モンスター報酬と異世界での借金、そして、宿へ。
「ウル、換金をお願い。」
ディアナは、そう言うと袋を3つ、カウンターの上に置いた。
「あっ、はい。えーっと、コクの実、ロエの葉、ゴブリンの3種類ですね。」
「うん、どうかな。」
「はい、品質的にも問題ないので、買い取らせていただきます。量を数えるので、少しお待ちください。」
そう言うとウルさんは、カウンターの中を少しうろうろし始めた。
そんなウルさんを見ながら、暇そうなんだと思うディアナに
「ディアナ、コクの実、ロエの葉って何?」
「うん?それは、思い出せないんだね。えーっと、調合士が、調合することで、コクの実は、回復薬にロエの葉は、解毒薬になるものだよ。ギルドで、買い取った後、ギルドの調合士が、調合して、各薬として、販売してるよ。自分で、調合出来たほうが、安上がりなんだけど、調合士の職業は、レアだから、ギルドで、だいたいは、雇われてるんだよ。」
「そんな職業もあるのか。調合士いいな。」
「うーん、なんとなくだけど、ユウには、無理だと思うよ。」
「えっ、なんで。」
「私が、あったことのある調合士は、頭がよかったから。」
「いやいや、ディアナ、もう少し遠回しに言おうよ。」
「うーん、ホントのことだしいいでしょ。」
「俺が、傷つくので、お願いします。」
「ふー、仕方ないな。」
「ありがとうございます。」
調合士は、頭がいい人が、多いいのか。うーん、勉強したら、なれるか。
「ディアナさん、お待たせしました。確認、出来ました。」
「ウル、ありがとう。」
「今回は、ゴブリンが13体、コクの実25個、ロエの葉20枚で、銀貨4枚と銅貨22枚です。」
「いつもありがとう。ところで、ゴブリン1体の値段は、いくらだった。」
「はい、銅貨24枚です。どうしたんです。」
「後、ここの宿代は、いくらか、ウル、わかる?」
「あっ、はい。銅貨35枚です。」
「と言うことで、ユウ、銅貨11枚借金だね。」
「なんだと!!!」
「わっ!何。」
「ひゃい!どうしたんですか。」
「俺が、借金。」
「えっ、ああ、宿代が、足りないから。嫌だった。」
「町での野宿は、色々と大変なことになるので、やめといた方がいいですよ。」
「俺が、借金。俺が、借金。俺が、借金。」
ディアナとウルさんが、お互いの顔を見合わせた後、ディアナが、俺を軽く小突いた。
「はっ、俺は、どうしていたんだ。」
「えっと、ユウさんは、ディアナさんから、宿代の足りない分は、借金だと聞いたら・・・。」
「そうか。借金て聞いて、我を失ったのか。」
「それよりもユウ、記憶喪失を知った時以上に、驚いてない。」
「だって、ディアナ、借金だよ、借金。借金は、とても恐ろしいものなんだよ。」
「えっと、確かに、借金は、駄目だけど、ユウは、明日から冒険者見習いとして、頑張るなら宿代くらいは、すぐに返せるから、大丈夫だよ。」
「コクの実、ロエの葉は、必要スキルを習得するのに、必要になりますから、ついでに、集めていただければ、いいと思います。」
「うーん、ならなんとかなるか。よし、借金返済頑張るぞ。」
「ユウ、立ち直り早いね。」
「まあ、くよくよしてても仕方ないから。」
「はい、前向きなのが一番です。」
「ウルさん、ありがとう。頑張ります。」
「・・・、何でかな。ちょっと、イラッとするんだけど。」
「くすくす。」
おー、ウルさん、笑顔も可愛いな。ディアナは、ちょっと、不思議そうな顔をしてる。
「ウル、どうしたの?」
「あっ、ごめんなさい。ディアナさんが、可愛いなと思って。」
「えっ、ウル。なっ、何言ってるの。」
おっ、ディアナの顔が、赤い。これは、確かに、可愛いな。
深呼吸して、落ち着こうとしてるのは、いいが、ディアナ、胸が、揺れてるからつい視線が・・・。
「ユウ!!どこ見てるの!!」
「ごめんなさい。」
「ウルも少ししか一緒にいないのに、ユウに影響されすぎ。」
「ごめんなさい。」
「ディアナ、ウルさんをそんなに、怒らなくても。可愛いは、褒め言葉なんだから。」
「うっ。・・・、はー、ウル。ごめん。言い過ぎた。それと、ありがとう。」
「あっ、いえ、私が、調子にのりすぎてしまったのが、」
「ウルさん、気にしすぎだよ。ディアナのは、照れ隠しだから、可愛いと思ったら、言っちゃえばいいんだよ。ディアナも同じように、ウルさんが、可愛いと思ったら、言っちゃえば、お互い様ってことになるんだから。」
