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王国最弱の都市・後半



 セルカの悲壮な決意をあざ笑うかのようにウルティミスの不幸は連鎖は止まらない。



 賞金も賭けられているブート山賊団の襲撃。



 近くの山に拠点を構えて、ウルティミスに襲いかかってきたのだ。


 死人は出なかったものの、当然タダで済むわけはなく。山賊団の団長のブートが要求してきたのは恒常的に上納する貢物だった。


 即座に、被害報告と憲兵の出動要請をかけたが……。


「却下だと!! どういうことだよ!!??」


 声を荒げる俺に目を閉じて発言するセルカ。


「おそらく、異教徒であることを理由に後回しにされている感じがします」


「ふざけやがって! 異教徒だってウィズ王国民だろうが!」


「…………変じゃないですか?」


「は? そりゃ! 異教徒の」


「いえ、そうではなく、人的被害が1人も出ていないということについてです」


「被害が出ていないのはいいことじゃないか」


「ええ、だけど、いくら辺境とはいえ王国の保護下にある都市を襲うって時点で、向こうだってある程度の損害を覚悟していたはず、だからお金以上に何も求めてこないのが変です、何がしたいのかが見えてこない」


「ふん、あんな奴らのことだ何も考えていないんじゃないか」


「確かに実際にブートと会った時もそんな様子は見られなかったし、ヤド商会長のいった短絡思考であることは間違いないと思う。だけどそうなると保護料が安いことが引っ掛かる」


「保護料が、安いことが引っ掛かる?」


「短絡思考の人物がすることではない、という意味です。そもそも憲兵の出動要請の却下だって、そんなことを最初から知っていない限り、長期的に保護料を徴収するという事自体が変、山賊団が長期的にこんな形で計上すれば、それこそいくら辺境と言っても王国の都市が良いようにされていて、何もしない確信をどうして得たの」


「ひょっとして、何者かがウルティミスを貶めようと?」


「王国最弱の都市にそれをするの? ウルティミスにする理由にならない、仮に計画的であってもならず者を使うというのも下策中の下策よ」


「そ、そうなのか?」


「要は、襲撃をしてすぐに引き上げるヒットアンドアウェイをしようとしたのではないかということです。そっちの方がよほど現実的、つまりブート山賊団はもっとウルティミスに凄惨で深刻なダメージを与えることを考えての襲撃だったかもしれないという事、だけど、それを不自然なほどに緩めている「マフィアのみかじめ料」といった具合にね」


