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おまけ:グッドルーザー神楽坂V3 ~僕はただ好きなだけさ~ 後篇



――最後のナンパをする直前の、神楽坂と王子の2人だけの歓談の時



「神楽坂、お前の「博打」ってのは何なんだ?」


「んー、王子、逆に聞いてもいいですか、女をナンパしてモーニングコーヒーを飲むというのはどういう光景を思い浮かべます?」


「どういう光景って、そりゃお前さ……」


 さらさらとフリップに書いてドン。



――ベッドに2人で裸で並び座り、幸せそうな顔をした女性が、男に寄りかかりお互いにカップでコーヒーを飲む



「こんな感じだな」


「そこなんです、そこが私も最初は勘違いしていたんですよ」


「え?」


「セレナの言葉がヒントになりました、私は手練手管ではなく、戦術戦略の方がカッコいいみたいなんですよ」


「?? どういうことだ??」


「つまり、こういうことです」


 さらさらとフリップに書いてドン。



――ベッドで裸でシクシクと泣く女性を尻目に、男は1人でモーニングコーヒーを飲む



「…………」


「そうです、モーニングコーヒー飲むという結果を得るのなら、これも正しい姿ですよね?」


「そうか、ナンパをするにあたり、相手に好かれるのではなく、相手に嫌われるということか、これは盲点だったな」


「だからこその修道院の制服なんです、私がこれから演じるのは「鼻持ちならないエリート」で攻めようと思います。と言っても後は流れに上手く乗り、ネルフォルが油断をしてくれたとしても「ひょっとして間隙をついて勝てるかも」というレベルですけどね」


「そっか、分かった、となれば、だ」


 王子は女性陣に悟られない様に真剣な顔で話しかける。


「セレナの言ったとおり振られてきたら、反省会やろうぜ、デュフフ」


「さっきチラッと言っていた面白い余興ですね?」


 と女性陣に悟られない様に真剣な顔を変えずに答える神楽坂。


「そのとおり、終わったら詳しく教えてやるよ、いやぁ、凄いんだこれが」


「わーいわーい! じゃあ行ってまーす!」←真顔


「うむ、武運長久を祈る!」


 というやり取りがあり……。



――「これで俺の勝ちなわけだが、ここで問題があるんだ、俺はあくまで「一晩を過ごす権利」としか言っていないだから……」


――「そういう意味を含むとは思わなかったから、こんどはそれを決めるギャンブルをしよう」って言われたら、実は詰みなんだけど、どうする?」


 という場面へ進むのであった。


 当然俺の言葉に、俯いて動かないネルフォルであったが。


「…………」


 俺の中で急速に熱が冷めていくこが感じる。


 それにしてもまさかここまで上手くいくとは思わなかった、想像以上にネルフォルが油断してくれたのが大きかったか、ってことはあれか、そんなに鼻持ちならないモテないエリートって様になっていたのかね、と思うと凹む。


 ちなみに念のため言っておくが、王子と話した時の、女をしくしく泣かせて無理矢理なんてことはしない。


 何故ならそれは浪漫じゃない、ただの暴力だからだ。


 男の浪漫は男だけのもの、もし実現したらいいなって、男のささやかな夢物語だ。


 それにしても改めてセレナに感謝だな、ナンパというのは何も口説くことを目的としなければいい、と考えて一気に閃いたのだからだ。


 さて、次はカーテンコール、ネルフォルがどう出るかについてだ。


 もちろん考えるまでも無い、俺と一晩過ごす事態を何とか回避してくる。悪い言い方をすれば如何に負けを反故にしてくるかを考える必要がある。


 とはいえ個人的に負けを反故にしてくることについて責めるつもりは一切ない。


 何故なら今ネルフォルが相手にしているのは手練手管のイケメンじゃなく、相手の油断を利用して暴力を行使してくるような男だからだ。


 さて、肝心などう回避するかについてだが、色々な考えられるけど、おそらく余りひねらずに……。


 と考える間もなく俯いたままぎゅっと俺の裾を掴んできた。


 そらきた、なるほど、こうやって同情を誘う演出をしてくるか、んで次は目を潤ませながら上目遣いってところかね。


 まあ何でもいいや、これで騙されたふりをして終わりだ、後は王子と反省会、デュフフ。


 とそんな考えをよそに、ネルフォルは俺の予想通り、目を潤ませながら上目遣いをしてきて。


 熱を帯びた表情で俺を見た。


(ん?)


