4.三人の側近
「それじゃあ次に俺こと魔王を守ってくれている側近達の紹介だ」
まるで自分の事を紹介しているかの様にノリに乗ってきている魔王は満面の笑みで話し出した。
最初こそ聞いていたフチーレも飽きてしまったのか、近くに居たお仕事ゴーレム二匹とじゃれあっていた。
「最初にNo.2のセグね。セグはあだ名で本当の名前はセグレート、護衛は夕方担当。暇な時は部屋でゲームしてる」
「ゲーム…ですか…」
護衛がゲームをしていていいのだろうかっと思ったが、一応ナインにとっては上司な訳で何も言えないのは目に見えていた為、それ以上は言わなかった。
「因みに、ゲームをしていて暴言を吐いた時は近付かない方がいい。…死ぬぞ」
「えっ⁉︎」
突然の死ぬ発言に最初は冗談かと思ったがフチーレの目が本当だと物語っていたのと、昔近付いて吹っ飛ばされちゃったっと重大な事件の筈なのに呑気に話す魔王を見て、近付いてはいけないと真っ先に心に刻んだのだ。
「次はNo.3のフチーレ」
不意にナインはフチーレの方を向くと案の定、自分の説明だからかムスッとした表情で違う方向を向いて誰とも目を合わせようとはしなかった。
それでも魔王の話は続く。
「フチーレは昼間の護衛担当で銃マニアなんだ。服のあちこちに銃を隠し持ってるから気を付けてね」
「へぇ〜」
改めてナインはフチーレを見るが銃を大量に隠し持っている様な仕草が全く無いが、雰囲気からしてきっと本当の事なのだろうと思っていると不意に後ろから魔王に肩を叩かれて振り向くと、ボソッと耳打ちされる。
「フチーレは結構ドSだから気を付けてね」
それは、おおいに理解できた。
既に案内中の廊下でその断片の様な言葉を聞いていたのだからナインにとって魔王の言葉は確信をついていた。
すると、魔王のボソッとした声が聞こえたのかフチーレの声が掛かる。
「魔王様…政務量二倍で」
「ああ!ごめん、ごめん。これ以上言わないから!」
主従関係が逆転している様な光景に口が開いたままになってしまったナインはこの職場は大丈夫だろうかと心配になりながら、この人は本当に魔王なのだろうかっと疑いたくなっていたのを誰も知らない。
「はぁ…何時もこんな扱い」
「自業自得です」
「じゃあ、最後にNo.4のエペ」
フチーレの嫌味に聞こえる言葉を軽くスルーした魔王は最後の一人を語り始める。
「エペの護衛は夜担当で、服装通りの忍びだよ」
確かに始めて会った時にあの中では一番目立つ忍び装束を着ていた事を思い出す。
「因みにフチーレとエペは同期なんだ、だから本来No.3とかNo.4は無いんだけど一応つけてるんだ。会いたい時は夜の方がいいよ、朝は寝てるから」
本当に忍びの様だっとナインは早くエペに会ってみたい気持ちになるが、No.2からNo.4まで聞くと最後にNo.1である魔王の事を聞きたいと思うのは必然的な事だった。
「やっぱり魔王様は…」
ガサッ
急な物音に三人は振り返る。
ナインが魔王に話し掛けた途端、綺麗な中庭に見慣れない人達がじっと三人を取り囲む様に武器を構えていた。
ナインはこの城の兵士かと思ったが魔王の話で自分達以外は居ないと言っていたのと、魔族の本能が危険だと察知しているのを感じ、一つの答えに辿り着く。
「に、人間⁉︎」