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こちらウルティミス・マルス連合都市・湖畔前・駐在所:前篇


――こちらウルティミス・マルス連合都市・湖畔前・駐在所



 駐在官。


 ウィズ王国での都市階級では最下級の5等都市を辺境都市と呼び、憲兵が常駐するのが4等以上で、簡単な司法立法行政制度もあるが、5等には存在しないためそれをすべて自力で賄わなければいけない。


 とはいえ公的機関とのパイプ役が必要であり、その為に補職されているのが駐在官である。


 その仕事内容は特殊だ、世間の嫌われる仕事を担当するのが公僕であり、故に批判に晒されるものであるが、駐在官はその嫌われる仕事をしない稀有な立場、住民との交流が仕事なのだ。


 日々平和に過ぎるだけなので、定年間近のロートル下士官専用なんて揶揄されたりもする。


 そんな中、ウルティミス・マルス連合都市は格付けは4等であるが誕生経緯も現状置かれている立場も特殊であるため、憲兵が常駐しているがあくまで一つの中隊を「出向」という形で常駐させているため、駐在官も同時に存在する。


 駐在官の定数は最大で5名だが、それを満たす都市はない、大体は1人であり、補職されていない都市だってある。


 だが現在、駐在官が全て補職されているのがウルティミス・マルス連合都市の駐在官。


 そのトップである神楽坂イザナミ文官大尉。


 そして彼が異世界転移してからの相棒である神であるルルト扮するフィリア・アーカイブ武官軍曹。


 彼が修道院時代からの付き合いであり出向という形で籍を置くアイカ・ベルバーグ武官少尉。


 私立ウルティミス学院主任教員でありウィズ王国の主神ウィズ扮するレティシア・ガムグリー文官2等兵。


 2人は今、駐在官次席であるユニア文官少尉から駐在官首席である神楽坂文官大尉への出張報告及び出発申告が行われていた。


「先輩、分かっていますね、私はこれから1週間ほどセルカ姉さまと一緒に出張に行ってきます、私がいないからと言ってサボったりしたら怒りますからね」


「はっはっは、分かっているよ、元より駐在官は住民との交流が仕事だ、その「成果」はお前だって分かっているだろ? なあルルト?」


「もちろんだよユニア、僕だって駐在官としての責務はちゃんと果たしているつもりだよ」


「……まあいいです、それでは、行ってきます」


 と言って外に出て、セルカが待つマルスへと旅立った。



「…………」


「…………」



「ふほー! ブリッジとかしちゃうもんねー!!」←神楽坂


「ブレイクダンスも踊っちゃうよ!!」←ルルト



 この物語は、しょーもない駐在官たちの日常の物語である。




――第1話:アーティファクトで遊ぼうの巻




 この物語はどうせ幻想に決まってます。

 実在する如何なる個人、団体、地名、事件とも関係はあるはずもありません。


 公僕というと、何を思い浮かべるだろうか。


 9時5時のお役所仕事であり、日がな一日仕事らしい仕事はほとんどせず、それでいて給料は税金から支給されており倒産の心配もない、楽な仕事の代表例ともいわれている。


 だが実情は違う、給料が税金は支払われているという名目でやりたい放題されており、労働者の権利も認められていない。


 それは部外に対して限った話ではない。


――「おい、お前、何で××文官中佐の部下と仲良くしているんだ?」


 そう、上司の誰と誰が仲が悪いといった、泥沼の人間関係を潜り抜けなければならない、当然に潰れる人物も多い。


 だがそこで休職願いを出したとしても受理はされるが「アイツは根性が無い」との一言で片づけられ評価は下がる。


 異世界でも横行するパワハラの実態、その実態を憂いたある修道院生出身のエリート官吏からの告発があった。



Kさん「ハイ、ソウデスネ、祖国デハ「パワハラ」ト呼バレル、モノデスネ」


※プライバシー保護のため音声は変えてあります。



ナレーション「具体的にどのようなパワハラがあったのですか?」


「ソレハ、ソノ……」


 ここで口ごもるKさん、それも当然だろう、官吏として組織を反発していい結果は生まない、辞めるか、辞めなくても出世は閉ざされ生涯の窓際部署になるのだから。


ナレーション「お願いします、Kさん、どうか勇気を」


 ここで決心したのだろう、悲壮な叫びが木霊する。



Kさん「遅刻シタラ怒ルンデスヨ!!」



 遅刻したら怒る、衝撃的な事実にナレーションは絶句してしまう、だがその衝撃はそれだけに留まらない。



Kさん「シカモ部下カラデスヨ!!」



 そうパワハラは、部下からされているのある!


