お泊り会③
「ごめんごめん、ちょっと着替えてた」
「いや、それは見たら分かるけどさ」
純香ちゃんが棒読みで謝る。あたしはそれに対して返事をする。
まさか、純香ちゃんが隠れ天然だとは思ってなかった……。もっとまともな人だと思ってたのに。
「純香ちゃん、意外とまともじゃないんだね」
うっかり口をすべらせてしまった。純香ちゃんの視線が、超痛い。ごめんなさい、反省してます。
「暮羽……泊まらせてやってるの誰だと思ってんの?」
部屋着に着替えた純香ちゃんは立ち上がって、座っているあたしを見下ろす。怖い。超怖い。
「ごめんなさい、あたし、そんなつもりじゃなくって――――」
「じゃあどんなつもりだったんだよ!」
怒鳴られた。純香ちゃん怖い。この人、普段も怖いけどキレたらもっと怖くなるタイプの人だ。やだやだやだやだ、殺さないで、追い出さないで。
というか、あたし、純香ちゃんの視線だけで殺されそうなんだけど。
「奇遇だね、私も同感だよ。暮羽はもっとまともなやつだと思ってた。けど、さすが希望の友だち。全っっ然まともじゃねーじゃん!」
「そ、そんなこと言われても、」
今にも物とか投げてきそうなほどの純香ちゃんの剣幕に、あたしは明らかに押されていた。
そして希望、何事もなかったかのように髪整えるのやめて。あたしの心配ちょっとはして。仲裁役になってくれてもいいのに、そこで何もしない自由人、それが希望だ。
そう、わかってたはず。だって、あたしは希望の友だちじゃんか。知ってたはずなんだよ。でも……。
「ひどいよ希望!」
「え、私!?」
希望は自分は全く関係ないものだと思っていたらしい。そんな彼女には、あきれてものも言えなかった。
なんだろう、あたし、純香ちゃんがあたしに希望を持ち帰ってって言う気持ち、ちょっとわかったかもしれない……。
「だよね、希望ひどいよね。……だから二人とも、ちょっと頭冷やしてきたら?」
背後から迫り来る影。つまりは純香ちゃん。ら、ラブアンドピース……愛と平和を……。
だからそれはつまり。
「ちょ、純香ちゃん!? わ、私は悪くないよ! 無罪だよっ」
「ど、どう考えても悪いのは希望だよね!? あたしまで閉め出すってことなくない!?」
あたしと希望は、見事に部屋から閉め出されていた。
あたしたちの声が聞こえていないのだろうか、聞かなかったことにしているのだろうか、部屋からの反応はない。
というか、あたしたちの声がきっと一階にいるお母さんに聞こえているんだと思うけど、そこは大丈夫なのかな?
「ちょ、純香ちゃん!」
ドンドンと部屋のドアを叩くが、反応はない。ああ、もう、これだから。
――――面倒くさい子って、嫌いなの!




