1.五番目の新人
この小説は五分で読める物を目安に投稿する予定です。
約ルーズリーフ一枚分だと思ってください。
第二話までは短いですが第三話からは長くなります。
また気まぐれ投稿なので不定期に更新します。
それでもいい方はどうぞごゆっくり。
新しいスーツに身を包み、ネクタイをきっちり首元まで緊張を和らげる様に上げると目の前に聳え立つ城を見て重苦しい息を吐く。
まだ青年の一歩手前ぐらいの少年は門番の居ない城の門をくぐって行く。
今日彼が此処にやって来た理由は一つ、此処が彼の新しい職場だからだ。
「…やっぱり広いな」
そんな事を呟く彼だが此処は普通の城では無い、何故なら…此処は魔王城だからだ。
勿論彼はその事を承知の上で来ている、姿形は人間でも彼は人間では無く魔族。
魔王城は人間が思っている黒く禍々しい物では無く、真っ白で清潔に保たれていた。
もし此れが人間ならば此処が本当に魔王城なのかと疑いたくなるだろうが魔族である彼にとって清潔に保たれているからこそ、逆に緊張してしまうものがある。
体を強張らせながら指定された部屋の前に着くとゆっくりと両の手で扉を開く。
開いた扉の奥には如何にも王座の間っと言わんばかりの部屋が広がり、奥にある王座のさに座っている青年が一人、その左右にも同じぐらいの青年達が居た。
緊張した雰囲気を醸しながら王座へ続く階段前まで来ると、彼は立ち膝をして頭を下げて挨拶をする。
「始めまして魔王様、今日から側近兼護衛をさせていただく者です」
「うん、資料は見させてもらったから君の事は大体はわかってるよ。これからよろしく」
「はい…よろしくお願いします」
そんな言葉を交わすと笑みを浮かべていた魔王はその笑みを消して王の顔へと変える。
「では忠誠の証として其方に名を与える…今日から其方の名はナインと名乗れ」
「…はっ」
魔王を護衛する身として新しく名を貰ったナインはその真っ直ぐな目を魔王と三人の側近へと向ける。
向けられた魔王はまた笑みを浮かべる。
「今日から其方はこの城のNo.ファイブだ」
その日、新しく城にNo.ファイブが出来たのは霧の濃い朝の事でした。