【番外編】ささきさんの炬燵
「ああ、この炬燵ですか?佐々木さんから譲り受けたものです」
「出たよ!ささきさん!!」
彼女の言葉を聞いて、般若が、勢い良く炬燵の天板に突っ伏した。
「あの……トア・モラさん?どうかしましたか??」
「いやー……なんでもない……なんでもないよー……」
ちっとも、なんでもなくなさそうだが、般若は乾いた笑い声を上げつつ首を振り、それ以上は答えてくれないので、彼女は仕方なく、勇者といたいけな少年を見る。
しかし、両者からは、「自分たちは分からない」という答えが返ってきただけだった。
「それで?その、どこのナニとも知れない?謎の?ささきさんが?どうしたって?」
「いや、これ、佐々木さんじゃなくて、炬燵の話しでしたよね?」
その間に、般若は気を取り直したらしい。
ただし、言っている内容が元々の話しと異なっているため、彼女は首を傾げつつ訂正を入れた。
そもそもこれは。般若から『この炬燵はどこの店で購入したものか』と言われた問いに、彼女が答えたものだったはずだ。
「あー…なんというか……原因は炬燵だと思ってたんだけどねぇ……どうやら、ささきさんとの因縁のほうが深かったみたいでねー…」
だが、般若はぶつぶつと何事か言いながら、思考を巡らせ始めてしまったので、この話しはそこで打ち切りとなる。
再び首を傾げた彼女は、イルセイドといたいけな少年としばし見つめ合った後、取り敢えずミカンを食べることにした。