 ぽすっと、胸に顔をうずめる。


(んん?)


「ううん、そんなこと言わない、約束は、守るよ」


( ,,`・ω・´)ンンン? ←神楽坂


「でも、貴方は一つだけ間違えたわ、それとごめんなさい、私も一つだけ貴方に嘘をついたの」


 ちょっと待った、なんか変な方向に話が進んでいるような……。


「何がだい?(∀・;)オドオド(;・∀)」


「貴方のナンパを受けたのはね、貴方が嫌いなタイプだからじゃない、貴方に興味があったからなの、それが貴方の間違いよ」


「え?(゜∇゜)」


「そして私が付いた嘘は貴方のことを知らなかったということ。一応これでも原初の貴族の直系、貴方の色々な噂は色々入ってくる、ほとんどが悪い噂ばかりだった。けど、でも、だからこそ貴方に興味を持っていたの、貴方は、本物だった」


 すっと腕を絡ませると、ぎゅっと胸を押し付けてくる。


 ( ゜∀゜)o彡゜おっぱい!おっぱい!


「……場所、変えようよ」


(…………)


(えええええーーーーー!!!! なんでやのーーーーん!!!??? どうしてその気になってるの!? なんで!? どうして!?)


 どうして、なんで、でもこの動揺を悟られたくない! とばかりに俺は悪戯っぽく微笑む。


「おや、俺は嫌いなタイプではなかったのかい?」


「も、もう、意地悪言わないでよ、それと、その」


 口元を耳元に寄せて今度は彼女が切なげに囁く。


「噂通りの軽い女だなんて思わないで、私だって、初めて出会った男の人に、なんて、自分で自分が信じられないのだから」


「俺は噂を信じない主義さ、何故ならそんな噂を信じていないからこそ、君に声をかけたのだから」


(ひいいいぃぃぃ!!! 自分でも何言ってんのか分かんねぇえええ!!!)


「ふふっ、何処まで本気なんだかね」


(なんか、駆け引きみたいになっとる!! あ!! そうだ!! 王子!!)


 俺は視線を王子にやる。


 王子は穏やかな顔をして俺を見ていた。 ( ゜д゜)←こんな感じ


(アカン!! 余裕ぶっているけどアレは呆然と立ち尽くしている奴やでぇ!!)


 となればちょっと危険だけど、同じ原初の貴族の同列であるクォナとか。


「……どいて、……殺せないっ!」


(これもアカン!)


 物騒なセリフが聞こえてくる! だけども周りの紳士たちは温かい目で見てる! 凄いな上流の至宝パワー!


 つ、つ、つまり、この後、本当に、ネルフォルと、俺の部屋に行って、シャワー浴びて、一晩過ごして、モーニングコーヒー!? や、やばい、な、なんか、緊張しすぎてマジで吐き気が、ヴォエ! ヴォエ!


 なら、こうなったらやっぱり駄目だと、ヤダヤダヤダヤダ!! 俺にだってプライドがあるもん!! 男の子だもん!!!


 何かないか、男の沽券を守りつつ、彼女に恥をかかせず、カッコ良く去る方法!!!


 必死で、思えば異世界転移して本気で思考の海を泳ぐどころか、バッシャンバッシャン、バタフライしたのは初めてなぐらい、沸騰するぐらい考えて。



(そうだっ!! ひらめき! 圧倒的閃き!!)



