9.資料と歴史
次の話からこの話の中での歴史話になります。なので会話が多くなります。
大雑把な仕事の説明が終わると先程の部屋に魔王を残し、ナインはフチーレに連れられてある一室に辿り着く。
フチーレが扉を開けると少し埃をかぶり、カビ臭い匂いが一瞬ナインの嗅覚を麻痺させる。
部屋を埋め尽くしているのは天井まで高さのある棚に無造作に置かれた紙の山。
「こっちだ」
並んでいる棚の間を進みながら部屋の奥に辿り着くと作業台として置かれているのであろう長テーブルと二つの椅子、長テーブルの上には何やら色々な資料や執筆途中の物が置かれていた。
「これがお前にやってもらう第二の仕事だ」
「これが…?」
フチーレは机の上にあった丸まっている紙を一つ取りナインに放り投げる。
それを危なっかしく受け取ったナインがおもむろにそれを広げると読めない文字の羅列がずらりと書かれていた。
「これなんですか?」
「簡単に言えば歴史の一部」
「歴史の一部、ですか」
フチーレは奥の椅子に座るとナインにもう一つの椅子に座る様に指示する。
この部屋に入ってきてからそうだったがフチーレは何処か疲れた顔つきで一つ溜息をつくと話出した。
「魔界の歴史本が出回っているのを見たことあるか」
「いえ、見たこと無いです」
「だろうな、ねぇもん」
まるで矛盾した応えにナインは内心疑問符を浮かべる。
それでもフチーレの話を静かに聞いた。
「今から話すのは執務に関係の無い歴史だが、執務をする理由ではある」
聞く覚悟はあるかっと聞かれたナインは力強くただ一つ、はいっとだけ応えた。