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短編集:迂闊勇者、この勇者が俺YOEEE上に迂闊すぎる 後篇


:::第4話:神楽坂・修道院生活10か月目



 後期試験を終了し、修道院生活も監督生についての修習と卒業式を残すことになった。


 いよいよ修道院生活も終盤、来年入学する修道院生や監督生の就任式から始まり、中央政府を始めとしたお偉いさん方の懇談会、そして懇談会を通じて今年の新入生の品評会も兼ねている。


(忙しそうだなぁ)


 いつもはキビキビとしているユサ教官も、この時だけは余裕が無い感じで、担当する修道院生達の成績や進路先の選定と関係機関との折衝に追われている。


(これは俺に始末書を指示したこと忘れているな( ̄ー ̄)ニヤリ)


 けけけ! これはどさくさに紛れる絶好のチャーンス!


 しかもミローユ先輩について宿屋の手伝いをするため修道院を1カ月間離れるのだ、これは完全に忘れるだろう、しめしめ。


「レディーパフェクトリー、準備は完全に整った」


 と監督生の修習期間が始まると同時に修道院を後にしたのであった。





「キャストオフ!!」←神楽坂


「ってなわけで、おばちゃん、今預けている制服って一か月ぐらいなんだけど伸ばせる?」


「え? いいけど、急にどうしたんだい?」


「それがね、宿屋の手伝いをすることになってさ」


 俺の言葉におばちゃんはハッとした顔をする。


「宿屋の手伝い、そう、ついに……、でもね、おばちゃんは貴方のこと嫌いじゃなかったよ、まあ官吏だけが人生やないから」


「あの、クビにはなっていませんが……」


「え!? そうなの!?」


 と素でびっくりされた。


 まあとはいえ、一ヶ月も修道院生活からの解放は本気で嬉しい。


「ミローユ先輩からは制服を着なくていいと言われたし、宿屋がどんなものかは不安になるけど、いい加減修道院の生活もうんざりしていたからリフレッシュリフレッシュ♪」


 と意気揚々と歩きだした先、目の前にユサ教官が立っていた。


「始末書2倍」


( ゜д゜) ←神楽坂



::第5話:神楽坂、卒業後、最終報告会後



「おばちゃん、久しぶり~」


「あらあら久しぶりね、無事に卒業できたみたいね」


「なんとかね、ごめんね挨拶に来なくて」


「いいのよ、中央政府に配属された人間は卒業した日から激務に耐えなければいけないし、人間関係の泥沼でつぶれる人も多いと聞いたから、元気そうでよかった」


「あ、俺はそれ関係ないんです」


「はい?」


「ウルティミスって5等都市ところの駐在官に配属になったんですよ」


「あー、そうなんだ」


 と改めておばちゃんは俺をじーっと見ると、うんうんと頷く。


「お客さんにとっては、そっちの方が良かったんじゃない?」


 そんな言葉に俺も笑顔になってしまう。


「たはは、まあそのとおり、その中央政府とやらに配属されれば、それこそ潰れて、一番に追い出されますからね、どーせ」


「今は楽しいのかい?」


「ええ、最初は色眼鏡で見られましたけど、居心地が修道院に比べれば段違いにいいです」


「はは、お客さんらしいね、仕事で楽しいは大事だと思うよ、そうじゃないと続かない、洗濯屋と仕立屋を40年やってもそう思うもの」


「勉強になります、ってなわけで、首都を離れることになりました」


「そうなの、寂しくなるねぇ」


「んで、最後に全部クリーニングお願いします、辺境都市だと制服の仕立て屋が無くて」


「はいはい、って……」


 服を広げた瞬間、胸に付けた二つの勲章が金属音を立てる。


「……あのさ、これ、おばちゃんの見間違いじゃなければ恩賜勲章じゃない?」


「そうですよ」


「……それと、この恩賜勲章よりもやたら豪華な、ウィズ神を模った勲章は、なに?」


「政府、えーと、なんとか級勲章だそうです」


「え!? 政府勲章って国家級の功績をあげないと受勲されないんじゃなかったっけ!? しかも階級章の星が増えてるけど!?」


「さっきの最終報告会で特別昇任したんです、教皇猊下の計らいで」


「教皇猊下!? 教皇猊下ってあのモーガルマン教皇のこと!?」


「はい」


「な、なんで?」


「お偉いさんが何を考えているかなんてわかりませんよ、ってなわけで、おばちゃん、俺はいつものとおり観光してくるからよろしくね~」


「って勲章預けていいの? そういう規定があるんじゃないの?」


「さあ? でも失くした方が大変なことになりそうですじゃないですか」


「そ、そりゃそうだろうねぇ」


「そこら辺は信用していますから、それでは観光に行ってきます! 差し入れも買ってくるね!」


「はーーー」


 と唖然とするおばちゃんを尻目に外に出る。


 1年ひたすら観光したおかげで首都は大体回った、でも世界最大最強国家の首都、ルルトの加護もあるし、今後も遊びには来ようかな、いや、今度は田舎の温泉巡りもいいなぁ。



「レディーパフェクトリー、準備は完全に整った」



 と意気揚々と歩きだした先、目の前にユサ教官が立っていた。


「始末書」


( ゜д゜) ←神楽坂



::第6話:神楽坂・ウルリカ篇終了直後



「おばちゃん、お久しぶり~、覚えてる?」


「あらあら久しぶりだね! もちろん覚えているよ、お客さんインパクトあったからね、元気してた?」


「うん、駐在官としてのんびり楽しくやってるよ」


「それは良かった、今日はどうしたの?」


「ちょっと用事があってきたの、いつものとおり制服クリーニングよろしくね」


「はいはい、今日は1着だけなんだね、って勲章が4個になっとるやんけ!?」


「ナイスツッコミ( ´∀`)bグッ! 政府勲章とえーっと、国学大臣勲章ですよ」


「また!? 何したのアンタ!?」


「アーキコバの物体が解明されて、その功績で受勲しました」


「ああーー!! あのアーキコバの物体が解明されたって記事おばちゃん読んだよ! ウルリカの王立研究所に解明部署を作って本格的に乗り出すって大きく報道されていたけど、その功績貴方だったの!?」