 と、ネルフォルの立場を思考を理解し、拳銃に手を伸ばしたのであった。



――現在



「それにしてもびっくりしました、やっぱり女ってよくわからないですね」


「だなぁ、俺もよく分からん、なんだろう、ネルフォルの奴、本当に一晩過ごすつもりだったのか?」


「実際のところネルフォルの噂ってどうなんですか?」


「さっきも言ったが、クォナと対比されることが多く、多くの男達が撃沈しているのは事実だ。んで数多くの男と遊んでいるという噂はあるのだが、実際に特定の相手とは聞いたことが無いし、浮いた話も無い。こんな矛盾する噂が流れているぐらいだ、だから真偽のほどはよくわからないといったところだ」


「んー、ただ実際彼女は男の見栄とかプライドを弱点として捉え、それを利用できるほどに良く知っていますよ。ということはどれが真実かというよりも、全部真実か全部デマかのどっちかでしょうね、ってそうか、なるほど、そういうことだったのですか」


「何かわかったのか?」


「いえ、となればさっきの振る舞いも彼女の策の一つと考えれば納得ができます」


「策?」


「俺がシャワーを浴びている間に書き起き残してドロン」


「あーなるほど! 確かにそれをやられるとどうしようもないな!」


「落ち着いて考えれば簡単な事でしたね、公衆の面前で恥をかかされるわけでないですし、それでいて負けを反故にしつつ且つ自分の体を守る、んで逃げられたところで、男は訴えることなんて出来ないと」


「恐ろしい、逃げられた男に同情できないところがまた……」


 とここで言葉を切ってお互いにニマニマと笑う。


「まあそれはもう置いておくか、とまあ、そんなわけで~、それでは反省会と行こうか、さて神楽坂よ、心して聞くが良い、でゅふふ」


「はっ!」


「そもそも今までの戦い、俺達が主催していたからこそ、そこからバレる形となっていたな」


「はい」


「まずその点について安心するが良い、今から参加する企画についてだが、まずこの企画について俺は一切関係していない、要はこのパーティーの「男限定の余興」としての位置であり、そういったのが好きな人物だけ招待されているものだ」


「なるほど、責任は企画者が負うと、まずこれで女性陣に気取られる心配が無いということですね」


「そうだ、そして次にこの余興のコンセプトについてだがズバリ……」


 ここで言葉を切ると王子は両手を広げる。



「おっぱいがいっぱい夢いっぱい!!!」



「…………貴方が、神か?」


「俺も企画者に同じことを言ったものよ、さて、その参加方法についてだが、骨身に染みて知っているが女の勘は鋭い、だから故に場所は秘匿となっている、だから使者が来て、案内してもらうのだよ」


「その使者の手配は?」


「間もなく到着する」


「そうですか……」


 とここで言葉を切る、確かにそのコンセプトには脳が震えるけど……。


「不安か?」


「はい、多分、いつものパターンだと、もうこうやって密談していること自体がばれているような気がして」


「はっはっは、神楽坂、大丈夫なんだよ、この企画者は凄いぞ、ちゃんとそこも想定しているんだよ、この密談がばれていたとしても問題ないのさ」


「え?」


「まあ、おいおい、説明していくさ、っと、来たな」


 ここで仮面とフードに包まれた小柄な人物がスッと降り立つ。


【主催者側より用命を受け参りました、どうぞこちらへ】


「え?」


 驚いた、変声機を使っている。


「頼むぞ」


 とそれを知ったかのような王子が案内を頼み、俺達は歩を進めるのであった。





 階段を下りたり昇ったり、廊下を曲がったり、明らかに尾行を意識した歩き方をして辿り着いた場所、そこは意外にも6畳の狭い部屋だった。


 そこには、壁にたくさんの仮面がかけられ、黒い布が部屋の隅に折りたたんで重なって置いてある、そしてどこかへ続く扉があるだけの、シンプルな部屋だ。


「神楽坂、お前がさっき、ネルフォルに嫌われる手段として「視線を胸にやる」といったことをしていたな?」


「はい、女にとっては、好色な視線は凄く嫌なものだと……」


 にやりと笑う王子。


「王子、まさか「おっぱいがいっぱい夢いっぱい」って」


「そう、本来であるのなら胸に視線をやらない様にするというのは女性への礼儀として当たり前のこと、だがそれを気にする必要はない、何故なら「そういう場」なのだから、つまり!」