ナレーション「それはひどい、でも本当なんですか? 階級制度を採用しているから普通パワハラは上から下だと思うのですが」


 ここでKさんはスッと差し出す、それは直方体の機械だった、これはウルリカ都市で発明された録音機であると語るKさん。


ナレーション「これは?」


 それに答えず、すっと再生ボタンを押すKさん、そこには衝撃的な音声が記録されていた。



――「お黙りなさい! このブタ!!」



ナレーション「皆様聞いたであろうか! この人格否定! 圧倒的! 圧倒的パワハラであるっっ!!」



 ここでブツっと映像が途切れた。



「「だははーー!!」」←神楽坂、ルルト


 2人して床に笑い転げる。


「いやぁ、これ面白いなこのアーティファクト!!」


 ひとしきり笑い転げると、ルルトが持ってきたタブレットに似たアーティファクトをしげしげと眺める。


「このアーティファクトはね、工業都市ツガイツに行った時にピンときて作ったのがこれらしくてね、試作品として作ったから感想が欲しいと言われたんだよ」


「へー、似たようなのが俺の世界にもあったなぁ」


 このアーティファクトは、簡単に言えばカメラに動画編集ソフトが付いたものだと解釈していい。


 しかもこれは神の力で動いているから、バッテリー切れも無いそうだ。ここまでの精度は当然この世界の人類史上に存在するものではない。まさにバランスブレイカーなのである。


「しかしここだけってのがもったいないな、ここでの生活の思い出とか記録として残しておきたいのに、この世界では魔法機械の録音機ぐらいだからなぁ」


「まあね、これはイザナミの元の世界クラスの技術だからね~、触れさせることすらリスクがあるからね」


「しょうがないか、ここだけで楽しもう、さてさて♪」


 俺は咳ばらいをするとアーティファクト付属のシールの様なものを喉に張る。


――「いいですか、先輩、貴方に一つ言っておくことがあります」


「本当に凄いよね! 本当にユニアの声と同じだね!」


――「この修道院最下位が恩賜組の私と対等な口を利くのですか?」


「だーははは!! すごい似合う!! よし! 次はボクだね!!」


 シールを今度は喉にルルトが張る。


――「修道院を出ていない官吏は全員私の奴隷!!」


「だーはは!! なんか本気で思ってそう!!」


 そう、他人の声をそのままの音声で話すことができるのである、なので念のために言っておくけど、さっきのブタ云々はユニアの台詞ではないですよ。


「よし! 早速続きを作らないとな! 今度は俺だけじゃなくて部下にもパワハラをするユニアと、さっきの奴隷云々の音声データがそのまま使えるな」


 キュルキュルと動画を巻き戻して再生する。


「えーっと、浪漫団でデアンを怒っているユニアの隠し撮りした映像をキャプチャして、音声を消してと」


 と編集作業を開始する。


「…………」←その後ろで立っているユニア


「( ゜д゜)ハッ! ちょちょちょ!! イザナミ!!」←肩を揺さぶるルルト。


「待て、慌てるな、この調整が難しい、ユニアの音声データのみを消去した後は、さっきのルルトの音声データと口パクを合わせれば……よし! 再生!!」



――「修道院を出ていない官吏は全員私の奴隷!!」



「だーはは!! ひーひー!! 面白い!! なあルルト」←振り返る


!!( ; ロ)゜ ゜ ←神楽坂


「どどど、どうして、しゅしゅしゅっちょうは?」


「ずっとではなく一度戻る予定はあったんですよね、まあ案の定といったところでしょう、相変わらず仲がいいですね、仕事もせずに」


「きゅきゅきゅきゅうけいちゅうだよ?」


「大丈夫です、2人とも欠勤にしておきますからね、ちなみにとっくに有給を使い果たしているから休んだ分だけ給料は削られてますからね、嫌ならもう来なくてもいいですよ、永久に」


