2.見た目と裏腹
前回よりは長くなった感じです。
それでも五分あれば読み終えると思います。
魔王から新たな名を与えられたナインは魔王の側近で上司でありこの城のNo.3のフチーレに仕事内容を聞きながら城の案内をしてもらっていた。
「此処が全員の書斎で大体の雑務は此処でこなしてる」
フチーレが示した部屋の扉の上には書斎と書かれたプレートが付けられていて、直ぐに此処が書斎だと分かる様になっていた。
「調べ物があったら此処に来るといい」
短い説明を終えるとフチーレは早々と次の部屋へと向かう。
それは城が無駄に広い為早歩きでないと一日では周りきれないという理由だった。
廊下を進んでいると前から小さな人形らしき物が三体程で真っ白なタオルを運んでいるのが見え、ナインはそれが通り過ぎるまで目で追うと少し前に進んでしまったフチーレに慌てて追いつき問いかけた。
「あの、さっき歩いていた人形みたいなのは何ですか?」
「ん?あぁ、あれはお仕事ゴーレムだ」
「お仕事ゴーレム?」
「何時の間にか城に住み着いてな、住まわせてくれる代わりだと家事全般をやってくれるからお仕事ゴーレムと呼ばれてる」
そんな物が居るのかと感心していると、何匹ものお仕事ゴーレムが二人の傍をあっちへこっちへと通り過ぎて行くのをナインは楽しそうに目で追っていた。
「まぁ…表情が無えからいじめがいが無いけどな」
ボソッと呟いたフチーレの一言が耳に入ったナインは動いていた手足が止まり、目を見開いたまま前を歩くフチーレの背中を凝視する。
「あ、あの…今なんて…」
「ん?何か言ったか」
「い、いえ…」
出来れば空耳であって欲しいと願うナインだったが、可能性は低かった。
しっかりとスーツを着込んできちんとしてそうな上司からの突然の独り言で大きくイメージが揺らいだナインの頭の中でさ案内中、自問自答が続き全く頭に入らなかったとか。
ナインは密かにこれからの仕事が波乱を呼ぶのではないかと思っていた。