投稿と採用(1)
悟史が異世界に連れてこられたのは、ほんの数時間前。
その時の悟史は、自分の部屋で机に向かって座り、パソコンを操作していた。
悟史はパソコンの画面を見ながら『投稿する』という表示をクリックする。
「よっし! これで全部終了だ!」
悟史はイスに座りながらうーんと伸びをした。
「あとは冒険者を待つだけだな」
イスをぐるっと後ろに回し、パソコン画面の明かりを頼りに、薄暗い部屋の壁にかかる時計の文字盤を読んだ。
「むーっ。もう三時か……。けっこう時間がかかったな。こんな時間に冒険者は来てくれるかな?」
悟史は表情を曇らせる。
悟史は今日この時のために毎日何時間も作業してきたのだ。
今日も高校から帰ってきてすぐに部屋にこもって作業を始め、電気も点けずに今まで没頭していた。
「誰も来ないなぁ……」
パソコンの画面を見ながら、悟史は呟く。
パソコンの画面には縦長の和風の城が映っていた。
「けっこう自信作なんだけどな……。この和風ダンジョン」
パソコンに映っているのは、ただいま悟史が絶賛ハマり中のオンラインゲーム。
中世風世界観のMMORPGで、それのダンジョンマップである。
このゲームはダンジョンマップに限りMOD製作が認められていて、悟史はこのダンジョン製作のために毎日作業をしていた。
「早く誰か来ーい」
作ったダンジョンを専用サイトで投稿すれば、世界にダンジョンを公開することが出来る。
しかも、そこで人気が出れば、公式に採用してもらえるかもしれないと噂になっていた。
「まぁ、採用はないにしても、早く誰かがダンジョン攻略するところを見たい」
誰にも挑戦されないダンジョンほど哀れなものはない。
「この時間だとゲームにいるのは外国人が多いけど、日本刀は受けが悪かったか?」
ダンジョン製作では一つだけダンジョンマップ以外でも使えるオリジナルアイテムが作れる。
決められた数値内であればステータスも変えられる。
それで魅力的なアイテムを作り、ダンジョンに人を呼び込むというのが王道な使われ方だった。
もちろん悟史もオリジナルアイテムで人を呼び込む算段で、悟史は武器を作った。
悟史が作ったのは『妖刀・黒刃』で、ダンジョンに入ってきた冒険者たちの生き血を、刀身が黒く変貌するまで吸い続けた日本刀という設定だった。
和風ダンジョンに日本刀なんて最高の組み合わせだと、悟史は興奮しながら妖刀・黒刃を作った。
ダンジョンの最上階に妖刀・黒刃を宝箱の中に入れて配置してある。
「悪いのが日本刀じゃなければ、このトラップ式ダンジョンがいけなかったか?」
普通のダンジョンはモンスターとトラップを配置して作る。
もちろんモンスターを倒せば経験値も入るので、レベル上げにダンジョンマップに来るものも多い。
しかし、悟史のダンジョンはほとんどがトラップで構成されている。
和風として作ったダンジョンの容貌は城。
城ならばやたらモンスターを配置するより、釣天井や落とし穴、回転板に槍やクナイが飛んでくる方がそれっぽいだろうと悟史は思ったのだ。
その上、少し凝って謎解き要素も入れてみた。