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抱きつかれて

 うるさいほどに悟史の胸は高鳴り、破裂するのではないかというほど鼓動が早くなる。

 悟史はアゲハのムチムチの太ももばかりに目がいっていて気付いていなかったが、アゲハの胸は巨乳の部類だった。

 抱き付かれれば大きく出っ張るアゲハの胸が悟史にポヨヨンと接触するのは当たり前のことで、悟史はアゲハの胸の柔らかさに思考を支配されていた。

 なんだこれ!

 なんだこれ!

 なんだこれ!

 柔らかい!

 めちゃくちゃ柔らかい!

 胸と胸が触れているだけなのに、胸の柔らかさが恐ろしいほどにわかる!

 胸にズブズブと吸い込まれていきそうで、その吸い込まれた先に何か得体の知れないものがありそうで、いっそ恐ろしくなってくる。

 ……恐ろしいけれども、柔らかくて暖かな胸に、このまま包まれていたいと欲望が訴える。

 このまま手で胸を掴み、その両手で柔らかな胸を堪能しろと急かしてくる。

 胸と胸が当たっているだけで、これだけの柔らかさなのだ。

 手で触れば、きっと比べものにならないほどの触感を味わえるはずだ。

 この大きな胸に両手をうずめて。

 一揉み。

 二揉み。

 それだけで、天にも上るような気持ちを手に入れることが出来るだろう。

 背筋をゾクリとした何かが通りすぎ、それが下半身に到達した時、悟史は身体を支えるため床に突いていた両腕をゆっくりと上げ始めた。

 そして、魅惑の胸に触ろうと――。

「……お館様」

「はいー?」

 予想していなかったアゲハの声が、急に耳元でして悟史は驚いた。

 とっさにした返事は声が上ずっていたし、胸を触ろうとしていた手は万歳の形になっていた。

「アゲハは優しいお館様に仕えることが出来て、本当に幸せものでござる」


 そう言って、アゲハは抱き付いたまま悟史と顔を見合わせて、にっこりと笑った。

 うっ。

 痛い……。

 アゲハの笑顔が罪悪感となり、悟史の心をチクチクと刺してくる。

 その罪悪感のおかげで、アゲハの顔が至近距離にあるのに、いたって冷静になれた。

「お、おう」

 冷静にはなれたが、それが今の悟史による、精一杯の返答だった。

「抱き付いて失礼したでござる」

 顔を赤くしたアゲハが、悟史から離れていく。

 アゲハが離れるとぬくもりも消え、悟史の身体の前を通った冷たい空気が、悟史の体温を下げた。

 そのことにより、悟史の頭もしだいに冷えてきた。

 や、ヤバかった。

 色々な意味でヤバかった。

 いまだ早い鼓動を押さえるように、悟史は手を胸に添える。

 悟史にとってアゲハじたいは痛々しい黒歴史だったが、胸単品の破壊力は抜群だった。

 悟史はチラリと股間を見る。

 よし、大丈夫だ。

 反応一歩手前だったのを目でも確認し、悟史は念には念を入れて少し前屈みで立ち上がった。

 アゲハに気付かれないように、さりげなくさりげなく……。

「さ、さーて、油を作るかあー」

 さりげなく発した悟史の言葉は全くさりげなくなかったが、アゲハに気付かれることはなかった。

 アゲハの興味はすでに油を作ることに移っており、アゲハは合成の時と同じキラキラした目で、巻物のそばに待機していた。


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