オクト町、冒険者ギルド、看板娘、ウル登場
冒険者ギルド、一階建ての石造りで、頑丈そうだ。
と言っても、回りの建物も同じく、石造りだから、ギルドだけが、特別と言うわけではないのだろう。
町に入って、ギルドまでは、馬車が2台余裕で通れる道を真っ直ぐに来た。はじめて、馬を見たけど、でかいな。
ギルドの中に先に入っていたディアナが、戻ってきていた。
「ユウ、どうしたの?中に入らないの?」
「あっ、ごめん。ちょっと、珍しくて、町を見回してしまったよ。」
「うーん、記憶喪失関係なく実際に、ユウは、はじめて町を見たのかもしれないね。」
「えっ、どうして?」
「記憶喪失になる前に見たことあるものであれば、そんなに驚いてない感じがするんだよね。」
「なるほど。確かに、そう言われてみれば、そうだな。」
やべ、意外にディアナ鋭いな。
「ユウの記憶を取り戻すヒントになるといいな。」
「ありがとう。ディアナからいいヒントをもらったことだし、中に入ろう。」
これ以上、下手に勘付く前に話題を変えないとな。
ギルドの中に入ると受付カウンターが、1つとテーブルが、3つほどある。ただし、椅子はなかった。なぜ?
床をモップで、掃除をしていた女の子が、俺たちの気配に気づいたのか、振り向いた。
「ディアナさん、その方が、見習い登録者さんですね。」
「うん、ウルそうだよ。」
「いらっしゃいませ。私は、オクト町支部冒険者ギルド、受付のウルっていいます。よろしくお願いします。」
「えっと、僕は、記憶喪失で、ディアナに拾われて、一人でも生きていけるように冒険者になろうとしている、ユウっていいます。ウルさん、これから色々と迷惑をかけるとは、思いますが、よろしくお願いします。」
「・・・、あの、ディアナさん。」
「ウル、気にしたら負けだよ。ユウは、こういう感じの子だから。」
あっ、ディアナに子供扱いされてる。後、ウルさんちょっと困った感じの顔になってる。
「・・・、ユウさん、記憶喪失でも大丈夫です。冒険者になれます。それに、わからないことは、どんどん聞いてください。」
「ウルさん、ありがとうございます。」
ウルさん、すごいな。俺の微妙な発言に、すぐに立ち直った。見た感じは、俺よりも小柄だな。150cmくらいかな。頭が、ディアナのちょうど、胸くらいだから、抱きついたら、窒息してしまうかも。髪は、肩までで、綺麗な金髪で、瞳の色は、青。あっ、見た目、フランス人形に似てるのか。素直に、可愛い娘だ。
「ユウさん、私の顔に何かついてます。」
「あっ、ウルさん、ごめん。普通に可愛いから見とれちゃった。」
「えっ、あっ。見習いの受付しちゃうので、カウンターにおにゃがいします。」
おっ、噛んだ。顔も真っ赤だけど、可愛いね。
「ユウ、ウルをいじめちゃあダメだよ。」
「いや、ホントのことを言っただけだよ。」
「ユウって、たまにすごくストレートなことを言うよね。」
「そうかな。」
確かに、ここに来てから、素直に言えるようになった気がする。前だったら、”可愛い”とか言えなかったもんな。
「ウル、大丈夫。もし、ユウが、変なこと言うようなら言ってね。私が、ちゃんとお灸をすえてあげるから。」
「ありがとう、ディアナさん。大丈夫です。ちょっと、いきなりでびっくりしただけですから。」
「ウルさんなら、他の冒険者からもよく言われるんじゃないの。」
「そうでもないですよ。私、まだ、12だから、冒険者さんたちにとっては、範囲外ですから。」
「範囲外?」
「はい。恋愛の。」
「てことは、ここの冒険者は、年上の人が、多いいんだ。」
「はい。それに、ここに定住している冒険者さんは、いませんから。」
「あれ、それだと困ることもあるんじゃない?モンスターの襲撃とか。」
「ユウさん、大丈夫ですよ。町の周りには、モンスターが、嫌がる結界を張ってあります。それに、オクト町は、オルガ街に行く途中なので、冒険者さんも一休みのために泊まられますから。」
「へー、そうなんだ。てことは、ディアナもそんな感じなの?」
「そうよ。今回は、私だけ、残ってるの。パーティーは、オルガに別の用事をしにいってるよ。」
「ディアナさんが、受けている今のクエストは、なかなか受けてくれる人が、いなかったので、ホント助かりました。ありがとうございます。」
「もう、ウル、いいよ。私は、冒険者として、当たり前のことをしたんだから。」
ディアナ、照れてる姿、やっぱり可愛いな。
「と言うことは、俺もディアナが、そのクエストを受けてなかったら、どうなってたかわからないのか。ディアナ、クエスト受けてくれて、ありがとう。」
「うーん、なんかユウに、言われると素直に喜べないのは、なんでかな。」
「ディアナ、ひどいな。素直にお礼を言っただけなのに。ところで、ディアナが、受けたクエストって、どんなの?」
「ディアナさんに、受けて頂けたクエストは、町周辺の探索です。」
「それって、そんなに難しそうには、聞こえないんだけど。」
「はい。内容自体は、そんなに大変では、ないのですが、時間が、結構かかるのと報酬も高くないので、みなさん嫌がるんです。」
「あー、それは、途中に寄った人たちには、おいしい話じゃないもんな。俺なら、ウルさんに頼まれたら、やってしまいそうだけど。」
「ユウさん、ありがとう。冒険者で、レベルが、上がったときは、お願いします。」
ウルさんが、少し深呼吸をすると
「では、そろそろ、ユウさんの冒険者見習いの受付をします。ディアナさん、ユウさん、いいでしょうか。」
「ええ、ウル、お願いね。」
「ウルさん、お願いします。」