「つ、つまり、どういうことなんだ?」


「……今は何とも言えません、ですが、この不審点をもって私は保護料を払うべきだと思います」


「ちょっと待てよ! それって!」


「負けを認める、という事です」


「あ、あ、あんな、山賊団に、俺達のウルティミスが、王国は、俺達を見捨てるってのか!」


 と結局保護料を払うことで身の安全を買ったわけだが、そんな窮状に全員が落ち込む中、たった1人だけ悲壮感が無い人物が1人だけいた。



 それは負けを認めたセルカ本人だった。



 その時の目は、何と表現していいのだろうか。1人だけ別の場所を見ているような、そんな目をしていた。


 そしてこうセルカは結ぶ。


「先日、王国府から連絡があったの、ウルティミス駐在官が補職されるって」


「ちゅ、駐在官? 今の時期に?」


 辺境都市の駐在官は補職されたりされなかったりする。ウルティミスの場合は1年ほど空位だが、大体は定年間際のロートル下士官が赴任するのだが。




「最短で武官軍曹にまで昇任した、優秀で若い人だそうよ、名前は」



「フィリア・アーカイブ」





「ボクはフィリア・アーカイブ武官軍曹、これからよろしくね」


 とセルカと俺とキマナに挨拶する人物。


 なんとも不思議な雰囲気だった、男なんだが女なんだかもよくわからない。


 資料によれば優秀らしいが、なにやら前の部署で不祥事を起こして左遷されてきたともっぱらの噂だ。


 そんな奴を良くも、と思ったが、まあ裏表がない性格で、武官らしく武芸と魔法に長けていて自警団に武芸を教えたりしている。


 特に子供達からは人気で遊び相手をしてくれているから、親たちも助かっており住民の評判も悪くない。


 とはいえ山賊団をどうこうしていないし、相変わらず保護料は徴収されている状態、フィリア武官軍曹に対して不平不満はあるが、そこでもセルカがこういった。


「フィリア武官軍曹1人だけでは多人数と戦うのは不可能です、フィリア武官軍曹にだけ責を負わせるのは、自分たち側の狭量を問われることですよ」


 それは、そうかもしれないが、だが、それでもセルカの言葉の謎の重みを感じて、俺達は引き下がるしかなかった。


 今思えば確かに、フィリア武官軍曹の赴任は、これからのウルティミスの一番最初の変化だった。


 そして、確かに安い保護料を徴収されるだけ、ただそれだけで、ウルティミスはびっくりするぐらい平和、というより、襲われる前と全く変わらない日々だった。


 最初家屋も何棟も焼かれる被害に遭ったのにだ。


 確かに、街長の言う通り、ブート山賊団のやりたいことが全然見えてこない。本当に、王国から賞金を懸けられているほどの質の悪い奴らなのか。


 そんな時間、いつもと変わらない時間、その間もセルカは街長は色々と方々をあたっているようだが、良い答えはもらえない。その部分について、自分の無力さを痛感しているようだったが。


 だからなのか、その情報を最初に聞いた時は信じられなかった。


 だから俺とキマナは事実確認のため街長に確認する。


「街長」


「なんです?」



「王立修道院出身のエリートが来るって聞いたが」



 結構な覚悟を決めての言葉だったが街長はあっさりと頷く。


「はい、先日、ロード・リーザス修道院長から連絡が来ました。外国人枠で入学した修道院生だそうですよ」


「外国人……、こんな辺境都市って言い方はあれだが、修道院の卒業生ってのはスタートから幹部としての立場を与えられて胆力を鍛えるってやり方をしているんだろう? 何故ここに来ることになるんだ?」


「…………」


「街長?」


「一言で言えば成績が最下位だからそうですよ」


「……は? それは、院長に直に言われたのか?」


「ええ」


「い、いや、確か時期的に卒業試験前じゃなかったのか?」


「試験を受けるまでも無く最下位が決定しているのだそうですよ」


「な、なんだそいつ! 使えない無能ってことかよ!」


「それだけではありません、彼自身に政治的繋がりはない、というよりも構築しようともせず、休日は首都観光や遺跡巡り、決定的なのは貴族枠のメインであり首席である原初の貴族のサノラ・ケハト家次期当主とも険悪、今回の赴任は不興を買っているからだと周りは解釈しているようです」


「げ、原初の貴族の次期当主と?」


「だけど、それを全く意に介していない、というよりも原初の貴族の事すらも良く分かっていないようですよ」


「は、はあ!? いやいや、いくら外国人と言ってもそんなことがありうるのか!? 何のための修道院なんだ!!」


「もちろん、現場に生きがいを見出して、上流との繋がりを必要としない人達もいます。ですが、そういったタイプでもないそうです、何よりウィズ王国語も最初は全く話せなかったそうですよ」