「いい、いやぁ、冗談きついなぁ」


 と無情にもバタンと扉が閉じた。


「…………」


「…………」


「ちょっとやりすぎちゃったかなぁ」


「うん、怒ってたねぇ」


「となれば、ユニアはきついからな、折角だから可愛くしてやらないか? だったら喜ぶんじゃないか?」


「だね、よし! だったらどうしようかなぁ」


「ドヤァ」←神楽坂


「おおー!(パチパチ)」


 と意気揚々とシールを喉に張る。


――「もう! 本当に先輩は! 私がいないと駄目なんだから!」


「だーはは!! 可愛い!! でもイザナミ、ユニアは君の世界ではいわゆる「妹キャラ」ではないのかい? だったらこんな感じで」


 と今度はルルトがシールを張る。


――「お兄ちゃん、一緒に寝よ?」


「だーはは!! 可愛い!! 圧倒的に可愛い!!」



 と再びはしゃぎまくる神楽坂とルルト。



 ドアの向こうでユニアが出ていく振りをして立っていることを知らない愚かな2人は愚かな宴を続ける。



 その2人が、この後どうなったのかは、誰も知らない。



 ここでブツっと映像が途切れた。



――



「ふむ……」



 アーティファクトを手に取りしげしげと眺めるユニア。



「なるほど、これがアーティファクトですか、確かに表沙汰にはできませんね」



といって、ユニアは執務室を後にしたのだった。




――第2話:男の浪漫!!の巻




「はーーー、今日でもう休暇は終わりかー」


「だねーー」


 ユニアの出張も終わり、今日は帰ってくる日、まあ1日削られたものの後は楽しんだので満足したが。


「次の出張まで定時出勤だね~」


「そうだね~」


「面倒だね~」


「そうだね~」


 そんな感じでダラダラしていると。


「お疲れ様です」


 とユニアが帰ってきた。


「ああ、おつかれ…………」


 と言いかけて時間が凍り付く、何故なら。



 2人のの視線はユニアが胸に抱く赤ちゃんに注がれたからだ。



「「…………」」


「「えええええ!!??」」


「違います! 弟です!!」





「改めて紹介します、私の弟であるスィーゼです、生後丁度1年、先日誕生日を迎え生誕祭を開催しました」


「そ、そうなんだ、おめでとう」


 弟かー、年が離れた姉弟ってことになるだろうけど、それはつまり、マジか、こう色々と凄いな。


「だけど本邸は首都だろ? わざわざ連れてきたのか?」


「はい」


「へー、使用人とかに世話は任せられないのか? それとも家族が世話をしなければいけない決まりでもあるの?」


「決まりも何も……」



「見てのとおり、私に懐いて離れませんので、こうやって連れてきたんです」



「…………」


 見てのとおり、見てのとおりかー、とスィーゼの顔を見てみる。


「…………」←無表情


 なんだろう、この「空気を読んでいる」ような顔は。


 ちなみに赤ちゃんと侮るなかれ、ちゃんと周りの状況が分かっている子は分かっているのだ。


 まあいいか、突っ込むと色々とめんどくさそう、折角この子も空気を読んでいるのだ、それを壊すのは忍びない。


「でも可愛いね、抱っこさせて」


「…………」←嫌そう


「なんだよ! いいだろ!」


「……まあいいですけど」


「ほほう、可愛い可愛い、よしよし」


「ニコニコ」


「しかし、弟の世話とは意外、思いっきり末っ子気質だと思ったんだが、ちゃんとお姉さんしているんだな」


「べ、べつに、弟の面倒なんて! 押し付けられただけです!」


「(ツンデレ?)そ、そうなんだ、んで、仕事中はこの子の面倒を見るのか? 別に構わんぞ、どの道仕事中は暇だし」


「問題発言ですが正直助かります、というのも、私がその面倒を見れないのでお願いに来たんです」


「そうなの? 出張は終わったんじゃないのか?」


「姉さまの仕事で、久しぶりにスィーゼに会えたのに、一日だけどうしても外せない交渉事があって……」←がっくりと肩を落としている。


(すげー、落ち込んでる)


「というわけで、明日1日だけ弟を預かって欲しいんです。先輩もルルト神も子供は好きですよね?」


「ああ、まあね、いいよ、分かったよ、頑張ってきな」


「ありがとうございます、これがおむつとミルクとこの子用の食べ物と」


 懐から取り出したお手製の小冊子を置く。


「これを一読してください」


「な、なにこれ?」


「この子の機嫌の兆候及び仕草とか色々書いてあります、その対応もマニュアルとして書いてありますのでお願いしますね」


「えぇーーーーーー」


 うわぁ、ホントだ、確かに凄い細かく書いてある、しかも結論が可愛いばっかりで何の参考にもならない。


 チラッ。


「…………」←無表情


 うん、まあ分かっていたけどアレだ、この子が懐いて離れないんじゃなくて、ユニアが離れないんやね。


(大変だな~、お前も)


