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『死』

作者: 碧惟

私には不思議な力がある。

私は人の寿命を知ることができる。

この力に気づいたのは小学6年のときだ。

学校の帰り道に私は転んだ。

その時通りかかったお兄さんが私に手をかしてくれた。

「大丈夫?怪我はないかい?」

「ありがとう。」

そう言ってお兄さんの手を握った時、一瞬私の体に電気が流れた。

〜4月15日16時11分〜

電気が流れるとともに頭に浮かんできた数字。

「どうしたの?」

いっこうに起き上がろうとしない私にお兄さんが言った。

「ううん。なんでもない。お兄さん、今何時?」

「16時08分だよ。」

「ありがとう。ばいばい。」

そう言ってお兄さんとわかれた。

すると後ろでドーンと大きな音がした。

振り返るとさっきのお兄さんが血まみれで倒れている。

頭が真っ白になった。

だって今日は4月15日。時間は16時11分だったから、、、、

それからは人の体に触れるのが怖くなった。人がいつ死ぬかなんて知りたくない。

怖い。

お母さんの寿命を知ってしまった時はホントに辛かった。

こんな力、、、いらない。

ある日私は妹の寿命を知ってしまった。

私が知った日からあと3日で妹が死ぬことを知った。

寿命を延ばすことはできないの?

死んじゃやだよ。

私は親や妹が何を言おうが妹を家から出さなかった。

運命の日、妹は死ななかった。

妹を触った。寿命が延びてる。

その事がわかってからはその能力を毎日たくさんの人に使った。

これでみんなが長く生きれる。ムダに死んでしまう人がこの世からいなくなるんだ。

しかし、歳をとるごとに私の考えは変わっていった。"この能力で金儲けができるのでは?"

それからはたくさんの人が寿命を買いに私のところへ来た。

私は金に催眠術をかけられたかのように溺れた。

この能力を使う間に私は人を触らなくても寿命が見えるようになった。

ある日、私のお店の前を一人のホームレスが通った。

〜12月13日10時15分〜

時計を見た。

10時ぴったり、、、。

あのホームレス死ぬんだ。

でも明らかに金持ってない。

私はホームレスに言わなかった。

するとホームレスはまたこちらへ戻ってきた。

そして私に向かっていった。

『今から10分前、俺が歩いてきたのを見たよな?俺の寿命、見えなかったのか?もし見えてたならお前は人間のクズだ。お前みたいのがいるから俺たちはこうなるんだ。』

そう言ってホームレスは私の目の前で自殺した。

私を試してた?

私が止めてくれると思ってたの?

ぞっとした。

昔のことが蘇る。昔、、、目の前で死んだお兄さんのこと。

一瞬にして目が覚めた。

私は何をやってるの?命をもてあそんでた。人の命を、、、金のための道具にしてた。

私は助けることができるたくさんの人間を皆殺しにしたんだ。この償いはどうやってすればいいの?

私が死ななくちゃだよね。

今まで私に頼りたかった人は何人いただろう。

今までお金がなくて私に頼ることができなかった人は何人いただろう。今まで私が殺してきた人は何人いただろう。その人たちはきっと私を恨んでる。

、、、死のう。

ナイフをおもいっきり自分に突き刺した。

あれ?なんで?痛くない。

私は自分の体を見た。

手にナイフが刺さってる。血が出てる。

でも私の手じゃない。

震えながらも後ろを振り返った。

どこかで見たことがある30代前半くらいの男の人がいた。

あの時のお兄さん!!

そう思った瞬間お兄さんは手をおさえてその場にうめきながら倒れた。お兄さん、なんで?

あなたはあの時、あの時死んだはずたよ?

私の見た寿命は確かにあの日だった。

なのになんであなたがここにいるの?生きてるの?

お兄さんは病院へ運ばれた。私は付き添いで行った。

お兄さんの手はぐるぐるに包帯で巻かれた。

あまりの痛さで気絶していたお兄さんは病院のベッドで休んでいる。

私は付き添った。

お兄さんが目を覚ました。

『お兄さん?』

『君、あの時の小学生だろ?』

『お兄さんは何で生きてるの?あの時に死んだんじゃないの?』

『俺はあの時に死んだよ。』

『でも、、、』

『今は生きてる。』

『意味がわからないよ。』

『君は天国や神様を信じる?』

『どうして?』

『俺は天国から神様に頼まれて戻ってきたんだ。』

天国から?神様に頼まれて?

『、、、信じられない。』

『君の力も神様が与えたものだよ?』

『え?』

『だから神様は俺の寿命を延ばしたんだ。君にはまだその力を持つには荷が重すぎるんだよ。だから俺が力になってほしいって。』

私は、、、

『選ばれた人間なの?』

『そうだよ。だから君はまだ死んじゃいけないんだ。』

死んじゃだめ?

『君が死んだらたくさんの罪なき人が死ぬんだよ?俺と頑張っていこう。』

『、、、うん。』

それからは金をとらずにたくさんの人に寿命を伝えた。

その中でも病気で寿命を知ってももぅ間に合わないとわかった人々は一番見ていて辛かった。

まだ死にたくないと泣き叫ぶ人もいれば、運命だからと自分の寿命を受け止めている人もいた。

そうやっていろいろあったが私は私なりに人々を助けてきた。

そして今にいたるのである。

今私は病院のベッドの上にいる。

となりにはお兄さん。

とてもおだやかに時が流れていて、すごく心地がいい。

私はもうすぐ死ぬ。

自分の寿命は昔からわかっていたことでこの日が来るのを恐れていた。

でも今は違うよ。

恐いどころか、幸せな気分だ。

『お兄さん、今何時?』

『06時55分だよ。』

あと5分。

『あたしね、この能力を持った自分は不幸だと思ってた。でもね、そんなことないって今は思ってるの。』

あと4分。

『だってたくさんの人の命を自分が手をかざすだけで、見るだけで助けることができるって素敵なことだと思わない?』

あと3分。

『だからもう死んでもいい。やることやったし、こんな気持ちがいい日に死ねて嬉しい。』

あと2分

『お兄さん、あなたに会えて良かった。』

『またどこかで会えるさ。俺たちはきっと会える。』

『あたしね、こんな時に言ってずるいって思うかもしれないけどあなたのこと好きだった。』

あと1分

『キレイな空。』

『ほんとだね。』

『幸せだったな。』

『俺も君が好きだよ。』

『どういうタイミングよ?笑』

『照れるから寝なよ。』

『永遠のお別れじゃないから。一時休憩だから。』

『おやすみ。』

『おやすみなさい。』

"0"


人の命ははかないもの。

だが

「死にたい。死ね。」という言葉が普通に飛び交っている世の中になっている。

死にたいなんていうな。

生きたい人がたくさんいるんだ。

死にたいなんていうな。

生きたくても生きたくても今この瞬間に家族と別れなければならない人がたくさんいるんだ。

死にたいなんていうな。

生きてるからこそ、感情があるからこそ、君は死にたいって言えるんだろ?

死にたいと思っても一歩踏み出せない君はきっと生きたいんだ。

だから生きよう。

悲しさの先には幸せが待ってるから。




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