「…………」


 絶句する他ない。


 確かに外国人枠の受験条件にウィズ王国語を話せることという条件はないし、実際の受験も自分の母国語で行われる。


 だがそれはウィズ王国語が必要ないという意味ではなく前提として解釈されている。


 何故なら外国人枠は、自国の優秀な人材を他国の要職に送り込むことを公然と行うことができるからだ。入学する時に国籍はウィズ王国籍になるとはいえ、これは大きい。


 それなのに、修道院出身でありながら、何もかも無い人物という事だ。


「なんだよ! 結局はただの無能な人材を押し付けられたわけじゃないか! くそ! 舐めやがって! これで便宜を図ったとか温情をかけたつもりか!!」


「まあ、方便には使ってくるでしょうね」


「最悪だ、本当に、いくら俺達が異教徒だからってそんな仕打ちってあるのかよ! そうは思わないか!?」


「…………」


「ま、街長?」


「…………この違和感、前にもありましたよね?」


「え?」


「ブート山賊団の襲撃時も、同じように「ありえない」ことばかりでした」


「そ、それが、な、なんなんだよ、何が言いたいんだよ?」


「……いえ、とにかく会って話がしたいですね。さて問題なのは「もてなし」ですが」


 セルカは思案顔になる。


 修道院の卒業生は赴任先から最高のもてなしを受ける、それは期待という負荷に耐えられる胆力をつけるという意味で慣習的に行われていることだ。


「ですが、私達には最高のもてなしはできませんから、現状出せるのは馬車と人手が2人といったところでしょう、ここへの道すがらウルティミスの実情を知ってもらうのにはいいかもしれません、ヤド商会長、手配をお願いします」


「……ああ、わかったよ」


「私は、色々と調べたいことがあるので、書斎にこもりますから何かあればお願いします」


 と言って、その場を後にした。


「「…………」」


 静まり返る教会内だったが。


「変を通り越して胡散臭いよ、やばい奴なんじゃないのかい?」


 キマナが話しかけてくる。


「同感だ、話を聞く限り得体が知れない感じがする、ま、試験を受ける前から最下位ってことはただ単に無能である可能性もあるがな」


「それにしても世界に名を轟かす王立修道院ってのも底が知れたんじゃないかい? こんなことをしてくる時点でさ」


「名を轟かすといっても一皮剥けば出世機関だからな、とはいってもセルカは修道院入学を諦めたんだぞ、本来ならセルカが入学して卒業する筈だった期生だ、恩賜組で、さあこれからだって時に、あてつけもいいところだ、よし、キマナ」


「なんだい?」


「最高のもてなしってやつは、期待をもって最大限のもてなしだそうだ、だったら俺達の期待を感じてもらおうじゃないか」


「なるほどね、確かにそんな奴に馬車も人手ももったいない、革袋と食料だけ送り付けてやろうか、それで逃げ帰ってくれれば好都合だね」


「決まりだ、えっと、確か赴任してくる奴の名前は……」




――現在




「…………」


 幹部章をつけた後、会合という名の取引の場が行われる。こういった会合は商人として旗揚げしたばかりの人物にとっては人脈かねを広げる場として積極的に参加して活動している。


 本来なら王国商会のそれは幹部商人を中心に人の輪が出来るものであるが、俺の周りには誰もいない。


 それはそうだ、俺は金を持っているというだけで、繋がって金になるという立場ではないからだ。


 というのは連合会社は遊廓の資金を元手に、遊廓会社も、流通会社も、警備会社も、それだけで完結している組織だからなのだが……。


(そろそろか……)


 あの情報が出回るのは、もう間もなくだ、そしてそれは商業の情報ではないが、将来の利益のためならあの人物なら即座に情報が入ってくるはずだ。


 その時だった、輪の中心にいたあの人物の付き人が焦った様子で近づくと耳打ちをする。


 その瞬間、目を見開いたかと思うと事実かどうか確認するが、付き人は間違いないと頷き、周囲に一言断るとそのまま会合の場所から姿を消した。


 さて、それが確認出来たらもうここには用はない、俺は給仕係にこう言ってその場を後後にした。



「俺がこの場にいても「何故か」誰も来ないようだから失礼するよ、もし俺の所在を聞かれたら、そのまま答えてくれ」




――ウルティミス・ルルト教会・セルカ執務室




「街長、戻ったぜ」


「お疲れさまでした、ヤド商会長、就任式はどうでした?」


「ああ、滞りなくな」


 俺は襟元の幹部章を見せながら報告するとセルカは笑顔を見せた後、机の中から封書を取り出す。



「ウィアン・ゼラティストから親書が届きました、内容は簡単に言えば、お得意様にならないかという内容です」



「流石話と判断が早いな、まあそうでなければあの地位は得られないのだろうが」


 あの日、俺が幹部商人になった日、王国議会最大派閥である後世会の会長が、そのツバル・トゥメアル・シーチバル家からの便宜を王子の命令によって外されたのだ。


 既に後世会の会長が不興を買ったという噂が流れて、もう組織は空中分解寸前だと聞いている。


 そして同日、後世会により大量の人員引き抜きにより消滅一歩手前であった曙光会は会長ファシン・エカーが王子の便宜を得たことにより奇蹟の一発逆転を実現。


 わずか3人で構成される曙光会は数の力が絶対の世界で、数を持たない強者となり、レギオンとウルリカとウルティミス・マルスは強固な同盟関係を結び、今では対等との立場となった。


