お泊り会①
「お泊り会だ! お泊り会だお泊り会だー!」
「わーい!」
「……二人、うるさいんだけど。黙ってくれない?」
はしゃぐあたしたちを、純香ちゃんは冷たい声で制した。すいません。
ここは純香ちゃんの部屋。彼女の熱烈な交渉により、あたしのお泊りが許可されたんだ。やったね!
諦めないでいた甲斐があった。ほんっとによかった!
「じゃあさ、じゃあさ、女子会でもする?」
「おー! いいね! 暮羽さっすが!」
あたしたちは勝手に盛り上がり始める。まあ、『あたしたち』と言っても、純香ちゃんはすごい嫌そうな顔してるんだけどね。
でも、気にしない。泊まらせてもらっただけで感謝だもん。それ以上は何も望まないよ。シンデレラ並みの扱いをしてもらっても構いません。そうじでもなんでもしてやんよ!
「女子会って、なにすんの?」
げんなり、というのがふさわしいような疲れ果てた表情をしながらつぶやく純香ちゃんに、希望が説明を始める。
「うーんと、まあ、簡単に言えば恋バナが多いかな? あとは、グチとか?」
「え、何それ超怖いんですけど」
というか、グチも恋バナもあたしは二人の話に入れないような気がする。だって、学校違うもん。
少なくとも、あたしと純香ちゃんは話題の共有できないよね。いいのかな、それでも?
「まーまー、適当に話せばいいんだよ! てゆーか、私たち別に恋してないしね」
希望がそう言って笑う。たしかに、あたしはいじめられたりしていた機関があったし、周りは異常な人ばっかりだったから、恋とか全然してないなあ。
というか、恋の必要性って何? 男子なんてガキばっかなんだけど。
どうせならもっと大人っぽい人と恋したいな。会社で知り合った賢い上司とか。クラスの男子なんてそこらへんのアリと同じようなもんよ。
「ふーん……。今ドキの女子って、私ついていけないから分かんないけど、男を好きになって楽しいの? あんなクズみたいな連中を?」
「……純香ちゃん、そういうこと言うのやめようよ」
同志がいた。純香ちゃんとあたし、まさか意外と結構気が合う?
そう思ったけど、純香ちゃんは鼻で笑っていた。うわっ、なんか怖い! やっぱり前言撤回しておこう。この子と一緒ってのはなんか違う。
「暮羽はどう思う? 恋っておかしくないよね!?」
希望が必死になってあたしに訴えている。え、まさか希望って……。
怪しいと思ってじーっと見ていたら、そんなんじゃないよと真顔で言われてしまった。ちえ、正解だと思ったのに。
「ま、恋はおかしくないと思うけど、クラスの男子はどうかと思うな。そりゃ、まともな人がいたら話は別かもしれないけど、少なくとも今のクラスにあたしが好きになるような人はいないね」
「そっかあ……」
希望は少し残念そうにしていた。しゅんとしている。え、やっぱり希望……。
子犬に見立てれば、耳と尻尾が下がってしまった感じが脳内に思い浮かぶけど、やめた。そういう妄想やめよう。
「あ! 言っとくけど、私は別に好きな人いないからね?」
念を押すようにして言う希望。怪しいなあ……。