7.そんな捨て方…
…よくよく考えると五分では無く、三分で読めますね。
全ての敵を倒し終えたフチーレは一息着くと両手を上げ、持っていた銃を滑り落とす様にそのまま元の袖口の中へとしまう。
そのまま何事も無かったかの様に腕を下ろすフチーレを見たナインはどいして落ちないんだろうっと、言ってはいけない言いたい気持ちをグッと抑える。
すると、何処からかフチーレの後ろに忍びが現れると、それに気付いたフチーレがその忍びに声を掛ける
。
「エペか、どうした?珍しく昼間から起きてて」
「今日は朝から起きていた故、それに何やら騒がしかった故何事かと…」
「それなら今終わった」
フチーレの目線の先を見たエペはそうでござるなっと納得する。
近くに落としたリボルバーを拾うとフチーレは再びエペに話し掛ける。
「エペ、後を頼めるか」
「任せるでござる」
フチーレの言葉でエペは魔王の側へと寄る。
今だに十人の人間達が倒れている光景を唖然と見ていたナインに突然フチーレの声が掛かり、驚きでぶるっと肩が震えた。
「こいつら運ぶぞ」
目の前で倒れている人間達を指差しているフチーレの後ろでは庭に居たお仕事ゴーレム達が五、六匹の束を作り八人の人間達を何処かへと運んでいた。
フチーレが倒れている一人の胸ぐらを掴むと難なく持ち上げ、ゴーレム達と同じ方向へ行くのを見たナインは慌てて最後の一人の手首を掴むと引きずりながら歩き出した。
追いつきフチーレと同じスピードで歩いていたナインはふとっ、フチーレが運んでいる人間と自分が運んでいる人間を交互に見ると恐る恐るフチーレに問い掛けた。
「…この人達、死んだんですか…」
「いや…よく見てみろ」
人間を見るフチーレの目を追ってその場所を見ると服の上から突き刺さっている小さな針の様な物が目に入る。
「これって…」
「麻酔弾だ、死んでねぇよ」
それを聞いて自分が運んでいる者が死体では無いことに安堵するのと同時に、何故殺さなかったのかっという疑問が生まれる。
「どうして実弾を使わなかったんですか?」
「魔王様が見ていたからか…まぁ、そのうち分かる」
曖昧な返事だった。
ナインはどうしてっと聞きたかったが、その言葉は気付いた時には飲み込んでいた。
そうこうしているうちに二人は一つの部屋に辿り着いた。
その部屋の中央の床には巨大な魔法陣が描かれ、その周りには謎の複雑な機械が敷き詰められていた。
魔法陣の中には既にゴーレム達によって運ばれた人間達の山、そこにフチーレは掴んでいた人間を放り入れるとナインの持っていた人間も其処に入れる様に指示する。
「これは何ですか?」
「離れてないと飛ばされるぞ」
ゆっくりと後退りながら魔法陣から遠ざかったナインは何やら機械をいじっているフチーレを覗き込むが、直ぐに魔法陣の方を向く様に言われそっちを向く。
そして、フチーレが機械のスイッチを押す。
すると、人間達の下に描かれた魔法陣が淡く光ったと思うと一瞬にして全ての人間達が光の速さで消えていた。
「す、すごい…あの、これって!」
「転送魔法だ。今頃、さっきの奴らは人間界の町のど真ん中だろうよ」
部屋から出て行こうと扉に向うフチーレがどいた事で見えた機械の画面に映し出されている、人間達が転送された場所を見てナインは絶句する。
画面に映し出されていたのは、祭りか何かで賑わっていた町の人々が集まっていた所に飛ばされた人間達だった。
それを見たナインはこの人、本当に容赦ないっとちょっとした恐怖を味わったのだった。