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旅の語り屋・始
「さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい」
昔ながらの誘い文句を口にしながら、荷車を引く男がいた。
「旅の語り屋の時間だよ~」
髪は全て白く、癖が強いのか、四方八方に跳ねている。
そこに、一人の男の子が近づいてくる。
その子に気がつくと、男は荷車を置いて、少年と目線を合わせた。
「おや、坊や一人かい?」
男の子は口をつぐんだまま、首を横に振った。
「そうかい、じゃあお父ちゃんたち来るまで、お話聞くか?」
......うん。
男の子の小さな同意に、男は大きく頷いた。
「それじゃあ話のはじまりだ」
男は一度深呼吸をしてから、話を紡ぎ出していった。