平和王
「なぁスライム」
「何ですか? 魔王様」
「お前の一族って、何でいつも勇者候補のいる村の近くに配属されるんだ?」
「え? いや、僕はなんとも......。お父さんなら」
「お呼びですかな?」
「あ、お父さん」
「なぁ父スライム、何でいつもスライム族は勇者候補のいる村の近くに配属されるんだ?」
「......まぁ、それがスライムに生まれた者の運命ですから。」
「でもさ、ドラゴンとか巨人族とかが行けばそもそも、お前の一族も俺の父上達も勇者に殺されないんじゃないの?」
「それもそうですが......。」
「何で皆勇者に都合よく配属されるんだ? まさか、俺の臣下の中に......」
「それ以上言ってはなりません!」
「......何だよ父スライム、いきなり大きな声出して」
「魔王様、あなたがそう考えるのも分かります。配属に不満のある者がいるのも事実です。が、あなたの臣下達は皆あなた様のことを第一に想っております。魔王様、どうかそれより先は」
「......分かったよ、父スライム」
「ありがとうございます。魔王様のお言葉、私は嬉しゅうございます」
「でも、何とかならないかなぁ。殆ど皆悪いことせずに、そこにいるだけなのに、少し乱暴者がいるせいで、魔物皆が悪いみたいにされるのが、俺は嫌だ」
「......魔王様」
「ん?何だ?父スライム」
「それなら、こんなのはどうでしょう?」
~~数日後
「おい、皆こっち見てるぞ」
「大丈夫ですよ、魔王様。ちゃんと『あぽ』はとってあります。それに、もしもの時の備えもありますし」
「そうか、なら守りは頼むぞ、父スライム、マジックナイト」
「はい、魔王様」「御意に」
~~
「ということで国王。俺とそちらとで、平和協定を結びたい」
「ほう、今代の魔王は平和を願いますか」
「これは双方、得な話だと思うのだが」
「そうですねぇ。まぁ、今まで続いた宿命も、我らの代で切りましょう」
「おぉ、そう言ってくれると有り難い!なら、この証書にサインしてくれ」
スラスラスラ......
「これでよろしいですか?」
「ああ、ありがとう」
「うむ、これからは仲良くしましょう。私たちは、この協定は必ず守りますよ」
「そう言ってもらえると安心だ。それでは、これで」
スタスタスタスタ......
「ふふふ、魔王も変わりましたねぇ......」
~~それから十年後
「魔王様、大変です!」
「何だ、父スライム、騒々しい」
「国王直属の軍が、海を渡り本土に上陸。一方的に平和協定を破棄して攻撃して来ました!」
「な、なんだと!?国王は決して破らないと......」
「それより今は、本土の被害を食い止めるのが先です!弱い種族達がまだ戦線に残っております」
「......分かった、私も出る」
「デモンナイト、マジックナイト。あなた達は魔王様の補佐についてください!」
「「御意に」」
~~
「ふぅ、何とか一人も殺さず撤退させられたな」
「お疲れ様でした、魔王様」
「ああ、スライムか。お前も子ども達の保護・移送、よくやってくれた。ありがとう」
「いえ、私はやれることをしたまでです」
「でも、これからは守備を強化しないといけないな......」
「その方がよいかと」
それから分かったのだが、国王は数年前に体調を崩していたらしい。国王軍を動かしたのは軍隊長で、国民達には知られぬように出兵させられたらしい。負傷して帰ってきた兵士達の姿を王都で平民達に見せつけた軍隊長は、「魔物達が一方的に巡回中の兵士達を襲った」として、宣戦布告。魔王軍は専守防衛の構えでこれに対応するが、勇者の血族を有する国王軍によって、その大半が殺されてしまう。そして今、魔王の前に勇者一行が到着した。
「魔王、覚悟!」
「ああ、お前が勇者か」
「そうだ、世界を混沌に陥れたお前を、俺は絶対許さない!」
「哀れな人間よ。真実も知らずに我に立ち向かうか。ならば私も応えよう、私の力で!」
「うおおおお!」
魔王は勇者一行との戦いで致命傷を負い、その場に倒れ込む。とどめを刺そうと、勇者は剣を振り上げるが、それと同時に魔王城が揺れ始め、勇者一行は撤退した。魔王は父スライムをはじめとする忠臣達によって、魔王城の外へと連れ出された。
「......んぅ、父スライム」
「あまり喋りなさいますな。傷に障ります」
「......妻は無事か?」
「はい、奥様は息子様と一緒におります。連絡もとれています。明日にでも、お会いできますよ」
「そうか......。なら、伝言を頼みたい」
「......なんでございますか?」
「子には、......人への恨みを植え付けないでくれ。それだけだ......。」
「魔王様、魔王様? ......魔王様。お眠りになられたのですね......。」
魔王、別名『平和王』死去。享年28
~~
そして、物語は次の代へと引き継がれる。