「先輩、それと注意事項が一つあるのですが」


「な、なに?」


「変なことしないでくださいよ、この子は先輩と違って頭がよくて、カッコ良くて将来は王国一番のいい男になるんです、その代わり日誌等は全部やってあげますから」


「わかった、だがとりあえず人にものを頼む態度じゃないぞユニアさんや」


「失礼、それじゃあよろしくお願いしますね」


 といって執務室を後にした。


「まったくもう、先輩への尊敬が足らないのだ。あれは親バカになるタイプやね、っと、じーー」


 とマジマジ顔を見てみる。


「ほほーう、ユニアではないが流石モストとユニアの弟、顔立ちは整っているなぁ、よかったなぁ~、君は将来イケメンになるぞ~(ナデナデ)」


「ニコニコ」


「あれ、でもルルト、確かお前明日は」


「うん、子供達のお泊り会の監督者としてこれから行かなければならないんだよね~」


 ルルトは子供たちに人気があるのは何回か述べているが、今や連合都市の駐在官というだけでちょっとしたブランドにもなっている。


 それも相まって、当初のルルトの「優秀だけど左遷されてきた子供好きの下士官」からの悪い噂が消えて、親からも信用を得るに至り、教会で子供のお泊り会にお呼ばれするに至るのだ。


 これを断るのはそれこそ駐在官の意義に反するからな。


「分かった、ルルトはそっちを優先していいよ」


「ありがとね、でも賢そうな感じだから手はかからないんじゃないか?」


 と言った時だった。


「「「「「ルルト兄」姉」ちゃんあそぼ~!」」」


 子供たちが執務室に入ってきてすぐに囲まれるルルト「じゃあ悪いけど任せるよ」と子供たちに手をひかれながら執務室を後にしたのだった。


 とまあそんなこんなで1人で面倒を見ることになったが。


(かくいう俺も明日はカリバスさんと賭場に行く約束をしていたんだよなぁ)


 俺はここで思い出す。


 まあこんな俺にでもしっかりと両親がいて、こんな感じで真っ当に育ったのは親のおかげだと思っている。


 そんな俺の親父は、正直出世には無縁だった、それは無理もない、自分の興味のあることには一生懸命、仕事は愛していてプライドを持っていたが、媚び売りという世渡りをそもそも必要とすら思わない人で、気に入らないと上司に反抗ばかりで不興を買うことが多い、そんな人物だったからだ。


