう反応を示すのか試したかったのだろうけどさ」
「それが「脅しがベタ」という結論になるんですか? ボニナ族はその情報をどうやって仕入れたことは重要ではないのですか?」
「全然重要じゃないよ、何処に誰がいるかだなんて、いくらでも調べようがあるのさ、だから考えるだけ無駄なの」
「無駄って」
「さて、ここで問題はどうして脅す必要があったのか、という点なんだよ、お前はどう考えている?」
「そもそも脅しの効果は心理的に優位に立つために行うものです、故に目的は相手の今後の行動を制限するため、ここで神楽坂様の何を制限したいのかを考えるのが大事だと思います」
「それはそうなんだろうけどさ、結局ある事がありその目的は果たせなかっただろ?」
「ある事……タドー達の歓迎会、つまり喧嘩ですよね?」
「そのとおり、タドー達は街長から、俺を迎え入れるだけで何もするなとという指示を受けていたんだろう、街長が戻ってきて血相を変えたことを見ても間違いない」
「それでウィズも見ていたとおり、タドーたちの喧嘩って本当に気持ちがいい喧嘩でさ、あれだと「いい奴」って印象が先行して、脅しの意味がまるでなくなってしまったんだよね」
「ちょ、ちょっと待ってください、神楽坂様」
「どうした?」
「となると街長の脅しだけじゃなくて、先ほど話してくれた街長の話の全体の色々な部分がチグハグというか、理に適わなくなりませんか?」
「そうだよな、どういうことだと思う?」
「どうって、それは、その」
「簡単さ、ワイズ街長は色々理屈を並べてはいたが、それが全部方便だってことだよ」
ウィズは驚いて目を見開く。
「街長との会話で一番重要なのは、当然に俺をここに呼んだ理由なんだが「統一戦争時にリクスは神の力を使い勝利を収めた、その真実が見たいから」だと言っていた。そんなことはありえないのにな」
「あ、ありえないとまで言うのですか? 自分を負かした力の正体ですよ? 私はむしろ納得したのに」
「だったら逆に聞くぜ、今の話を聞いて、統一戦争時のボニナのイメージと合わない部分があるんじゃないか?」
彼女は真剣に考えている、いや必死で思い出している。
「た、たしかに、そうです、そういえば確かに神楽坂様のおっしゃるとおり、ボニナは、リクスとだけ交渉を進めていましたが、神の力には興味を示していませんでした。い、いえ! すみません訂正します! 大分昔の事なので、記憶に齟齬があるかもしれません、詳細な記録は自宅に戻って確かめないと」
「自宅?」
「フェンイアにある私の自宅です」
フェンイア、リクスの出身である当時は小さな宿場町だった場所。
統一戦争に勝利した後、当時使っていた現在の修道院の建物をそのまま政府本部として、出身地を聖地としてウィズ神を祭り上げた施設を建立した、それが聖地フェンイアだ。
その聖地の中に「神の自宅」としての聖域があると言われており、何処にあるのかを知っているのは教皇と枢機卿のみ。
その枢機卿もウィズの自宅の庭までは立ち入りしか許されていないと聞いたことがある、自宅に入ることが許されてるのは教皇のみだそうだ。
「そ、そうですよ、記録を調べれば戻れば今回のヒントが」
「いや、その必要はないよ」
「え?」
「それと今のウィズの反応で追加で分かった、リクスの単独での交渉って、こちらからじゃなくて、今回みたいに向こうからオファーがあったんじゃないか?」
ハッとすると勢いよく立ち上がる。
「か、神楽坂様!」
「ちょちょちょ、だから! まだまだ分からないの!」
「そ、そうですか、す、すみません」
がっくりと肩を落とすウィズ、うむむ、今回はずっとこんな調子だ、普段冷静な奴だから、その反動だろうか凄く動揺するのだ、となれば納得はしてくれないか、なれば。
「だがどうして俺がこういうのかは説明できる、そのオファーを受けた理由はリクスもボニナ族と一緒だったてことだよ」