「いいえ、新聞にも書いてあるとおり、メディって女医さんの功績で私はそのおこぼれですよ」


「おこぼれで貰える物なの!?」


「さあ? お偉いさんが何を考えているか分からんのですよ」


「おこぼれかぁ、まあお客さんだからねぇ、って、これ、勲章4個も付けっぱなしにしているから、生地が部分的に傷んでるじゃない」


「外したら怒られたんですよね」


「取ればいいんじゃと思うけどそこもお客さんだからねぇ、ってこれだと正直新しく作り直さないと駄目だよ」


「分かりました、新しく1着注文します、どれぐらいかかります? 出来れば明後日までなら理想なんですが、無理ですか?」


「はいはい、なんだかんだでお得意様だからね、今から作業を始めて明後日の昼には仕上げてあげるよ」


「あざーす! エナロア都市に行くので新調した制服の方がいいですからね!」


「エナロア都市!? あの原初の貴族も別荘を構えている貴族御用達の都市じゃない! 今回の受勲のおかげなのね、意外、ちゃんと修道院出身らしくしているんだね」


「ふっ、違いますよ、おばちゃん」


「え?」


「今日俺がここに来たのは修道院出身の官吏としてではありません、深窓の令嬢を守る騎士として恥ずかしくない格好をしなければならないからです」


「は?」


「詳しくは言えません、ですが女性はか弱い存在、男の私が守ってあげないと」


「ああ、ああー、なるほど、そういうことね、分かったよ、じゃあ改めて採寸するからこっち来てね」



「レディーパフェクトリー、準備は完全に整った」



――後日



「おばちゃん、深窓の令嬢なんておらんかったんや、(ノД`)シクシク」


「まあねぇ、そうだよ、一つ大人になったね、はい、制服」


 と勲章と制服を受け取ってトボトボと歩き出した先、目の前にユサ教官が立っていた。


「始末書」


( ゜д゜) ←神楽坂



::第7話・神楽坂・監督生篇始まった直後



 世界最大最強国家ウィズ王国・首都。


 修道院に続く道をある集団が制服を着て練り歩く。


「おい、見ろよ」

「ああ、あれが今年の監督生達だ」


 監督生。


 修道院の成績は完全な点数制度により序列がつけられ、上位10位には恩賜勲章が受勲され終生の名誉となる。


 そして実務3年以内の若手が中心であり、修道院生活の最後の一か月を共に過ごし、その彩を添え、進路に重要な役割も果たす。


 その監督生章はその任を解かれた後でも、その監督生章は襟に付けて生涯の名誉となる。


「頭だけじゃない、本当のエリート中のエリートってやつか」


 それが監督生、その頂点に君臨するのが。


「あの一団の中でもトップが首席監督生か、殿上人って感じだよな」





「ぜー、ぜー、おばちゃん、久しぶり」


「あらあら久しぶり、ってどうしたの、そんなに息切れして」


「いや、どうしても、利用する、用事が、あって、走ってきたの、閉店間近で、ごめんね」


「いや、いいんだけど、どうしたの今日は?」


「いつものクリーニングなんですけど、できるだけ、はやくお願いします」


 どさっと制服一式を全部置く。