 その劇的な変化は当然ファシンが次期国王の便宜を得たことが大きな理由だが、噂はもうすでに流れている。



 王子との仲を取り持ったのはセルカであると。



 となれば当然に一等都市レギオンの最高幹部の1人であるウィアンがウルティミス・マルス連合会社との繋がりを欲するのは当然の話だ、特にウィアンのレベルになれば「政治的なハッタリはそのまま金を生む道具」に使えるのだから。


 日本だって、所謂大企業と呼ばれる組織が政治家と懇意にするのはその理由もある。


「ヤド商会長はウィアン会長の提案について、どう考えていますか?」


「難しいところだな、ウィアンはどうも俺達が気に喰わないみたいだし、袖にすると逆恨みされるかもしれない。あの男の組織は決して軽く見ない方がいい、嫌がらせをされると後で面倒なことになるかもな。だが俺達の会社を考えれば、出来れば新規のお得意様は連合会社主導で開拓したいんだがな」


「となれば、私立ウルティミス学院に組み込みますか」


「組み込む?」


「ええ、私立ウルティミス学院の備品を注文しましょう。そうすれば向こう側もクォナ嬢との繋がりを意識するでしょうし、逆に言えば下手なことはできないですからね、会長自身、原初の貴族の便宜を得ているのなら余計に「縛られる」のですから」


「……なるほど、ならそう手配するか」


 と言った時だった。


「街長、邪魔するよ」


 という言葉でキマナが執務室に入ってきた。


「これが遊廓のシフト表と現状報告書だよ」


「拝見します」


 婦人部の人たちは主にマルスを担当する遊廓会社での勤務になっている。どうしても異性だと遠慮と甘さが出てしまうし、惚れた腫れたが出てしまう可能性があるからだ。


 だから特に姉御肌でお局肌のキマナが婦人部長であると共に、遊廓会社の役員を務めており、良い意味で疎まれて頼りにされているそうだ。


 まあキマナの話を聞くだけでも凄い面倒な世界だから確かに男は立ち入ることはできないし、立ち入りたくもない。


 それでいて単純な切った張ったが出てくるのであれば、男の担当として憲兵との関係強化に尽力しているのだから流石の一言だ。


「報告書に問題ありません、キマナ婦人部長、口頭で報告するべき問題はありますか?」


「特にないよ、売り上げも順調に上がっているし、最初は遊廓で合法アピールってのはどうかと思ったけど、安心して遊べるってのは大きいみたいだねぇ。全く、本当に男ってのはさ、合法とはいえぼったくり値段を喜々としてよく払うよね」


 と横にいる俺を見ながら言うキマナ。うるさいな、迷惑をかけなければいいんだよ。と街長は俺達を見てクスクス笑うと報告書を置く。


「ちょっと休憩にしますか」


「そうだね、おっと、街長は座ってな、お茶を淹れてあげるよ」


「いつもすみません」


 とキマナはお茶を淹れて茶請け用意をすると、3人で食べて、雑談がてらお互いの現状を報告する。


 俺達の報告に相槌をうつセルカを見て思う。



 ほんのたった1年前、ウルティミスは王国最弱の都市、その街長を誰も相手にする人物はいなかった。



 それが今では、格は4等でも王国議会で道を譲る方の議員が圧倒的に多くなり、次期国王とも懇意にして、原初の貴族の直系ともつながりを持つようになった。


 政治的立場だけじゃない、あって無かったような商業分野も、他の都市に依存していた教育もその全てを自分で賄えるようになり、今や第三方面では知らない者がいない都市にまでなった。