「強引意見ね。でも、それ、いいね。ウルは、どうかな?」
「私もいいと思います。」
「よし、決まり。良かった、良かった。ディアナ、そろそろ、宿に行かない。」
「はー、そうね。なんか色々と疲れちゃった。ウル、ありがとう。」
「ウルさん、ありがとう。今後もよろしくね。」
「ディアナさん、今日は、色々とありがとうございました。ユウさん、こちらこそよろしくお願いします。」
と言うとウルさんが、綺麗なお辞儀をしていた。
ギルドを出て、東側に進むディアナの後をついて行く。
しばらく進むとディアナが突然、振り向いた。
「ユウ、着いたよ。ここが、オクト唯一の宿、スパだよ。」
嬉しそうな足取りで、ディアナは、宿に入っていく。
宿の作りは、2階建てで、大きさは、ギルドの倍くらいの大きさだろう。1階が、食堂と酒場だな。バーカウンターがあって、酒瓶も並んでるから、間違いないだろう。てことは、2階が部屋なんだろう。
ディアナは、バーカウンターの横にある受け付けに行くと奥から、肝っ玉母ちゃん的な女性が、出てきた。
「ディアナ、おかえり。いつもの部屋でいいね。湯浴み用のお湯は、後で、持って行かせるから。今回のお湯は、サービスだから、銅貨35枚でいいよ。」
「女将さん、ただいま。それと、いつもありがとう。」
「いいんだよ。なんたって、町のクエストを受けてくれてるんだから。ところで、後ろの坊やは、どうしたんだい。」
「うーん、今日、探索中に、拾ったの。ユウって言うだよ。」
「へー、拾ったのかい。うーん。」
女将さんに、上から下まで、見られてるんだけど、なんか変なとこでもあったか。
一通り見終わった、女将さんが、ディアナの方を見て、
「なんか、パッとしない子だね。」
「うん、ユウは、パッとしないよ。でも、中身は、変なやつだから。」
「ディアナ、ひどい。」
「はっはっはっ、確かに変な子だね。でも、面白いね。」
「はー、ディアナが、紹介してくれないので、自分でします。俺は、ユウって、いいます。記憶喪失で、寝てるところディアナに、拾ってもらって、冒険者になることになりました。しばらく、お世話になると思いますが、よろしくお願いします。」
「へー、記憶喪失になった子は、はじめみたよ。私は、この宿スパで、女将をしてるジーナだよ。ディアナに拾ってもらえて、良かったね。ディアナは、腕のいい冒険者だから、ユウは、ついてるよ。」
「はい、その点は、ここに来るまでに、何度も思いました。」
ディアナは、照れたのか、屋根の隅を見てた。
「そして、何度、ディアナの胸で、癒されたことか。」
「ユウ、やっぱり、死ぬ。」
ディアナは、殺気がこもった目で、こちらを見ながら手は、剣にのびていた。
「はっはっはっユウは、確かに変な子だね。しかも、無駄に素直だね。まあ、悪い子じゃないんだろう。」
ディアナを見ながら、女将さんが、言ってくれた。
「はー、女将さんの言うとりなんだけど、時々、私の胸のことを言うのは、やめてほしい。」
「ごめん、ディアナ。」
殺気をおさめて、剣からも手を離してくれた。
「うん、わかってくれたらいいんだよ。」
「了解、なるべく、気を付けるよ。」
「・・・、ディアナ諦めといた方がいいよ。たぶん、ユウは、また言うと思うよ。」
「私もそう思ってます。でも、私は、負けません。」
「ディアナ、頑張れ。」
「ユウ、あんたが、頑張るところでしょ。」
「ははは、まあ、それは、それとして、俺の部屋は、ディアナと一緒?」
「ユウ、何言ってるの。別に決まってるよ。女将さん、私の隣が、空いてたら、ユウは、そこで、お願いします。」
「ああ、右側が、空いてるよ。ほら、2人とも鍵だよ。そうだ。ケンカして、部屋の備品を壊したら弁償だよ。」
「「はーい。」」
返事をして、ディアナが、2人分の宿代、銅貨70枚を出して、女将さんから、鍵2つを受け取った。片方の鍵を俺に渡して、部屋に向かった。
部屋は、やっぱり2階だった。部屋に向かいながら、鍵を見てみると、知らない文字が、書いてあったが、やっぱり読むことは、出来た。
部屋の前まで来ると
「ユウ、ご飯の時間になったら呼びに行くね。」
「ありがとう。じゃ、部屋で、ゆっくりしとくよ。さすがに、色々と疲れたから。」
「うん。色々とあり過ぎってくらいあったからね。じゃ、後で。」
「うん、後で。」