「うわぁ、お客さん、これ、全然手入れしてないのね、ヨレヨレよ、あ、これ虫に食われてる」


「だんだん面倒になって、全然手入れしなくなっちゃって、実務で使うこともほとんどないんですよね」


「うーん、4着のうち2着は使えるけど、って監督生章がついとるやんけ!!」


「ナイスツッコミ( ´∀`)bグッ!」


「貴方監督生になったの!?」


「そうみたいなんですよ、選ばれていること知らなくて、全然準備してなくて、だからこうやって制服のクリーニングをお願いしたいんです」


「そんなことありうるの、いや、お客さんだからありうるのか、色々凄いよね、えっとどうする? 何時取りに来るの? 明日の朝一で仕上げてあげようか?」


「あ、明後日で大丈夫ですよ、明日は久しぶりの観光しようと思いまして」


「いやいやいや! 貴方監督生の仕事は!?」


「まあバカボンのおかげで、仕事は無いか少なくなると思いますから」


「バ、バカボン?」


「一流の仕事人は休暇も取るもの! 長時間労働が美徳はれっきとして悪癖です!」


「相変わらずだね、まあ楽しんでおいて」


「はーい」


 と店の外に出る。



「レディーパフェクトリー、準備は完全に整った」



 と意気揚々と歩きだした先、目の前にユサ教官が立っていた。


「始末書」


( ゜д゜) ←神楽坂




――現在・修道院・監督生離任式直後




「とまあ、色々とあったな、懐かしいな、神楽坂よ」


 ユニアを卒業式に遅刻させたことで、教官室でチマチマと始末書を書く俺を見ながらそんなことを言うユサ教官。


「シクシク、どうして首席監督生を終える日に始末書……」


「文句あるのか?」


「いえ! ないです! ってあーー!!」


「どうした?」


「どうしたって!! そういえば今までの思い出話の中で書いた始末書で明らかに書かなくていいのがありませんでした!?」


「やっとか、いや、冗談で言ったつもりだったが素直に書いてくるなぁと思ったが」


「ひどい! これはパワハラ!! 圧倒的パワハラ!!」


「パワハラ、だぁ!?」


「ひっ!」


「大体今回お前の為に私がどれだけ苦労したか聞くか!? 前代未聞の首席監督生!! そもそも修道院入学してからお前は毎回毎回毎回毎回問題行動ばかりで!! モストと2人合わせて苦労が倍じゃなくて二乗でだな!!」


「ひ、ひーーー!!!」


と最後まで怒られっぱなしだったのでした。



:::おまけ



「おばちゃーん、首都に寄る用事があったから制服持ってきたからお願いね」


「はいはい、ってまた勲章が増えとるやんけ!!」


「ナイスツッコミ( ´∀`)bグッ! いえ実はこの度、国家最優秀官吏勲章を」


「もうええわ!!」



:おしまい:



急遽ネタ浮かんだので、再び間章投稿。


おそくなりましたが、今年もよろしくお願いします。


ユサ教官が言ったとおりモストとは別の意味で問題児な神楽坂の話でした。

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