 セルカの姿を目を細めながら見る。


 そんな折、キマナがお茶を飲んでいるセルカに話しかける。


「街長」


「なんですか?」



「いつ神楽坂を押し倒すんだい?」



「ブーー!」


 と飲んでいたお茶を吹き出す。


「ケホッ、ケホッ、な、なな! 何を!?」


「何をじゃないよ! いやね、アンタならそこら辺の女なら余裕で勝てると思っていて油断してたらさ! まさかクォナ嬢が出てくるなんて思いもよらなかったよ! 男どもは全員騙されているけど、あれは相当なタマだよ! アンタも女ならわかるだろう!?」


「は、はは、その、あの」


「アンタの唯一の欠点は奥手なんだよねぇ、いいかい? アンタの母親のソロミアもそれはね、学院では一目置かれる美女だったんだ。ここだけの話、シェヌス大学や修道院に合格した能力だけじゃなくて顔もいい美男子達に告白されてたんだよ。それなのに全員振ってしまったんだよ。そんなソロミアに私はこう言ったんだ「もったいない、アンタなら選びたい放題なのに」ってさ」


「んで、結局ルーイなんて不細工……ごほん! 失礼、まあ、えーっと、優しい男だったよ、うん、いや、優しいだけだけが取り柄? それだけの冴えない、違う、えーっと、熱意はまああったね、それにほだされて結婚までしちまったんだよ!」


「ま、まあ、私のことはいいじゃない」


「よくない! アンタのことだから、どうせ周りの男どもはアンタのことを怖いとか何とか云っているに違いない! いいかい? ああいう神楽坂みたいな奴はね、要はガキなんだよ、だからそこをちゃんと理解してあげて振舞ってあげな。私の旦那はね、いい歳こいて子供の遊びに夢中になるような男だったけど、私はそれを全部理解して、母親のように喜んであげたら「お前しかいない!」って言葉を勝ち取ったのさ!」


「そ、そうだね、ど、どうしようかな~」


 とちらっと俺を見る、助けを求めているんだろうが。


「街長、神楽坂も奥手だよ、自分の魅力が無いって思っているからヘタレちまうし、そもそも女が自分を相手にしてくれるわけがない、って思っているクチだ。だから絶対に押しに弱い、街長なら押していけば、メロメロになるはずだぜ」


「はは、参考に、しておきます」


 とその顔を見ると「こんな面倒なものが色々ついてくる自分に」なんてまた余計なことを考えているんだろう。


 そう、ウルティミスに赴任してきたエリート、名前は神楽坂イザナミ、日本というよくわからん国の出身。


 こっちが渡した革袋を背負って、制服どころかラフな服を着た、小汚いホームレスみたいな奴だったそうだ。


 だから道中で色々と疑われては解放されて、詰所の脇で寝ていたらしい、しかも途中で道を間違えての遅刻しての赴任。


 実際見てみればその報告に違わず、ぼーっとした男、才気なんてものは感じない、なるほど、最下位かと、頷ける話だった。


 だが……。



 神楽坂について街長は多くは語らない。



 だが語らずともわかることがある。



 多分ウルティミスを巻き込んだ全ての出来事の中心にいるのは神楽坂なんだろう。



 その神楽坂の仲間となって、セルカはウルティミスはここまで成り上がるきっかけをつかみ、見事にそれを体現したのだ。



 ルーイはこう言っていた。



――「何故かな、自分の娘が自分よりも優秀って言われるのが凄い嬉しいんだよ、あの子が街長になった時、今よりもウルティミスが良くなるような気がするんだ、ひょっとしたらウルティミスが王国から一目置かれる都市になったりしてな! って、流石にそれはないか!」



 流石にそれは無いか、か。



(ルーイ、ソロミア、お前ら2人が愛した娘と故郷は、親の想像を超えるところにいるぞ)




:おしまい:




いつもの突発投稿です。


日常篇は後1回で終わりです。


最終回は、コメディ・パロディです。

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