 再び両手を広げる。



「おっぱいがいっぱい夢いっぱい見ほうだい!!」(エコー)



「…………貴方が、神か?」


「まだ早い、この仮面と布についてだが、これはウルリカ製の仮面と布でな、説明するよりも見た方が早いな」


 ここで王子は布を被ると、布は勝手にシュルシュルと体にまとわりつく。


「こんな感じでこの布も動きが制限されることが無い優れものだ、次にこの仮面についてだが」


 と仮面をつけると何もしなくてもスッとサイズを変えておさまり、手を放しても取れない。王子は自分で自分の仮面を指さす。


【実は付けたまま食事だってできるんだ】


「っ!!」


 変声期で声が変わった。


【しかもこの仮面のデザインは全て違う、そしてそれを参加者はランダムにつける】


「って、それって!!」


【そう! 俺が今この仮面をつけているのは神楽坂しか知らないのだよ!!】


 悪魔的発想、つまり。


「バレてもいいというのはそういうことなのですね!!」


【ニヤリ】


 つまりこんな感じってことだ。



――女性陣「おらおら! ネタは上がってんのよ! 白状しなさい!」


――俺達「誘われたのは事実だよ、けど行ってないさ、君たちに失礼だからな(爽)」


――女性陣「キーー! 悔しいけど証拠がない!」



「か、完璧すぎる、まさに神算鬼謀!!」


【それと、最後に一つ、分かっていると思うが俺のことは名前で呼ぶな、先輩と呼ぶが良い、俺もお前のことは後輩と呼ぶ】


「後輩了解しました先輩殿!!(敬礼)」


 俺は王子に習い仮面と布をつける。おおう、確かに肌触りも良く動きが邪魔にならない、仮面も少しだけ視界が狭まるだけで、本当に支障が無い。


※2人の今の格好は、やたらカラフルな仮面をつけたカオナシを想像ください。


【【さあ、後は向かうだけだ、ユートピアへ!!】】


 そして、扉を開く。


 そこから広がった世界は、そこはまさにユートピアであった。


 薄暗い中、仮面をつけた巨乳美女たちがそこかしこに歩いている姿。軽食や飲み物を作るスタッフも全て巨乳で統一されており、なんといっても男の参加人数は少なく限定されているのが良い、女7男3ぐらいの割合で調整されているのが男の浪漫である。


(やっと、やっと、勝ったんだ、見てもいいんだ、このおっぱい全部、見てもいいんだ!)


【おっぱいが、いっぱいや、夢いっぱいや、グスッ、このおっぱい、全部わいのもんや】


 哭いている、王子が隣で哭いている、仮面の目の部分からまさに漫画のように男泣きをしている、何でちょっとなまってんだろう。


 その時だった、先ほどの使者が再び舞い降りた。


【ようこそいらっしゃいました、ごゆるりとお楽しみください。それと念のため申し上げますが、仮面をつけているとはいえ、常識と良識をもってお楽しみくださいね】


【そんなことは言われるまでもないよ】


【失礼しました、そしてこれもまた、言わずともだと思いますが】



【相手の同意があれば、当然にお持ち帰り可です】



 パアアァァ ←開ける視界


【おおおおおおもちかえりぃぃ~~!!】 ←ひぐらしのレナのあれ


【あるある探検隊!! あるある探検隊!!】 ←レギュラーのアレ


【クスッ、それとお持ち帰りをした際に、それぞれに楽しめる個室を会場外にご用意しております、是非ご利用くださいませ、それでは失礼いたします】


 とスッと音もなく使者は姿を消した。


【先輩、不思議です、俺、今なら、なんかモテそうな気がします!】


【お前もか、こう、あれだ、ひょっとして、向こうの方から来るかもしれないぞ!】


【逆ナンですか! それはいくら何でも……】


 と言った時だった、すっと俺達の前に2人の仮面の付けた巨乳美女が舞い降りた。


(え?)