 そんな親父に遊び場に連れられて、そして家の金ではなく自分の小遣いで幼いころ買い与えてくれたものは。




 馬券だった。





「とまあ親父と2人で連れられた思い出の場所は私にとっては競馬場なんです、そんなわけで、この子を連れてきました」←抱っこ紐でスィーゼを抱えている


「その話を聞くと流石神楽坂の親父という感じだな、とはいえ、ほほう、品のある顔をしている、流石貴族様だな」


「カリバスさんは子供は大丈夫なんですか?」


「ああまあな、というかメディを授かってから変わったと言った方が正しいか、というか大丈夫なのか? そのユニアとかいう部下にバレるんじゃないか?」


「バレるというよりも、そもそもこの子、話せませんからね、バレようがないですよ」


「それもそうか」


「「HAHAHA!!」」


 とまあ早速、第1レースからだと、新聞をなんとなしにペンで出走欄の7番を突っついた時だった。


「ニコニコ」


「ん?」


 あれ、今の反応は、と試しに別の出走番号をペンで指す。


「…………」←無表情


 他の番号を指す。


「…………」←無表情


 再び7番をペン先であてる。


「ニコニコ」


「ほうほうほう、カリバスさん、この子7番がいいって言ってますよ」


「7番って、最下位人気で大穴中の大穴じゃないか! 穴狙いとはロマンあふれる奴だな!」


「となれば買いましょう! 俺達との出会いの記念にね!」


「よし! 喜べ坊主! これは俺達の奢りだ! だがお前は知ることになるだろう、賭場歴35年のベテランの腕をな!」


「スィーゼよ、俺はお前が生まれる前から賭場に親しんでいるのだぜ、ちょっとばかしこの赤んルーキーに教えてやるか!」



――「これは脅威!! 7番!! まさかの7番が一着!! 配当は330倍!!!」



「「…………」」←7番を特券買いした2人


「「チラッ」」←2人見合わせる


「「コクリ」」


「よし! ここからが本番だぜ!」←カリバス


「流石原初の貴族の血を引く者! 相手にとって不足なし! 次はお前はどの馬がいいんだね!?」←出走欄をペンで指す


「ニコニコ」


「しゃあ! 今度はまた大穴の3番! 再び万馬券とは豪儀だな!!」


「行くぞ! 再び戦いの舞台へ!!」


 と俺達は意気揚々と券売所へ向かったのであった。



 結果、この子の的中レース自体は11レース中3レースだった。



 だがこの的中レース全てが万馬券だった。


 知らない人のもいるだろうから説明すると万馬券とは100倍を超える馬券の意味を指す、馬券は最低100円から買えるため、当たれば1万円以上になる、故に万馬券と呼称される。


 特券買いとは1000円買いを指す、何故特券という名前がついているかというと、かつて1000円と言えば高額だった。さっきした親父の話ではないが当時の初任給は2万いかなかった時代と考えれば頷ける話で、今でも言葉だけ残っている。


 んで、結果俺は回収率40パーセント。


 カリバスさんは50パーセント。


 そしてぶっちぎりの1番はもちろん……。


「よくやったぞスィーゼよ!!(ナデナデ)」


「キャッキャッキャ!」


「いやぁ、凄いなこれ、給料3ヶ月分が、ウヒヒ(ホクホク)」


「うんうん、これは最高級ミルクを御馳走してやらないとな(ホクホク)」


「といっても、この子普段、貴族御用達を飲んでいますけどね!」


「なんと! まあそれはそうだ! 大物はそうでなくてはな!!」


「「HAHAHA!!」」


 とホクホク顔で帰ったのだった。



――次の日



 そんなこんなで夜に帰ってきて、疲れたのかスィーゼはスヤスヤと寝息を立てていた。


 俺は自室で簡易ベッドを作ってそこに寝かせて2人で一緒に寝て、朝起きる。


 小冊子を元に朝ご飯を作ってあげて、一緒に遊んでいると、朝一でユニアがやってきた。


「おはようございます!」


 と息せき切って帰ってくると、いの一番にスィーゼを抱きしめる。


「ごめんね! 寂しかったよね! もう大丈夫よ! お姉ちゃんが来たから(頬ずり)」


 と早速とばかりにスキンシップをはかるが。


「ウルウル」


 当の本人は俺に手を伸ばしながら寂しそうな顔をしている。


「……ス、スィーゼ、お姉ちゃんですよ、どうしたの?」


「ウルウル」←俺に向かって手を伸ばしている


「よしよし(ナデナデ)」


「ニコニコ」


「な! な! なんですか! 何で私じゃなくて先輩なの!!」


「ふふん、まあ男同士だからな、語り合わずとも分かるものだよ(ナデナデ)」


「ニコニコ」


「ふん、私には、懐くのに時間がかかったのに」


「そりゃあ性格の悪さが」


「ギロッ!」


「もちろん違いますよ! 男ってのは異性に懐くのにはカッコ悪いとかあって、抵抗があるからですよ!!」


「……まあいいです、スィーゼを預かっていただいてありがとうございました、さあお姉ちゃんと一緒に部屋に戻りましょうね~」


 とユニアに抱っこされたまま古城を後にする、この後はマルスの自分の部屋で面倒を見るそうだ。


 俺も何となく名残惜しくて馬車まで共に歩くことになった。


(また一緒に行こうな)


 とスィーゼが首を動かしてマルス行の馬を見た時だった。


「キャッキャッキャ!!」←馬を見て思いっきり手を伸ばしている


(ギクゥウウ!!)


「ど、どうしたの、馬を見て興奮するなんて、珍しくも無いでしょう?」


「それはだなユニア! 大きな動物は強く見える! 大きく強いは男の浪漫だからだよ!!」


「…………」


 ユニアは氷のような冷たい目で俺を見ると何かを考えている。


(やばい!! 今の不自然だった!!)


 ユニアは、何かを思い立つと、すっと新聞を差し出しペンを与える。


「キャッキャッキャ!!」←思いっきりいたずら書きをしている


「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!!!!!」


 ユニアがギギギと振り返った先……。



 そこには誰もいなかった。




――男の浪漫団詰所




「神楽坂の大ばか野郎はどこにいる!!?? でてこい!!!!」←蝋燭2本を頭に巻きつけ銃を振り回している


「みそぎをしてけじめをつけると先ほど出ていきました!」←リーケ




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