「一緒?」
「そう、何故なら統一戦争時のボニナ族が協力したのは、リクスとウィズの関係は傀儡ではなく、相棒だって分かったからなんだよ。そしてそのことはちゃんと現在のボニナ族に伝わっている、だから神の力を卑怯だと言わないのさ、だって敗戦交渉は次があるだろ?」
「次……」
「さっきの逆の話、リクスからすればボニナを味方に付けることの意味の大きさを知っていただろうし、それに面白いと単純に思っていたのだろう。結果ボニナを味方に付けたことは「他国をビビらせた」んだろ? ただそれだけで心理的攻撃力が凄く上がるからな、統一戦争の被害がそれで随分と少なくなった筈だ、だから神の力の真実が見たいだなんて理由は方便なんだよ」
「ですが、今は平和な世の中です。その理由だと通らないと思いますし、結局それが分かりません、色々と理屈が通らないかと思いますし、こうチグハグ……」
ここでウィズは俺の最初の言葉を思い出したようだ。
「な? だからチグハグなんだよ、それが繋がっていない、だから「分からない」のさ」
「ですが、神楽坂様の口調だと、今回の状況について分かっていることがあるように思いますが」
「とはいえまだ「あてずっぽう」の感じなんだよ、んで実際に街長と会って色々包囲弁を並べたり脅したりして「複雑に考えさせようとしているのは分かった」から、単純に考えればいいんだなって思っただけ」
「単純?」
「今回のグーファミリーの皆殺しと俺を呼んだことは関係があるってことさ、わざわざ憲兵とマフィアをピリピリさせる程の理由がボニナ族にあるってこと」
「そ、その、理由は?」
「それはまだ分からない、てなわけで、今後の活動についてだが、ウィズにお願いがある」
「は、はい! 何でもします!」
「いや、違う、逆だよ、ボニナ族の情報について、おそらく今の立場を使えばお前なら取りたい放題だろう、色々な思いがあるのは分かるが、それはやらないで欲しいんだ」
「え?」
「辛いかもしれないが、この神石に力を籠めること以外は、大人しくしてほしいという事だ。ウィズ自身での情報収集は、いわゆるボニナ族の女達と一緒にいる以外は控えて欲しいってこと」
「わ、わかりました、神楽坂様がそうおっしゃるのなら」
「それと後もう一つ、これだけは確実に言えることがある」
「え?」
「このままいけば、かなりデカい規模の武力闘争が起きることになる、その際に相当に汚いことをすることになるし、死人も出る事態になるってことだ」
「…………」
「さて、ウィズ、その汚れ仕事は俺とお前の2人ですることになる。出来るか?」
俺の言葉に、ウィズはやっといつもの余裕を取り戻す。
「無論です、お忘れですか? 私は貴方の奴隷なんですよ?」
「うえ!? あ、ああ! あったね! そんなことも! でもそれは!」
「クスクス、冗談です。それこそ統一戦争で覇者となることは綺麗事ではありません、汚れ仕事もたくさんしましたし、今更嫌悪感なんて抱きませんよ」
「分かった、頼もしく思うよ、さてそれまでは普通に過ごそうか」
「はい、それにしても懐かしいですね」
「え?」
「リクスもこんな感じでした、こういう時は訳の分からないことばかり言って、その割には妙な説得力があって、自然と流されていくんですよ」
「……そっか」
リクスか、歴史に名を残す人物と比べられるなんて王子に申し訳ない気もするけど落ち着いていたようでよかった。
思えばあの適当神は「面白いものを見せてくれるのなら後はどうでもいいや」というスタンスだったから色々と勝手が違うものだなぁ。
まあウィズはこっちの意図を汲んでくれて、しかも頭の回転が速いから、あの適当神とは違う意味で助かるけど。
そう、今回の任務は確実に死者が出る作戦を採用することになる。
問題なのは、どう出すかだ、その匙加減を間違えれば……。
食い荒らされて骨の髄までしゃぶられる。
次回は、9日か10日です。