 と何か用かと聞く前に、それぞれがスッと、俺と王子の手を取る。優しく、それでもしっかりと。


【さあ、行きましょう】


 とだけ言って、そのまま手を繋ぎながら先導されて歩く。


 う、うそ、本当に、逆ナン!? 勢いが来ていると思ったけど、ここまでなんて。


 俺は王子を見る。


【先輩!(小声)】


【あ、ああ! これが、逆ナン!? や、やだ! 私、怖い!(小声)】


 と、会場を外れて導かれるように部屋に辿り着き、勇気をもって入った部屋、そこは暗く、広さもよく見えないから分からない。


 ここですっと手を離される。


【恥ずかしいから、余り見ないでください】


 と何とも健気な言葉に脳が震える。


【だだ、大丈夫だ、な、何故かな、手を繋がれた時、き、きみは、こう、清楚というか、可憐というか、そんな感じがしたんだ! だからいい女だと思うよ!】


 という俺の声に王子も隣で声を張りあげる。


【それは俺も同じだ! 君の場合は、なんというか、初めて会った気がしないというか、まるで長い付き合いの安心感というか、包容力がある女性なのだな!】


 という俺達の言葉に。


【ありがとうございます、とっても嬉しいです】


 という言葉の元、目の前でシュルシュルと布と仮面を外す音が聞こえる。


 で、でも、どど、どうしよう、まだ心の準備が……。


(いや、ここで決めなきゃ男じゃない!!!)


 ドキドキ、ドキドキ、やばい、心臓の音がうるさいぐらい体中に木霊する。


(ど、どんな顔しているのかな? いや! 別に顔なんてどうでもいいじゃないか! 俺を誘ってくれたんだ! いい女に違いない! 出来るだけ優しく! 敬意をもって!)


 そして覚悟を決めたと同時にパッと部屋が明るくなった。


 俺は勇気をもって、目の前にいる女性の顔を見た。



 古来より男は、女の美を讃える言葉を次々と編み出してきた。



 編み出してきた言葉は、決して届かない知りつつも男が捧げる無償の愛、その愛を一身に受け続ける。


 誰か言ったかは分からない、その誰かは、その人を超えた美しさ、永遠に語り継がれる美しさを讃えて、それが彼女の字名あざなとなった。


 その字名は。



――至宝



 クォナ・シレーゼ・ディオユシル・ロロス。


 彼女と……。



 ドゥシュメシア・イエグアニート家の女性陣一同が待ち構えていた。





【甘いな! もういい加減学習したのだぜ! わかってたっつーの!!】 ←神楽坂


【クーックック! ワンパターンなんだよ!!】 ←王子


※ダバダバと走る2体のカオナシ(ノーマルモード)を想像してください。


 ちなみに俺と王子は、当然にこの事態を想定していたため、彼女たちの姿を見た瞬間に反転逃走した。


 瞬時に逃げるとは思わなかったのだろう、後ろを見るが追いかけてくる気配が無い。


 え? 分かっているのなら、なんでノコノコついて行ったのかって?


 ひょっとしたら億が一でも都合よくモテたかもとか思いたいの!! 分かるでしょ!!


