お泊り会②
「ねえねえ、純香ちゃんのクラスでの希望って、どう?」
あたしは、純香ちゃんに身を寄せて声を潜め、そんなことを訊いた。彼女は明らかに嫌そうに顔をしかめながら、別に普通だよと言ってくる。その普通が知りたいんだけどな……。
「ねーねー、どんな感じ?」
「あーもう、希望の友だちってだけあってうるさいなあ……」
純香ちゃんが問題発言をしたようだけど、聞かなかったフリをする。うるさいのは自覚しているつもりだ。でも、うるさいと言われて簡単に黙れたらこの世はもっと平和なはずである。
あたしはまったく彼女の発言を聞かなかったことにして、希望の様子について聞き続けた。最初は嫌そうにしていた純香ちゃんも、諦めたのか口を開いた。
「えっとね、なんか、いっつもある特定の女子とケンカしてて、そのせいで私はすっごく迷惑してる。私が仲裁をしなきゃいけないから、超めんどい。昼休みだって、私は一人で静かに本でも読んでいたいのにその二人が邪魔してくるからすっごい殴りたくなる。だから暮羽、希望を持ち帰ってくれない?」
「それこそ問題発言だ!」
冗談も混じっていたのだろう。でも、最後の言葉だけはスルーできない。
持ち帰るってなんだ! 出来るものならあたしだってしたいっつーの! あたしの家に希望を泊めたいよ!
……って、そうじゃない。
「問題発言ってさ、問題なことを発言したときに言うもんじゃないの? 私今、何も問題発言してないよ。事実を言ったんだよ」
と、純香ちゃんが吐き捨てる。すると希望が声をあげる。
「純香ちゃん、結構話盛ってるからね!? 暮羽、純香ちゃんの言う事今は信じちゃダメ! ちょっと今、頭おかしいみたいだから!」
「おい希望、殴られたいのか」
すかさず合いの手を入れるのが純香ちゃん。内容はかなりバイオレンスだ。
「ちょっとみんな、一回落ち着こうよ!」
最後にあたしの声。二人は意味深にあたしを見つめた。そして、二人で顔を見合わせる。な、なによ……。
「暮羽って、仕切り屋さんかー。そういえば、会った時からそんな感じしてたわ。うん、だからだ。だから私、苦手だなって思ったんだよ」
純香ちゃんが、面倒くさそうに言う。そして、はっと気づいたように立ち上がると、クローゼットを開けて着替えを始めた。お、おいおい……恥じらいはないの? でもまあ、そういえばさっきまで純香ちゃん、制服のままだったな。
驚くあたしに、希望が口を開く。
「純香ちゃん、そういうの気にしない子だから。見なけりゃいいんだよ」
そう言う希望も、かなり純香ちゃんの方を気にしている。希望……ドンマイ。
「あ、ごめんごめん。話、続けていいよ」
制服をハンガーにかけながら純香ちゃんはそう言った。黙り込んだあたしたちを気にして言ったんだろ友。でも、それよりも、あなたの神経にあたしたちは驚いているよ……。




