忍法(2)
「作るのは部屋を区切る壁と扉。あとは階段と内装。それぞれに設置する罠といったところか」
壁や階段などどうやって設置するのかは分からないが、とりあえず作ってみなければ始まらない。
「で、アゲハ」
「何でござるか?」
アゲハが首を傾げる。
「罠とかってどうやって作ればいいんだ?」
頭を整理したところで、悟史は一番肝心な作り方が分からないのを思い出した。
「いつも通りでござるよ」
「いつも通りって俺にそんないつもはないんだが」
俺のいつもは一般的日本人から若干オタクよりにしたものしか存在せず、大工的ないつもなんてものは存在しない。
「お忘れでござるか? 巻物に書かれた忍法陣を使った加工忍法を」
「忍法陣……。加工忍法……」
その言葉がじわじわと悟史の頭に浸透するにつれ、悟史の顔が赤くなりだした。
「加工忍法はお館様のみが使える究極の忍法でござるよ! あっという間に物を作り出せる素晴らしい忍法でござる!」
アゲハが鼻息荒く説明する。
「お、思い出したからそれ以上はやめてくれ……。恥ずか死んでしまう……」
悟史は片手で顔を覆い、もう一方の手をアゲハに向けて制止した。
何この黒歴史を読み上げられているような羞恥プレイ。
悟史は今すぐゴロゴロと転がり出したい気分だった。
「大丈夫でござるかお館様!」
アゲハが心配げな声を出す。
「うう、大丈夫……」
加工忍法は悟史が命名したものだった。
元は作業台でアイテムとアイテムを合成すると、新しいアイテムを作ることが出来るという機能で、ゲームのプレイヤーなら誰でも使うことが出来る機能である。
悟史はその機能を使おうとした時に、和風MODなら和風にこだわろうと考え、それっぽく変えてしまったのだ。
ただの木の机だった作業台は巻物へ。
ついでに加工忍法という名称も付けた。
言い訳が出来るのなら、全ては深夜テンションで行われたものだと言っておきたい。
ちなみに、こうやって和風に変えたものは他にもたくさんある。
「そうか……。それを使うのか……」
加工忍法では作業台で作れない罠を作れるようにしておいた。
加工忍法で罠を作って、それを配置しろということなのだろう。
今後もこういった辱しめを受けるのを想像し、悟史は目の前が真っ暗になるのを感じた。