【後輩よ!】


【分かっています! 後は手筈どおりに!】


 俺たちは会場に戻り、そのまま速足で控室に戻り、急いで仮面と布と外して、そのまま会場の外に出て、今度は走り。


 人気のないところまできて一息つくと身なりを整えた。


「ふっ、逃走完了まで1分弱、完璧ですね」


「ま、戦いに対しての気構えが違うからな、造作もないことだ」


「それでも危なかったですね、王子」


「ああ、バレているかもとは思っていたが、まさか潜り込んでいるとはな、お前から以前に、天河での話を聞いていなければ、立ち尽くしてしまうところだった」


「それにしても二番煎じとは、女性陣も「油断」したのですかね?」


 という俺の言葉にふふっと笑う王子。


「最後の最後で仮面が活きた形となったか、命拾いをしたな、そういえば、神楽坂よ」


「なんですか?」


「今回勝ったわけではないが、負けてもいないよな?」


「そうか、そうですよね、初めてですよね! 負けなかったのは!!」


「一歩前進か、いやいや、油断禁物、ここは神楽坂に習い「また勝てなかった」っていうほうがいいか?」


「「HAHAHA!!(爽)」」


「ああ、お仕置きが無い、それがこんなに素晴らしいことなんて、あ、王子、見てくださいよ!」


 王子は俺が指先に視線を移して、目を細める。


「朝日だ、眩しいな、まるで俺達の功績を称えてくれているかのようだ」


「さあ、行きましょう王子!」


「ああ、行こう神楽坂!」



 こうして2人は、新た戦場へと赴く。



 だが彼らが戦う戦場は、困難な道。



 また再び負けるかもしれない、負け続けるかもしれない。



 だけど2人は歩みを止めることはない。



 何故なら2人は男のプライドをかけて、突き進むのだから。



 そう、俺たちの戦いはこれからだ!!




::::ご愛読ありがとうございました! 神楽坂イザナミ先生の次回作にご期待ください!
















――『ジャスト1分だ』




 ピシっと空間に亀裂が入り。



 パリーンという音ともに崩れ去る。



――『いい悪夢ゆめ、見れたかよ?』



「「…………」」


 と我に返ると、ここは先ほどまでいた個室、んで、声がした方向を見ると片手を突き出しているウィズが目に入る。


 続いて床を見ると、さっき脱いだはずの仮面と布が置いてある。


 そして俺と王子はお互いを見て。


「「あああぁぁぁぁ~~~」」


 とへなへなと、その場に崩れ落ちた。


 そんな俺達を、女性陣はくすくす笑いながら冷たい視線でこちらを見ていた。


(終わった……)


 俺は天を仰ぐ。


 俺を連れてきた上流の至宝は、男の理想の笑みを浮かべながら自分の胸元に手を突っ込むと、がさがさと音をさせながら、紙の塊二つをポトッと落とす。


「ご主人様はこんな紙の塊に興奮する癖をお持ちでしたのね、可愛い♪」


 そんな癖は無い、女の胸の中にロマンがあるんだ、こんな紙の塊じゃない。


 結局ユートピアなんてものはなかった、あったのは約束のネバーランドだったのだ。


 虚ろな表情のまま紙の塊を見ていると、ドスンという音がしたので横を見ると王子が横たわっていた。


 そんな王子の前には彼女の前には仮面を脱いだアレアが立っていた。


 そうか、王子は姉を口説いたことになるのか、それすらも想定していたのか。これはえぐい、証拠に王子はビクンビクンって痙攣している。


「…………」


 俺はそっと王子の頭を自分の膝にのせて膝枕をする、王子は薄目を開けると微笑んだ。


「さあ、行きましょう王子」


「ああ、行こう神楽坂」


 俺はそのまま女性陣を見上げる。


「お仕置き?」


 俺の言葉に全員がにっこりと笑う。


 もうどうしてバレたとか、どうでもいいや、いつもの女の勘なんだろう、考えるのを辞めたカーズ状態の俺達を見届けて、代表者たるクォナが出てきて述べる。


「それでは、超王国級の男の浪漫である神楽坂イザナミ文官大尉のために」


「すぺしゃるな!」


「おしおきを!」


「よういしましたわ!」


「え? なんで急にダンガンロンパ? あのさ、知らないと思うけどモノクマのその台詞って、お仕置きとかいっているけど、実際は非常に凝った演出の処刑って意味で」




――GAME OVER


――カグラザカくんがクロに決まりました。


――おしおきを開始します。



――極上美女達之夢共演ゆるさないぜったいにだ


――超王国級の男の浪漫


――神楽坂イザナミ処刑執行



:おしまい:























――――――――



「えっと、セレナでいいよね? シレーゼ・ディオユシル家直系ラエル伯爵の秘書官、ファビオリ男爵家当主、マヴァン男爵の娘」


 ある人物がある場所を訪れた時、作業を始めようとしたセレナに問いかけ、彼女はその人物を認めると、丁寧にお辞儀をする。


「そうです、ネルフォル嬢」


 そう話しかけたのは、ネルフォル・メバル・トゥアメル・シーチバル・ネルダント。


「どうしてこのようなところへ?」


「まあ、これだけ派手にやってればね、「あの方」の好みも知っているから、いるかなって思ったのよ」


「あの方って」


「とぼけないでよ、神楽坂イザナミ、貴方の、、、関係は何と言ったらいいのかしら?」


「…………友人です」


「そう、友人ね、貴方のところのマスターは何処にいるの?」


「今は席を外しています」


「詮索無用ってことね、まあいいか、貴方でも」


 ここでネルフォルは言葉を切ると、セレナに告げる。



「神楽坂イザナミが気になるの」



「…………」


 ここで少し表情を厳しくするセレナ。


「ネルフォル嬢、確かに声をかけたのは大尉ですけど、実は女性には凄い初心で奥手なんです、ですから」


「知ってるよ、あのロシアンルーレット、わざと負けた理由は、怖気づいたからでしょ?」


「…………」


「だから言ったでしょ、あんな大根演技でこの悪女優を騙せるなんて思わないでね」


「失礼しました」


「そうね、もし私を騙せるほどの演技力を持っている人物をあげるとするのなら」



「貴方のところのマスターだよ」



「…………」


「貴方のマスターは、男の夢を、私は男の悪夢を体現した女だそうよ、笑っちゃうようね、貴方のマスターと私の違いなんて、そうね、来ている服の露出の差ぐらいなのにね」


「だからなのかしら、私はね、貴方のマスターに対して、前に一度一緒に仕事をした時にね近しいものを感じたの、あの方曰く「自分の美貌に悲壮感を持っている」というところかしらね、だからつまり、好意を抱いているのよ」


「おっしゃりたいことがよくわかりません」


「つまり、男の趣味も一緒なんじゃないかなって思ったの、それがあの方のナンパを受けた理由」


 お互いに睨み合うが、セレナも負けじと言い返す。


「ならばはっきりと言います、そうやって大尉をからかうのは辞めてください」


「心外だわ、からかうなんて、まあでも、嫉妬か、可愛いわ」


「はあ!!?? どうして私が嫉妬なんてするんです!!?? 大尉とはあくまで友人としての関係です!!!」


「あらら、無自覚だったのか、だったらそのままにしておけばよかった」


「あの!」


「まあいいわ、ごめんなさい、まあつまりね、どうしてこんなところにわざわざ来たのかというとね」



「私と神楽坂イザナミが出会ったことは運命かもしれないってことよ、それを伝えに来たの」



 運命、思わぬ言葉に驚くセレナ。


「あらら、似合わなかった? 本気なんだけどね」


「…………」


「さて、これからとっても面白いことが起こりそう、じゃあね、セレナ、「ライバルのクォナ達」によろしくね」


 と一方的に言い残して部屋を後にしたネルフォル。


 それを見届けるセレナ。


 その扉を少し見て、ため息をつき。



 天井から簀巻きにされて吊るされてぐったりしている神楽坂を見上げる。



 そうここはさっきの個室、お仕置きが終わり、介抱役であるセレナが来たのだ。


 彼女がここに来たということは、今回の「反省会」の内容もちゃんと知って、この格好の神楽坂に触れないところを見ると、いつもそれがバレてお仕置きされていることも知っていてここに来たのだろう。


「…………ある意味、これを見ても幻滅しないって、凄いことなのかも?」


 とそんな誰に言っているのかもわからないまま、セレナは「また面倒事が増えた」と神楽坂を下ろして介抱を始めるのであった。



:おしまい:



 これにておまけを含めて監督生篇完結しました。


 これに入り切れなかった分は、間章で少し投稿して次の章へ進みます。


 次章で神楽坂は、表の世界ではなく、裏の世界へ関わることになります。



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